スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←神無月(1) →神無月(3)
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ

もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png はじめに
もくじ  3kaku_s_L.png リンク集
もくじ  3kaku_s_L.png Novel lists
もくじ  3kaku_s_L.png 奇跡の刻
もくじ  3kaku_s_L.png 平行線の恋
もくじ  3kaku_s_L.png 煉獄の恋
総もくじ  3kaku_s_L.png 天空国の守護者
総もくじ  3kaku_s_L.png 巡る季節と恋の順番
もくじ  3kaku_s_L.png 雑記
総もくじ  3kaku_s_L.png 山神の花嫁_昔話
もくじ  3kaku_s_L.png 告白の向こうへ
もくじ  3kaku_s_L.png 空の月を恋う
総もくじ  3kaku_s_L.png おまけ番外編ショート
もくじ  3kaku_s_L.png 遠回りの片恋
もくじ  3kaku_s_L.png 腕の中の迷い猫
総もくじ  3kaku_s_L.png 蒼い闇の化身
  • 【神無月(1)】へ
  • 【神無月(3)】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit

「山神の花嫁_昔話」
神無月

神無月(2)

 ←神無月(1) →神無月(3)
本格的に泉(せん)は困っていた。
目の前の貴人は床の間を背に優雅にお茶を口にしている。何をしていてもやけに様になる相手から泉は視線が外せず、その長くて細い指が茶碗を包むのを見ていた。
頭の中は疑問符で一杯で、何から考えていいかもわからない。
本来ならこんな指し向かいに座っていてはいけないのだ。
相手は自分より上位で、並び立つのも不遜だと思い、入り口の側にそっと控えたら、そんなところにいるなと竜胆に咎められた。
指し示されたのが向いの席で、どうしていいかもわからずに泉はそこに大人しく座った。
「そんなに見つめられると穴が開きそうだな」
面白そうに笑われて、泉ははっと我に返った。
「い、いえ。そういうわけでは」
あわてて、視線を反らし、首を横にふる。
「咎めているわけではないよ。泉はおもしろいな」
ふふふと笑われて、泉は身の置き所がない。俯いて、泉は膝の上で手をぐっと握った。
「私のことなんてほっといてもいいんだよ」
何を言うんだと泉は思う。
招かざる客だって、一人でほっとくわけにはいかない。そんなことはさせられない。
自分がきちんとしていないと後で翡翠様が恥をかく。
「いつも勝手にやっているんだから……」
竜胆の言葉につと泉は興味を引かれた。
「よく、いらっしゃるんですか?」
それにしては、7年ここにいるが会ったことがない。でも、そういえば、屋敷の中を行く足取りに迷いはなかった。
「そうだね、気が向けばふらりと。緑のが来ることもあるな。ここのところはご無沙汰だったけどね」
また、ふふふと笑われる。
彼らにとっての7年は“ここのところ”で片づけられる期間だ。
泉にはまだ、人界の感覚が強すぎて、7年という時間が短いと思えないのだが、彼らにしてみれば、瞬きをする間くらいにしか思っていないかもしれない。
「聞いたことない?私のこと」
泉は首を横に振った。翡翠はいろいろ話をしてくれるが、神様のことはあまり教えてくれない。話題は大抵山のことや、村のこと、その年の木々や山の実りや昔の話が多い。
泉は翡翠が他の神の話をするのをほとんど聞いたことがない。
「そう。だからかな。何度も君に会いたいって言っても聞きとどけてくれなくてね。緑の主がご執心の若者がいるっていうのは有名なんだけど」
「それって、何か問題が……」
泉の声が震えた。
翡翠と自分は何か神の国の掟か何かに触れているんじゃないだろうか。
常に泉の胸にあった懸念が頭をもたげた。
翡翠は笑って取り合ってくれないが、ここで暮らす間にも実は神の国には細々、決まりがあって、それを侵すと大変なことになるということが泉にもわかりつつあったからだ。
「なんで?」
「私は人間で……」
小声で告げるとそれでと視線で先を促された。
「それに……男です」
やっとのことで絞り出した言葉に竜胆は、一瞬まじまじと泉をみつめ、そしてはじかれるように笑った。
笑いが止まらないらしく、そのまま脇息に寄りかかって、眉を寄せて笑っている。
いきなり笑われて、それも涙まで浮かべて笑われて泉は憮然とした。
「ご、ごめん……そんな顔で睨まないで……」
謝りながら竜胆はまだ笑っている。
泉はいきなりばかばかしくなった。
自分が悩んでいたことを告げたのに、目の前の男は涙を浮かべて笑っている。
いくら神様でもあまりにも失礼だ。
泉は立ち上がるべく腰を浮かせた。
「ま、待って。ほんとに悪かった」
やっと笑いを収めた竜胆は柔らかい光を浮かべた瞳で泉を見る。
「緑のは泉に何て告げたの?」
「翡翠様も笑って取り合って下さいません」
失礼だとは思ったが、怒りがおさまらなくて、泉はそっぽをむいたまま答えた。
「だろうね」
優しげな声が聞こえた。
「泉、神隠しって知ってる?」
お茶で口をうるおしてから、竜胆は訊いた。
山で育っている泉でも聞いたことがあった。時折、人が消えていなくなることだ。ある日、忽然と姿を消して、どこを探しても見つからない。
泉は頷く。
「あれは言葉通りさ。私たちは気に入った人間をこちらに引きこむ。私の屋敷にも何人かいるよ。言っとくけど攫ってないから。本人の同意がなければ、こちらには来られない」
泉は自身のことを思い出す。
そういえば、翡翠様も「俺の世界に来るか?」と泉に尋ねた。
「契約ですか?」
「そう」
よくできましたとばかりに微笑まれて、ひどく子供扱いされていることに泉は眉をしかめた。
「だから、人間がこちらの世界にいることはなんら問題はない。それに、契約を交わした時点で、君たちは厳密には人間ではないし」
「どういう意味です?」
「緑のは君に何も話してないんだね。あいつらしい」
めんどくさがりだからなとの竜胆の呟きに泉は溜息をつきたくなった。
確かに、翡翠様はめんどくさがりで大雑把だ。だけど、こんな大事なことをめんどくさいからって言わないものだろうか。
ちょっと考えて、泉は肩を落とした。
……翡翠様ならあり得る。
泉は溜息をつきたくなった。
翡翠は泉がどんなことに不安になるかがわからない。
翡翠がいてくれればそんな不安もどうでもいい気になるが、長い不在の時にはどうやったって心が弱くなるものだ。
ここの世界のことを自分のことをもっとちゃんと知っていれば、不安も少ないのではないかと泉は思う。
「言葉通りだよ、泉。ここに来てから、年をとらないだろう?病気もしない。すでに人間という定義からは外れている。神にはならないけどね」
ああ、そうなのかと泉は思った。
確かにそうだ。もう、自分はかぞえで28近いはずなのに、肉体の衰えは一向に感じない。
「それからなんだっけ、ああ、そうそう。君が男だって話しだった」
にっと竜胆は笑った。
泉はむっとする。
「それは個人的嗜好の問題だね。こちらも掟には触れない。というわけで、君の心配は杞憂だ」
泉はほっと息を吐く。
「それに翡翠が誰にも会わせたくないのもよくわかる」
「え?」
竜胆の呟きが聞こえなくて泉は訊き返すが、竜胆はうっすらと微笑っただけだった。
関連記事


にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ

総もくじ 3kaku_s_L.png 天空国の守護者
総もくじ 3kaku_s_L.png 巡る季節と恋の順番
総もくじ 3kaku_s_L.png 山神の花嫁_昔話
総もくじ 3kaku_s_L.png おまけ番外編ショート
総もくじ 3kaku_s_L.png 蒼い闇の化身
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png はじめに
もくじ  3kaku_s_L.png リンク集
もくじ  3kaku_s_L.png Novel lists
もくじ  3kaku_s_L.png 奇跡の刻
もくじ  3kaku_s_L.png 平行線の恋
もくじ  3kaku_s_L.png 煉獄の恋
総もくじ  3kaku_s_L.png 天空国の守護者
総もくじ  3kaku_s_L.png 巡る季節と恋の順番
もくじ  3kaku_s_L.png 雑記
総もくじ  3kaku_s_L.png 山神の花嫁_昔話
もくじ  3kaku_s_L.png 告白の向こうへ
もくじ  3kaku_s_L.png 空の月を恋う
総もくじ  3kaku_s_L.png おまけ番外編ショート
もくじ  3kaku_s_L.png 遠回りの片恋
もくじ  3kaku_s_L.png 腕の中の迷い猫
総もくじ  3kaku_s_L.png 蒼い闇の化身
  • 【神無月(1)】へ
  • 【神無月(3)】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【神無月(1)】へ
  • 【神無月(3)】へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。