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「山神の花嫁_昔話」
冬の月影

冬の月影(1)

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小春日和の師走。
やわらかく暖かい日差しが空から注いで、気持ちがいい。空は抜けるように青く、高い。
遠くにうろこ雲が見えた。
外廊下に立ちながら、泉は空を見上げ、ほおっと息をつく。
あったかいな。
このまま廊下で日向ぼっこをしたいような気分になる。午前中に済ませなければいけないことはすでに終わっていたので、そうすることに何ら問題はない。
そうしようかと泉が外廊下に座ろうとすると奥から泉を呼ぶ声が聞こえた。
「泉」
よく通る低音の甘い声。泉ははじかれた様に顔を上げ、そのまま呼ばれる方へと足を向けた。
「お呼びですか、翡翠様」
「ああ。そっちにいたのか、泉」
泉を認めると翡翠はにっと笑った。
琥珀色の瞳が柔らかい光をはらんで自分を見つめるのに、泉はぼうっと見惚れた。いつ見ても綺麗な双眸(め)。
「あれ?お出かけなんですか?」
つい瞳に魅入られて気付くのが遅れたが、いつもは下ろしている緑の髪は、綺麗に結い上げられていた。いつもの着物ではなく、常服の狩衣姿。
正装ではないのに、それでも、ほれぼれするほどの男ぶりだ。
「そうだ。お前も仕度しろ」
「え?」
泉は何を言われたかわからず、まじまじと翡翠を見た。
「一緒に出かけるって言ったんだが……」
驚いたように目を瞠った泉に翡翠は困ったように笑った。
人界じゃないよな。それなら着飾る必要ないし。
ここへ来て、7年、泉はほとんど外へ出たことがない。
ぐるぐると回る泉の思考が見えるのか、さらに翡翠が笑みを深めた。
「でも、どこへ?」
「山の向こうの湖」
もうこれ以上、驚くこともないと思ったのに、泉は更に瞳を見開いた。
「竜神の祠……竜胆様の……」
「嫌か?」
泉は首を横に振った。だけど、なぜ、いまさら?
泉の中が疑問で一杯になる。
竜胆が主のいない間にこの館にやってきて、過ごして行ったのは、僅か10日ほど前だ。
翡翠が女神と戯れていると勘違いして、心弱くなった泉を抱こうとして、翡翠の怒りに触れたのは記憶に新しい。
結局、未遂だったが、肌を晒した上に、竜胆に触られたのは事実だ。
それを思い出すと怖くて、翡翠に顔向けできなくていたたまれなくなる。
「泉」
いつの間にか唇を噛みしめて俯いていたらしい。名前を呼ばれて顔を上げると翡翠の腕に抱きこまれていた。
「大丈夫か?嫌なら、留守番してていいぞ」
抱き締められた腕の温かさに泉はほっとして、泉は首を横に振った。
「お供します」
「そうか。着替えは人型に手伝ってもらえ。きちんと着るならそっちの方がいいだろう」
そう言いながら、翡翠は身体を離して、泉の顔を覗き込んだ。
「俺は脱がすのは得意だが、着せるのはいまいちなんだ」
「翡翠様っ!」
耳まで真っ赤に染めて泉が叫ぶ。それにくっくっと笑って、翡翠は泉から離れた。


「きれいだ」
着替えて出てきた泉を見るなり、瞳を細めて翡翠が呟いた。頬に朱を刷いて泉は俯く。
泉も狩衣姿で、髪は全部を上げずに結ってある。
「お供なのに、この恰好は変です」
「いいんだ。お前は俺の花嫁なんだから」
大股で泉に近づくと腰をさらって、翡翠は泉の頬に唇を落とす。
神様と同列の衣装でいいんだろうかと泉は悩む。
「この衣装だとお前を抱きあげて行くわけにはいかないな。しかたない。あいつに頼むか」
「あいつって?」
泉の言葉には答えを返さず、翡翠は虚空に向かって泉のわからない言葉で何かを呟いた。
唸るような声が返る。
泉は息を飲んだ。
認識できたのは一対の金色の瞳。
「……オオカミ」
泉の呟き通り、目の前に降り立ったのは一頭の巨大な狼。
身体のサイズはそれこそ馬より大きいだろう。
獰猛な眼光鋭い二つの瞳が翡翠をひたと見つめていた。
ビクリと身を震わす泉を抱く腕に翡翠が力を込める。動くなと言う意味だと悟って泉はじっと息をひそめた。
「久しいな。緑の主」
狼の口から流暢な言葉が漏れ、泉はさらに身を小さくした。
「ああ。突然、呼び出して悪いな。ちょっと山向こうまで行きたいんだが、連れて行ってもらえるか?」
「珍しいな。一人でも行けるだろうに」
言葉を切って、いま気付いたかのように狼は翡翠の腕の中の泉に瞳を向けた。ぎろりと睨まれた気がして、泉は身を震わせる。
「人……いや気配が違うか」
「紹介しよう。俺の花嫁だ。泉という」
翡翠は泉から身体を離し、狼に見えるように前に押し出した。
「ふうん」
上から下まで、鋭い瞳で見つめられて、泉は生きた心地がしない。この狼が大きな口をあけたら泉など一口で飲み込まれてしまいそうだ。
それでも、怖がられていることを見透かされたくなくて、泉は瞳に力を込めて狼を見つめ返す。それに眼の前の狼は大きくて目つき鋭くて怖くないというと嘘になるが、その毛並みたるや王者の風格で美しい。
黙って見つめていた狼はしなやかな足取りで泉に近寄り、泉の首筋に鼻面を寄せた。
泉は動かない。
狼がしたいようにさせていた。身体の震えだけはどうにもならなかったが。
「いい香りがする」
狼は泉の首筋から頬までをべろりと舌で舐め上げた。生温かい感触に肌がざわりとざわめいた。
「銀王」
咎める声が背後から響き、腰を攫われて泉は翡翠に背後から抱き締められ、狼と距離が離れた。
目の前の狼がくつくつと笑う。
「亭主の目の前で人の女房に手を出すとはいい度胸だ」
「手なんて出していない。挨拶をしただけだ」
まだ、笑ったまま狼は舌で自分の口を舐めた。
「私は銀王。よろしくな、泉」
瞳の光を和らげて、銀王は挨拶をする。
視線を翡翠に向けると翡翠が頷いた。泉は身を翡翠から離す。
きちんと立って、つと礼を取る。
「はじめまして、銀王さま。泉と申します」
「いいな。緑の主。この男、俺にくれ」
その姿を目を細めつつ見つめ、銀王は翡翠に向かって言い放つ。
「誰がやるか。お前といい、青の主といい……油断も隙もあったもんじゃない」
呆れて疲れた声に泉は翡翠を見た。
「泉。銀王はお前が気に入ったようだ」
泉は困ったように翡翠と銀王を交互に見て、翡翠の横にすっと移動した。
「ありがとうございます。でも、私は翡翠様のものですから」
泉の答えに銀王は声を上げて笑った。
「これは恐れ入った。緑の主。いい嫁さんを見つけたようだな」
その言葉に泉の首筋が赤く染まる。横に立つ翡翠を見上げれば、優しい目と視線がぶつかった。
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