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「天空国の守護者」
地上編

バゼル(2)

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喧騒をすり抜けるようにタミルは足早に歩いていた。
威勢の良い呼び込みの声や交渉をする商人たちを横目に見ながら、タミルは流れるように人をすり抜ける。誰も彼には目もくれない。異国人なのはわかっているだろが、さすがに第二の都市ともなれば、いろんな人種がいる。褐色の肌に黒髪という南国風な人間であっても目立つことはまるでなかった。それに―
「ずいぶん人が多い」
広場まで来てから、タミルはようやく足を止め、周りを見渡した。市が立っているせいか、それとも祭りでもあるのか、やたらと人が多い。
「まあ、交易の盛んなところでもあるしな」
抱えた荷物を持ちなおすとタミルは広場を突っ切る。レイラースに頼まれた買い物をすませながら、街の地理を身体で覚えているところだった。地図は重要機密に属するからおいそれとは手に入らない。きちんとした土地勘をつけようと思ったら歩いてみるしかなかった。街はよく整備されていて、中央の広場から放射線上に道が走り、その広場に平行にさらに道があった。上空から見たらクモの巣のように見えたかもしれない。だが、街の西はずれだけは、そのクモの巣が崩れていた。農村からの出稼ぎ者や浮浪者が掘立小屋を建てて勝手に住み着いているのだ。
道も迷路のようなありさまで、人の家の扉かと思えば、開けた先は道だったなんてこともある。
隠れるなら絶好の場所だったが、治安が問題で、とてもキリスエールを住まわせる気にならなかった。
腕に覚えがあるレイラースやタミルならどうってことないが、キリスエールではすぐにかどわかされてしまいそうだ。
「どうするかな」
呟いて、ふと顔をあげると道の端に連なる野外の店の列が目についた。横長の机を置き、雨が降っても濡れないようにテントのような屋根を張った店だ。そのうちの一つに、きれいな細工の小物入れを扱っている屋店で視線がとまった。店の台の上には木を組み合わせて作られた箱がきれいに並べられ、箱にはめ込まれた貝細工が、日の光にきらきらと輝いている。
歩み寄って、手にとってみれば、青の色がきれいで、キリスエールが気に入るんじゃないかとタミルは思う。
「どうです。こんなところで売っているとは思えないくらい上質のものですよ。恋人へのお土産には最適」
寄ってきた店主がまくしたてた言葉にタミルはぎくりとする。確かに脳裏にはキリスエールの喜ぶ顔が浮かんでいたが。
「あれ?違うの、男前のお兄さん。故郷の恋人への土産かと思ったのになあ」
勝手なことを言っている店主を一睨みするが、その瞳には力はない。
「いくらだ」
「へ?」
「値段を聞いたんだが」
小物入れを持つ手がかすかに熱い気がした。キリスエールを思うといつもそうだ。胸の奥がくすぐったいような苦しいような気がする。
「25ギー」
「高いな」
即座に言い捨てた。この街の相場なら、3分の1でもいいくらいだ。25ギーもあれば、1か月は余裕で食べられる。人間界におりてから、学んだことだ。金の価値もだが、宝石類も人間界で暮らすには必要なものだとわかった。
天空国を出るにあたって、人間界で高価なものなら必要になるかと持ちだしてきたものだ。
人間からの貢物の中には装飾品だの宝石だのもあり、それらも守護者に適当に分配されていた。全く興味がなくて、部屋に転がしておいたが、それが天空国を出たとたんに役にたつのだから皮肉なものだった。
「だからいいものなんですよ、お兄さん」
「いいものでもだ。そんな持ち合わせはないんだ。仕方がない。またに……」
箱を台に戻そうとすると店主が「いや、いや」という。
「わかりました。じゃあ、半分で」
すかさず値段を下げてくる声を聞きながらも箱をタミルは台に戻した。あまり高価なものだと逆にキリスエールが恐縮するかもと思ったからだが、店主はそうは受け取らなかった。「待ってくださいって。うー。兄さん、見かけによらずしっかりしているなあ。じゃあ、9ギーでどうです?」
タミルは店主を見た。店主は不安そうな顔でタミルを見ている。確かに値段は3分の1近くになったが、この男かなり食わせ者だとタミルは思う。
どうするかな。タミルは、箱に目を向ける。こまごました物の整理にキリスエールが困っていたことをタミルは知っていた。すりつぶした薬草だったり、滋養がつく木の実だったりを道々手に入れたようだが、それの保管にキリスエールは四苦八苦していた。
中にも仕切りのあるこの箱なら、キリスエールも喜ぶかもしれない。あの柔らかい笑顔を思い浮かべるだけでタミルは心の底がじんわりと温かくなった。
懐に手を入れると財布から、9枚のコインを出して店主に渡す。
「ありがとうございます。確かに」
店主は満面の笑みを浮かべると、商品の箱を革袋にいれてタミルに手渡した。
「一応、割れものなのでね。これでもしないよりましです。ありがとうございました」
商品を受け取り、タミルは宿に戻るべく歩き出す。本来なら、この奥の路地も見るつもりだったが、割れものだという主人の声に、先に帰ってキリスエールに渡してから出直そうと思った。
キリスエールは何をしているだろう。レイラースが宿の食堂にいたから、勝手に一人で出歩いたりはしていないだろうがと思い、ぎくりと背がこわばった。2人きりになる機会をレイラースが見逃すはずはないことを思い出したからだ。宿を出るときから覚悟はしていた。だが、3人で宿にこもっていても何にもならないし、キリスエールを一人で留守番させるのは論外だ。
