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「天空国の守護者」
地上編

旅路(3)

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近づく気配にレイラースは顔をあげた。
濃い闇のなか、さらに黒い闇の塊が近づいてくる。たき火の光が届く範囲に影が入ると眉間にしわを寄せたタミルが見えた。苛立たしいような気配を纏って、それでもゆっくりと歩いてくる。レイラースはタミルの顔を見上げたまま視線で「どうだった?」と聞いてやるとタミルはため息を一つこぼして、首を横に振って、どさっと地面に座った。
「キリスエールは?」
「よく眠っている。さすがに疲れがたまっているのだろう」
腕に抱いたキリスエールをいとおしげに見つめて、レイラースは呟く。その口調に甘さがにじみ出ていたのか、たき火を挟んで向こうに座したタミルが苦笑した。
「さすがにそろそろ野宿も限界だな」
レイラースに抱かれながら眠るキリスエールの顔をタミルは見つめ、呟く。
「ああ」
キリスエールの白い頬にレイラースは指の背をあて、そっと撫でた。疲れが見えるその頬は以前より少し線がシャープになった。目的地もない旅だから、ゆっくりとここまで来たが、そろそろキリスエールを柔らかな布団の上で寝かせてやりたいとレイラースは思う。
「国元からの命令は……」
ぽつりとつぶやかれた言葉にレイラースは視線をあげた。ぱちぱちと火が爆ぜる音を聞きながら、タミルは炎を見つめていた。
「抹殺だろう?」
レイラースが、明日の天気を語るように告げてやるとタミルが顔をあげた。そして、何かを思い出すように、にやりと笑う。
「なんだよ」
「いや。同じことを考えていたと思って」
裏切りものには死を。
それが、掟だ。いままでもそうだったし、これからもそれは変わらない。
「違うのか?」
瞬時に、そうだという答えが返らないことに、レイラースは怪訝そうに尋ねるとタミルが面白そうに微笑んだ。
「捕縛だそうだ。『生きてとらえて国元に連れ戻せ』だと」
その言葉にレイラースはひどく驚いた。ありえない言葉に一瞬、思考が停止する。だが、言葉の意味が浸透するとレイラースは、タミルと同じように面白そうな笑みを口元に上らせた。
「言ってくれるな」
「ああ」
タミルの表情も同じことを語っている。
守護者、それも隊長クラスを2名、生きて連れ戻せとは、なめた命令をしてくれる。
「侮られたものだ」
レイラースの言葉に合わせるように、炎がふらりとその身をくねらせた。
「黄軍の副隊長も接触してきたんじゃないのか?」
3日ほど前にレイラースがふっと姿を消した時のことを言っているらしい。その時には何も聞かれなかったから、タミルは気にしていないと思っていた。
「してきた。理由を問いただしに。だが、それだけだ。僕はキリスエールから離れる気も国に帰る気もないと答えたらあっさり帰っていったよ」
悔しそうに唇をかみしめて、レイラースを睨んでいた副隊長の顔を脳裏に思い浮かべながらも、レイラースは嘯(うそぶ)いた。誰が何を言ってきてもしてきても、もはや意を変える気はレイラースにはない。そんな決意なら、こんな大それたことはしなかっただろう。誰かのために地位も故郷もなげうつ真似は、並大抵の決意では実行できない。
「そうか」
レイラースの真意をわかったのかわからなかったのか、タミルは低い声でそれだけを呟く。
二人の間に沈黙が落ちた。たき火の音だけが、空を震わせる。
いままで何もなかったのが不思議だったのだ。
逃げても追手は現れない、誰にも見とがめられない。気にしなければならないのは人間に守護者だとばれることだったが、それもこうして旧道を行けば、ほとんど人間には会わないために、危険はなかった。
「やはり街に入るべきだな」
ぽつんとタミルが告げる。レイラースは腕に抱えたキリスエールを見て、頷く。
「人間が多くいる街なら、守護者といえどそう簡単には接触できまい。まさか、街の中で争いごとを起こすわけもないだろうからな」
「気配もまぎれやすくなるだろうしね」
眠るキリスエールから目を離さず告げた言葉にタミルが驚くのが気配で分かった。
「人間の気配を纏う気か。おまえが?」
「どうってことないだろう。力も大して使わない。それがキリスエールの安全につながるならなんでもする」
それはレイラースの本心だ。自分の自尊心(プライド)などこの際どうだってよかった。
タミルは何か言いたそうな顔をして、しかし、それについては何も言わずに首を横に振った。
「あと2日だ。トドスの第2の都市、バゼルまで。本当だったら、首都まで行きたかったが、しばらくはそれで、やつらの目をくらませられるだろう」
タミルが続けた言葉にレイラースは頷いた。
「セインも僕らを見失わないといいけど」
ぽつんと呟いたレイラースにタミルが眉を顰めた。眉間にしわが寄っている。
「気配はあるのか?」
「あまりはっきりは視えない。生きていることだけは確かだけど」
レイラースの言葉にさらに不機嫌な顔をしたタミルを見て、少し笑う。タミルはタミルなりにセインを気にかけていたんだろう。性格はまったく違う3人だが、幼年時代からやけに気が合ったとレイラースは思う。キリスエールのことがあっても、彼らを憎まずにいられるのもそのせいだ。お互いがお互い、キリスエールを大事に思っていることがわかるから、怒りは覚えても憎いとは思わない。
キリスエール救出時のセインの覚悟のほどは見ていてこちらの胸が痛むようだった。国主と差し違えるかもしれないという危惧は危惧で終わったようだが、結局、セインはレイラースたちと合流せずに今も所在がはっきりしない。
いったい何があったかもわからないが、セインがキリスエールを見捨てる気がないことだけは、レイラースにもタミルにもわかっていた。そうでなければ、自分たちの計画に加担したりはしなかっただろう。国主を執務室に足止めしたのはたぶんセインで、そのおかげでキリスエールを脱出させる時間を稼げたのは事実だ。
「まあ、キリスエールに会いたくなったら、合流するだろう」
瞳に心配そうな光を揺らめかせて、タミルがぽつんと呟く。
「そうだね」
レイラースもそれだけを口にした。結局のところ、何があってもセインを信じている自分たちを感じながら、レイラースはこの奇妙な成り行きに口の端をかすかにあげた。
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