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平行線の恋

掛け違う想い

 ←あらすじ →覚悟(1)
「ふう。こんな時間か、帰らないと」
時計を見てつぶやく。
あの人が帰ってくる前に……。
言葉を飲み込んで、高郡 聖(たかごおり せい)は立ち上がると、さらりと落ちてきた前髪をかきあげる。くせのない髪はさらりとまた目にかかった。
つややかな黒髪に大きな黒い瞳、対して肌は透けるような白色で、きれいに通った鼻筋、形のよい唇という端正な顔立ちは、人目を引く容姿をしている。さらに、瞳の光が強いため、きつい印象を与えて、それが誰の記憶にも鮮やかに残る。清楚な美人だと認識していないのは本人だけだ。
目にかかった髪を、再度かきあげ、聖は唇を皮肉気に歪めて苦く嗤った。
あの人に会いたいのに会いたくないという矛盾した想いが浮かんだから。
落ち着いて勉強できるという理由で神栖 輝(くるすじん)の部屋に出入りするようになってすでに2カ月。この間に、彼に会えた回数は、数えるほどしかない。
ITベンチャーで社長を務める輝のスケジュール帳はいつも真っ黒で、時間がないのは最初からわかっていた。なぜか電話は持たない主義らしく、仕事用しか携帯していないから、かけるわけにもいかない。それなのに、自分のアドレスは知られていて、メールだけが入っている。
『待ってろ』というメールで、この部屋で待っていた数回だけ、あの人の顔を見た。
「欲求不満の捌け口のような気がする……」
つぶやいてから、自分の言葉に胸の痛みを覚えて、聖は盛大な溜息をついた。
神栖の部屋で待っていれば会えるのはわかっている。それでも、いつ来るかわからない相手をただ待つことは聖の高いプライドが許さなかった。
平日は、神栖の仕事中の昼間だけ、大学にもバイト先にも近いからと、聖はこの部屋に通っている。実際、神栖の書庫は国家試験に必要な書物がそろっていたし、静かで勉強するには最適であった。時折、部屋を使った痕跡があるので夜には帰ってきているようだが、そんなのは知らない。自分にも自分の生活があるのだから。
今日もまたメールが入っていたが、待っているつもりは毛頭なかった。荷物をまとめて部屋を出る。
ドアが閉まる音に胸がキュっと痛んだ。本音を言えば、ずっと側にいたい、触れていたい、声を聞いていたいのだが、そんなことは言えないし、できない。
大学生の自分と社会に出て高い地位にいる神栖とでは時間のサイクルが違う。
またひとつ溜息がでて、このところ溜息ばかりついていることに苦笑いした。
『俺の中は神栖さんで一杯で、いつでもあの人のことばかり考えている』
心の中で呟きながら、聖は駅までの道を行く。
他人に興味がなく、自己で完結していた聖の殻を無理やり破壊しつくしたのが神栖だった。
3か月前のちょっとしたきっかけの出会いから。
聖は殻を壊して自分の心に棲みついてしまった輝を愛しくも憎くも思っている。
昏く沈んでいく気持ちを持て余しながら、電車を2つ乗り継いで、やっと自分のマンションの部屋まで戻ってきた聖の足が、自室の手前50mで、ぴたりと止まった。
「神栖さん……」
部屋の前の壁にもたれて立っていた長身の男は、まぎれもない神栖輝だった。さらりとした黒髪が縁取る彫りの深い整った顔。それが甘く見えないのは、強い光を放つ切れ長の瞳のせいだろう。すらりとした肢体を仕立てのいいスーツに包み、腕を組み壁にもたれて立っている。腰の位置が高く、シルエットすら均整がとれていて、ただ立っているだけなのに目立つことこの上ない。
「よう」
