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「天空国の守護者」
地上編

バゼル(3)

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遠くでざわめきと何かが破裂する音が聞こえ、窓辺で組んだ腕に顔を伏せていたキリスエールは頭をあげて、窓の外を見た。
慌てて開け放った窓の向こうには家々の屋根が連なるだけで何も見えない。ただ、この街の中心広場があると教えられた方向が砂埃でかすんでいる気がした。
遠くで人々が叫んでいる声が風に乗って流れてくる。
「なんだ。なにがあったんだろう」
爪先立ってさらに遠くを見ようと窓に身を乗り出した途端に背後の扉が大きな音を立てて開いた。
「キリスエール!」
ひどく慌てた怖い顔で入ってきたタミルにキリスエールは言葉もない。
「タミル様」
喘ぐように名を呼ぶとそれにかぶせるように鋭いタミルの声が飛んだ。
「今すぐ荷物をまとめるんだ。ここを出る」
その声にせっぱつまった感じを覚えて、キリスエールは窓から離れると、すぐさま行動に移った。
身をひるがえすと棚へと走り、袋に洋服やら小物やらを片っ端から詰め込む。
「レイラースはどうした?」
同じように端から荷物を作っていくタミルの問いかけに手も止めず、そちらも見ないでキリスエールは荷造りを進めた。
「ちょっと出てくるっておっしゃって」
思い出すとまた胸の奥が苦しく辛いのが甦りそうで、キリスエールは目の前の荷造りに気持ちを集中させた。
「ったく」
怒ったようなタミルが舌打ちし、だが、ふと何もない空中を見上げた。
何もない天井の下からするりとレイラースが現れる。まるで、見えない扉を開いて入ってきたようだ。
「何をやらかした。タミル。この力の波動はなんだ」
現れるなり不機嫌さ全開でレイラースはタミルを責めた。
「追手だ。カルアが現れて、いきなり街中で力を使ったんだ」
最後の荷の紐をぐっと結んで、タミルは苦い顔でレイラースを見つめる。
「ここは人間界だ。不干渉の掟はどうしたんだ」
「知らない。あいつはもともと人間なんて全部滅んでしまえと思っている奴だからな。躊躇もしなかった」
いくつかの荷物の紐をまとめて縛り上げるとタミルは荷を肩に担いだ。
「だが、もうここにはいられない。あいつともめているところを街を守っている騎士団の連中に見られた」
レイラースが舌打ちし、キリスエールのそばまで歩み寄ると、キリスエールがまとめた荷物を肩に担ぐ。
「わかった。話はあとだ。キリスエール、出られる?」
レイラースの言葉に無言でキリスエールは頷いた。
「よし、いくぞ」
タミルを先頭に部屋を出た。厩は裏口だ。すでに、門は閉じられているかもしれないが、窓の向こうから伝わる空気はまだ混乱の中にあるように感じられた。
三人はそのまま宿を出ると騒ぎを見に行ってしまったのか無人の厩から自分たちの馬を出すと、一番騒ぎから遠い西門に向って馬を駆った。
広場のほうからざわめきが流れてくるのに背を向けて、西の入り組んだ路地へと馬を入れる。誰もが広場の騒ぎが気になるのだろう。そちらに向かう野次馬の脇をすり抜けるように3人は早足で馬を駆る。
誰かにとめられることもないまま西門に着く。馬を下りて、街を囲む城壁の門へと歩いていく。
「出立か?」
門を守る衛兵に必ず訊かれる質問に先頭のタミルが頷く。レイラースとキリスエールは旅のマントをフードまでかぶって下を向いている。
「ずいぶん遅いが、閉門は4つの刻だ。も2刻もないぞ」
「大丈夫だ。次の街の友人に用がある。今日はもう戻らない」
「そうか。気を付けていけ。この先の街道で時々、不穏なうわさを聞くからな」
朗らかに笑った門衛は、ふさいでいた道からその大きな身体をどかした。
「不穏なうわさ?」
「ああ。なんでも野獣がでたとかでないとか。だが、あまりはっきりした目撃証言がなくて、討伐隊も出せない状況なんだがな」
タミルは少し考える顔をしたが、門衛に視線を合わせ、わかったと答え、歩き出そうと馬の手綱を取った。
「そうだ。さっき、中央広場のほうが騒がしかったようだが、何があったか知らないか?」
もう一人の門衛が道をあけながらタミルに問う。
「大きな音は聞いたが」
何があったかは知らないとタミルは首をかしげた。その後ろをレイラースとキリスエールが馬を引きながら通り過ぎる。
「そうか」
門衛はがっかりした顔をしたが、タミルに笑いかけると「道中気をつけろ」と旅人に送る言葉を告げた。
「ありがとう」
タミルも口元に笑みを佩き、馬をひき、門衛に背を向けた。
門を抜けると3人は再び馬上にあがり、街を背に一気に街道に沿って走りだした。
オレンジ色の太陽がすでに西の空の低いところから光を投げていた。


