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「天空国の守護者」
トレジャ編

トレジャ

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キリスエールの体調もあって、トレジャの入口にたどり着くのに国を出発してから1月を要した。アルタイルから降りたキリスエールは目の前にそびえる荘厳な石造りの建物を見上げた。複雑な彫刻と何本も林立する塔が特徴的な建物は、カーラルと呼ばれている。聖なる門という意味だ。
訪問を告げるとカーラルから灰色のマントですっぽり全身を覆った人が2人出てきて、キリスエール達に頭を下げる。
「ようこそカーラルへ。長旅お疲れさまでごさいました。ここからは我らがご案内を。聖なる人よ」
守護者に捧げられる人は「聖なる人」と呼ばれている。守護者から人を守る選ばれた人という意味らしい。
キリスエールも頭を下げた。
キリスエールの後ろに立った3人の男たちも頭を下げる。従者としてつき従ってきた父の腹心の部下だ。
「確かに、キリスエール様をお届けいたしました」
「お任せ下さい。お預かりいたします」
頭上で交わされる挨拶にキリスエールは乾いた感情を持て余す。
両親と別れる時、故郷の領土から出た時、泣き過ぎたからだろうか。もう、自分の中に何も残っていない気がした。
「それでは、ここで我々は御暇いたします」
従者としてつき従ってきた父の腹心の部下3人はキリスエールを見て、深々と頭を下げた。
「荷物の持ち込みは認められております。荷物は馬につけました。このまま馬もお持ちください」
「ありがとう。長旅ご苦労様でした。俺に付き合ってこんな遠くまで、ありがとう」
キリスエールの言葉に従者は三人、頭を下げたまま涙した。彼らはキリスエールの為人(ひととなり)をよく知っている。小さいころから素直で明るくて、可愛らしいキリスエールを愛してきたのだ。
「キリスエール様……」
言葉を詰まらせる男たち一人ひとりの肩を抱き、ありがとうとキリスエールは繰り返した。
「早く帰ってあげて。父が待っているから。私は大丈夫だったと伝えてください」
無理をしてキリスエールは微笑んだ。彼らには笑っていた自分を覚えていて欲しい。この旅の間、泣いているところばかりみられているから。
「こちらへ」
マントの二人に促され、キリスエールはアルタイルの手綱を取った。アルタイルは小さな車を牽いている。
もう一度、ありがとうと呟くと父の部下たちは深々と腰を折った。
振り返ることをせず、キリスエールはカーラルの扉をくぐった。
内部はひんやりとしていた。石造りであるからあまり熱を通さないのかもしれない。高い位置にあるいくつもある窓から降り注ぐ日の光が、床に不思議な模様を描いていた。闇と光が織り成すタペストリーのようだ。
たくさんの柱が林立し、どこまでも続いて見えた。
「馬とお荷物は一足先にお住まいになる処に届けておきます、聖なる人」
案内役のうちの一人の言葉にキリスエールは建物の内部を見回していた視線をそちらに向けた。
答えに躊躇する。アルタイルの手綱を握る手に力を込めた。
「大丈夫です。すべてあなたの物ですからきちんとお届けしますよ。ただ、馬は持ち込まれた方がいないので、われらの厩に一緒に。そのうち、お部屋の側に厩を作りましょう」
取り上げられるとの懸念を払しょくする言葉に、キリスエールはアルタイルの首を撫でる。アルタイルは鼻をキリスエールの頬に押し当てた。
「アルタイル。先に行ってて。後で様子を見に行くからね。お前をつきあわせてごめん」
アルタイルはそんなことないよというように鼻面をキリスエールの頬に寄せた。
鼻面を優しく撫でてやり、こわばってしまった手をぎこちなく開き、手綱をマントの一人に手渡す。
「確かにお預かりしました。では後ほど」
マントの男は頭を下げると馬をひいて別の通路へ入っていった。
「あなたはこちらへ」
もう一人が先導し、さらに奥へと導かれる。
