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告白の向こうへ

告白の向こうへ(4)

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悩みは深くなる一方だ。律人のキスも告白も冗談だと片付けて、自分の中で釈然としないまでも解決を見ているが、高宮にあれだけ近寄られて何も感じなかったことに実生はかなり傷ついていた。
……美人というよりは可愛い子のほうが好みなのかな。
自分のことなのに、よくわからない。好きな女の子を思い浮かべようとしても誰の顔も浮かばないのだ。
朝っぱらから大きなため息をつくと呼び鈴が電子音をたて、それを遮った。階下から、「はーい」と応じる母親の声が聞こえた。
土曜日の今日は休日で、ここのところ残業も多かったから、休みくらいゆっくりしようと思っていた実生は、呼び鈴の音に舌打ちをした。
「実生。お友達いらしたわよ」
階下から母親の呼ぶ声がする。
昨日、仕事が終わって帰ろうとした矢先に律人がふらりと現れて、「明日、11時に実生の家に迎えにいくから」と宣言した。
「は?なんで?」
意味がわからなくて、間抜けた実生の返答に、律人が片目を瞑ってみせた。
「デート」
そのさまがあまりにもかっこよくて、実生は答えることもできずに見入ってしまった。
どうしてこうも実生が求めているものをなんでも持っているんだろう。照れ隠しに「ふざけんな」と返したが、笑って流されて、結局、押しつけられた約束は効力を持ってしまったというわけだ。
母親の声を無視していると階段を上がる音がし、扉がばんと開けられた。哀しいかな実家暮らしの実生の部屋には、鍵なんてついてない。
「何しているの?お待たせしたらだめでしょう」
扉の向こうで母が急きたてる。行く気なんてなかった。勝手に決めて押しかけて来たんだから。それでも、一応、着替えているあたり自分が小心者で嫌になる。
「実生の友達って大きいのね。カッコいい子でびっくりしちゃった。そうそう、お菓子をいただいたちゃったから、ちゃんと実生からもお礼を言ってね」
母はなぜか嬉しそうだ。そりゃあ、律人は親が見たって整った容姿をしているだろうが、だからってこんなに喜ぶものだろうか。
皮肉なことを考えるのは、押しつけられた約束に納得がいっていないからだ。かといって、居留守を使いたくても母がこれだけ騒げばいるのはすでに律人の知るところだろう。下手なことを言って、これ以上、母に何か言われるのも遠慮したい。
仕方なく、机の上に放り出しておいた腕時計と財布を取ると母の横をすり抜ける。
「出かけてくる」
「いってらっしゃい」
機嫌のいい母の声を聞きながら、階段を下りると玄関の扉の前に、律人が立っていた。白のデザインTシャツに黒の綿パン、黒のジャケットを羽織っている。スーツ姿ばかり見慣れているせいか私服の律人は、さらにワイルドに見えて実生は内心、どぎまぎした。階段の途中で止まってしまった足は床に縫いとめられたようで、実生はただ律人を見つめていた。
「よう」
軽く手を上げて、挨拶をくれる律人の笑顔に、ひくんと頬がひきつった。急に我に返ると見とれていたことが気恥ずかしくて、実生は目を伏せながら、ぎこちなく「おう」と返し、階段を降り切る。
「来るの早かった?」
「そうじゃなくて、俺、行くって言ってない」
そう言いながらも実生はスニーカーに足を突っ込む。律人の足もとを見れば、ごつい黒のブーツだ。
どうしようか一瞬迷って、自分の今日の格好が、ジーンズに、黒の丸襟のカットソー。それに、白地に黒の文字入りのパーカーを羽織っていることを思い出す。革靴ともブーツとも合いそうにない。そのまま、足を突っ込んで、スニーカーを履くと律人の横をすり抜けるように、扉を押して外へ出た。

