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「巡る季節と恋の順番」
春の花咲く頃に

(2)

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「すごかったね」
まだ、興奮冷めやらぬ様子で美玖は昼間の桜を思い出して言う。
桜を見てから、ターミナル駅まで戻ってきて、夕食を共にした。食事中も美玖は、さっき見た桜が気にいったようで、はしゃいでいた。
「ああ。初めて見に行ったが、見ごたえがあった。かなり歩いたが、疲れなかったか?」
「まさか。俺、若いんだよ」
くすくすと笑う美玖につられて、一條も笑う。
美玖の家までの道を歩きながら、美玖はやけに嬉しそうだった。食事中のワインで少し酔っているのかもしれない。
「桜に対する見方が変わったよ、俺」
「そうか、じゃあ、次は京都だな」
「え?」
美玖は立ち止まって、一條を見た。
「京都の桜はすごいぞ」
「一緒に?」
「嫌か?」
美玖は首を横に振った。
「だ、だけど……」
「そうだな。今年の桜はたぶん、もうほとんど終わっているから、来年だな」
その言葉に美玖はぱっと顔を上げた。
「来年……」
「ああ。行こうな。あっちは宿もいいところが多いし、食事もうまいぞ。せっかくだから、3泊はしたいな」
とまどった顔で見上げてくる美玖に一條は微笑った。来年も再来年もそれこそずっと、美玖と何かを共有するのは自分でありたい。
美玖も同じことを思ってくれる時がくるといいと思いながら、一條は美玖を見つめた。
「一條さん……」
美玖が名を呼び、一條は目でなんだと問う。
じっと美玖は一條を見上げてくる。その縋りつくような瞳に、両腕にかきいだいてしまいたい衝動を一條はぐっと押さえる。
美玖は続きの言葉を口にしない。
一條の視界に美玖の住む公団団地が入った。あと2分も歩けば、着いてしまうだろう距離だ。
そこまで送るつもりだったが、このままだと抱き寄せて、キスをして、送りオオカミになるのは目に見えていた。
一歩ずつだ。
自分に言い聞かせ、一條はぐっと拳を握った。
「今日はありがとう。楽しかったな。また、美玖の仕事があくときに、どこかへ行こう。少し遠出もいいかもしれない」
周りに人がいないことだけ、さっと確認し、一條は身をかがめると美玖の頬に掠めるような口づけを落とす。
「お休み、美玖」
そのまま身体の向きを変えて、駅に向かって歩き出し、背中を向けながら手を振った。怖くて振り向けなかった。まっすぐに美玖が自分を見ていたら、今まで我慢してきたすべてをかなぐり捨ててしまいそうだ。
「一條さんっ!」
怒鳴るように名を呼ばれる。一條は足を止めた。
ゆっくりと振り返ろうとすると背中に衝撃を感じた。
体当たりするように美玖が背に身をあて、背中から抱きついている。
「どうしてっ」
泣きそうな声で、美玖は一條を抱きしめる腕に力を込めた。
「美玖?」
振り返ろうとすると前に回した腕に力を入れて阻まれた。
「次は遠出するんだよね」
震える声で訊かれ、一條は混乱したまま頷く。
「来年は、京都で花見にいくんだよね」
それにも一條は頷く。
「俺と旅行するってことだよね」
美玖は何を訊きたいんだろう。何を言いたいんだろう。一條の身体を抱く美玖の腕が震えていた。
「ああ」
「じゃあ、どうして……?」
「美玖?」
「……帰らないで」
掠れた美玖の声に一條は身体を震わせた。
「帰っちゃだめだ」
額を一條の背にあてて、美玖が訴える。
「まだ……一緒にいたいんだ」
「美玖」
身じろぐと美玖の腕の力が緩んだ。振り返り、うつむく美玖をそっと抱きしめた。
微かに震えている身体を怖がらせないように優しく腕で囲む。
「駅前に、まだ開いているカフェがあったな」
囁くように告げると美玖の身体の震えが強くなり、一條の胸についた手が拳に握られた。
「もう……俺に飽きた?」
涙の滲む声で、美玖が訊く。どう答えていいかわからずに、腕の中の美玖を見下ろした。
「この間も、その前も」
ぐっとシャツごと拳を握りこみ、美玖はくぐもった声で言い募る。
「美玖?」
名を呼ぶと美玖が顔を上げて、一條を睨む。
「食事して、駅で別れて。メールもくるし、電話で話もするけど、だけど」
大きな瞳で一條を見上げる瞳に縋るような光が浮かんで揺れた。
