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「天空国の守護者」
トレジャ編

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守護者を助けたことなどまるでなかったかのように日は過ぎた。
キリスエールですらあれは夢だったのではないかと思い始めたくらいだ。守護者を助けて、さらに金と銀の天使に会ったことをキリスエールは誰にも話さなかった。
領主である父にさえも。
守護者と人間は出会うはずもないものだったからだ。
そして、一か月が過ぎたころ、キリスエールは熱を出した。初夏の陽気がしはじめた頃だったから、本人も風邪だと思っていた。
寝てれば治ると主張したのに、病気など数えるほどしかしたことのない元気で丈夫なキリスエールが熱を出したとあって、医者が呼ばれ、診察された。
部屋の真ん中を占めたベッドで、熱を測られ、脈をとられた。
「口をあけて」
素直に口を開ける。侍医は首を傾げた。
キリスエールの髪の毛をどけて、首の根元を風邪をひくと腫れる場所を手で押さえる。
「ちょっと待っていなさい」
慌てたように立ち上がり、侍医は部屋を出た。
しばらくすると父と医者だけが部屋に戻ってきた。他の者たちは全員遠ざけられていた。
キリスエールを嫌な予感がよぎる。不安が膨らんで、胸を圧迫した。
「父上、私は風邪ではなかったのですか」
ベッドに腰を下ろし、キリスエールを見つめる父の悲痛な顔を見て、キリスエールは早口で尋ねる。
首を横に振る父はひどく老けて見えた。
医者が近寄ってきて、キリスエールの首筋にかかる栗色の髪をかきあげた。そこを覗き込んで、父は息を飲み、そして溜息をついた。
「守護者に遭ったのか」
父の言葉にキリスエールが息を飲む。はいともいいえとも答えない息子を哀しげな目で見遣る。
「守護者に遭ったのか」
同じ質問を繰り返された。キリスエールは微かに頷く。
どうしてわかったのだろう。
「話してみなさい、その時のことを」
重く告げられ、キリスエールは事の次第をぽつぽつと語りだす。天使の名前と後からきた二人の話は伏せたままで。その方がいいと何かがキリスエールに告げていた。
「それだけか。助けただけ。何かされなかったのか」
問い詰めるような質問にキリスエールは目を丸くする。
「何も。看病しただけです。彼はずっと意識が無かった。目が覚めたら彼は礼を言って去って行った。それだけ。なのに、何故」
その言葉に医者は首を横に振る。
「なぜっ!この熱も守護者に会ったからだと言うのか。本当に看病しただけです。父上。俺は嘘は言っていない」
「お前の首筋に浮かぶ印は、守護者がつけたものだ。その印は守護者の所有物の証。凌辱されたんだな。可哀想なキリスエール」
父は息子を抱き締めた。
呆然と父の言葉を聞く。その言葉の意味が胸に落ちると怒りが頭をもたげる。
「なんで信じてくれないんだ。本当に何もされていない。印なんて知らない。父上っ!」
父は首を横に振った。
「領主。つらいでしょうが、守護者のものとなったからには、彼をトレジャに」
領主は肩を落とした。次期領主となるべき息子を贄として送り出すことに衝撃を感じているのだろう。
そっと息子の身体を離す。
「父上っ!!」
叫ぶキリスエールを領主はうなだれたまま、手をあげて制した。
「キリスエール。聞きなさい。お前は守護者が贄を求めることは知っているな」
何を言い出したのだろうと、怪訝に思いながらもキリスエールは口をつぐみ、父の言葉に頷く。
「この国は創国の王とその民が守護者とかわした契約から始まった。守護者の住む峰に囲まれたこの国を守護者は守り、そして平和で豊かな国を王とその民が築くと。永遠に続く楽園のような国にしようとパラドース国は建国された」
父が語る建国の歴史は国民なら知らないものはいない。なんで今更こんな話をしているのだろう。
