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告白の向こうへ

告白の向こうへ(7)

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誰かが名前を呼んでいる。何度も何度も熱を持った言葉が鼓膜を震わせ、実生は近くにあるぬくもりに身体を寄せる。
「実生」
かすれた切なそうな低い声が聞きなれたものである気がして、実生は身じろいだ。
「実生」
再度名を呼ばれて、実生はゆっくり瞼を押し上げた。もう少し眠っていたかったのに、誰だと思いながら。目を開けても薄暗くてよく見えず、実生は何度か瞬きを繰り返す。
目の前のぬくもりが人の身体だと認識し、驚いた実生は頭上を振り仰いだ。
「うそ」
腕に囲んで心配そうに見下ろしているのは、ずっと会いたいと願っていた律人で、実生は夢を見ているのかと不安になる。
確かめるように何度も瞬きを繰り返すと実生の顔を覗き込んでいた律人の顔がさらに近づいて、実生の瞳を覗き込む。
「実生、目が覚めた?俺がわかる?」
あまりにぼんやりしていたから不安になったのか、心配そうに律人が実生をみつめていた。
「……小野原」
名を呟くと身体を囲っていた腕でぐっと抱きしめられた。
「よかった」
痛いくらいに腰と背を抱きしめて、身体に引き寄せられ、実生はなにが起きているかわからずに慌てた。どうして、律人の腕の中で目が覚めて、さらに抱きしめられているのだろう。
「小野原?」
何がなんだかわからなくて名を呼ぶと抱きしめる腕に力がこもった。頬に当たる肌の感触が温かく、さらに触れ合った場所がどこも素肌であることに気付いた。
「お、小野原!」
自分も律人も服を着ていない。裸のまま抱きしめられて、たぶんベッドだろうところに寝転がっていることを認識した実生はパニックになる。
どうして。なんで。どうなっているんだ。小野原ともしかして……。思考はめまぐるしく回って、何が起きたかわからず、わかりたくもないと思っている。
「落ち着け、実生」
腕の中で暴れだした実生を腕の力と足を絡めることで押さえつけ、律人は実生の名を呼ぶ。
「離せって。いったい何がどうなって」
くるりと身体を反転させられて、両腕を顔の横で縫いとめるようにし、ばたつかせた足は膝で押さえつけられて、気付けば、実生は律人にベッドに押し付けられていた。
「落ち着けって」
実生の抵抗をあっさりとふせいで、律人は上から実生をまっすぐに見下ろした。実生もあっけにとられて、律人を見つめ返す。
久しぶりに見る律人はどことなく疲れているように見えた。だが、瞳だけが力を持っている。昏い熱が目の奥にちらちら揺れているのが、さすがの実生でもわかった。その瞳に怒りが見えるのにも気づく。
「おのはら」
力なく呟くと実生をベッドに押さえつけた律人がほっと息を吐く。
「憶えていないのか?俺の部屋の前で倒れてたんだぞ」
「倒れてた?」
「そう。全身ずぶ濡れで、部屋の前は水浸しだしで。俺が帰ってこなかったらどうなってたと思ってんだ」
上から睨み付けられて、怒ったような声で言われて、実生は顔をそむけた。
「立派に不審者だろうが」
「不審者ってなんだよ」
風邪をひくだろうとか、そういうことを言われると思ったのに、不審者とはひどいと実生は律人の顔に視線を戻すと睨み付けた。
「他人のうちの前で、座り込んだ上に寝込んだら、通報されても文句言えないと思うが」