勘弁してほしかった。どれだけ欲望を押さえていると思っているんだと訴えたかった。
美玖に身体だけだと思われたくない。だからこそ、ここまで我慢したのに、大人の態度で接しているのに、こんな瞳で見上げられたら、その理性が音を立てて切れそうだ。
美玖は一度目を閉じた。それから決心したように見開く。
「来て」
「美玖っ!」
腕をとられてずんずんと引きずられて、一條は面食らう。怒ったような美玖に結局、部屋まで連れてこられて、背中で扉が閉まる音を聞く。
「隼也さん」
甘く囁いて、美玖は腕を伸ばして、一條の首に抱きつくと唇を押し付けてきた。
柔らかく温かい唇の感触にやせ我慢も忍耐もすべてどこかに行ってしまう。
美玖の腰をぐっと抱き寄せて、一條は口づけを深くする。歯列を割って、舌を絡め、音を立てて吸った。
「んっ」
鼻に抜ける甘ったるい吐息を聞きながら、さらに舌を伸ばし、熱い美玖の口腔内を味わった。片手を美玖の髪に差し入れ、角度を変えながら、キスをする。
美玖の口の中は甘くて柔らかくて気持ちがいい。
「はぁっ」
息ができないのか、唇が離れると美玖が吐息を投げ、一條はまた、舌を伸ばす。口に唾液が溜まったのか、舌で口の中をかき回すとくちゅりと湿った音がした。
「んんっ」
次第に腰にかかる美玖の体重が増えて、キスに感じて立っていられなくなっていることに気付いた。
このままキスでぐずぐずにして、ベッドに運んでしまいたいと一條は願い、だが、それをしたらすべての努力が無駄になると理性をかき集める。
ゆっくり名残惜しげに唇を離すと飲み込めなかった唾液が美玖の口からつっと糸を引いた。
荒い息でぐったりと一條の胸にもたれかかる美玖をぐっと抱きしめる。
このまま攫って帰りたい。一條は目をぐっと閉じた。
「美玖」
名を呼ぶと美玖が頷く。一條は美玖の身体を抱き上げた。男とは思えないほど軽い身体を抱き上げて、一條は靴を放るように脱ぐとそのまま寝室へと美玖を運ぶ。
ベッドにそっと下ろして、のしかかるように口づけた。
素直に開いた唇から舌を差し入れ、喉の奥まで愛撫する。身体が体温をあげ、欲望の芯に火がともり、めちゃくちゃに美玖を抱いてしまいたい衝動が押し寄せてくる。
「美玖、愛してる」
「隼也さん」
キスの合間に囁くと美玖がベッドでしか口にしない名で呼びかえす。
それだけでも胸が満たされて、嬉しさに一條は美玖の頭を撫でた。
散々、それこそ美玖の唇が紅く色づくほどキスを重ねて、ぐっと強く抱きしめると一條は美玖から身体を離した。
「としや……さん?」
温もりが消えて怪訝そうな顔で、美玖が目を開く。ベッドに仰向けに寝ころがって、一條を見つめる美玖と瞳が合う。一條は眉間に力を込めた。
自分はどんな顔をしているだろうと一條は思った。たぶん情けない面だろう。欲望に押し流されてしまいそうな自分を必死に理性でつなぎとめている。
どうしてこんなに美玖がいいんだろう。好きだという気持ちがあふれて抑えられない。可愛くてきれいで、それでいてどことなく子供な美玖。
どんな顔を見ても好きだと言う感情以外湧いてこない。
「明日、仕事だろう?」
震えそうになる声を顎に力を入れて堪えると、平坦な声が出た。
「そうだけど……」
まだ、快楽に潤んだ瞳で一條を見上げ、美玖はうっとりとした夢見るような顔をしている。
「ゆっくり眠るといい」
体内を荒れ狂う欲しいという思いを制しながら、一條は美玖をみおろしながら、無理に微笑んだ。
「隼也さん……」
腕を宙にあげ、美玖が一條を呼ぶ。
止めてくれと思った。どうして美玖はこんな無防備に身をさらしているんだろう。見ていられなくて、これ以上は自分をとめられないと一條は踵を返す。
「一條さんっ!」
がばっと起き上がって、美玖が叫ぶ。一條は足を止めた。
「なんで、どうして。もう、俺はいらないの。一條さんが怒るようなこと、俺したかな?ベッドでキスしたのに、投げ出すほど俺が嫌い?」
「美玖?」
「俺、後腐れないよ。うるさいことも言わない。電話だって、メールだって、俺からはしない。一條さんがしたいようにしていいから、だから、俺を捨てないで!」
美玖の言葉に一條は振り返った。あんなに大事にしていた。美玖の嫌がることはしたくないと、愛人だなんて思わなくていいようにと心砕いて、我慢してきたことが美玖を不安にさせていた……?
