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「山神の花嫁_昔話」
冬の月影

冬の月影(6)

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「耀華様、すみません」
前を行く耀華に泉は頭を下げる。
自分を案内させるのにも気が引けるし、あんなこと言われたことにも気が咎める。
「何がです?泉様がお気になさることはございません」
「急に押し掛けたのに、こんな案内までさせてしまって」
からかわれたことについては言葉にできなかった。
「いいんですよ。久方ぶりのお客様で嬉しいんですから。近いのに緑の主はあまりこちらにいらっしゃいませんし。泉様にもずっとお会いしたかった」
微笑むと綺麗な顔がさらに美しく見えて、泉はどうしていいかわからない。
「耀華様はどうしてこちらに?」
緊張したら気になっていたことがつい口をついた。
耀華は驚いたように泉を見つめ、それから寂しそうに微笑んだ。
「竜神様への貢物なんですの」
ああと泉は思う。湖が荒れないように、竜神の怒りに触れないように、時折、隣の山向こうの村々から贄を捧げるという話を旅の商人が話していた。
「いつから……」
「さあ。もう忘れてしまうくらい昔です」
そう言って耀華は微笑んだ。
「あの、年をとらずにずっとこのままで、人間でなくなってしまうことは……」
どう言葉を継いでいいかわからずに泉は言葉を切った。
「そうですね。自分だけ永に生きるのは、下界に知り合いが誰もいなくなるのは、寂しいですわね。でも、旦那様はあの通り優しい方ですし。辛いことなどないのです」
そう言うわりには耀華の笑みは寂しそうだった。

竜胆の屋敷は、主人の趣味を反映しているのか、質の高いもので構築されていた。華美ではないのに、どこもかしこも手を抜いた様子はなく、洗練された美しさで満ちていた。
さすがに水の神様だけあって、屋敷内にも川や池、果ては水路まで配置され、翡翠の屋敷とは全く趣が異なって面白い。
すれ違う、ご家来衆は女官も下男であっても礼儀正しく、働きものだった。
それにしてもすごい数だ。
「ご家来衆だけでどれだけの方がいるのですか」
「さあ。どうでしょう。このお屋敷は広いので、100人は下らないかと思いますけど」
確かに屋敷の大きさも翡翠の山の宮とは比較にならないほど広い。泉にとって山の宮ですら広すぎるというのに、竜胆の屋敷の広さには唖然とするしかない。
ここを維持しようとしたらそのくらいの人手は必要だ。
「皆さま、元は人ですよね?」
「そうです。志願してきた者もいますし、旦那様に拾われてきた方もいます」
「精霊もと竜胆様はおっしゃってましたが」
泉の言葉に耀華は目を瞠り、そして溜息をついた。
「そんなお話まで。確かにおりますけど……」
主殿の後ろに視線を送って、耀華は困ったように笑った。
「あちらの建物は?」
「後宮ですわ」
訊き慣れない用語に泉は首を傾げる。主殿の後ろにあるのだから後ろの宮なのだろうが、耀華はそれでわかるだろうという口ぶりだ。
「まさか。ご存じないのですか?緑の主様のお屋敷にもありますでしょうに」
その言葉にも泉は首を傾げる。何を知らないというのだろう。
「まったく、旦那様も人が悪い」
ぶつぶつ呟きながら、耀華は元来た道を振り返る。
「あそこは個人的な場所ですの、旦那様の」
意を決したように振り返ると耀華はそう答え、艶やかに笑った。


「相変わらずだな、耀華は」
供された酒を酌み交わしながら翡翠は先ほどの美女を思い出して呟いた。
「そうだな。あの気の強さは耀華ならではだ」
竜胆も杯を口にする。
「同じ黒髪に黒瞳、それに白い肌だが、ああも雰囲気が違うのも面白いと思わないか」
竜胆は耀華と泉を比較する。
「まあな。魂の色が決定的に違うからそういうもんだろう。耀華は華やかで情熱的だ」
ぐっと水でも飲むみたいに杯を空けて、翡翠は杯を差し出す。
「泉は真逆だ。透明で繊細」
「そのわりには頑固だけどな」
注ぎ足された杯を口元に持って来ながら、翡翠はくつくつと笑った。
「だけどいいのか。この屋敷を案内したら、お前のお気に入りが一人じゃないって泉にばれるぞ」
「耀華ならそんなへましないよ。それに、ばれてもまあ仕方ないかな」
竜胆は杯を見つめながら呟いた。
「泉は手に入りそうにないし。怒ってくれるくらいなら逆に嬉しい」
想い人が複数だと知って怒ったら、少しは心がわたしの上にあるということだと竜胆は思う。
「自虐的だな」
ぼつりと呟いた翡翠を竜胆は見つめる。
「もっと、耀華を大事にすればいいのに」
「あれも私の手にはおえないよ。いまくらいの関係がちょうどいいんだ。お前にはわからないよ、緑の」
そう、私が一途に耀華だけを追い求めたら、彼女はここからいなくなるだろう。どういうわけかそういう気がする。
「わからないな、俺には。俺は泉だけで手一杯だ」
「まあ、お前とは事情が違う。それに、耀華と契約する前に契約した者たちを解雇するわけにもいくまい」
それには言葉を返さず、翡翠は頷いた。
恋の形も人それぞれということ。神であってもそれは変わらない。
「そうだな」
ずいぶんたってからぽつりと翡翠は呟いた。

「で、話があるんじゃないのか?」
しばらく無言で酒を汲み交わしていた。沈黙を破ったのは翡翠だ。泉を遠ざけたのはそのせいじゃないのかと翡翠の瞳が語る。
「ああ」
竜胆は歯切れ悪く答え、杯を口に運ぶ。
しばらくまた沈黙が落ちた。
「宮から報告がきただろう?」
ぽつりと竜胆が呟いた。
「きな臭い気配のことか」
「ああ」
翡翠の問いに竜胆が頷く。
「人を神にまつりあげて、何やらやっていたが、戦さが近い」
人間は愚かだと竜胆は思う。この狭い土地を取り合い、戦を繰り返し、やっと平和な世を築くとまた世が乱れる。
それもいままでは国土の中だったのが、今度の相手は異国。
「宮はどうすると?」
杯をあおって、立てた片膝に腕を置き、翡翠が竜胆をまっすぐに見つめた。
「どうもしない。静観の構えだ」
まっすぐ見返し、竜胆は答える。
「だろうな」
自分で杯を満たし、翡翠は杯を口にする。
「まあ、俺には関係ない。ここには山しかないからな。戦は人がいないところでは起こらない」
「そうだが、もしも、異国の者がこの国を支配したらどうなる?」
「どうにもならないだろう。俺たちは存るだけだ。ただ、ここに在って見守るものだ」
異教の神々がこの土地を欲しない限り。
翡翠が語らなかった言葉が、聞こえた気がした。
「そうだな」
竜胆も手にした杯を飲み干す。
戦いの気配がこの神の国まで漂ってくるようで、竜胆は大きな溜息とともに瞳を閉じた。
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