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告白の向こうへ

告白の向こうへ(3)

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同じ会社で部署も同じときては律人を避け続けることは不可能だろうと、重い気分と寝不足で痛む頭を抱えながら、実生は会社の最寄り駅の改札をくぐる。
「おはよう」
右肩の後ろから声をかけられて、振り返ると、いま一番会いたくない人間が微笑みを浮かべながら立っていた。
「おはよう」
声が若干、不機嫌になるが仕方がない。無視しなかった自分を褒めてやりたいくらいだ。
ちらりと視線を投げると、律人は昨夜のことなんて何もなかったかのように見える。横に並んでるくせに、半歩後ろを歩くのも変わらない。なんとなく、右後ろを守られているように感じるのは、気のせいだろうと実生は思う。
「今日は客先?」
瞳が合うとさわやかな微笑みを向けて、律人が訊ねてくる。
実生はさらにむっとした。あんなに悩んで、一晩中、よく眠れなかったのに、律人はいつもの律人だ。
キスの話を蒸し返されても困るが、こうまで平静を保たれると悩んでいた自分がまるで馬鹿みたいで、実生はますます不機嫌になった。
律人にとってはどうでもいいことだったんだろうか。
やっぱり、悪戯……だった?
「実生?」
答えない実生に律人が訊きかえす。
「外出はないけど」
「じゃあさ、あとで、資料作成の相談に乗ってくれ。型番KM-3153の基板についてさ、質問が来ているんだけど、よくわからないんだ」
律人は笑って髪をかきあげて笑う。
その手のしぐさに、実生は怒っていたことも忘れて、瞳を奪われた。手が大きく、節の高い指がきれいだ。指の間をさらさら零れ落ちる髪すらも色気があって目が離せない。
ん?と律人が促すように実生を見つめ返すのに気付いて、実生は慌てて呆れたように口を開いた。
「おまえなあ。ちゃんと調べた?」
「まあな。少しは」
悪びれない律人の声に実生はため息をこぼした。
「そんなややこしいこと客に訊かれたのか?」
「そうでもないと思うんだけどな。回路は苦手なんだよ」
律人の答えに、実生は、ちらりと横を歩く律人を見るが、彼はまったく動じた様子もない。しばらく、肩を並べて歩くと律人が腕の時計に視線を走らせた。
「やばい。今日、朝一、打ち合わせだったよな。急ぐぞ、実生」
腰に手をあてられて、背を押されると実生は身体を固くし、足を止めた。昨夜の律人の腕の熱さを思い出し、戸惑いと羞恥とそんなものがいっぺんに湧き上がって、体中に力が入る。
律人も一瞬だけ立ち止まり、押したはずの背中からするりと手を離すと、実生を見ずに脇をすり抜け、歩く速度を上げた。
「実生、遅刻するぞ」
実生を追い抜いて歩き始めた律人が振り返ると一言声をかけてくる。律人の背を見ながら、実生も我に返り、腕時計に目をやって、やばっと口の中で唱えると早足になった。
意識するなと実生は自分に言い聞かせる。悩まなければいけないことはいろいろあるが、考えたらどんどん泥沼にはまって出てこれなくなりそうだ。だいたい、律人はいつもと同じじゃないか。今だって、普通に会話していた。何事もなかったかのように。
あれは、律人流の遊びで、そんなのにいちいち驚いたり、意識したりするのは、子供っぽいだろうと実生は思う。
そう、それよりいま悩まなくてはいけないのは、仕事だ。実生もいくつか客からの質問を抱えている。どれも資料にまとめて、製品の特性を明確にしなければ、売れるものも売れないだろう。
問題を先送りにして、悩みをすり替えて、実生は足を早めると、律人についてオフィスへの道を急いだ。