ふふんっと笑われて、実生は憮然とした顔をする。律人の言葉にも一理あるが、まずはずぶ濡れの理由を聞いてほしいと思う。
「で?」
その心を読んだわけでもないだろうが、律人は実生を押さえつけたまま訊く。さらに顔を近づけられて、律人の黒い瞳が視界に広がって、実生はうろたえた。
「え、えっと。雨がひどくて、傘もってなくて……」
ここへきたら言おうとしていた文句は何一つ思い浮かばない。律人の太い鎖骨とか、男らしい胸板とかそんなことに目がいって、見慣れているはずなのに、実生はその顔に見入ってしまう。怒りを含んだ真剣な表情は見たこともないようなもので、その精悍さに実生はつい視線を奪われ思考が止まってしまった。
「理由になってない」
会社から自宅への帰り道にあたらないこのあたりを実生が歩いていたわけを説明できないと律人は責める。
「だ、だから、そ、そう。ぐ、具合でも悪いのかなあって……心配して……」
律人に会いたくて、あの凛って子のことを問いただしてと思っていたのに、口から出てくるのは全く違う言葉で、実生は視線を律人の顎や額にさまよわせる。
目を合わせもしない実生にイラついたのか、ほかの理由があったのか、律人は実生の手首を持つ手の力を強めた。
「へえ。心配ね」
律人は艶っぽい笑みを口元に浮かべる。
「この間のこと忘れたわけじゃないだろう。ここに来るってそういうことだって思わなかった?」
瞳を眇めて、律人はさらに顔を近づけ、実生の首筋に唇を落とした。「ん」
実生は身体をギュッと固くする。だが、律人は頓着する気がないらしい。舌の先で、首筋をたどられて、実生は背を浮かした。
「小野原、ちょっと。待て」
「待てない」
あっさり言われて、律人の左手が肌の上をまさぐる。ぞくりと実生の肌が粟立った。
「冷たくなったおまえから衣服を剥いで、ずっと抱きしめてた。ぐったりしてて、氷みたいに冷たくて、このまま目を開けなかったらってずっと不安だった」
「小野原……」
ぐっと抱きしめられて、実生はその腕の熱さに強さに律人が自分のことをどれだけ心配したのかを知る。
「いまはこんなに熱い」
囁く声が甘くて実生はさらに上がる体温を感じた。恥ずかしい。
「このままおまえの無事を確かめる」
「え?」
何かを反論できないまま、唇に濡れた感触を覚えた。やわらかく濡れた唇が重なったと思ったとたん、舌で唇をたどられて、それが熱くて、実生はかすかに喘いだ。
「実生」
名を切なげに呼ばれたと思ったら、唇を割って舌が口腔内に入ってくる。熱い舌が実生の口の中をたどって、その甘さに実生は背を震わせた。
「ん……」
荒々しく舌で舌をなめられ、口蓋をくすぐられ、さらには舌を吸われて、実生は息が上がっていく。律人のキスは巧みで、どこをたどられてもぞくぞくと疼くような感覚が背を這い上がる。
ダメだと思うのに頭の中が霞んでいき、もっとして欲しいとすら思った。飲み込めなかった唾液が口の端を伝って、頬から首筋へと落ちていく。
律人はどこでこんなキスを憶えたんだろう。そう思ったとたんに、凛の顔が脳裏に浮かんで、実生はとっさに律人の肩を両手で強く押した。律人の唇が離れる。湿って熱を持った実生の唇が外気に冷やされていく。さらに顔を寄せようとする律人の顎を無理やり押して近づけさせない。
「なんだよ」
それでも身体を倒して実生にのしかかろうとする律人を実生は下から必死に押さえた。