出かけるときは、釈然とせず、内心もやもやしていた実生だったが、律人との休日は思っていた以上に楽しかった。食事をして、ゲーセンで対戦格闘ゲームをし、買い物に行った。律人は実生に似合うと言ってはいろいろな服を持ってきて、着せたがった。自分一人だったら入らない店で、いつもなら手に取らないような服を着てみて、それだけでも楽しかった。
「ほらな。似合うだろう?」
試着室から顔をのぞかせるとその前で待っていた律人が笑う。
「そうかなあ。少し派手だと思うけど」
白地に黒で細かな幾何学模様の入ったシャツ、黒の綿のスラックスという格好だが、ジーパンでもスーツでもないせいか、鏡に映った自分はなんだか知らない人のようだ。それに開襟シャツで、普段よりも襟ぐりが深く、落ちつかなかった。
「そんなことない。実生は肌が白いからよく似合ってる」
目を細めて笑う律人の顔に実生はどぎまぎした。なんかまるで本当にデートみたいだと一瞬思って、ただ、友達と買い物しているだけだからと心で自分に突っ込んだ。なんだか調子が狂いっぱなしだ。
「うーん。でもなあ」
確かに似合ってはいるけど、なんとなく自分でないみたいで、実生は思いきれない。
「すごくいいと思うけど、おまえが気に入らないなら、別なの持ってくるけど」
「気に入らないわけじゃないけど、ちょっといつもと違うからさ。俺はやっぱりいいや。それより、小野原は?おまえ、自分のは選んだのか?」
律人は右手に持っていた袋を掲げて見せる。
「実生が着替えている間に会計済ませた」
「えー。どんなのにしたんだよ。俺、見ていない」
「前から狙ってた新作だから、即買い。今度。着たら見せる」
もったいぶる律人に実生はふくれて見せた。それに律人が笑い声を立てる。
「ほら、おまえはどうするんだよ」
「着替える」
あまりに笑っている律人に憮然として、実生はフィッティングルームの扉を閉めた。結局、気後れした実生は何も買わずに店を出た。
食事をして少しお酒を飲んで、律人は律儀にも家の前まで実生を送ってきた。久しぶりの友人との外出はこうも楽しいものかと実生は内心、今日一日のことを思ってかなり満足していた。
律人は先週のことはまるでなかったかのように振る舞っている。やっぱりあれは、彼女の一人もいない、それどころか恋すらしたことのない自分をからかっただけだと実生は結論付ける。といってもからかうだけにしても同性に告白まがいのことをするのはおかしいという感覚はあえて横に置いていることに実生は自分でも気が付かない。律人ならやりかねないくらいの感想に置き換えてしまっていた。
「じゃあな。また月曜日に」
「うん」
笑顔で答えた実生にさわやかに微笑み返した律人の顔にどきりとして、それに気づくと実生は慌てて自宅の門に手をかけた。
「あれ?実生くん?」
その背に声がかかって、実生は振り返った。
「豊さんっ!」
街頭の下に立ってこちらに顔を向けているスーツ姿の男を認めるなり、実生はその名を叫んでいた。すらりと背が高く、細面で整った顔立ちのやけにスーツが似合う男は、上城豊。実生のお隣さんのお兄さんだ。見かけるのは久しぶりだった。同じ社会人でも生活サイクルが違うのか、最近はとんと見かけなくなっていた。母からの噂話では、仕事が評価されて最近、課長に昇進したらしく忙しいとのことだった。
「珍しいな。こんな遅くに帰宅?」
にっこり笑ってこちらに歩いてくる姿も様になっている。姿勢がいいのだろう。長く憧れている人を久々に見かけたものだから、素直に嬉しいと思った実生はそれこそ満面の笑みを浮かべた。
「遅くないですよ。早いくらいです」
「ああ、そうか。もう、大学生じゃないんだっけ?」
なかなか年下の近所の子の年など把握しきれないのか、豊はのんびりそんなことを訊く。
