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「山神の花嫁_昔話」
神無月

神無月(5)

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「いやあぁぁ……翡翠様っ!!」
泉が叫んだ。力の限りに。
泉の涼やかな声が、翡翠の名を紡ぎだす。
それはいつも泉が翡翠を呼ぶのとは違う音。耳ではなく心に刻まれる音色……。

ごおうぅっ

すさまじい風が部屋の中を渦巻いた。ぴしぴしと何かが割れる音が続く。
泉の上の竜胆は泉をかばうように身を低く伏せた。
泉も瞳をあけていられない。風に泉の黒髪が散る。
「泉っ!」
風が収まると同時に、今、一番聞きたかった男の声がした。
腕が抜けるほど強く引かれ、痛いと思った瞬間には力強く、熱い腕に抱かれていた。
「大丈夫か?」
心配気な声に泉はゆっくりと瞳を開いた。その目に映ったのは、琥珀色の瞳……。
「……翡翠……さま」
ここにいるはずのない男に抱かれて、泉は瞳を瞬いた。
幻だろうか。
あまりに想いが強すぎて、夢を見ているのだろうか。
だが、この肌に伝わる熱さが夢だとは思えない。
「大丈夫か?」
同じ問いを繰り返される。
泉は身を起こすと翡翠にがばっと抱きついた。
あぁ……。夢じゃない。
翡翠様だ。
帰ってきてくれたんだ。
泉は瞳から溢れる涙が止められなかった。
その背を翡翠がゆっくりと撫でる。
「泉。泣くな。もう大丈夫だから」
ゆっくり、ゆっくり、背を撫でながら、翡翠が低く甘い声で囁く。
泉は翡翠の首筋に顔を埋めながら泣き続ける。
嬉しくて。
「で、青の主。どういうことか、説明してもらおうか?」
泣き続ける泉を抱き締めながら、地から湧き出るような声で翡翠は、ゆっくり身を起こす竜胆に告げた。
「緑の、久しぶりだな」
頬に掛かった髪が邪魔だったのか、長い黒髪を手のひらでかきあげて、どかりと床に腰を下ろすと竜胆は翡翠に向かって笑った。
「挨拶している場合か。この惨状の説明を求めているんだ、俺は」
部屋は竜巻が通った後のようにめちゃくちゃだった。襖も障子も外れて吹っ飛んでおり、桟がいくつか折れている。
床の間の掛け軸も花瓶もどこへ行ったか見当たらない。
唯一、無事だったのは畳と何故か竜胆が食していた膳だけだった。
「泉が緑のを呼び付けた結果」
すごかったね。とのんびり答える男に、翡翠はぎりぎりと奥歯を噛みしめ唸り声を上げる。
「空間裂けたし、かなり強引に引き寄せたみたいだからさ。まさか、泉がお前の真名を唱えられるとは思ってなかった」
驚いたと付け加える竜胆に翡翠は拳を握りしめた。
「旧知だから、一応、聞いてやるんだが。そうなった原因はなんだ」
そんなこと訊かなくてもわかっていた。泉の着物はすでに着ているとは言い難いし、いつもきちんとしている竜胆の髪はすでに解かれて腰まで流れている。
「よく言うよ。泉を抱きあげるとき、俺に蹴りいれたくせに」
それでも相手は飄々としている。
悪いことをした気など全くないに違いない。
殴ってやろうと、抱きついている泉を離そうとする。
泉は翡翠の首に絡めた腕の力を込めて、離れない。
「泉」
「ダメです」
すでに泉は泣いていなかった。
翡翠の身体から湧きあがるような怒りが泉の涙を止めていた。いまにも竜胆に飛びかかりそうな翡翠を身体で押さえる。
「あいつに何をされた」
翡翠の声は今まで聞いたことがないほどの怒りに満ちている。
「一体、何があった」
泉は首を横に振る。
「泉」
ビクリと泉は身体を震わせた。
言えるわけがない。翡翠様が他の人を抱こうとしているのを見ましたとも、竜胆とそういう風になりかけましたとも。
