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「天空国の守護者」
地上編

旅路(2)

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旧街道からかなり外れた森の入口。間隔をあけて立ち並ぶ木々の一つに腕を組んで、幹に背を預けて、タミルは立っていた。
月明かりが木々の間から下生えの草を淡く照らしている。
「説明を求めてもいいですよね、隊長」
タミルと対峙する形で、立っている男にタミルはちらりと視線を投げた。茶色の長い髪を一つにくくって後ろに流している。黒軍副隊長ルシードだ。
「その地位は捨てた」
きっぱりと告げられた言葉に苦しげに瞳を眇めたルシードは大きく息を吸った。
「あなたの暴走をずいぶん止めてきたつもりでした。しかし、今回のは最悪だ。どうしてです。なぜ、あなたが黒軍を捨てないといけないんですか」
吐き出される息とともにルシードは、低く唸るような声で訊く。だが、タミルは答えなかった。何を言っても言い訳にしかとられないだろう。自分の決断が彼らにとって意味を成すとはとても思えない。
「国主のもとから何かを攫ったと聞きました。攫って逃げたと。それは国を捨てるほどの、我々を裏切るほどのものなんですか」
ルシードの握られたこぶしがふるふると小刻みに震えていた。怒りを押し殺しているのだとわかる。
「……」
「黙ってないでなんとか言ったらどうです。人間ですよね。カルアが殺めそこなった人間。トレジャの住人でしょう?守護者の慰み者ですよ。男娼とかわらない。誰にだって身体を開くのが彼らの仕事だ。騙されているんですよ。隊長」
ルシードの言葉にタミルは唇を引き結んだ。カルアも同じことを言った。あの時、ルシードはそれには同調しなかったにもかかわらず、考えていることは同じだ。
「国主が欲しいと言ったなら放っておけばよかったんです。ただでさえ、あなたが人間に入れあげていたことを気に食わないと思っていた兵士は多い。自分の立場を考えてください。あなたは、黒軍の隊長なんですよ。俺たちの……俺たちの英雄。あなたが守らなければいけないのは人間じゃない。違いますか?」
ルシードの声が大きくなる。それにかぶせるようにタミルは笑い出す。低く囁くような笑い声はそのうち、ルシードの声をかき消すようなものになる。身体を前に倒して、笑い続けた。
いつも彼はタミルを諭してきた。待つことが嫌いで、抑えが利かないタミルをうまく御してきたのはルシードだ。ルシードは正論を述べていると思っているだろう。だが、今回のは暴走でも暴挙でもない。国の守護者の誰ひとりとして自分がなぜここにいるのかを理解するものがいないことがおかしかった。
「タミル隊長……」
怪訝そうなルシードの声に、タミルは笑いを止めた。前に折った身体はそのままに顔だけ挙げて、ルシードを睨みあげる。茶色の瞳とタミルのきつい視線が絡み合った。ルシードが口をつぐむ。
「……剣を捧げた」
「……は……?」
「お前の言うその慰み者の人間に俺は剣を捧げている。俺が忠誠を誓ったのは国主でも国でもない」
ルシードの瞳が驚愕に見開かれ、あまりの衝撃に顔色をなくす。
「嘘……ですよね」
「嘘なんか言わない。それはお前もよく知っているだろう?」
「裏切ったんですか?俺たちを?国を?」
ルシードの言葉にゆっくり身体を起こして、タミルは腰に差した剣の柄を握るとすらりと刃を抜いた。
「……た……隊長?」
「裏切ってない。本当に必要なものを選んだだけだ」
かちりと剣を構える。
「惑わされているんです。あなたは優しいから、かわいそうに思っただけなんですよ、その人間の贄を。同情を愛情と履き違えているだけだ」
じりっと足を一歩前に出して、タミルは持っていた剣の切っ先をルシードの喉元にピタリと突きつけた。
「ルシード。取り消してもらおうか。さっきの言葉。主を侮辱された俺にはお前を切って捨てる正当な権利がある」
タミルは低く脅すような声で告げた。ルシードが瞠目した。
キリスエールを辱めさせはしない。そんなことは許さない。
「取り消せ、ルシード。俺の主は人間だが、それ以上でも以下でもない」
「正気ですか」
顔を上向けて、ルシードはそれでもタミルから目を離さずに問う。喉元に突き付けられた切っ先の恐怖からか、それともタミルを失うことを恐れてか、ルシードの声が掠れていた。
「どう思う?狂ったとでも思いたいなら、そうすればいい。どうせ、国からは抹殺命令が出ているだろう。お前は俺を殺しに来たんじゃないのか?」
皮一枚、薄く剣の先が皮膚に食い込んで、タミルの本気を見て取ったのだろうルシードは一歩足を後ろに下げた。両手を上にあげ、じりじりと後ろに下がっていく。
「違います。国に帰るように説得に来ただけだ」
「説得?」
くだらないことを聞いたとタミルは吐き捨てるように呟いた。
「俺は何も後悔していないし、ひるがえす意見も持っていない。主人を守って共にいる。だから、何を言われても無駄だ、ルシード」
狙いを相手に定めたまま、タミルは静かに告げる。
もう、心は決まっている。キリスエールの幸せだけが望みだ。それを守りたい。誰にも彼を傷つけさせはしない。
「お願いです。戻ってください。あなたがいない今、隊長代理は俺だ。俺にあなたを捕縛する命令を黒軍に出させるような真似させないでください」
タミルは首を横に振った。
「悪いな、ルシード。もう決めたんだ」
ルシードは唇を噛んだ。悔しそうにタミルを睨みつける。
「やめてください。悪いなんて思っていないでしょう。あなたの謝罪は聞き飽きました。ここってところの決断も行動もあなたは、一度も俺の言うことは聞いてくれたことがなかった」
そんなことはないと言いかけて、タミルは口をつぐんだ。それはある意味真実だったから。
「決心は変わらないんですね。全軍を敵に回しても戦うつもりなんですね」
「ああ」
タミルの答えにルシードから殺気が立ち上り、タミルはとっさに剣を構える。
ルシードは両手を顔の横にあげた。後ろへさらに下がる。
「今夜は戦うつもりはありません。言ったでしょう。説得に来たんです。だけど、次に相見えるときは……」
苦しそうに顔をゆがめて、ルシードは続けた。
「追うものと追われるものです」
タミルはじりっと足を踏み出す。その瞬間、ルシードの姿はすっと掻き消えた。剣先に触れるものはもはやなく、一陣の風がその空間を渡った。
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