「待てってば。俺の話を聞けよ」
文句をいいながら、さらに手を添えて押しのけると律人の顎がのけぞる。再度、口づけをしようとあがいていた律人はいきなり身体を起こした。
「ああ。もう」
髪をかきあげながら、律人は実生の足の間に座った。律人は上半身は裸だったが、下だけ短パンをはいている。
「で?」
実生も慌てて起き上がると毛布を手繰り寄せて身体に巻きつけた。自分は完全な真っ裸だったからだ。
「俺の服」
「だから、びしょ濡れだったって言ったろう?」
確かに下着まで雨が染みていた気がして、実生はぐっと押し黙る。髪をかき揚げながら実生を見る律人はやたらとかっこよくて、きれいに浮き出た鎖骨に、隆起する胸筋に色気すら感じた。
「で、話って?」
「なんで会社に来ないんだよ」
「話ってそこなのか」
呆れたように言って、律人はわざとらしくため息をつく。こんな状況で、ありえない質問だと実生を責める。その様子すら艶を含んで、実生の鼓動が早鐘のようになった。
「上司にどういっているか知らないけどさ、このままだとおまえの査定に響くし……」
違う。そんなことが言いたいのではないのに、どうにもうまく言葉が出てこなくて実生はありきたりの心配を口にする。
本当は『俺のせい?』と聞きたい。だが、それはあまりにおこがましくて、それに違っていたらと思うと怖くて、口にできない。
「そんなの決まっているだろう。おまえのせいだ」
まるで心を見透かすように律人に告げられて、実生は息をのんだ。身体がこわばって、見開いた目で律人を見上げる。律人がふっと微笑んだ。
「って言ってやりたいところだけどな、さすがにそんなことしない。おまえ、掲示見なかったのか?海外短期プログラムの通知」
「留学?」
「そう、試験と面接をクリアすれば、会社から派遣してもらえる制度で、アメリカの大学で専門課程の講義を受けられる」
実生はこれ以上ないくらい瞳を見開いた。知らない。否、確かに掲示は見た。だが、かなりの難関だろうし、研究部門が対象で、自分とは関係ないと思っていた。
「試験対策とその準備中。それに仕事はしている。俺の予定表を見ていないのか?客先へ回る以外は有給使ったりして休んでいるけど、報告には必ず、オフィスに寄っている」
オフィスにくる頻度が減った理由があまりに考えもしないことで、実生は驚きを隠せなかった。律人が試験に受かったらアメリカに行くことになって……。律人がいなくなる……。
衝撃が強すぎて、実生は何を考えていいかわからない。やっと自分の気持ちと向き合えたと思ったら、律人が遠くへ行ってしまうなんて。呆然と律人を見ていると律人がゆっくり距離を縮めてきた。それすら認識できずに、軽く肩を押されて、実生は背中からベッドに倒れこんだ。
ぽすんと軽い音が背中でした。
律人がのしかかるように身体を倒し、耳を甘噛みして、首筋にキスを落とす。実生は瞳を見開いたままそれに抵抗らしい抵抗もみせずに、じっとしている。何も頭に浮かばない。律人のいない生活なんて想像したこともないのだから。
「実生、どうした?抵抗しないなら犯るぞ」
顔を覗き込まれて、軽い口調で言う律人を見上げる。言葉は軽いのに律人の瞳は欲に潤んでいた。
実生はさらに力を抜いた。もう、何もかもどうでもいいような気がしてくる。律人なら試験にもあっさり受かって、留学の権利を手に入れるだろう。そして、自分は律人のいない生活を続けるのだ。
どうやって……?
