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「山神の花嫁_昔話」
冬の月影

冬の月影(4)

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「で、何の用だ。緑の」
部屋に通されて、座るなり竜胆は切り出す。
何人もの人が入れ替わり立ち替わり部屋へと入り、お茶だの、お茶受けだのを用意して行った。泉はそれを眺める。
人型とは違う。動きはきびきびしているし、礼儀作法も完璧だ。
まるで、貴族の館に来たような気分になる。
といっても泉もそんなのは庄屋さんの話でしか知らないのだが。
「ご機嫌伺いってわけはないだろう?」
竜胆の言葉に泉はそちらに視線を向けた。
上座に胡坐をかいて座っている翡翠は動じた様子もなく、平静に竜胆に視点を合わせている。
その前に座る竜胆は、心なしかそわそわして見えた。
「泉」
竜胆の問いには答えずに泉の名を呼んだ翡翠に泉は脇に置いた風呂敷包みを開いた。
中から和紙でくるんだものを取り出し、竜胆に差し出す。
「急にお邪魔してすみません。これ、つまらないものですが……」
驚いた顔で、包みを受け取り竜胆は不思議そうに泉を見る。
「開けてみてやれ。泉が作ったんだ」
横からかかった翡翠の声に竜胆は、包みを解いた。中から、橙色が鮮やかな干し柿が現れ、竜胆は瞳を細めた。
「山の実りが今年も見事で。とても食べ切れないので、干してみました。お天気にも恵まれて、とても甘いんですよ。今年は。お口にあうといいのですが」
「泉はこういうものも作れるのか」
感心した声音に泉はうっすら紅くなる。竜胆は心なしか嬉しそうに見えた。
「特別なことはないです。山で暮らすなら普通ですよ」
「そんなことはない。すごいな」
手放しの賞賛に泉は困ったように翡翠を見上げる。
「な。喜んだだろう。青の主は柿に目がないんだ」
頷いて、泉はにっこりと笑う。
「ありがとう。泉」
泉の笑顔を眩しそうに見つめながら、竜胆は微笑み返した。
「やっぱり、泉はいいな。緑の主。泉を私にくれないか?」
「やるか。まったく、お前たちはそれ以外に言うことはないのか」
深々と溜息を落とした翡翠に泉は自分のことながら、くすくすと笑いだした。
「お前達って誰のことだ?」
「ここまで銀王に連れてきてもらったんだが、銀王も泉を気に入ったようだ」
「あの人間嫌いの銀王が?」
驚いた顔で竜胆は翡翠を見た。その視線を横の泉に流す。
「泉はある意味、最強かもしれないな。魅惑の力があるとしか思えない」
「人間であったのが嘘のように中身が綺麗だからだろう」
自分のことで勝手に話を進めていく、二人を泉は困ったように眺めた。
神様を魅惑するなんて技は自分にはない。
「確かに稀有な魂だ」
しみじみと竜胆に呟かれ、泉はだんだん腰が落ち着かない。困ったような視線を翡翠に投げるとやんわりと翡翠が微笑む。
面白がっている笑みに泉は憮然とした表情を返した。
「戯言はそのくらいで、緑の何の用だ。まさか泉を見せびらかしにきたわけでもあるまい」
二人が見つめ合ったのを咳払いで制して、竜胆は本題に戻す。
「ああ。そうだった。つい忘れてた」
どこまでが冗談かわからない言葉をさらりと口にして翡翠は竜胆に視線を移した。
「あの後の顛末をただしに来たんだった。出雲は大丈夫だったか?」
翡翠の言葉に竜胆はこれ見よがしに大きく溜息をついた。
「大変だったんだぞ」
嫌そうな瞳で竜胆は翡翠を睨んだ。
「手順を踏まずに空間を裂いて無理やりつなげたから、もうひどい有様で」
「それは俺の屋敷もそうだ。あれを片づけるのにどれだけかかったと思っているんだ」
泉はちらりと翡翠を見上げた。確かに片づけるのは大変だったが片づけたのは泉で翡翠ではない。
翡翠は片づけた後、壊れた物を修復しただけだ。それも神の力で。
その後、力を使い過ぎたと文句を言われて、補充させろと散々、喰らわれた。
泉の視線に気付いたのか、翡翠が悪戯っぽい瞳で笑った。
「ただ、お前がいたのが廊下だったのが幸いしたけどな。柱が数本と敷石と庭がめちゃくちゃになっただけで済んだ」
それはすごい被害なのではないだろうかと泉は内心思う。
「ついでに大神(おおみかみ)様に呼び出されて、こっぴどく叱られた」
竜胆はひどく苦い顔をした。