見守ると決めたはずだと頭をもたげた黒い感情を抑え込む。キリスエールはタミルに触れられることを今でも良しとしていないだろう。一緒に旅をしている間もタミルは極力、キリスエールには触れないし、傍らに寄り添うこともしない。怖いのだ。馬から降りるとき、物を受け渡す時ですら、キリスエールに触れて怯えられたり、避けられたりするんじゃないかと内心恐れていた。だが、離れることももはやできない。キリスエールがどう思っているかはわからないが、それでも側にいることは許してくれている。それで十分だと何度も言い聞かせた。
レイラースがキリスエールに口づける情景を思い出して、タミルは胃の底がきりりと痛むのを感じた。
「キリスエール」
囁きを舌に乗せると苦く、甘い味がした。きっと手に入らないだろう唯一無二の宝もの。
人通りの多い道を人の波に逆らいながら宿へ続く道に機械的に足を運ぶ。
「……キリスエール」
この腕に優しく包み込んで、その身も心も自分のものにできたらどんなにいいだろうと辛い物思いに沈みこみそうになったタミルの足が、ピタリと止まり、腰の剣に手をかけたかと思うといきなり振り返った。
きいん。高い金属音が鳴り響き、あたりを悲鳴が走った。
殺気とともに突如、空中に現れた姿にタミルは黒い瞳を驚きに見開く。抜いて跳ねあげた剣で受け止めた短剣を握りしめてタミルを睨み付けた人物は宙に浮いていた。その背には白い羽。
「カルア」
呆然と呟くタミルにカルアはわずかに顔を歪めた。剣先を振ると短剣は離れ、カルアは軽々と地面に降り立った。  
「よくわかりましたね。完全に気配を消したはずなのに」
荒ぶる気も怒りを全く隠さずにカルアは髪を掻き揚げた。
「気配はなかったが、殺気がした」
「まだまだ、俺も甘いな」
カルアは面白くなさそうな顔で呟く。
「何しに来た」
「あなたをこの手で始末しに」
唸るように告げたタミルにカルアは花がほころぶように一転、妖艶ともいえる笑みを浮かべた。
「謹慎中だっただろう」
「そんなもの、あなたが俺を裏切った時点で解かれましたよ。それでも、紅軍の隊長が、何やかんやと理由をつけちゃ拘束するんで、抜けてくるのが大変でしたけど」
燃えるように赤い髪のフレミールの貌がタミルの頭に浮かんで消える。
「その間に誰かに先を越されてあなたを傷つけられたらどうしようかと生きた心地がしませんでしたよ。隊長」
さらに深く微笑んで、あなたを殺すのは俺だけだとカルアは言い放つ。
「抹殺命令は出てなかったと思うが」
かちりと剣を構えなおしながら、タミルが告げるといきなりカルアは笑い出した。
「命令?そんなことは関係ない。これは俺とあなたの問題だ。俺を裏切ったあなたを絶対に許さない」
地面を蹴って、カルアが突っ込んでくる。短剣の切っ先を剣の先でタミルは払った。遠巻きに囲んだ人垣から悲鳴があがる。
剣の勢いに逆らわず、カルアは空へふわりと飛びあがると手にした短剣をはらりと捨てた。
「やっぱり人間の道具じゃだめだ」
差し出した空手に光る長剣が現れる。空中を駆け下りざま、頭上からタミルに叩き込んだ。
剣戟の音が響き渡り、タミルが頭上で横にした剣で受けていた。そのまま、切り合いが始まった。受け止めた剣でカルアの剣をはじき、タミルはいったん後ろに跳び退ると一転、一気に間合いを詰めた。そのまま下からなぐように剣を払う。びいいいんとカルアの剣が鳴る。かなりの衝撃だったが、カルアは耐えた。それをはらうと今度はカルアが打ち込んでいく。
人の目には見えない速度で、二人は剣を振い、隙をうかがう。その実力は拮抗しているように見えた。
「腕を上げたな」
絡み合うように剣を合わせて、腕の力に任せて、タミルはカルアを壁際へと追いつめる。
「だが、まだだな」
「どういう意味です」
抑えきれずに後ろに下がるカルアは弾む息で応える。
「すでに勝負はついているってことだ」
悔しそうにカルアは顔をゆがめた。すでに押されていることからも明らかだが、肩で息をしている自分と違って、タミルはまだ息を乱してもいない。
全力で向かって行ったのに、かなり肉薄したと思ったのに、相手は手加減して、合わせていただけだと思い知る。
「俺を追うな。カルア。このまま国に帰れ」
優しくも聞こえる声でタミルが告げた。カルアのゆがんだ顔がますます苦渋に染まる。
「俺を捨てるんですね」
「結果的にはそうなるな。国も仲間も……」
タミルの声が複数の駆ける重い足音と馬のひずめにかき消された。
「何をやっている」
「捕えろ」
口々に叫ばれる声にタミルは剣でカルアを抑え込みながら、首だけで後ろを振り返る。右斜めの道から、騎士団と思われる部隊が馬を駆って、こちらに向かってくるのが見えた。
耳の側で舌打ちが聞こえ、それがカルアの立てたものだと思った瞬間に、剣を合わせていたカルアは空中へ舞い上がる。
「虫けらが……」
「やめろっ、カルア」
向かってくる兵団をみつめるカルアの目の暗さにタミルが静止の声を上げるが、それが届くはずはない。カルアは空中で浮きながら、両手を前に突き出すと手の中に力をため込む。光の球が現れたと思ったとたんに、それはまっすぐに騎士団へと光の尾を引いて飛び込んだ。
爆音が響き、土煙が市の立つ大通りをかすませた。悲鳴と人間がおそれで逃げ惑う足音で辺りが騒然となる。そのままカルアはふっとその姿を消した。
「……カルア」
タミルの呟きは風が散らした。
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