律人のいない日常をどう過ごすか考えて、実生は途方に暮れた。少し会えないだけでこのざまだ。何をどうしたって、この虚無感とおいて行かれる寂しさは消えない。
「したいならすれば」
投げやりに呟く。
律人がこんな自分でも欲しいならそれでもいい。思い出にはなるだろう。凛はどうするんだろうか。一緒に行くのだろうか。恋人と新しい生活を始めたら、きっと実生のことなんてすっかり律人は忘れてしまうだろう。それなら……。
忘れられるよりは、ずっといいと実生は思う。それに律人が忘れてしまっても自分はきっと覚えている。ずっと一生、律人が自分に彼の欲を刻んだ記憶を背負うのだ。
「なっ……」
その言葉に律人が驚いた顔をみせ、動きを止めた。
「好きにすればいいじゃないか。どうせ、ヤりたかっただけだろう。好きだとか、そういう理由なんかつけずに最初からそう言えばいいのに」
「実生。おまえ、何を言って……」
「だってそうだろう。俺のこと好きとか言っといて、ほかにも好きな奴がいて、そっちがうまくいってて、付き合っているくせに……」
言葉は淡々と口をついた。もう本当に何でもどうでもよくなって、これ以上、律人が実生を嫌いになることもないだろうと、実生は心に浮かんだままの言葉を紡いだ。実生の肩をベッドに押し付けていた律人の手のひらに力が入り、怒っているんだろうかと思う。
「ちょっと待て。実生。何言ってんだ?ほかの奴?付き合っている?意味わかんねえ」
律人は呆れた顔で実生を見つめる。
「聞いたんだよ。付き合っている奴がいるって」
「誰だよ」
「この間、一緒にいただろう。凛とかいうモデルやっているきれいな男。あー。だいたい、おまえ、モデルしているなんて一度も……」
「実生」
すでに頭の中がぐちゃぐちゃな実生の意味をなさない言葉の羅列を咎めるように、低くそれでいて強い口調で律人が名を呼ぶ。それだけで、実生は口を閉ざした。真剣な顔の律人が実生を睨み付けている。
「凛って。なんで名前まで知ってんだ?会ったのか」
律人の眼差しがあまりにも強くて、そんなに実生に凛のことを知られたくなかったのかと思ったら、胸がひきつれるように痛んだ。やっぱり、凛が本命だと実生は確信する。
もう、嫌だ。どうにでもなってしまえばいい。
実生は律人から視線を外した。もう、律人の顔を見ていられなかった。「ああ。昨日、一緒にお茶した。可愛いよな、ずっとおまえのこと褒めてて、かっこよくて優しいってさ。それにさ……」
実生はそこで唇を噛んだ。言いたくなかった。恋人だと宣言されたなんて。いきなり口をとざした実生の顎を律人は掴むと自分の方に顔を向けさせた。
「言えよ。あいつなんて言ったんだ?」
強く顎を掴まれ、きつい瞳で睨み付けられて、実生は言いたくないとさらに唇を噛んだ。
「実生」
声が低くなって、律人の声に怒りの気配が含まれるのを感じる。だが、心が苦しくていつもなら敏感に感じ取れる相手の感情が見えなくなっていた。実生は視線だけでも律人から逸らして、口を開く。
「よかったな。あんないい子と付き合うことになってさ。恋人ができれば、俺なんていらないよな。友達でもいたくないって、もう会いたくないって?別に何とも思ってないならいいじゃん、そのくらい……友達でいたって……そんなに俺のこと……」
嫌いと言いそうになって、でも、言葉は出なかった。意味のない言葉を吐き出すたびに息が苦しくなる。そんなことを言いたいんじゃない。おまえを凛にとられたくないって言いたい。だけど、言えるわけもなく、ただ理不尽な言葉を並べるしかできない。
「実生、あいつなんて言ったんだ」