美玖は確かに連絡を寄越さない。それは、まだ、恋人だって認められずに慣れないからだと思っていた。まさか、一條がうっとうしがらないように、自制していたなんて考えもしなかった。
「ばかだな」
つぶやいた言葉は美玖に言ったのか、自分に向けた言葉か。
背中越しにも美玖がおびえたのがわかった。
ゆっくりと振り返り、一條は美玖を見下ろした。まっすぐに美玖が一條を見上げている。そっと一條は手を伸ばして、美玖の頭に乗せると髪をくしゃくしゃとかき回す。
「ごめん」
わかっているようで何もわかっていなかった自分が滑稽で、一條は謝りを口にする。
「やだよ。俺……」
「違う」
謝ったことを別れの言葉と誤解したらしい美玖の考えを否定して、目線を合わせるためにベッドに腰を下ろし、一條は美玖の頭を撫でた。
「愛しているんだ。言ったろう?順番にゆっくりと行こうって」
美玖が頷く。
「だから、前回も前々回も、引き留めなかった……」
食事のあと、最寄駅まで送って別れた時、美玖ももっと一緒にいたいと思ってくれていたんだろうか。
「キスしてほしかった?」
こくんと美玖が頷く。
「抱き合いたかった?」
それにも頷く。愛しさが湧き上がり、一條は腕を伸ばして、美玖を抱き寄せた。
「美玖と俺が恋人なんだってちゃんとわかってほしかったんだ」
「わかってると思う。一條さん、俺に会いたいって言ってくれたし」
美玖も腕を伸ばして、一條を抱きしめ返す。
「今日も嬉しかった。一緒に桜見て、どうってことない話をして。すごく楽しかったんだ。でも、一條さんのことみんなが見ていて、桜の写真撮るふりして、一條さんを撮ってた人とかいて、むかついて。一條さんは俺のなのに……」
言ってからしまったと思ったのか、美玖が言葉を途切れさせ、もごもごと口の中で語尾を濁らせた。
嬉しさが湧いてきて、一條はぎゅっと美玖を抱きしめた。年より幼いような気がしていたが、美玖も男だったのだと思う。愛しさが欲望に直結しているのは同じなのだ。
「抱いていい?」
欲望を押さえる必要なんてなかったのだ。美玖もそれを望んでいた。
「抱いて」
美玖が一條の身体に回した腕に力を込める。
「だから煽るなって。手加減もなにもできなくなる」
「一條さんこそ、俺の話を聞いてなかっただろう?手加減も我慢もいらないって、言ったよ」
生意気な口を唇ふさぐ。嬉しそうな吐息をもらして、美玖がそれに応える。
恋に目がくらんでいたのは自分だったなと自嘲して、一條は美玖のシャツのボタンに手をかけた。

「あぁっ……すごい」
一條の上で腰を振って、美玖が声を上げた。
白い肌がきれいで、色づいた胸の飾りが美味そうで、一條は美玖の腰を手で押さえるとすでに立ち上がって、ぷっくらと腫れている乳首を口に含んだ。
「……やっ……」
むずがるように首を横に振って、美玖が啼く。その声が心地よくて、さらに啼かせたくて、一條は舌で胸の飾りを転がして、腰を入れた。
「あぁっ……だめっ……」
「何が?」
口に乳首を含みながら訊くと、美玖は首を横に振った。首筋に張り付いた髪が色っぽい。
美玖は知らないだろう。快楽に溺れているときの彼は、うっすら全体に桃色がかって、今日見た桜のようだ。
甘く艶のある声もたまらないし、自分の愛撫に身悶えるさまは男の嗜虐心をそそる。
「舐めないで?」
「なんで」
「はぁっ……おかしくなる」
かわいいことを言うから、さらに舌で舐った。繋がったところに手を伸ばし、そっと指で辿る。
「隼也さんっ」
「いいだろう?美玖が健気に俺をのみこんでいるのがよくわかる」
腰を引こうとするから、さらに奥までえぐる。あられもない声を上げた美玖に喉の奥で笑う。