片手を挙げて軽く挨拶され、驚きに神栖の姿に見入っていた聖は我に返った。回れ右をするのもおかしい気がして、自室の前まで行くと、輝の顔を見ずに扉に向き直る。
「何しているんですか」
自宅の扉の鍵を開けて顔も見ずに言い放つ。
「何って、何度メールしても俺の部屋で待ってないから、今日もすっぽかすつもりかと思ったんだが、あたったな」
手前に引いて開けようとしたドアは、開かないように輝に手で押さえられて、びくともしない。後ろに立つ神栖は聖を上から見下ろしていた。悔しいことに神栖の身長は優に180センチを超えている。聖も174センチあるのだから決して小さくないのだが、神栖と並ぶとどうしたって見下ろされることになる。
「手、離してください」
振り向きながら睨みつけ、聖は冷たい声で告げた。
「入れてくれるならな」
そんなの全くお構いなしに神栖は聖の瞳を覗き込む。その瞳を聖は睨み付けた。
神栖は下から睨み付ける聖を見つめ返す。面白そうにも残念そうにも見えて、さらに聖は面白くない。
だが、家の前での押し問答は目立つし、マンションの住人に見とがめられるとそれはそれで厄介だ。仕方なく、聖は睨み付けたまま、
「どうぞ」
と答えた。
「それは、どうも」
軽く返事を返す神栖が扉を開き、聖はその脇をすり抜けるように部屋に入った。神栖が続いて部屋に入ってくるのを背中で感じた。


聖の部屋は2LDKで、いかにも学生が住んでいるといったつくりになっている。いたって普通な部屋だ。ダイニングにはキッチンと小さいテーブル、部屋の壁沿いの棚を配置その上にテレビを乗せてある。色調は落ち着くようにと黒と白に統一し、散らかっているのが嫌なので、片づけをまめにするせいか、男性の一人暮らしにしては、すっきりとしているほうだろう。
しかし、学生から社長業などをしている神栖は、こういう庶民的な部屋は珍しいのか、部屋のあちこちを見回している。感心しているようにも見えるのは気のせいだろうと聖は茶筒を持ったまま神栖に声をかけた
「お茶にします、コーヒーのほうがいいですか」
「何もいらない」
答えはにべもなく、神栖は聖のほうに歩いてくると、茶筒を持っている聖の腕をつかみグイっと前に引いた。急に腕を取られて体勢を崩した聖は、神栖の胸に倒れこみ、ぐっと抱きしめられた。
「会いたかった」
耳元で吐息とともに神栖の囁く声が体を貫いて体内からざわざわとした感触が湧き上がってくる。それに流されてしまいたくなくて、聖はわざと冷たい声を出した。
「この間会ったばかりだと思いますけど」
「この間って……」
言葉を途切れさせ、少し体を離して神栖は、聖の瞳を真っ向からとらえた。
「3週間は経ってると思うのは気のせいか」
切れ長の目が素敵だとつい見惚れそうになるのを腹に力を入れて、ぎっと睨み付ける。待っていたと会いたかったと思われるのは、負けたようで嫌だった。
「もうそんなになります?」
精一杯の虚勢がわからないようにと願いながら、聖はさらに瞳に力を込めた。
会いたかったし、夢にまで神栖を見たが、全てが神栖の都合で動いていくのには我慢が出来ない。自分はペットでもないし、神栖の帰りを今か今かと待つ愛人でもないのだからと聖はプライドのありったけをかき集めて輝を睨みあげる。
見つめ合うと言うよりは、睨みあった2人を火にかけたお湯が沸騰したやかんの甲高い音が遮った。神栖の腕から逃れて火を止め、お茶の支度にかかり始めた聖は、痛いほど耳に響く自分の鼓動が相手に悟られないようにと唇をかみしめる。
ポットに茶葉をいれ、茶筒を置いて、やかんに手を伸ばした。その腕を後ろからとられ、またそのままひかれて、気づけば神栖の腕の中に抱き込まれていた。