さらに声が低くなって、実生の顎を掴む手が痛いくらいで実生はぎくりと身体を固くする。怒らせたとようやく認識する。そっと律人の瞳を見ると、眇められた双眸できつく睨み付けられていた。その視線が強くて、やわらかく優しく微笑む律人とあまりにかけはなれていて、実生は瞳をそらせない。
「恋人なんだろう?」
冷たく淡々と言葉を吐いていると、自分は冷静だと実生は思っていた。だが、頬に律人の手のひらが触れて、その温かさに胸の奥を絞られて、すでに感情も思考もぐちゃぐちゃだと思う。
「なんで泣いて……」
「泣いてない」
「泣いているだろう」
律人の手で頬を撫でられ、涙を拭われると確かに自分が泣いていることに気付いた。律人の怒りは霧散したらしく、いたわるような瞳で実生を見下ろしている。
「うるさい。なんだか心臓が痛いんだよ。肋骨かも」
病院に行かなきゃと言った実生を律人がそっと抱き寄せ。こめかみに唇を落とした。どくんと鼓動が跳ねて、体温が上がる。
「病院じゃ治らないと思う」
「そんなはずない。雨のせいだ。濡れたからきっと悪い菌が……」
抱きしめる腕に力を込めて、それは違うと律人が囁く。
「凛はなんて言った?」
律人の口からその名が出て、さらに痛みが増し、実生は身体を固くした。
言いたくなかった。だが、律人が実生を抱え込むように抱きしめ、背を撫でるとその優しさに甘い感触に言いたくなかった言葉が口をついた。
「……俺の……律人って」
絞り出すように言ったら、声がかすれ、眦から涙が伝った。喉の奥に塊があって、何度も飲み下すのに、どこにも行ってくれない。痛くて苦しくて、実生は声をあげて泣いてしまいたかった。
「え?」
どうしてこんなに辛いのに、繰り返させるような真似をするんだろうと実生は思う。だけど、どこかに投げやりな気持ちもあって、実生は再度繰り返した
「俺の律人」
呟いた瞬間、律人が抱きしめる腕に力を込めた。痛いほどに抱きしめられる。
「初めて名前で呼んでくれた」
嬉しそうに耳元でささやかれて、その吐息の熱さに実生は言葉をなくす。そんな話じゃなかったはずだ。その言葉を言ったのは実生ではなく、凛だったはず。
「違うだろう」
「違わない。バカだな」
「どういう意味だよ」
「バカだからバカって言ったんだ。俺の心変わりなんてないよ」
律人はひどくうれしそうな口調でそう告げると腕に抱きしめた実生の毛布の合わせ目をはだけて、鎖骨の間に唇を落とす。
「痛いのは俺が治してやる。医者にいくより確かだ」
律人が囁くと息が肌に触れ、ぞくぞくとした感覚が背を這い上がった。「何言ってんだ。相手が違うだろう」
慌てて腕で律人を引きはがそうとするが、今度ばかりはうまくいかない。
「だから違わないって言った」
抵抗はむなしく、毛布ははだけられて、律人の手が肌を這う。その温かい感触に肌が震えた。
肌のなめらかさを堪能するかのように胸を撫でながら、律人はまっすぐに実生を見つめた。その瞳の強さにぞくぞくする。
唇が触れそうな距離で律人は近づけた顔を止めた。
「好きだ」
囁かれて、吐息が唇に振れて、実生はピクンと背を震わせた。
「俺が好きなのはおまえだけ」
その言葉が胸にしみこむと実生の心臓がまた痛みを覚える。
「だけど……」
「信じろ」
言い切られて、実生は泣きたいような気分になった。それでも、あのきれいな凛の顔がちらついて、小さく首を振る。その顎を律人の手に押さえられる。
「実生」
名を呼ばれて、唇を重ねる。啄むようにキスをして、下唇を甘噛みされる。
「弟なんだ」
唇を合わせたまま律人が囁き、気はすんだかと瞳を覗き込まれた。
「おとうと……?」
言葉を繰り返すも意味がよくとれない。
「そう、義理だけど。父親が違う」
「弟が恋人……?」
「だから違うって」
くすくすと笑いながら、律人が指で胸をはじく。
「……やっ……」
背がぴくんと跳ねた。