「やだな、豊さん。もう、卒業して3年も経ってますって」
答えた実生は、はたして自分の声がやけに浮かれて聞こえないかと他人事のように思う。あまりにびっくりして舞い上がっていたものだから、その時は自分の後ろに立っていた律人の存在が、すっかり頭から抜け落ちていた。
「そうか、そうだよな」
頭に手をあててばつが悪そうに笑う豊を実生は感慨深く見つめた。この人の姿を見るために、帰り時間を見越して、部屋の窓から覗いていたこともあったことを思いだす。
右後ろにいた気配がすっと移動するのを感じ、はっと実生は視線をそちらに移した。豊もその動きに視線を実生の横に投げた。豊がかすかに眉の間に皺を寄せるのを認識し、不審に思われたかと、実生は慌てて横に立つ友人を紹介した。
「あ。こいつは友人で小野原っていいます」
律人は軽く頭を下げただけで何も言わない。ちょっと失礼だろうと律人を振り返った実生はその場で視線が動かせなくなった。
怖い顔で律人は豊を睨み付けている。こんな真剣な顔の律人は見たことがない。
だが、律人と豊の睨み合いはほんの一瞬だった。咎めようと声を上げる前にそんな気配はきれいさっぱり払拭して、律人は実生を見下ろすと微笑んだ。ぽんと頭を撫でられて、実生は律人を見上げた。
「またな。実生。月曜日、朝一に会議だからな。遅れるなよ」
「え。ああ」
実生の受け答えを聞いていたのかどうか、律人はさっさと歩きだし、豊のそばを通るときに軽く会釈までして、駅への道を歩み去っていく。その後ろ姿に、実生は言葉もかけられず、見送った。
「同期?」
すっかり律人の背が見えなくなるまで見送ってから、豊が実生に声をかけた。
「ええ。入社以来の友人で……」
律人が去った方角から、豊に視線を戻して実生は釈然としない気持ちを抱えながら、答えた。どこか、律人は変だったと思う。
「先輩かと思ったよ。ずいぶん、落ち着いているね」
豊のコメントに実生は苦笑した。だが、否定することもできない歴然とした事実で、実生は素直に頷く。
「あ、豊さんは仕事ですか?土曜日なのに?」
律人と比べられることが嫌で、実生は先ほどから疑問に思っていたことを口にした。
「まさか。さすがに土日は休みなことが多いよ」
言いながら、土曜日なのにきっちりスーツを着ている自分を見下ろして、このせいかと思ったらしい。
「人と会ってたからね」
はにかんだ笑顔が幸せそうで、実生は聞いてもどうにもならないことをつい口にした。
「デート?」
「まあね」
間髪入れずに告げた豊は手にしていたやけにかわいらしい紙袋を掲げて見せた。30歳を超えた男性なら当たり前だと思う反面、口に苦いものが広がって、それが彼女がいて羨ましいのかなんなのか実生にもよくわからなかった。
「いいな」
それでもぽつりと告げて、実生は豊に頭を軽く下げる。おやすみなさいの意味だった。お互いの家の前で、こんな時間に立ち話もそろそろ近所迷惑だろうと思ったから。
「実生くん、またね」
意図を正確にくみ取ったらしい豊は小声でそう付け加えると自宅の門を開いて中に入っていった。
隣の優しいお兄さんはちっとも変らなかったが、時は緩やかに個々の立場を変えていく。胸の奥が少し苦しいような気がして、自室へ向かう階段をのぼりながら、なんとなく嫌だなと思っている自分を子供っぽいと実生は笑う。憧れの人が誰かのものになるのが悔しいようなやっぱりこれが当たり前だというような何とも言えない気分だ。
結婚するんだろうか。どんな人なんだろうな。
豊の彼女ならかなりの美人だろうと想像するもののやっぱりそれは顔のないシルエットでしかない。会ってみたいと思う反面、見たくないような気もして、実生は苦く笑った。
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