建物の中は広く、床は大理石でできていた。コツコツと足音だけが高い天井に響き渡る。広いがなにもない。ただ、石柱だけが規則正しく、並んでいた。
聖堂だとキリスエールはぼんやり思う。守護者を奉っているんだろうか。
長い歩みの果てに、端に突きあたった。大きな扉が石の壁に嵌っている。
ひんやりとした空気がゆっくりと動いた。肌をそよと風が薙いだ。
扉が左右に音もなく開く。そのせいで起きた風だと知った。
扉の向こうも広い部屋だった。こちらは柱は立っていなかった。広間のような空間の真ん中に赤い絨毯がひかれ、左右にたくさんの椅子が並んでいた。しかしそれらに座る者はない。
促されて、部屋へと歩みを進める。部屋の最奥までいくと、一段高くなっており、そこに豪奢な衣装を身に付けた男が装飾された椅子に座っていた。
「よく参られたキリスエール殿」
止まるように示された場所で立ち止まると壇上の人物が言った。
聖なる人ではなく名前で呼ばれたとぼんやり思う。
「ここは人の世界の果て。天上界と人間界の境目。あなたはここを通りぬけ、奥の扉から天上と人間界が交わる場所へ進まれる。一度、通ったら二度と戻ってこられぬ道」
そんな回りくどいことを言われなくても分かっている。もう二度と故郷には帰れない。
そこで、結婚し、家族をつくり、生涯を過ごすと疑いもしなかった故郷はすでに遠いものになってしまった。
「あなたの衣食住はすべて我々が保障しましょう。トレジャでの掟はただ一つ、守護者に逆らわないこと、守護者の望みをかなえること。あなた方は、守護者への奉仕者となるのです」
生贄だろうと心の中で悪態を吐く。守護者の望み。そんな綺麗なもんじゃないだろう。要は、身体と命を差し出すことだ。何をされても文句を言う権利もない贄。
何事にも前向きで明るくひねくれたことのないキリスエールですら、この現状を前にしてひどい言葉を口にせずにはいられない気分だった。
「さあ、お進みなさい。人界に別れを告げるのです」
ここまで先導してきた男が青い瓶に入った水をキリスエールに撒いた。
この儀式めいた茶番は何なのだろう。
こんなことをしたって、俺から人間としての権利を奪うことには変わりがないのに。守護者に逆らわず、殺されても文句も言えない。
「あなたの前途と奉仕に祈りを」
壇上の男の持った金色と色とりどりの宝石でできた飾りの杖がシャランと音を立てた。
付添いの男が青い色のマントをキリスエールに掛けた。フードも掛けられる。
「こちらへ」
マントの男に促されて、キリスエールはそれにつき従った。
段の下にあった小さい扉をくぐって、奥へと歩いていく。今度は狭くて暗い通路がどこまでもまっすぐ続いていた。装飾もなく、ただ、土を掘って石で固めただけの光も届かない道を先導の男の蝋燭の明かりだけを頼りに進んでいく。まるで地獄の道行のようで、キリスエールの心はさらに沈んだ。
蝋燭の明かりでできた影が大きくなったり小さくなったり、壁に踊り、怖れと不安で胃の底がもやもやした。
どのくらい歩いたのだろう。一番奥に扉が見え、先導した男がそれを開いた。彼はそこから動くことなく、キリスエールに道を譲る。扉の向こうは明るかった。外のようだ。
何の躊躇もなく扉をくぐると明るい光が目を射た。急に明るいところにでたので、視界が白く染まり、何も見えない。何度か目を瞬いて見えるまで待った。
「それでは私はここまでで」
後にしてきた扉の向こうから声がした。
「ここからは俺が案内する」
物が見えてくると目の前に別の男が立っていた。
後ろでマントの男が深々と頭を下げ、キリスエールが会釈を返すと扉が背後でバタンと閉じた。石作りの壁にはまった小さな扉。出てきた扉を見ると、取っ手がなかった。片側からしか開かない扉なのだ。
もう、戻ることはできない。
大きく息を吐き出し、新に現れた案内人に続く。

キリスエールのトレジャでの生活がこうして始まった。
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