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「山神の花嫁_昔話」
神無月

神無月(1)

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時は神無月。
一年に一度、出雲へと神々が集合し、会議をする月だ。日本中の神様が出雲へ出向くので、他の地域の神様はみな不在になる。だから神無月(かみなしのつき)。
出雲では逆に神有月(かみありづき)と言うらしい。
といっても泉には出雲の国がどこなのかもわからない。
とても遠いところくらいの認識しかない。生まれてこの方、故郷の山とこの宮だけが泉の世界だから。
この山の宮は、山神である翡翠の居城だ。もちろん、人界ではない。神の国だ。わけあって、泉は翡翠の花嫁となり、この宮に住んでいる。すでに7年が経過していた。
あと10日。
紙につけた印を見ながら泉は溜息をついた。
そっと自分の身体を自分の腕で抱き締める。
泉の主人の翡翠もまた例外なく、今年も出雲へ出かけている。だから、今現在、この山の宮は主人不在で、泉が留守を預かっていた。
「翡翠様……」
呟くと寂しさが身にしみた。
一人が寂しいなんて、ここに来るまでは、翡翠と暮らすまでは泉は知らなかった。ずっと山の中で一人で暮らし、それが普通なんだと思っていた。自分がいかに孤独なのかも知らずにいたのだ。翡翠が自分を見出すまでは。
傍らにいて翡翠が笑ったり、怒ったりすねたりするのが何とも心地よい。
そして、翡翠が伸ばす腕の中がいかに安心できるか。
他人の温もりがどんなに心強く、自分を温めるかも、翡翠はここに来て初めて知った。
早く、無事に帰ってきてほしいと泉は願う。
あの綺麗な琥珀色の瞳で見つめて欲しいと。


外廊下を綺麗に磨き上げ、泉はその出来栄えを眺めた。我ながら、よく磨いたと思う。
こうやって、何かに没頭しているときは、寂しさを紛らわせていられた。帰ってきたら、翡翠様が褒めて下さるだろうことも泉の心を強くする。
だから、あまりに自分のすることに気を取られていて、まったく周りが見えていなかった。
「君が……泉?」
いきなり聞こえた涼やかな声に、泉は慌ててその音の方を振り向いた。
外廊下のすぐ下の庭先に、男が一人立っていた。きちんと髪を結い、鮮やかな群青色の神職衣装である束帯姿の凛とした男性だ。
泉はひどく驚いた。久しぶりに見る自分以外の人だ。
それにしても、誰かがくれば鐘が鳴るはずなのに……。
「あなた様は……?」
「すごいな。聞きしに勝る美人だ」
相手は泉の言葉など耳に入っていないかのように、一人で感心している。
「その長くてつややかな黒髪、抜けるような白肌、黒曜石の瞳、華奢な身体。男には見えない」
気にしていることを言われて、泉はむっとした表情で男を睨みつけた。
「怒った顔も綺麗だ。その濡れたような瞳がぞくぞくする」
頭がおかしいのだろうか。と泉は一瞬思った。しかし、この宮に入れるのは、主か同格以上の神様だけだ。ただ人ではない。それにこの装束は神の正装だ。
「どなたさまでしょうか。あいにく、主人は出かけておりますが」
こんなことを言わなくても知っているだろう相手にそれでも泉は礼を尽くす。男はつと泉の前まで足を運び、下から泉を見上げた。
「知っているよ。もう何日もせず帰ってくるだろう、緑の主は。それまで、ここに厄介になる」
泉にはわけがわからない。翡翠からは何も聞いていない。お客なんだろうか。
「あ、あの。失礼ですが、主人からは何も聞いていません。ですので、戻りましたらまたお越しいただいて……」
「確かに失礼だ」
泉の言葉は面白そうな声音に遮られた。
「私を見下ろすなんて不敬だと思わないか」
外廊下は庭より高いのだから当たり前なのだが、泉は確かに男を見下ろしていた。慌てて膝を折って、廊下に座る。
「素直でよろしい」
男はにっこり笑った。微笑むと優しい顔立ちになる。涼やかな目元にすっと通った鼻筋、意思を感じさせる口元、どこをとっても相手の方が綺麗という表現が似合う。しかし、綺麗だが、この人は男以外には見えない。
「あ、あの……」
「私は緑の主の昔馴染みで、竜胆(りんどう)という」
「竜胆様……」
「先ほども言ったが、緑の主に用がある。留守なら帰ってくるまで待たせてもらおう。邪魔するぞ」
体重を感じさせない所作でふわりと外廊下に上がり、竜胆はすたすたと奥へと歩き出す。屋敷のことは知り尽くしているような足取りだ。
「ちょ、ちょっと、お待ちください。勝手に入られては困ります」
慌てて、泉は後を追う。
「あと10日は主は戻りません。竜胆様っ……」
焦れば焦るほど叫ぶような声になってしまい、泉は更に焦る。自分によくわからない神様の相手が10日も務まるわけもない。この宮には高貴な人の世話ができる者など皆無なのだから。
ここの主は堅苦しいことを嫌い、普段は軽装で過ごし、世話の必要がほとんどない。しかし、全ての神がそうではないだろう。
目の前をどんどんいく神は服装一つとっても隙がない。
やっと追いついた時には、客間の一つにさっさと入って、竜胆は部屋の真ん中で立っていた。
「綺麗にしているじゃないか」
追いついて部屋に入ってきた泉に竜胆はにっこりと笑った。
翡翠に任せておくと使わない部屋がどんどん荒れてしまうので、部屋の管理は泉がしている。今は、翡翠がいなくて暇なので、ついつい掃除には熱が入る。屋敷は現在、いつになく綺麗だ。
「竜胆様。……さしでがましいかとは思いますが、まだ、会議中なのでは??」
主の翡翠が戻ってこないということは、出雲での行事は終わっていないはずだ。それなのに、この神様はいったい何故、ここにいるのだろう。
「確かにそれも失礼だ。まあ、いい。ところで……」
流し眼で見つめられて、泉は部屋に座布団もなにも用意していないことに気付いた。慌てて踵を返すとそれらを取りに走る。人型に湯を沸かすように頼んで、転がるように廊下を走った。
翡翠様……一体、どうしたら……。
お客を迎える用意に奔走しながら、泉は大きく溜息をついた。
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