「お茶が入れられない」
「いらないと言った」
痛いほど抱きしめられ、逃げるに逃げられず、聖はどうしていいかもわからない。じっとしていると、一瞬すっと身体が離れ、大きな手で顎を取られ上向かされていた。
「あんまりつれないこと言うものじゃない。おまえにも都合があるのだろうと我慢していたが、そういうことじゃなさそうだな」
そのまま神栖の顔が近付いてきて、唇で唇を覆われた。あっという間に舌が入れられ、開かされた口にかぶさるような深いキスをされる。
「あっ……」
息もできないほどの深い深い口づけと折れそうなほど抱きしめられた腰、あまりの激しさに頭の中が白くなり何も考えられなくなる。
「はぁ……」
あまりも深く長いキスに膝が崩れ落ちる。それをなんなく片手で支えて、向かい合わせられると、また、瞳をのぞきこまれた。
「俺を避けている理由を聞こうか」
「べつに……避けてなんか」
話すにも息しかでないような声で答えるとまた顎をつかまれた。
「い……や……」
また近付いてきた顔に両手を挙げて突っぱねるように押し返す。
「ちゃんと理由を言え」
言えない。あなたの都合に振り回されて一喜一憂する自分が嫌だなんて。メールが来ないか常に見てしまう自分が嫌だなんて。触って欲しくて、抱いて欲しくて、気も狂いそうだと思っているなんて知られたくない。
伏せられた瞳を神栖はいらだたしげに睨んだ。
「言いたくないなら聞かない。でも、拒むのも許さない」
囁くように告げ、難なく聖の両手をまとめ上げるとそのまま口づける。
「息が……でき……な」
抗議の声もさらに深い口付けで遮られ、崩れ落ちそうになる膝に力を込めた。身体を離そうとする力を逆に利用され、壁に押さえつけられる。
「い……やだ」
服の下から差し込まれた手にびくっと身体が跳ねた。そのまま背筋に線に沿って撫で上げられる。ざわざわ身体がざわめき、鼓動が速くなった。
「こっちは、嫌がっていないようだが」
神栖の膝頭が身体の中心にあたるのがわかって、カッと聖の頬に紅が差す。上向かされてのぞきこまれた神栖の瞳が面白そうに瞬いていた。
悔しくて、恥ずかしくて、なんとか身を取り戻そうともがいても、体重をかけて押さえつけられているのかびくともしない。その間にも大きくて暖かい手が身体をまさぐって、その熱が聖の肌に移るのを楽しんでいる。触られるたびに腰の奥でざわざわする感覚など、この人にはわからないに違いない。するりと撫であげられるたびに声を上げそうになる。
「やめ……あっ……やだ……」
「瞳を閉じるなよ」
瞳を覗き込んでいた神栖の手が聖の胸の突起に触れ、軽く摘まむのに、噛みしめていた声が漏れて目を閉じる。睨みつけていたいのに、感じて身体に力を入れていられない。神栖はそのまま、聖の首筋に顔をよせると、つうっと舌を這わせ軽く耳たぶを噛んだ。
「あっ…」
甘噛みされて、吐息とともに声が上がる。聖の抵抗が少し緩んだとみるや神栖は左手をすっと下に下げ、聖のズボンのベルトをさっさと解き、下着ごとズボンを下ろされる。
「……やぁ……」
触れられて自分でもびっくりするような甘い声が放たれ、身体を支えるために神栖の肩を両腕で抱きしめる。
そんなことはお構いなしに、神栖は左手で聖を扱きながら、唇で身体をなぞり、膝をついていく。
「……あぁぁ……やだ……」
股間で猛っているものを口に含まれ、舐め上げられ、聖は甘い悲鳴を上げる。
「――やめっ……立って…られ……」
聖の言葉に答えは返らず、湿った音だけが聞こえる。神栖の肩に跡が残るほど爪を立て、足に力を込めないとそのまま崩れ落ちてしまいそうだ。
