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平行線の恋

奈落

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「聖、起きろ」
ぴたぴたと頬を叩かれ、聖は薄眼を開けた。日の光が寝室を包み、新しい一日が始まっていることに気づく。
「何時?」
「もう、7時30分だ。起きないと襲うぞ」
何を言っているんだかと、さっくり神栖の言葉を無視して起き上がると聖は支度を始めた。身体が重くてだるい。寝不足特有の鈍い頭痛がする。
着替えてリビングに入ると、神栖は涼しい顔で朝食を準備していた。パンの焼けるこうばしい匂いとコーヒーの香りが眠気を払う。
「おはようございます」
何かひどく浮ついた気がして落ち着かず、聖は小さな声であいさつをした。
「ああ、おはよう」
コーヒーをカップに移してテーブルに置く神栖がこちらを向くが、気恥ずかしくて視線が合わせられなかった。黙って椅子を引き席に着くと、前に置かれたカップを両手を包む。
「どうした」
「別に」
応えるが自分でもよくわからない。いたたまれないような心地が良いような悪いような不思議な感覚が身体を支配して、どうにもすわりが悪い。
神栖が何か話しているのに曖昧に返事をしていたら、いきなり鼻を摘まれた。
「何すんだよ」
驚いて目を見開き文句を言う。
「まだ、寝てんのか」
この頭の重さは誰のせいだと思っているんだと悪態をつきそうになるのを堪えて、聖は神栖を睨んだ。
「変な顔だ」
言いながら、神栖が声をたてて笑い、聖はむっとして、神栖の手を叩き落とす。
神栖は自分をからかってばっかりだと思う。
「今日は一日中なのか」
大げさに打たれた手の甲をさすりながら、神栖が聖の予定を聞いてきた。
「授業は午前中だけ。午後はフリーかな、バイトは明日」
「そうか、あまり無理するな」
一瞬だけ心配そうな顔をされて、胸の奥がドキンと音をたてた。まっすぐに神栖の顔を見ていられなくて、聖はかすかに視線を下へ落とした。
また、心もとない感覚が戻ってくる。
「聖」
声をかけられて、聖は仕方なく、目の前に座る神栖の鼻に視線を上げた。
「ちょっと携帯貸せ」
いきなり言われたことがわからず、聖はきょとんとした。
「なんで?」
「いいから」
口端を上げて微笑む神栖に見惚れながら、聖はローテーブルの側におかれた鞄から携帯電話を取り出し、ロックを外して渡す。受け取った神栖は、聖の携帯電話に何かを打ち込み聖に投げ返した。
「新しいアドレス入れたから。これならメールして構わない」
メールしてこいといわんばかりの偉そうな神栖の態度に聖は目を瞠る。
神栖さんは不思議だと聖は思った。会社を切り盛りする超一流の経営者の顔をするかと思えば、今、目の前でやけに得意そうにしている様はまるでやんちゃな子供の様だ。
自分勝手で、でも優しくて、だれもが見惚れるだろう男前で。貶しているつもりが褒めている自分に気付いて、聖はつきそうになる溜息を押し殺した。
ちらりと神栖を見上げる。
「暇だったらね」
そっけなく返すと、神栖があっけにとられた顔をし、それから不機嫌そうに眉間に皺を寄せた。神栖との距離が近い。そう思って、なんだか心中、暖かい想いが広がって、こういうのも悪くないかと聖は思った。