律人の態度は本当に変わらない。
ずっとオフィスにいる仕事ではないから、そう一緒にいるわけでもないが、会議でも隣に座って、活発に発言していた。
気にしているのは実生ばかりで、隣に律人が座るたび、肩が触れるたびに、びくびくしてバカみたいだ。
さらっと流せばいい。なんて冗談しかけてきたんだと気にしていないといつも通りにしてればいい。
律人みたいに恋愛には慣れてないけど、大人なんだから、このくらい流せないと。
からかうにしても相手を選べよとでも言ってやったらよかった。
こうやって思考が巡り巡るのも一日中、律人のことを考えてしまうのも気にしている証拠だというのにやめられない。
キスしたことなんて夢だったんじゃないかと実生が思うくらいに何事もなく4日が過ぎた。金曜日の昼休み、昼食をとったら、そのまま客先へ行こうと実生は荷物を持って、営業部を出るとエレベーター待っていた。まだ、今日は律人を見ていない。直行直帰なのかもしれない。実生は大きくため息をついた。指で唇をたどる。
とくに何も変わらない日常に、律人の態度に、やっぱり、あの告白も酔ったはずみの口づけもからかわれただけなんだと、悩み続けた実生は結論づける。
実生だって、律人が嫌いなわけじゃない。どちらかというと好きだ。だが、好きの意味が違うんだと思う。恋なんてしたことがないから実感としてはわからないが、律人は友達で、気の置けない大事な仲間だ。友達が彼氏になんて、異性ならおかしくない状況も双方が同性だとありえない。
俺はゲイじゃないし。
なんとなく、女性を好きにならないことを不安に思っている実生にしてみれば、まったくもって受け入れられない。
忘れよう。こんなの考えても気にしても、律人との仲がぎくしゃくするだけだ。友達をやめるほどの話じゃないし、なかったことにしてしまおうと実生は再度、実生は息を大きく吐いた。
「あっ」
後ろから高めの声がして、パタパタと数人の女性がエレベーターホールに駆け込んでくる。実生は思考を中断し、顔をあげた。
「霧森さん、外出?」
小走りで先頭切って現れたのは、営業事務の女性の一人だ。その後ろには見かけたことのない女性が続いている。
「高宮さん」
「ちょっといいかな」
実生を見上げて、小首をかしげた高宮に、実生は頷いた。小柄ながら、スリムでスタイルのよい彼女を狙っている会社の奴は多い。長い髪を今日はきれいに纏め髪にして、うっすらと化粧をしている。このナチュラルメイクも男性の人気の所以だ。
「俺を?」
軽く頷いた高宮は胸に手をあてて、息を整えると実生の横を見る。
「あれ?今日は一人?」
その言葉に軽く実生は驚いた顔をした。
「なんで?」
「えー。だって、お昼ってよく小野原さんととってるでしょう」
高宮はひどく珍しいものを見たような顔で実生を見上げる。
「まあ、そうだけど……。そんな一緒にいるかな?」
「ええ。だって、いつも楽しそうに笑ってて、いいなって思ってたから」
そんな風に見えていたんだと実生は心ならずも驚いた。確かに昼食はよく連れ立って一緒に行っている。だが、同じ課で席も近ければそんなものだと思って、だが、実生の隣にいるのは圧倒的に律人が多いことに、実生は思い至る。だから、余計にああいう冗談をされると思いきれないんだと心の中で悪態をついた。
高宮の背中を別のショートカットの女性が指でつつき、高宮が振り返る。ショートカットの女性が時計を指さした。それに肩をすくめて、またこちらを高宮は向き直った。
「あ、ごめんなさいね。出かけるところだったよね。霧森さん、来週の水曜日の夜って時間ある?」
悪戯っぽく瞳をきらめかせて、高宮が下から実生を見た。
「水曜日?」
ポケットから携帯を出して、実生はスケジュールを確認した。予定は真っ白だ。
「あいてるけど」
「よかった。その日、コンパをしようってことになっているんだけど、どう?他の課からも何人か来るし、女子は秘書課からも呼んでるし。来てもらえないかな?」
お願いって両手を組んだポーズで高宮は実生にお伺いを立てる。きっとこういうのが可愛いと思われるんだろう。
「合コンかぁ」
「だめかな?いままで、なかなか参加してもらえなかったし。課の飲み会とそう変わらないよ。女子率が高いだけで」
合コンには誘われても、今まで参加したことがなかった。男だけの飲み会の方が気楽だし、女性とは何を話していいかもわからなくて、いつも仕事を口実に断っていたのだ。
今回に限って、なんでそんな気になったのか、実生にもよくはわからない。だけど、“女子率”と言う言葉に魅かれたのは事実だ。出会いがあったら、もし彼女ができたら……そんな期待から、実生はちょっと考えて、「いいよ」と答えていた。
「ありがとう」
色良い返事ににっこり微笑んで、高宮は少し背伸びをすると両腕を伸ばす。高宮の身体が近づいて、実生はぎくりと身体を強ばらせた。
「まがっている」
高宮は何も気が付ないのか、実生のネクタイの根元を両手でつかむとノットをきれいな形に整えた。鼻先を甘い香りが掠め、ちらりと下に視線を落とすと、高宮の桜色に染めた爪のきれいな指が見えた。実生は息をのんだ。ただ、気になっただけなのだろうが、あまりの事態に硬直する。
「こんな感じかな」
とんと手のひらで胸を押されて、高宮の身体が離れた。胸を押した高宮の手は温かくて柔らかい。
実生は自分を抱きしめた律人の手を思い出した。しっかりと自分の腰を支えてくれた強く固い腕、顎を捕えた指は節が高く長くきれいだった。
目の前の身体からは甘い香りがする。律人は柑橘系のコロンをつけていた。
何もかもが違う。
「あ。ごめんなさい。つい気になって」
実生があまりに驚いていたからだろう、一歩後ろに下がって、高宮は軽く頭を下げる。
「じゃあ、あとでメールしますね。直接店に集合で、時間厳守だから、よろしくね」
にこやかに笑って、にぎやかに去っていく彼女たちを見送りながら、実生は苦笑を零した。まるで嵐のようだった。急にやってきてさっと去っていく。面白く思う一方で、実生は心のどこかが冷えるのを感じていた。直視してはいけない何かを怖がるように胸の一部が震えている。
「高宮って、霧森に気があるのか」
声を掛けられて、実生はそちらに視線を向けた。同じ課の営業が2人、こっちに向かって歩みよる。
「役得だな、霧森」
そのうちの一人に後ろから小突かれて、実生はやめろよといいながら、自嘲する。
そう、いきなり女性にネクタイなんて直されたら、もっと照れたり喜んだりするものだろう。
「高宮だぜ。うらやましい」
彼女が歩き去った後姿を目で追いながら、もう一人も悔しそうにコメントする。
そう、これが普通の反応だ。「いいだろう?」と冗談っぽく返したかった。
なのに――
何も感じなかった。
心の中だけで、実生は呟いた。ただ、やたらと驚いただけ。
律人の手を感じた時には、鼓動が早くなって、身体の温度があがったのに、今は、喜びも嬉しさもなかった。その事実に、実生は絶望に似た想いを噛みしめた。
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