口を開こうとした息子を父はさらに手で制し、話を続ける。
「その約束は守られた。今でも守られている。しかし、約束をしたのは遥か古の守護者と王。我々を敵国やクアールから守る守護者はその契約から逃れられないが、志まで継承されているとは言い難い。自分たちより力の劣る人間を何故守る必要があるのか、戦いを一手に引き受けなければいけない状況がいつまで続くのか、守護者の中には契約にのみ縛られ、古の契約を交わした守護者の志を忘れるものも出始めた。契約に縛られた彼らは、それを放棄することはできない。そのかわりというように、戦いで昂ぶった気分を発散する守護者や我々を守ることに疑問を持った守護者が、守ってきた民を襲う事態が起きたのだ」
領主など国の運営をあずかるものしか知らない歴史にキリスエールは驚きを禁じ得ない。
「荒ぶる気分のまま下界に降りた守護者は気儘に人々を凌辱し、手にかけた。今から200年前くらいの話だ。当時の王は、守護者の王に願い出た。守護者が降りる土地と贄を差し出すから、荒ぶる気分を沈めるならその贄でと」
キリスエールは口を手で覆った。悲鳴を呑み込む。贄を要求したのは守護者じゃない。差し出したのは我々の方だったのか。
「そしてできたのがトレジャだ。定期的に各領地からトレジャに贄を送っている。それは今でも。昔は男女の区別なく、各地区で決めた者を送りこんでいた。しかし、娘は守護者の子供を孕むと何故か発狂するのだ。また、守護者と話し合いがもたれ、贄は男子のみと決まった。今は、成人した16歳の青年を各地区で選別し、送っている」
だから守護者は人の土地に降りてこない。唯一降りてくるのはトレジャだけ。そこで、守護者は選ばれた贄を喰らうのだ。
「お前が選ばれることはありえないことだった。トレジャ以外で人が守護者に会うことはないのだから。しかし、あるはずのないことが起きた。守護者に会って、印をつけられたものは人の世界にいられない。守護者の所有物に守護者は会う権利があるからだ。しかし、守護者が人の世界に降りるのは禁じられている」
キリスエールは目の前が真っ暗になった。空から落ちてきた天使を助けただけなのに。
「キリスエール。お前をトレジャなどにやりたくない。しかし、残念だが、掟は掟だ。例外は認められない。領主の私が掟を破るわけにはいかないのだ」
息子を抱き締め、父は涙を流した。抱き締められながら、呆然と父の言葉を聞く。
「いつ……いつ行かないといけないの」
「すぐにでも」
遠くから医者の声がした。
「トレジャはどこに」
「峰に近いライムランに」
馬でも半月はかかる遠い土地だ。キリスエールは父親を抱き締め返した。
瞳を閉じる。もう、二度と故郷に戻って来れないことを悟った。
「父上、泣かないで」
彼を助けたことをキリスエールは後悔していない。傷ついた守護者を助けて贄に選ばれるのは理不尽だと思ったとしても。あの時は見捨てると言う選択肢は自分の中になかったのだから。
「この熱は下がるの」
医者に向かって訊く。
「トレジャに入ればすぐにでも」
「わかった」
もう一度、キリスエールは父を抱き締めた。
「父上、すぐに用意を。俺は自分のしたことを後悔していないけど、父上を哀しませたくなかったことだけは信じて。跡を継げなくてごめんなさい」
領主は息子を抱き締め返し、ぼろぼろと泣き続け、そして身体を離した。そして見ていられないとベッドから立ち上がると背を向ける。その背中が、いつもたくましく思っていた背中が小さく見える。
「できるだけの仕度をする。できたら連絡をするから待っていないさい」
顔も見ずに告げると父と医者は部屋を出て行った。
扉が閉じ、一人残されたキリスエールはしばらくそのままベッドに座っていたが、うつぶせに倒れ込むと声を殺して泣いた。
故郷を父を家族を置いていく哀しみのために。
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