エレベータで、マンション地下に降りる。
とりとめない会話をしながら駐車場の奥に停められている神栖の車、シルバーのシボレーコルベットに向かった。
車の側まで来ると、車の前に佇む人影が見え、神栖が足を止めた。聖も神栖を見て歩みをとめた。
「輝!」
車の側に立っていた人影がいきなり神栖の名を叫んだ。聖はそちらに視線を向ける。
褐色の長めの髪に白い肌、華奢だが、長い手足の20歳前後の青年が神栖に向かって歩いてくる。地下の駐車場で薄暗いにも関わらず、はっきりと認識ができる息をのむ程の美しさに一瞬女性かと思った。声を聞かなければ、どちらかわからなかったに違いない。
「輝」
再度の呼びかけに神栖の纏う空気の温度が下がった。神栖は聖の背を手のひらで押し、車に乗るように促す。戸惑って足を止めた聖を声をかけてきた青年から守るように、神栖は、聖を背にかばう。
「聖、先に車に乗っていろ」
声は優しかったが、緊迫したような感じが潜んでいた。
「……神栖さん」
「時間があまりない」
誰だと問おうと口を開くが、途中で遮られ、聖は一度神栖を見て、ため息をつくと車の助手席へと回り込んだ。
「輝、なんで僕じゃいけないんだ」
神栖に詰め寄った青年の言葉が響くが、神栖は冷やかな視線で見下ろすだけで何も答えない。
「今度は、あの子なの?そうなんだね」
聞こえた言葉はこの2つだけ。ドアに滑り込んで閉めてしまうと外の音はほとんど聞こえなくなった。窓越しに一方的に青年が何かを訴えているのが見えたが、何を話しているかはわからない。神栖は聖が車に乗り込んだのを音で確認すると、叫んでいる青年には見向きもせずに車に向かいドアを開け、運転席に乗り込んだ。
「輝!」
ドアを開けたときだけ、追いすがった青年が神栖の名を呼んだのが聞こえたが、神栖はそのままエンジンをかけ、車は滑るように走り出す。
運転する神栖の横顔にちらりと聖は視線を走らせるものの、部屋で聖に見せた柔らかい雰囲気は錯覚だったのではないかと思うくらい張りつめた冷たい空気を醸し出している。
あれは誰。何故あそこにいたんだろう。
訊きたいことは山ほどあったが、神栖の尋常でない雰囲気に聖はどれも口にできずに黙ったまま前を向いた。
『今度はあの子なんだね』
あの綺麗な青年は確かにそう言った。それは、彼が前に神栖と付き合っていたことがあるということだろうか。
聖はいままで考えもしなかったことに思い当って愕然とした。自分がいままで付き合ったと呼べる人がいないからといって、神栖までそうとは限らない。
これだけの男だ。過去の恋愛遍歴たるや想像に難くない。
前の恋人……。
心臓が脈打つのが聞こえる。痛いくらいの鼓動に胸を抑えた。衝撃を感じると胸が痛いとよく小説などで読むが、これが本当だったとは聖は知らなかった。
胸が苦しくて痛い。さっきまで神栖さんと確かに何かを乗り越えたと思っていたことがあっけなく瓦解する。恥ずかしさを伴うくらい満ち足りた想いは、聖の掌から砂のように零れ落ちた。
今の自分の関係が恋人同士かどうかと問われれば、聖は困っただろう。なのに、さっきの青年は恋人だったのだろうと確信してしまう。
矛盾しているが、初めての恋愛に完全に振り回されている聖にしてみれば当然かもしれない。
負の思考はとめどなく溢れて、ぐるぐると同じルートを回り続ける。物思いに沈んでいると神栖の声が聞こえた。
「聖、着いたぞ。待っているから、荷物取ってこい」
「あ、ああ」
聖はドアを開け、自分の部屋へと向かった。足元がもつれるような気がする。
テキストを取りに自室に入ると自分のベッドが目に入り、昨夜の神栖を思い出した。
神栖さんは彼のことも同じように……。
聖は神栖がさっきの青年もその腕に抱いただろうことに思い至り、再び愕然とした。あまりのショックにだんだん気分が悪くなってくる。人間あまりにも衝撃が大きいと具合が悪くなるものらしい。
頭を左右に振って考えを振り払おうとするが、そんなことでは一度浮かんできた思考は消えないし、止まらない。
「神栖さんが待っている。早く行かないと」
考えを止めたくて独り言を口にする。自分に言い聞かせるように早くと呟いて、テキストをまとめて鞄に放り込み、部屋を出て、車に戻った。
「どうした、聖。顔色が悪い」
ドアを開けて車に乗り込むと、神栖が聖の顔を覗き込む。
「だ、大丈夫。ちょっと車に酔っただけ」
ふと視線を落とし、聖は語尾が震えないように顎に力を込めた。語尾が消え入るような声になってしまう。
「やっぱりもともと調子が悪いんじゃないのか。今日はセミナー休んで、寝てた方がいい」
覗き込んでくる神栖から視線をそらし、聖は腕時計をみるふりをした。目を合わせたくなかった。
「車、出してよ。遅刻する。休むとその項目だけ抜けてしまうし」
できるだけ平静に見えるよう努めるが、成功しているとはとても思えなかった。そういえば、朝から神栖は聖の体調をやたらと気にしていた。これから出張に出るのに心配かけるわけにはいかない。
「その分は、俺が帰ってきたら教えてやるよ。これでも試験通ってるわけだし」
「いい。大丈夫だから、ちゃんと出席する。セミナー中に良くなるから」
心配そうな顔はそのままに、それでも神栖は車を発進させた。
窓の方へ顔を向け、神栖と視線を合わせないようにする。信号待ちで視線が絡んだら、何を口走るかわからない。
車は神栖のマンション付近まで戻って、セミナー会場のビルの下にすっと停車した。
「本当に行くのか」
心配そうな神栖に無理に微笑ってみせて、聖は車を降りた。
「神栖さんこそ気をつけて。送ってもらってありがとうございます」
軽く頭を下げ、くるりと背を向けると建物の中に入っていく。
一回振りかえると神栖はまだ心配気な顔で、こちらを見ていた。それに軽く手を挙げて応えると、聖はもう振り返らなかった。

神栖は聖の背が見えなくなるまで見送り、車を発進させた。微笑った顔が見たいと思ったが、あんな無理した顔が見たかったわけではない。
聖は朝からぼおっとしていて、なんとなく心ここに在らずだった。車に乗ってからはますます不機嫌で、いつものプライドの鎧で覆っている感じではなく、何かにいらだっているようだった。
やっぱり身体つらかったんだろうか。
昨夜、傷つけたくないと思い、なけなしの理性を総動員して、優しく宝物のように扱ったつもりだったが、それでも聖を壊したのだろうか。
酷くしなかったと思うが。
大事にしたいのに、なぜいつも傷つけてしまうのか。
いらいらと煙草を口にくわえ、信号待ちで火をつけた。
乱暴になんども煙草を吸う。やることなすこと裏目に出ているような気がして、神栖はいらだたしげに煙草をふかした。
こんな状態で2週間も会えない。こんなはずではなかったのに。
「くそっ」
乱暴な言葉を吐き捨てて、神栖はハンドルを拳で殴った。
二人の互いを思いやる気持ちも愛しさも噛み合わないまま、時間が傷を深めていった。
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