「いいんだったよな。俺の好きにして。いやだって言ってもやめてやる気ないけど」
囁くなり律人が唇をふさいだ。答えは聞く気がないという意思表示にも思えた。
あいている手で、立ち上がった胸の粒を指でこねられて、実生の息が上がった。その瞬間を狙ったかのように、舌が口の中へ滑り込んでくる。舌の縁を舐めて、口蓋をたどり、歯茎の内側を舌が這って、実生は背を震わせる。熱くてねっとりとした感触に身体がしびれるような気がする。
律人が自分を欲しがって、貪っている気がする。それがうれしくて恥ずかしくて、実生はそっと瞳を閉じた。もう、何がどうでもよかった。ただ、布越しに伝わる律人の体温が嬉しい。もしかしたら最初で最後かもしれない。律人は好きだって言ってくれたけど、それだって、ただ自分としたいだけで、抱くだけ抱いたら捨ててしまうかもしれない。だけど……。
口腔内の隅々までたどると律人は実生の舌の先をつつく。実生も舌を動かした。律人の舌を吸うように、絡ませる。おずおずと腕をあげて、のしかかる律人を抱きしめた。
律人が舌をさらに絡みつかせ、実生の舌がそれを追う。濡れた音が耳の奥から聞こえる。甘くて熱い口づけに体温がぐっと上がった。
胸のあたりをさまよっていた律人の手が、実生の腹をたどり、そのまま淡い茂みの中で緩やかに勃ち上がった実生をそっと包んだ。
「……あっ……」
腰が浮くのを身体で押さえて、ゆるゆると律人は実生自身を上下に扱き始めた。
「やっ……あぁっ……」
荒い息の合間を声が漏れる。その声が濡れて甘くて自分じゃないみたいだ。
律人はもう一方の手で実生の髪を撫で、唇から顎へと口づけを下げていく。顎先を甘噛みされて、のけぞるとあらわになった白い首元にかみつくようなキスをされた。
「いっ……」
律人の歯が実生の柔らかな喉の皮膚に食い込んで、痛みを覚えた。だがその痛みが腰の奥から背を駆け上がる違う感覚にとって代わる。
「実生」
名を愛しそうに呼ばれて、肌の上をさまよった舌が、胸の突起を探り当てるとぺろりとなめる。
「……んっ……やぁっ……」
そんなところが感じるなんておかしいと思うが、舌先で胸をつつかれ、つぶされ、舐られると背がシーツから浮いて、声が抑えられない。
舌で胸を舐められ、手で追い上げるように自身を扱かれて、実生は首を左右に振って身悶える。強すぎる感覚に身体の奥の方から何かが湧いてきて肌を背筋をざわめかせる。
実生が身体を跳ねさせると律人はそこの場所を執拗に攻めた。
「はな……し……や……」
実生は手を伸ばして、自身を上下に扱く手に触れ、そこからはずさせようとする。もう、下腹の筋肉がひくひくと動いて、終わりが近いことを実生に教える。
「おの……は……ひっ……」
苗字を呼ぼうとすると痛いくらいに握りこまれて、実生は息をのむ。「名前で呼んで」
熱を帯びた声が囁いて、実生は律人を探して瞳をさまよわせた。
視線を下げると自分の胸を舌を出して舐める律人が見えて、その情景にすら煽られて、実生はぞくりと身体を震わせる。
「り……律人……」
息を吐くように名を呼ぶと、実生を追い上げる速度を上げる。
「そんなにしたら……達く」
「達けよ。気持ちいい?」
「やっ……」
それはできないと実生は首を横に振った。律人が握る実生自身からは透明な雫が浮いては棹を伝う。気持ちがよくてどうにかなってしまいそうだった。自分でするのとは違って、予測がつかないためにさらに煽られる。
「いいから。可愛いよ、実生」
その甘い声に胸の奥がずくんと疼き、我慢がきかなかった。実生は瞳を開いて、背をしならせた。頭の中が白く霞んで、熱い飛沫が腹を汚すのをぼんやりと感じる。
荒い息を浅く繰り返した。達した後の気だるい倦怠感を抱えてる実生をしかし、律人は許さなかった。