この甘い声は本当に俺なんだろうか。堪え切れずに上がり続ける熱い吐息と声に恥ずかしさも悔しさも曖昧になっていく。神栖の口にくわえられた聖自身は、歓喜に身を震わせ、蜜をあふれさせる。神栖の唾液か聖の蜜かわからないぬめりを蕾に感じた。つつましげに閉じた蕾を濡れた神栖の指で辿られ、あまりの快楽に、頭の中が白く霞んでいく。
「やっ……はぁぁ……」
入口を彷徨っていた神栖の指が体内に侵入してきた感覚に、聖は拒絶しようと口を開いた。だが、唇からこぼれ出たのは、甘い嬌声で、腰が淫らに揺れた。
神栖の愛撫は激しさを増して、前も後ろも攻められて、聖を高みへと追い上げ、それに伴って甘い吐息が空気を揺らす。
「……だめ……イく……」
「いいぜ、イけよ」
「……やっ……」
身体がビクリと震え、自分の荒い息遣いが耳に響き、身体の芯を快楽が突き抜けていった。神栖の手の中に欲をすべて吐き出してしまいながら、聖は壁伝いに背をつけたままずるずると座り込んだ。言葉もでないくらい息が上がって、頭の中がぼうっとする。
投げ出された手を取られ顔を挙げると神栖の顔が近付いて、再び、唇が重なった。かすかな苦みに眉を寄せるが、とられた手にあてられた猛る神栖のモノに聖は瞳を大きく見開いた。
「悪いな。さすがに今日は余裕がない……」
唇をつけたまま囁かれた言葉を理解する間もなく身を反転させられ、腰をとられると一気に熱いもので刺し貫かれた。身体の中に入ってくる異物に悲鳴が上がる。少しは指でほぐされていたとはいえ、指とはかけ離れたあまりの質感に聖は苦しくて、頭を振った。
「―ああぁぁ――」
「つっ……そんなに力を入れるな」
後ろから覆いかぶさって耳元でささやかれる低く甘い声が耳朶を打つ。
「息を吐いて。そう。力抜いて」
痛みで身体がこわばり、硬くなるのがとめられない。
どうやったら力が抜けるっていうのだろうか。
痛みと快感とが入り混じったわけのわからない感覚の中で聖は毒づいた。それでも神栖の低い声で囁かれると、全て彼の命じるままに身体が動き反応する。
少し力を抜くと神栖が動くのがわかる。中身をかき回され、乱され、撫であげられる感覚に、腰から脳へと電気が走るように身体を何かが突き抜けていく。
「ぁああっ……いや……だっ……はぁ……んっ」
先ほどとは比較にならないほど甘い吐息が聖の喉を震わせ、官能のあえぎが口をつく。
「聖……」
何度も耳元で名前を囁かれ、その声すら刺激になって聖を狂わせる。
短いのか長いのかわからない時間、聖は背後から貫かれ、かき乱されて、淫らに腰を振った。頭の中が白く霞んで、快楽なのか痛みなのか苦しみなのかわからないまま、聖は神栖に翻弄された。
わけのわからない中で、唯一、神栖の低い囁き声と腰を支える手の熱だけが聖を現実をつなぎとめていた。

達してから、どれだけ経ったのか。さっきだった気もするし、ずっと放っておかれたような感じもする。
傍らで神栖が身を起こしたのに気づいたが、聖は腕で目を覆い、じっと床に転がったまま動かなかった。キッチンの床で犯されるように神栖に抱かれて、何もかもどうでもいいような投げやりな気持ちと泣き出しそうな悲しい想いが胸を締め付ける。
「聖。大丈夫か」
こんなに激しく酷くしておいて、大丈夫かもないものだと聖は返事もしなかった。
聖の髪を大きな手で梳きながら、神栖は聖を心配そうに見下ろしている
「聖」
名前を呼ばれても腕で瞳を覆ったまま聖は動かない。かすかに神栖が苦く笑った気配だけが感じられた。
「聖」
再度の呼びかけにも聖が応じないでいると、傍らに座っていた神栖はすっと立ち上がった。
行ってしまう。
神栖の立ち上がる気配に、聖は心臓を鷲掴みにされたような痛みを覚えた。
