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「天空国の守護者」
地上編

逃亡の旅(4)

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セインを加えた旅が始まった。
襲撃の煩わしさとセインの助言も相まって、一度は人里を避けた旅は、再度、街を目指すものに切り替えられた。
大きい街を抜けながら、海を目指す。すでに、4人は、トドルの西の国スランタに入っていた。
目的地が海の向こうの大陸だと聞いても、セインは反対しなかった。
あるかどうかもわからない大陸を目指して海を行く。
命がけだとはわかっていても、誰しもがわくわくする感覚を抑えられない。
きっとセインもそうだったのだろうとキリスエールは思う。
旅の進路は街へととったが、しばらくは何もない平原を渡る辺鄙な道行きで、セインが加わっても守護者からの襲撃の回数は減らなかった。
だが、セインのおかげで撃退するのに苦がなくなったのは事実だ。国主に匹敵するような力を練るセインを抑えられる守護者は存在しないし、下手したら、セインは感応力だけで戦意を失わせることすら可能だった。
セインが力を揮うと、向かってくる下位の守護者がその場で膝をつき一斉に頭を垂れた。身を隠すところがないために、タミルの背にかばわれながら、その有様を目の当たりにしたキリスエールは、あまりの光景に息をのむ。
数が多くて、どうにもならない時には、タミルの剣が炎が敵を薙ぎ、単身で突っ込んでいくレイラースが敵の隊列に穴をあけた。
圧倒的な強さにキリスエールが畏敬の念を強くしたのは皮肉としか言いようがなかった。
「それにしても鬱陶しいね」
宿屋の食堂でテーブルについたセインが頬杖つきながら、ため息をつく。
久しぶりに大きめの村に着き、4人は宿屋の1階の食堂で一つのテーブルを囲んでいた。
落ちついた宿はこの村で一番上等だったが、いまだ辺鄙な国境の村だ。食堂のテーブルはすべて木の手製で、すっかりあちらこちらが削れてささくれていた。テーブルに並べられた皿も郷土料理らしいが、イモが中心だ。
それでも野宿から解放され、人里での一夜にさすがのセインたちの表情のいくぶん明るい。
「まあね、たいしたことないとはいえ、数が多くて嫌になる」
その前の席でレイラースも頬杖ついて頷いた。
「ま、食料の調達もするからここ2日ほどはここにいる。その間は襲ってこないだろう」
「どうかな?」
レイラースの懐疑的な問いにセインは穏やかに微笑んだ。
「指揮をとっているのがアズールだからね。さすがに人間を巻きこんだりしない。そっちの方が後々、面倒だ。人間相手に政治的駆け引きなんて煩わしくてやってられないだろうしね」
「たしかに」
セインの言うことも一理あると思ったらしいレイラースが言いながら頷いた。
頬杖をやめて、レイラースは自分の前にあったイモを甘く煮た料理の皿を押して、キリスエールの前に置く。
キリスエールは驚いたように顔をあげて、レイラースを見た。
「もっと食べたほうがいい。これは甘いから食べられるだろう?」
キリスエールは困った顔をして、目の前の皿とレイラースに交互に視線を向けた。
「ここのところ食が進んでないだろう?体力をつけておかないとこの先もたない」
レイラースの指摘通り、バゼルを出てからキリスエールは思ったように食べられず、そのせいか少し痩せた。
「はい」
素直に返事をして、キリスエールは差し出された皿から、イモをいくつか取り皿へと移し、口に運ぶ。
「甘い」
キリスエールの言葉にレイラースのみならず、セインもタミルも微笑んだ。キリスエールは視線を下げる。
あまりに甘やかされていて、身の置き所がなかった。3人が3人ともにキリスエールを甘やかす。キリスエールは自分が深窓の令嬢になったような気さえしていた。
部屋割りにしてもそうだ。二人部屋だったので二手に別れればいいと思ったのに、結局、キリスエールを一人部屋にするために、全員ばらばらに部屋を取った。
一人の方がよく眠れるだろうという配慮らしいが、キリスエールにしたら宿代がもったいないと思う。
「あと3日もいけば、スランタの第3の都市、クリルに着く。ここは交易の盛んな交通の要所だから、かなり大きな街だ」
セインが地図の一部を机に広げて、街の場所を指でとんと叩いた。
「北からは鉱物が、南からは糸が入ってきて、ここで取引されている。人口も多く、出入りも激しいから、さすがにアズールでも手が出せない。ここにしばらく滞在して彼らの監視を眩ませるといいかと思うけど、どうかな?」
セインの言葉にタミルが頷く。
「ずっと旅から旅だったからな。身体を休めるのは賛成だ。永住するように見せかけて、相手の油断をみて街を出たらいいだろう」
「そうだね。家を借りて、しばらくそこで暮らすのも悪くない」
レイラースも賛成の意を示した。
「キリスエールはどう?」
セインに訊かれて、キリスエールは、はじかれたように顔をあげた。今まで、だれもキリスエールに旅程を訊いたことはない。すべてタミルとレイラースで決めていた。
キリスエールは何を言っていいかわからずにセインを見る。
「今は僕たちはこの辺りにいる。で、ここがスランタ」
セインが地図をキリスエールの前に持ってきて、指で場所を示してくれた。キリスエールはそれを食い入るように見つめる。
「最終目的地は、海沿いの街シイハンだけど、まだまだ、ずっと遠いからね。ここで物資の調達をして、できたら少し旅費も稼いで、それからだって遅くはないだろう?」
シイハンの場所はスランタよりさらに西で、国をもう一つ越えなければたどり着かない。セインの言っていることはもっともな気がした。
守護者の襲撃とか彼らの思惑とかはキリスエールにはよくわからない。だが、ここまででもずいぶんお金は使っているし、セインの言うとおりきちんと蓄えて、計画を立てて、シイハンを目指したほうがいい気がした。
「そうですね」
黙って地図をみつめていたキリスエールは、視線をセインに戻して、にっこりと微笑んだ。自分の意見も求めてくれたことがとても嬉しかった。キリスエールも旅の仲間だと認めてくれたようで。
だから、感謝をこめてキリスエールはセインを見つめて笑んだ。タミルとレイラースが息をのむ音がした。驚いているようだ。
「じゃあ、決まりだ」
セインもキリスエールに微笑みを返して言う。
「出立は明後日の朝。向かうはスランタだ」
「え?あと3日の距離なんですよね。それなら、明日出立して、向かったほうがよくないですか」
地図の距離が思ったより遠くなかったこともあって、キリスエールはつい疑問を口にした。いつもは差し出がましい口は挟まないようにしているが、セインが意見を聞いてくれたことが嬉しくて、つい訊いてしまった。
「確かに。でも食料はすでに3日分はないし。休めるときに身体を休めておくのも大事だ。明日は旅の準備をして、明後日、早めに出ることにしよう」
嫌がらずにセインはキリスエールに説明をしてくれる。確かにそうだとキリスエールは思いしっかりと頷いた。セインはいつもこうやって、いろいろなことを教えてくれるとキリスエールは自分がトレジャにいた時のことを思い出す。天空国のことも人間と守護者との関係もセインが根気よく教えてくれた。
「食事は終わった?」
訊かれて、キリスエールは再度、頷く。その明るい表情をタミルとレイラースがまぶしいものでも見るように見つめていたことをキリスエールは気が付きもしなかった。
「先に部屋に上がっていたらいい。僕たちは少しお酒を飲んでいくから」
それにも素直に頷いて、キリスエールは席を立つ。
「じゃあ、お先におやすみなさい」
ぺこりと頭を下げて、キリスエールは2階の部屋に上がっていった。