茶と白のマーブルの列柱が立ち並ぶ、ひどく天井の高い大広間の真ん中に赤いじゅうたんが長く引かれている。ひんやりとした空気が支配するその最奥の一段高くなった壇上に大きな装飾の見事な玉座が鎮座していた。
「で、その後、セインはどうしている?」
玉座に腰を下ろし、肘掛で頬杖ついたシスルが問うた。物憂げな様子は慣れない将軍職に疲れているようにも見えるし、どこか投げやりにも見えた。
「変化なしにてございます」
アズールが膝をつき頭を垂れて答えた。横には同じ姿勢でフレミールが頭を下げていた。
「かなりの力を練り上げた結界の中にいまして、綻びすら見つけられない状況であるとご報告さしあげたかと」
重々しいアズールの声にも苦渋がにじむ。
セインはレイラースとタミルが国を出たとき、自分は逃げなかった。そのまま自国に保有した別邸に閉じこもるなり籠城したのだ。
それも幾重にも力を布のように織り上げ、屋敷全体を囲み、外からの干渉を一切拒んでいた。
「あれに対抗できるのは隊長クラスと国主だけです。だが、力がぶつかればどう考えても被害が大きすぎる」
フレミールが続けて報告を口にする。
「国の一部が吹っ飛ぶかもしれません」
シスルは口を閉ざしたまま、目の前に跪く二人を物憂げに見つめた。実際、セインに対抗できるのは国主だけなのは事実だった。アズールとフレミールが力を合わせてもセインが力の限りに織り上げた結界なら被害なしに破ることは不可能だろう。
「ご覧になりましたか、まるで繭の中にいるようです」
「今はどうしている?」
「兵に囲ませて、交代で見張らせていますが、彼らでは何の役にも立たない。ただ、見ているだけだ。それも、屋敷がやっと見えるような距離からです」
あまりの力の差に兵達、とくに感応力の強い者たちは屋敷に近寄ることすらできないのが現状だった。たった1人の守護者に手も足もでないとは情けないとしか言いようがないとフレミールは奥歯をかみしめた。
「で、どうするの?」
「ご命令は国外に出奔させないことですから、包囲したまま見張らせます。なにも、捕えて牢に入れる必要はないかと」
アズールの言葉にシスルはくつくつと喉で笑った。昏い笑いだ。
「面白いことを言うね、アズール。僕に出動要請しに来たのかと思いきや、国にいるから見張っておくだけでいいって?」
声に怒りの波動を感じ、アズールとフレミールはさらに頭を垂れた。シスルから発せられる気は、あまりに瘴気が強く、肌がじりじりと焼けるような感じすら覚える。
「甘いね、二人とも」
「お言葉ながら、セインを見張るだけでも紅、藍、さらに翠軍まで出動させております。黄軍、黒軍はトップが出奔し、隊を率いる副官はそう力があるとは申せません。残るは白だけです。隊長クラス2名を追うための手が足りない今、国内にとどまっているセインのためにこれ以上の人員を割くのは得策ではないかと……」
アズールの低く落ち着いた声が接見の広間を流れていく。シスルはそれを遮ることなく、かといって心動かされる風もなく聞いていた。
「この国も駒がいないってことだ」
出生率の低さに加え、身体のどこかに色彩を纏って生まれてくるものはさらに数が限られる。隊長クラスの力の持ち主ともなれば、その数は本当に数えるほどしかいない。女性にも色を纏ったものは多く輩出されるが、天空国では剣を持って戦うのは男性だけだ。
「今は3軍が囲んでいるから、セインはおとなしくしているだけだ。これを1軍にしたら、あっという間に逃げられるだろうね。彼の狙いは軍の足止めだ。レイラースとタミルを追わせないための作戦なんだ。いつまで頑張れるかは見ものだけどね」
少しも面白くなさそうに、シスルは言葉を投げた。
「僕が出よう」
「おやめください」
「それには時期尚早かと」
シスルの言葉にアズールとフレミールは慌てて頭をあげて、国主を制する。今日、この場に参上して、シスルの怒りの波動に身をさらしてまで、報告に来たのは、国主の動きを制するためなのだ。
国主が動き、セインと直接に力を振われたら、天空国を支えている山の一角は跡形もないだろう。それに内でもめていることをクアールに悟られるのは愚だ。
「なんで?」
散歩を止められた気安さで、シスルは二人に問う。当然、シスルにもわかっているのだ、理由などはとうの昔に。
「平にご容赦を」
「それだけは」
二人が地面に頭が付くほどシスルに懇願する。彼らは祖国を危険にさらすことだけはなんとか避けたかった。
「国主」
呼びかけられて、立ち上がったシスルはどさりと玉座に戻った。
「つまらない。本当に、つまらない。お前たちはまともすぎだ」
その言葉に二人は詰めていた息を吐き、謝意を込めて礼を送る。彼らの判断が正しいとシスルが認めたからだ。
