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「天空国の守護者」
地上編

旅路

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ぱちぱちと火の爆ぜる音が夜の静寂(しじま)を縫っていた。今宵は月の明るい晩で、さびれた旧道が灰色にくすんだ平原を横切っているのがぼんやりとわかる。
膝を抱えながらキリスエールは、オレンジ色の火を見つめていた。風に炎が揺れ、ぱちりと音が立ち、ふわりと灰が舞い上がる。
旅を初めて、15日ほど経過していた。細い月がすっかり丸くなるくらいの月日、キリスエールの故郷から旅立った3人は、パラドース国を出て、隣国トドス国内を北へ向かって進んでいた。人目を避けるように旧街道を必要なものを手に入れる時だけ村に立ち寄りながら、トドス首都を目指す。大きな街なら人にまぎれて暮らせるからと。
野宿もすっかり慣れてしまったとキリスエールは火を見つめて思う。
「どうかした?」
肩を抱き寄せられて、キリスエールは物思いから覚めた。顔をあげると赤と緑の瞳が自分を見つめていた。
「いえ……」
まさか先行きが不安だとはキリスエールは口にできない。レイラースもタミルも目立ちすぎる。街ではなく、それこそ人里離れた山の中にでも暮らしたほうが安心できるかもしれない。
「大丈夫だよ」
レイラースはキリスエールの額に唇を落として囁いた。肩に回した手を滑らせて、キリスエールの栗色の髪を撫でる。指を滑らせて、首の後ろで括っていた髪紐をさらりと落とされた。
「ずいぶん伸びたね」
髪の先まで指で何度も梳かれる。その滑らかな手触りを楽しむレイラースからキリスエールは目をそらす。髪に口づけられて、頬が赤くなった。
くすりとレイラースが笑った。
「タミル様は……?」
焦ったように辺りを見渡すと、たき火を囲んでいたはずのタミルの姿が見えない。
「ああ。ちょっとね」
答えをにごされて、それより、と伸ばされた手がキリスエールの顎を掬った。
「二人きりだね」
瞳を合わせると口端をあげてレイラースは微笑んだ。ぎくりとキリスエールは背筋を震わせた。レイラースの意味ありげな表情に何を示唆されているのか気付いて、キリスエールは瞳を揺らす。シスルのもとから助け出されて以来、ずっと3人で旅をしてきた。そのせいもあって、さすがのレイラースも再会してからいままでキス以上のことは仕掛けてこなかった。
「で、でも……ここ、外……」
身体を遠ざけようとするとキリスエールの髪を撫でていたレイラースの手が背に回って、ぐっと抱き寄せられた。
「忘れた?前に庭で……」
耳たぶを甘噛みされて、吐息とともにささやかれ、キリスエールはかっと体温をあげた。セインの館にいたときに確かに散歩に行った先の茂みでレイラースに抱かれたことを思い出す。
甘い睦言も熱い吐息も浮かされたような感覚までが甦って、キリスエールは身を捩った。
「好きだよ」
レイラースの囁きに、キリスエールは動きを止める。
「レイラース様……」
先ほどのからかっているのとは明らかに異なる声に、キリスエールには名を呟くしかできない。
耳を首筋を口づけで埋めて、レイラースはキリスエールを抱きしめる。
「んっ……」
肌がざわめいて、すっかり慣れ親しんでしまった感覚が背を駆け上がり、キリスエールは身を固くした。
そのさまがおかしかったのかレイラースがくすりと笑う。
「大丈夫。何もしないよ。ここでは、キリスエールが土で汚れる」
そういいながらもレイラースは抱きしめる腕の力を緩めるどころか強くした。キリスエールの首筋に鼻先を押し付ける。
「本心を言えば、ずっとおまえに触れていないから、おかしくなるくらい欲しい。僕でキリスエールのすべてを埋めたい」
キリスエールは頷いてしまいそうになる。だが、レイラースの欲しいのは故郷を捨てさせてしまったというキリスエールの抱える負い目からの言葉ではなく、真にキリスエールがレイラースを好きだという感情だ。
答えられずに抱きしめられるまま、キリスエールはレイラースの名を呼んだ。しばらく無言でレイラースはキリスエールをそのまま抱きしめて動かなかった。平原を渡る風が耳元を掠め、平野を埋める草がざわりと音を立てる。たき火の焔が風に流れて、二人の影が地面で揺らいだ。ぱちっと枝が爆ぜる。レイラースが大きく息を吐いた。
「もう、眠ったほうがいい。明日もまたかなり移動するから」
キリスエールを抱きしめる腕を解かずに、レイラースが告げる。
「……はい」
呪縛が解けたようにかすれた声で返事をすると、またレイラースは小さく笑った。悪戯を思いついたような楽しげな声だった。
「あと二、三日の辛抱だ。街についたら、身体が沈むようなベッドの上で可愛がってあげる」
明らかにからかいを含んだ声音に、キリスエールは顔をあげた。
「レイラース様」
抗議の声を上げるキリスエールに楽しげに笑い返しながら、レイラースはキリスエールを抱えなおした。キリスエールの頭がレイラースの胸に寄り掛かるようにすると地面に置いていた毛布をキリスエールを覆うように掛ける。
「お休み。キリスエール」
甘く耳に心地の良い声で、それでもすべてを打ち切るような挨拶の言葉にキリスエールは小さくため息をついた。
身体から力を抜いて、レイラースに凭れ掛かるとキリスエールは瞳を閉じた。言葉の通りレイラースは何もしないだろう。しかし、このままキリスエールを抱きしめて眠るのを譲る気はなさそうだ。力強く、早さを増しているレイラースの鼓動を聞きながら、キリスエールは胸の奥に苦しさを覚えた。
心の中でそっとレイラースに謝罪する。まだ、そのことは考えたくなかった。自分のために故郷すら捨ててしまった彼らに報いなければいけない。選んでも選ばなくても彼らを傷つけることがわかっているから、今は、何も見えないふりをしてこのまま先の見えない不安な旅を続けたかった。
ただの主従だったらよかったのにとキリスエールは思う。恋だとか愛だとかじゃなくて、敬愛と献身で仕える主人なら、きっとレイラースにもタミルにもセインにもつかることができる。誰も選ばなくてすむ。
ひどく我儘で、残酷な願いだとわかっていたが、キリスエールは思わずにはいられない。このままずっと彼らとともにいられたら4人でひっそりと暮らせたら、レイラースに気付かれないようキリスエールはそっとため息をついた。
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