「なんで……」
優しく優しく慈しむように抱くのを常としていた一條が、ずっと言葉でも身体でも攻めているからからか、不安そうな声で美玖が呟く。
目尻に涙をためて、上から睨み付ける美玖を上目づかいで見て、一條は口端を上げて微笑んだ。
「もう、我慢するのは止めたから……かな?」
美玖が息をのむ。
美玖が愛人だったころは、未経験ということもあって、焦らして焦らして身体が開くまで根気強く抱いた。痛がらせたくなかったし、怖がらせたくもなかった。
ただ、愛しくてかわいくて、宝物のように美玖を愛したかった。
だが、今は身体全部で美玖を感じたい。言葉でも指でも口でも美玖を感じたいし、感じさせたい。
お遊びみたいなセックスではなくて、大人の溺れるような快感を教えてやりたい。
いっぱいに蕾をほころばせている美玖が可愛くて、さらにそこをそっと指で辿った。
「まだ、入るかな」
肩にしがみついて、美玖は首を横に振る。
「無理っ」
叫ぶ美玖の背を撫でて宥めながら、一條は蜜をこぼす美玖自身をたどる。
「気持ちよさそうだけど」
「隼也さん。やぁっ……」
言葉で嬲るとさらに肌が紅く色づき、一條はきれいだと思う。
「美玖。そんなにしがみついたら、何もできない」
やだと囁きながら抱きついてくる美玖を宥める。少しいじめすぎたかもしれない。だが、相当感じているようで、握った美玖自身の先からは蜜があふれる。
「顔あげて、キスしたい」
低く囁くと、何度も首を振りながら、美玖は腕の力を緩めた。舌を差し出すと濡れた瞳で一條を見て、自分も舌を出して、一條の舌先をぺろりとなめた。
「はぁっ」
舌先を触れ合わせると美玖が大きく喘いだ。本当に感じやすくできていると一條は、口端を上げて笑った。
こんな風にしたのは自分だと思うとひどくうれしい。
「もう……」
「もう、何?」
「達きたい。もう、やだっ」
感じ過ぎて、どうにもならなくなったらしい美玖が涙をためて、叫ぶ。
「手加減いらないんだろう?」
「そういう意味じゃない」
腰を揺らして、美玖が背をしならせた。
「じゃあ、どういう意味?」
言いながら、美玖の背を支えながら身体を起こし、ベッドに仰向けにすると両腿を思い切り左右に開く。
「あぁっ……」
のしかかると当たり所が変わったらしい、さらに身体を反らせた。
「全部見える。ここもぬるぬるだ」
「んんっ」
先端をくるくるとさすってやるとそれだけで腰がゆれる。
「もっと突いて、奥まで。お願い」
「まったく。煽るなって」
大きく足を開かせた形で、一條は腰を入れた。速度を上げて、中を擦るとさらに美玖が啼きだした。
「いいっ……ぁああっ……ん……」
できるだけ美玖のいいところを深く抉るようにグラインドすると奥がきゅっと締まって、一條のに絡みつく。
それが気持ちよくて、さらに美玖を攻めたてる。
「だめっ……達く。達っちゃう」
「いいよ。達けよ」
「やっ……」
達きたいと言いながら、達くのは嫌だと美玖は首を反らせた。白い喉がさらされて、一條は、衝動的に身体をかがめると喉を甘噛みする。
綺麗で、可愛い美玖を啼かせると自分もどんどん高まって、おかしくなりそうだ。
首筋に口づけながら、一條はさらに美玖を攻め、自分の限界も近いことを知る。
「美玖」
「隼也……だめっ……達く」
腹に熱い飛沫が飛ぶのを感じ、美玖の中がきゅっと締まり、一條を引き留める。それを振り切るように入口まで戻して襞をめくり、再度押し込むと、美玖の内壁が纏わりついてくる。
やばい。持って行かれる。
思った時には、最奥に欲望のすべてを叩き込んでいた。
「はぁっ……熱い……」