でも、翡翠は怒っている。いままでに見たこともないほど。
どうしようと泉は思う。
何を話しても、翡翠に嫌われてしまう気がした。
「……竜胆」
腹の底から絞り出したような声だ。翡翠は竜胆をまっすぐに見つめる。
「わかったよ。わかりました。ちゃんと説明する」
さすがに翡翠が本気だというのがわかったらしい竜胆は、片手を上げた。
「あまりに泉が寂しそうだから、お前の様子を見せてやろうと思ったんだ」
上げた片手を下ろしながら、手のひらが上になるようにする。
転がったはずの水晶が空中をふわふわと漂って、竜胆の手のひらにすとんと落ちる。
「そいつか。水鏡の珠……」
「そしたら、お前が白の君といちゃいちゃしているところで……」
竜胆の言葉に泉の身体が震えた。
翡翠は視線を泉へと向ける。泉は瞳を合わすまいと、更に身体を翡翠に寄せて、抱きつく腕に力を込めた。
「いちゃいちゃ……どうしてそういう話になるんだ。それは真実しか、映さないだろうが」
呆れた口調で呟くと翡翠は開いている手で髪をかきあげた。
勝手に話を作るなと言わんばかりの口調だ。
「……翡翠様。あの方と……」
震える声しか出なかった。
珠は真実しか映さない。
真実と言う言葉に泉はさらに傷つく。
「泉。何を言って……」
そこで言葉を切ると翡翠は竜胆を睨みつけた。射殺すような瞳だったが、竜胆はどこ吹く風だ。
「お前、映像しか見せなかったな」
翡翠の声に竜胆はにこりと笑った。
「ご明察」
どこまでも人を食ったような言葉に翡翠が大きく息を吸った。それを遮るように竜胆は言葉を継ぐ。
「必要ないと思ったんだよ。姿が見たいだけだって言ってたし。どうせ会話できないんだから、声聞くと余計寂しいだろう?」
「だからって、誤解を招いたら意味ないだろうがっっ!」
身体に響くような怒号だった。泉は驚いて顔を上げる。目の前に息せき切った翡翠の顔が見えた。
「……誤解?」
泉の言葉に翡翠がきつい瞳で泉を見つめた。
「そう、誤解。お前の勘違い。それはいまから証明してやる」
怖い顔で泉を見つめて、翡翠は泉から身体を離した。そっと泉を床に下ろす。
「だが、その前に……」
つかつかと竜胆の前に足を進める翡翠に、初めて竜胆が慌てたように立ち上がった。
「ちょ、ちょっと待て、翡翠……」
避ける間もなかった。
翡翠の拳が、竜胆の腹をえぐっていた。竜胆の身体が二つに折れて、床から持ち上がる。ぐぅっとくぐもった唸り声が竜胆の口から洩れる。
「顔は殴るな、だろう?」
「よく、わかっていらっしゃる……」
苦しそうな声で呟いて、竜胆がその場に崩れ落ちた。腹を両手で押さえている。息が荒く、辛そうだ。
「竜胆様」
あまりのことに呆然としていた泉は我に返ると、竜胆のもとに走り寄る。その腕を翡翠が掴んで止めた。
「翡翠様……」
見上げた泉をきつい瞳で翡翠は見つめる。泉が息を飲んだ。
こんなに怒っている翡翠は初めて見る。いつも優しくて、達観しているかのような方なのに。
大きく瞳を見開いて、泉は翡翠を見上げた。ついと翡翠は視線を逸らした。何かを探すように目線を動かす。
「ほっとけ。誤解をいいことに、お前に迫った報いだ」
殴った衝撃で竜胆の手の上から落ちた珠を泉を掴んでいるのとは反対の手で翡翠は拾いあげる。
それを泉の目の前にかざした。
「よく見ていろ」
翡翠はそれにふっと息をふきかける。
何も映していなかった透明な球体が青く染まり、映像が浮かびあがる。
何度見ても不思議だと泉は思う。
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