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奇跡の刻

他人と自分との距離

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「それでは、ここまで」という講師の言葉が講義室に響き渡ると一斉に辺りは騒がしくなった。階段状の講義室のいたる席で講義を聴いていた学生たちが、鞄に荷物を仕舞い込み、次の予定へと急いだり、友人とあいさつを交わし合っている。
「聖」
教科書とノートを鞄に詰め込んでいた聖は声のする方へ顔をあげた。
「ああ。岸」
聖の視線の先には同じ学科の友人、岸きし 宗介そうすけが立っていた。
「大学で会うなんて珍しいな」
「そうだな」
岸とは夏前に国家試験のセミナーで知り合った。長めの髪を尻尾みたいに後ろで縛り、実は二重の目を眼鏡で隠した岸は一見、クールで知的なとっつきにくい感じの男だ。
セミナーでたまたま席が隣になり、休み時間に話しかけられたときには怖い感じがしたのだが、話してみれば見た目ほど人見知りでもなく、頭の切れるいい奴だった。自己紹介していたら、実は同じ大学、同じ学科だったから驚きだ。さすがに一学科、何百人もいるので、同じ授業を受けていたとしてもなかなか知り合いにはならない。
それでも大学外で同じ学科の奴と知り合いになるとは、これもなかなか確率は低いのではないかと聖はいまでも思っている。そして、気がつけば岸は聖にとって一番仲の良い友人になっていた。
昼食に誘われて、聖は岸と連れ立って学食へと足を向けた。
大学のカフェテリアは、採光に気を配り、大きな窓を持った建物の一階にあった。明るい食堂は多くの学生で込み合っている。カフェテリアの隅の席を確保し、食事をとりに行く。
「そういえば、昨日はどうしたんだ?」
トレイを持って並びながら、岸が尋ねる。急に吉井から呼び出しをもらったので、岸に休みの連絡を入れたのだから、当然の質問だったが、聖は答えに一瞬悩む。
「……ちょっとバイトで」
「バイトって家庭教師じゃないよな。平日の昼間だし。個人塾のほうは夕方からだけじゃなかったけ?」
横に並んで、ホウレンソウのお浸しの小鉢をトレイに乗せながら、岸が首をかしげた。
「別口」
聖は簡潔に答えると、麺類の列に並びに行く。岸は定食を選んだようで、そのまま列に残っていた。
説明を始めるとどうして神栖のところに行くことになったか全部話さなければならなくなる。弁償のために働いているなんてことを詳しく語りたくなかった。説明も面倒だし、それについて何か言われたくもなかった。
聖はうどんとおにぎりのセットを岸はとんかつ定食を選んで、場所取りしておいた席に戻る。
「ノート、いるんだろう?」
席について、箸を手に取ったところで訊かれた。聖は岸を見る。
「貸してくれるのか?」
「もう、コピーを取っておいたからやるよ」
岸も箸を取り、茶碗を持ち上げた。
「ありがとう。悪いな」
「それはいいけど、バイト増やしたのって、金がいるの?」
話が戻ってしまって、聖は口を閉じた。手元に視線を落とす。
弁償うんぬんの話をすると、岸のことだ、かわりに建て替えてやるからと言うような気がした。
これは聖自身の問題であって、ほかの人間に相談する気もなければ、すでに解決するめどもたっているのだから、話す必要も聖には感じられない。
そうでなくても自分の抱えていることを他人にさらけ出すのは聖にとって好ましくない。
「そういうわけじゃない。短期だし、社会勉強を兼ねている」
何のことかわからないだろう説明を返して、聖はうどんを啜った。
さらになにか聞きたそうにしていた岸は、聖の様子に踏み込まれたくないのを察したのか、「ふうん」と言ったきり言葉を切った。
沈黙が落ちる。二人は無言で目の前の食事に箸をつけた。
「困ったことがあれば言えよ。相談にくらい乗るし」
しばらくしてから、岸がぼそりと呟いた。
「ああ」
聖は簡単な相槌を返したが、そんなことはしないだろうなと思う。自分で解決できない問題は存在しないだろうし、悩みに至っては、他人に言ったって仕方がないと思っている。聞いてもらってなんとかなることがあるわけがない。
「人に頼ることは悪いことじゃないんだからな」
カツにがぶりと噛みつきながら、岸が静かにいう。そんな岸に聖は視線を向けた。きっと怪訝そうな顔をしていたのだろう、岸が眉間にしわを寄せて、聖を見返す。
「お前ってなんでも一人で考えて、自分で全部やっちゃうだろう?まあ、それだけ優秀なんだろうけど。愚痴だって悩みだって、吐き出して誰かに聞いてもらったらそれだけで楽になることもあるしさ」
そうだろうかと思ったが聖は黙って、岸を見ていた。
「そんなことないって顔だな」
岸は大きなため息をついた。自分の問題を自分で解決するののどこが悪いのだろうと聖は、苛立ちを覚える。
「そこがクールだって言われるゆえんなんだろうけどさ」
どういう意味だって目線で問うと、岸が苦笑を浮かべた。
「知らないの?お前、クールビューティって女子に言われてる」
「は?」
間抜けな聖の応答に意味ありげに岸は口端をあげて微笑った。
「何事にも動じなくて、クールでカッコいいって意味らしい」
「それはお前だろう?」
最後のおにぎりのかけらを口に入れて咀嚼してから、聖は言い返す。
「おれは違うよ。悩んでばっかりだ」
「セミナーでも大学でも首席を争っているくせに?」
「勉強や課題はやればなんとかなる。俺が言っているのは対人間だよ。他人は思い通りにならないからな。どうやって自分をわかってもらうか、相手を理解して受け入れるか、難しいよ」
聖は黙って岸をみつめた。相手に自分をわかってもらう必要があるのかが聖にはわからない。他人とのかかわりで、自己で解決できないことは起きなかった。だいたい、他人ひととの付き合いは、距離を保てばいい。踏み込ませないし、踏み込まない。それ以外のやり方を聖は知らなかったし、それ以上を望んだこともなかった。
「そんなもんかな」
肯定も否定もしない言葉に岸は一瞬だけ、さみしそうに聖を見て、それから視線を落とすと、「そんなもんだ」と呟いた。
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