意識していないだろう美玖の喘ぎが聞こえて、腰を何度か押し入れて、すべて美玖の中に吐き出した。
心臓が口から出そうなほど脈打ち、こめかみでも血流の音がした。快感はすさまじく、一條はそのまま美玖を抱きしめるようにのしかかる。
「美玖」
「隼也さん」
荒い息の下で美玖が名を呼んで、一條は軽く頭を上げると美玖に口づけた。啄むように何度も口づけ、それから名残惜しげに身体を離した。
「美玖。大丈夫か?」
「だめ」
即答されて、一條は顔を横にして隣に横たわる美玖を見た。目を閉じて肩を上下させている美玖は確かにダメそうだ。
「すごすぎて。まだ、くらくらする」
一條は身体を反転し、右肘をついて上体を上げ、左手で、美玖の前髪をかきあげてやる。
「そういうかわいいこというと、また襲うぞ」
美玖が絶句するのがおかしくて、一條は笑った。
「隼也さんは極端すぎる」
美玖の言葉に声を上げて笑った。自覚はいやってほどあった。

すっかり落ち着いたらしい美玖を腕に抱き寄せて、髪にキスをする。
「愛してる」
囁くと腕の中の美玖が身じろぐから、そっと見下ろす。耳まで赤くして、上目づかいで美玖が見つめていた。
「どうした?」
「なんか恥ずかしい」
愛の言葉をもらって恥ずかしいはないだろうと思いながらも美玖らしいと一條は笑う。
「どうして笑うんだよ」
「美玖が可愛いから」
子ども扱いされたと思ったのか美玖がむっとした顔で睨んでくる。それでも頬が赤いから照れているのかもしれない。
「そんな顔してもだめだ。俺はおまえに惚れてるからな。どんな表情でも可愛いと思うよ」
そういうこと真顔で言うなよ、と美玖がぶつぶつ言いながら目を伏せる。
その瞼にそっと口づけた。
「連休明けの休みに温泉行こうか?」
5月の連休は稼ぎ時で休みはないぶん、ずれ込んで休みがとれる。そこで、美玖と出かけたいと思った。
「え?」
「来年の旅行ももちろん行くけど、先過ぎて、待てないからな」
「泊まりで?」
「ああ」
美玖が額を一條の胸につけて何かささやいた。小さすぎて何を言ったかわからない。
「なんて言った?」
「もっと一緒にいられる」
小さな声で美玖はそれだけ言った。会いたいと思ってくれていると知って、一條は胸の奥が温かくなる。
「もっとわがまま言っていい。メールも電話も美玖からもしてほしい」
「だめだよ。絶対うざいって思われる」
どうしてこうもこいつは可愛いんだろうと、一條は抱きしめる腕に力を込めた。
「隼也さん、苦しいって」
「思わないよ。嬉しいとだけ思う。可愛すぎてこのまま攫ってしまいたいくらいだ」
腕の中の体温が上がった。見なくても美玖が真っ赤になっているだろうことが察しられて、それが一條の情欲を煽った。
「明日、遅番?」
訊くと美玖が小さくうなずく。
「そうか、ならいいかな」
抱きしめて、外耳をたどるように舌を這わせて、一條は囁いた。すでに、声に色がにじんでいるのに美玖は気付いただろうか。
「悪いな。今夜は寝せてあげられそうにない」
告げた言葉に美玖が動きを止めた。一條は同意したとみなして、美玖の首筋に唇を落とす。
「んっ……隼也さんっ……」
咎めるように名を呼んだが、美玖はだめとは言わなかった。密着した身体の温度がまた上がる。
同じように感じてくれていることが嬉しくて、一條は美玖の身体を愛撫する。
甘く狂おしい夜は、東の空が白くなるまで続いた。
美玖の掠れた啼き声もやむことはない。
恋人が腕の中にいる幸せをかみしめて、一條は、本格的な春に心から感謝した。


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