止めないと。行ってしまう。そう思っても身体は動かない。
目頭が熱くなり、鼻の奥がつんと痛んだ。
近くで水音がし、また神栖の気配が戻ってきて、聖が瞳を開けようとした途端、唇を覆われ液体が口腔内を満たした。思わず飲み込んでしまい、その液体が喉を通る甘い感触にもどきりとする。
びっくりして見開いた目に神栖の瞳が映った。視線をずらすと神栖の手にグラスが見え、水を飲まされたんだと気づく。
「自分で飲める」
起き上がろうとして下肢に痛みが走り、ビクリと身体が震えた。それでもなんとか壁をずり上がるように身体を起こし、グラスを受け取ると一気に飲み干した。冷たい水が喉を通り、いかに喉が渇いていたかを思い知る。
「喉も涸れているだろう。いい声で啼いていたからな」
耳のそばで告げられた言葉に聖の頬が熱くなる。殴ろうと振り挙げた手を神栖にいとも簡単にとらえられ、聖は奥歯をかみしめた。軽く唇にキスをして、神栖は立ち上がった。
「バスルーム、借りるぞ」
すたすたと歩き出した神栖を聖は呆然と見つめる。神栖は、振り向きもせず、
「おまえも支度しろ。出かける」
と告げた。
なんなんだ。俺の都合はお構いなしってことなのか。欲望果たせばそれで終わり……?ただのモノ……。
バスルームへと消えた神栖の背中を見送りながら、硬く結んだ聖の唇からうなりが漏れる。この名前がつかない感情に苛立ち、聖の気持ちを逆なでする。
誰にも何にも執着したこともない。欲しいものはそれなりの努力で手に入れてきた。女にももてたが、興味を引くほどのこともなかった。なのに何故。
思考のほとんどが神栖のことばかりで、まとまった考えが得られない。神栖が自分だけに目を向けるにはどうしたらいいか、そればかりを考えている。
「おかしいだろ」
片手で顔を覆ってつぶやく。悔しいのか哀しいのかわからない感情が聖の胸の内で渦巻いていた。

頭に強めの水流を受けながら、神栖は片手を壁にあて体重を預ける。
あまりに久しぶりで歯止めが利かなかった。あまりに愛しくて、全て自分のモノにしたくて、聖の中を俺で一杯にしたかった。無理やり犯る気なんてなかったのに。
後悔の念ばかりが神栖の胸の内を吹き荒れた。
神栖はさらに苦く嗤った。床に転がっていた聖を思い出す。
それなのに――
あんなに弱っていたのに、あのままもう一度抱きしめて、また抱いてしまいそうになった……。
熱い湯が頬を肩を流れていく。聖に対して後戻りできないこの欲望はいったい何なのか。
優しくしたい。壊してしまいたい。守りたい。めちゃくちゃにしたい。
相反する想いが神栖の中で常に渦巻いている。
あいつの全てを自分のものにしたい。
ありえない独占欲にめまいがした。こんな強い感情を抱いたことは過去に一度もない。
今まで、男も女も恋人と呼ばれる者はそれこそ何人もいて、甘い睦言も交わしてきた。大人の付き合いで、会いたいときに会い、触れたいときに触れ、それでなんの問題もなかった。礼儀は尽くしたし、束縛したこともない。別れる時もきれいなもので、恋愛でもめ事を起こしたことなど一度もない。すべて大人の恋愛。それで満足していたし、それが普通だった。
閉じ込めて、どこにも行かせず、俺だけをその瞳に映して。誰の目にも触れさせず……。
「ありえないだろう」
神栖は自分から溢れるあまりにも身勝手で熱い想いに、こぶしを握り締めた。この窒息しそうな熱い想いを何と呼ぶのかも知らずに。水音と湯気が彼の心と想いを覆い尽くしていた。
聖、俺はおまえを壊してしまうかもしれない……
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