「珍しい、呼び出しがかかったのか」
「当たり前だろう。出雲の宮の中でのことだぞ。神同士の争いかと思われたんだ」
「お叱りを受けたのは、事の顛末を聞かれたからだろうが」
あくまで自分は悪くなさそうな言葉に翡翠は冷たくそう言い返す。
「それもあるが……」
「それ以外何があるんだ。宮から俺にも問い合わせが来た。きちんと報告しておいたからな」
翡翠の声音はやけに温度が低い。
「お前が報告……。しばらく、出雲には顔を出せないじゃないか」
どうしてこういうときだけめんどうくさがらないんだと竜胆はぶつぶつ呟いた。
「修繕もしたんだろうな?」
「当然だろう。宮の大夫の前で全部元通りにさせられた」
憤然と言い放つ竜胆を瞳を細めて翡翠は見た。
「まったく反省してないな、竜胆」
「い……いや、そんなことないぞ。ちゃんと反省した……」
睨まれた瞳に殺気を感じたのか、竜胆がめずらしく歯切れ悪く答える。
「翡翠様……ごめんなさい……」
泉は怒りのオーラむき出しの翡翠に謝罪を口にする。
竜胆様だけが悪いのではない。拒まなかった自分も悪いのだ。
それに、無理やり翡翠を呼び付けたのは自分だ。
あの日のことを思い出すと心が痛い。翡翠を最後まで信じ切れなかった自分が情けなくて。
「泉……」
竜胆が泉に視線を向けた。
「お前が悪いんじゃない。だからそんな表情(かお)をするな」
困ったような心配そうな瞳で見つめて、竜胆は囁く。
「悪いのは私なのだから、お前が謝る必要などないんだ」
「でも……」
泉は唇を噛んで俯いた。
頭をぽんぽんと大きな手で撫でられ、泉は手の主を見上げた。翡翠の琥珀色の瞳が優しく自分を見下ろしている。
「泉はすでにきちんと罰を受けた。だから、もう何も気にしなくていい」
何を指して翡翠はそう言うのだろう。部屋を片付けたことか、それとも散々翡翠に喰われたことだろうか。
「お前はそうやって自分のやったことを悔いている。同じことは二度としないだろう。だからもういいんだ」
「翡翠様……」
泉は琥珀色の瞳をひたと見つめた。こうやって心を痛めていることが、罪の意識に苛まれていることが自分のやったことに対する罰だと翡翠は言う。
確かにもう2度と同じことはしないと誓える。翡翠様を疑ったりしないと。
だけどそれだけでいいのだろうか。
「青の主。もう、泉はずっとこの調子だ」
襲われたのは被害者なのは泉だと翡翠は言外に告げる。どうするつもりだと。
「緑の主……」
言葉の裏まで正確に理解して、竜胆には珍しく哀しげな後悔の色の光を瞳に浮かべる。
「泉。すまなかった。あまりにお前がきれいで、可愛くて。遠見の珠を見せたのもあまりにお前が寂しそうだったから。緑の主がお前のことを惚気倒すもんだから、ちょっと悪戯心だった。まあ、緑の主が白の君と話をしていたのは偶然だが、それに付け込んだ。本当に悪かった。だから、お前が哀しむことも罪を感じることもないんだ」
潔く頭を下げられ、泉は困ってしまう。
「竜胆様。私に謝ったりなさらないでください」
「なんで?」
「竜胆様は神様なんですから……」
竜胆は翡翠を見た。翡翠が頷く。
「やっとわかったか?」
「ああ」
なぜ、泉が最後の最後まで私を拒まなかったか。私に対して怒らなかったかもわかってしまった。
竜胆が神様だからだ。自分より高位のもの。それに逆らうことなど考えたこともないのだろう。
弱いものいじめだと翡翠はいっているのだ。
「悪かった。お前にも泉にも」
竜胆は真摯な光を浮かべた双眸(め)で、翡翠を見つめる。
「わかればいい」
重々しく言って、翡翠はにいっと笑った。
「この件はこれで終わりだ。もう、泉も気にしなくていい。青の主も2度と同じことはしまい」
「そうだな。泉。緑の主の言う通りだ。だが、緑の主に飽きたらいつでも言え。私がお前の身柄貰い受けよう」
目を丸くして泉は二人を見つめた。そして、ぷっと吹き出す。そのままくすくすと笑う。
「なんだ。ここは笑うところじゃないだろう」
「さっき、同じことを銀王さまもおっしゃっていて……」
それを思い出したのだと泉はくすくす笑い続ける。
憮然とした表情の竜胆に翡翠も笑った。
「お前達、実はよく似てたんだな」
豪快に笑う翡翠を竜胆は睨みつけた。
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