「わかった。許可するからお前たちの好きにしてみるといい。軍を割いたらセインは逃げると思うけどね。覚悟はできているんだろう?」
優しいと思えるほどの笑みを佩いて、シスルは二人を見た。アズールですらその大きな身体を震わせる。
そこへ複数の足音も荒く飛び込んできた。
「国主、ご報告いたします」
「なんだ」
どうでもよさそうにシスルが答えるのとは対照に、アズールとフレミールは兵たちのせっぱつまった声に振り向く。兵たちがざっと膝をつく。
「先ほど、連絡がありまして、人間界で守護者が力を振い、負傷者が多数出たと」
「何?!」
アズールとフレミールが立ち上がり、兵たちの前に立った。
「どこでだ」
「はっ。バゼルの街中です」
トドス国第2の都市の名を出され、アズールもフレミールもあまりの驚きに言葉が出ない。人間界には干渉しないは絶対の掟だったはずだ。だいたい、守護者は人間界への出入りも理由がない限り、極力避けている。
「それが、人間界からの報告によると、長い黒髪に褐色の肌の剣士を白い羽をもった守護者が襲ったとのことです」
容姿に思い当ったのか、アズールが「タミルか」と呟く。トドスには黒髪は珍しくない。だが、肌の色は白い人間が多い。褐色の肌はもっと南の地方に多かった。タミルとレイラースは北へ逃げていると報告があった。方向から言っても、タミルの可能性が高い。
「どこの隊だ」
「そこまではわかりません。羽をもった守護者は1人で、手から光を出したかに見えた途端、爆発したそうです」
「感知できるか?」
「ほうっておけ」
アズールの問いかけをシスルの声が遮った。冷気さえ感じさせる声音にその場のものが玉座を仰ぐ。
「国主……?」
何を言われたかわからないとフレミールが問いかけなおした。
「ほうっておけ。お前たちがぐずぐずしている間に手を打った奴がいるんだろう。黒軍も黄軍も手が空いているだろうし」
「だからって、人間界でそれも街中で力を使うのは掟に触れ……」
「バゼルはパラドース国じゃない」
フレミールの言葉も最後まで紡がれることがなかった。玉座の肘掛についた頬杖を解かぬまま、紫色の瞳が面倒臭そうにフレミールを見ていた。
「掟はパラドースに限ったこと。僕たちが守るのは人間じゃなくて、パラドース国民だけだ。ほかがどうでも関係ない」
違うかと瞳で語られ、フレミールは驚きに瞳を見開く。
「被害を広げたくないとお前たちが思うなら、さっさとあの2人を捕まえることだ」
他の国の人間がどうなろうと知ったことかとあからさまに告げるシスルの言葉にアズールとフレミールは何も言葉を返せない。
「パラドースから苦情がでたらどうするおつもりか」
トドスは当然、パラドース国に異議申し立てを入れるだろう。困ったパラドースは天空国に泣きつくに決まっている。だからこその人間界への不干渉なのだ。
「さあな。それもほうっておいていい。人間の好きな政治でなんとかするだろう」
うっすらと口元に笑みを佩いて、シスルは立ち上がった。
「時間だ。今日はここまでとする」
謁見の終了を通達して、シスルは踵を返した。アズールとフレミールがさっと膝をついて頭を垂れた。内心、怒りと困惑でいっぱいでも、拳を握りしめてやり過ごすことしかできなかった。退出していくシスルの背中は平時と変わず、そのまま垂れ幕を潜っていった。
「アズール。どうするんだ」
シスルの背が完全に部屋から消えると立ち上がったフレミールがアズールに詰め寄った。
「どうするもこうするも命令に従わざるを得ないだろう」
静かなアズールの声にフレミールが唇を噛む。
「まずは、人間界で暴れた奴の調査だ。国主はああ言ったが、街中で戦闘とは言語道断。これ以上、人間がこちらに文句を言う隙を与えるのは得策ではない。その苦情にクアールが乗って画策してくる可能性だってあるからな」
今できる精いっぱいのことをしようと言うアズールの言葉にフレミールは深くうなずく。
もう、天空国のことをまともに考えているのは自分たちしかいないような気さえする。国主はどこかがおかしい。その上、守護者の将軍クラスと隊長が出奔なんて自体は歴史をひも解いても例はないだろう。
「タミルとレイラースの捕縛にも兵を割こう。こんな騒ぎになったとしたら、あいつらも街を出ているだろうからな。街道沿いや山の中なら戦闘になってもそう支障は出まい」
アズールはそう告げると踵を返す。
とにかく、ほかの隊長も集めて作戦を立てないことには、どうにも動けない。
「フレミール。悪いが、全軍の隊長を招集してくれ。一時後に、緊急に作戦会議を開く」
落ち着いた声で告げられた言葉に、フレミールは再度頷いて、広間から早足で出て行った。そのあとを追うようにアズールもまた広間を後にした。
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