「あんな顔、久しぶりに見た」
キリスエールが階段から姿を消すとレイラースが零すように呟いた。
「ああ。ここのところうつむいてばかりだったからな。疲れているんだと思っていたが」
タミルもそれに同意する。
「おまえたちはキリスエール大事あまりに、彼を疎外しすぎだ。キリスエールは子供でもか弱い女性でもない。それを気に病んで、ふさいでいるのに気付かなかったのか?」
セインの指摘に二人は口を引き結んだ。
レイラースは、もちろんキリスエールが塞ぎ込んでいるのには気が付いていた。感応力が強い彼にしてみれば、そばにいればキリスエールが強く思うことが手に取るように視えるのだから。だが、最近は、キリスエールが自分を疎んでいたらと思うと怖くて、レイラースは、キリスエールが鬱々としていてもその詳細からあえて目を背けていた。
タミルにはキリスエールの心は見えない。その様子から察するように努力はしているが、何をそんなに気に病んでいるのかは全くわからなかった。
「彼も男だ。それに、すでに18歳を過ぎている。人間はその年には自分の家庭を持っていてもおかしくない。キリスエールにだって考える頭も想いもあるだろう」
だから、子供扱いするなとセインは言うのだ。
確かに言われる通りなのだが、レイラースにしてもタミルにしてもキリスエールは守り、慈しむのが当たり前のか弱い少年だった。何もかもから守って、風にも当てたくないとすら思っている。
しかし、キリスエールはそれが窮屈だと感じているのだ。
「そうだな」
あまりにあたりまえのことになぜ、今まで気が付かなかったんだろうとタミルは自嘲した。
「街について、キリスエールが働きたいと言ったら言うとおりにさせてやろう」
セインの言葉にレイラースとタミルはセインを見た。そんなことは危険がないということがわかってからでないと認められないと顔に書いてある。
セインはため息をついた。
「気付いてないかもしれないが、追われているのは僕たちであって、キリスエールじゃない。危険なのは、僕たちと一緒に逃げているからだ。キリスエールは人間で、人間界で何をしようがまったく守護者たちには感知できないだろうし、僕たちと一緒にいなければ、捕まることもない」
そうだろうとセインは二人を見た。
「本当だったら、彼をどこかの街で自由にしてあげるのが一番だ」
セインの言葉に二人は反論しようと身を乗り出した。それを手でセインは制する。
「わかっている。それができたら、一緒に逃げてきていない。僕も同じだ。キリスエールを手放すことはできないだろう」
タミルは机の上に置いた拳を握りしめた。レイラースは睨むようにセインを見つめる。誰も同じことを思っていた。たとえ、キリスエールのためにならなくても、この手を離すことは絶対にできないと。
「譲れるところは譲ってやろう。キリスエールに自由をあげられないなら、国主と同じになってしまう」
セインの言葉は真実だった。タミルもレイラースも見えていなくて、あえて見ないようにしていた現実だ。檻に閉じ込めて守っても、キリスエールは幸せにならない。それでも、奪われたくなくて、そうせざるを得ないと思ってた。
がたんとタミルは席を立った。
「タミル?」
「先に上がる。セイン、おまえの言うことはわかった。言うとおりだとも思う。だが……」
時間がほしいのだとタミルは言葉を飲んで、背を向けた。そのまま階段を上がっていく。
レイラースも黙って立ち上がり、緩やかに首を横に振るとそのまま部屋へと引き上げた。
「仕方ないね」
手元の杯をぐっと干して、セインは切なげにつぶやいた。
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