はじけて敏感になっている自身を指でたどられて、実生は首を左右に振った。
「やっ……」
怖いくらいの快感に実生が腰をよじるのを律人はシーツに押さえつけて、手のひらを実生の太腿に差し入れるとぐっと引き、その間に身体を入れる。
足を開く格好になった実生は、律人へ視線を投げる。たぶん、怯えた表情をしていたんだろう。律人が口端をあげて微笑んだ。壮絶に男っぽい笑みだった。
実生の体温が上がり、頬に朱が散った。
「大丈夫」
俺を信じろと律人の瞳が語っている。何もかも初めてなのはすでにばれているだろう。初めてのことは何でも不安で怖い。頭で知っていても身体は知らないから余計だ。
だが、律人の双眸に熱を感じさせるような光が浮かんでいて、知らず実生は喉を上下させた。
「ああっ……」
熱くやわらかいものに自身を含まれて、実生は悲鳴のような声を上げた。腰の奥から体験したことのない快感が這い上って、また自身が固くなるのを実生は自覚する。
「やだ。なんで……」
泣きそうな声に返るのは濡れた音だけで、律人が実生の昂ぶりを口に咥えたんだと認識した実生の腰がシーツを逃げるようにのたうった。身体と腕でそれを押さえつけられて、舌が絡んで先端を吸われた。
「……はぁっ……いやっ……」
言葉は拒絶なのに、吐かれる言葉は息が混ざった声で、ねだっているようにすら聞こえると実生は頭の片隅で思った。だが、あまりの官能に実生の思考が働いたのはここまでだった。昂ぶった先端が、律人の上顎の粘膜に触れると腰が揺れた。気持ちがよくて、ひっきりなしに痺れるような感覚が背を上っておかしくなってしまいそうだ。
実生の頭のなかを占めるのは、律人がくれる甘い快楽だけだ。自分が左右に足を開いて、それを持ち上げられているなんてことすらもう実生にはわからなかった。律人の唾液が棹を伝って後ろへと流れ、それを追うように律人の指が後ろの蕾を探る。
自分でも触れたことのないその場所を律人の指先が何度も撫でさすり、ぬるぬるとした感覚にすら感じて、実生は宙に浮いた足先をつっぱった。空を切った膝裏が律人の肩に触れ、そこで固定されると後ろの蕾に中に指が沈んだ。
「ひっ……ぁあっ……」
異物感に指を押し出そうとし、逆に律人の指を締め付ける。
「大丈夫。力をぬいて」
遠くから律人の艶が増した声が聞こえ、実生は唇を噛んで力を抜こうと努力をした。
「実生」
優しく響く声に実生は首を横に振る。その隙に律人の指がさらに奥へ忍び込む。
「やぁっ……それ、やっ……ああ」
襞を壁を指先で擦られて、実生は叫ぶように啼いた。それが律人を煽っているのだと自覚のないまま、甘い声を上げる。
痛いのか苦しいのか気持ちがいいのかいっしょくたになった感覚に翻弄されて、何がなんだか実生にはわからない。ただ、未知の感覚が躰の中を駆け抜けてただただ実生を翻弄する。
「実生、瞳(め)開けて」
いつのまにかかたく目を閉じていたらしい実生の耳に律人の声が沁みこんで、実生は瞼を押し上げた。焦点があうか合わないかのぎりぎりのところに律人の潤んだ黒い瞳が見えた。
「好きだ、実生」
情欲で掠れた声で囁かれて、唇をふさがれた。深い口づけにうっとりと酔う。
「……っ……」
唇をふさがれて吐息すら食われて、声は出なかった。身体を貫く衝撃に実生は身体を突っ張る。
指とは比べ物にならない質量のものが実生の小さな後口を刺し貫き、身体の奥へと進んだ。
熱いと思ったのか痛いと思ったのか実生にもわからない。ただ、衝撃の大きさに瞳を大きく見開き、口づけを解いた。
「はぁっ……ああっ……」
「ごめん、実生」
謝る声が聞こえて、それでも実生を押し開くものは止まらない。
「おまえの中、熱い」
ひどく幸せそうな律人の声に、実生はこの熱くて硬いものが律人自身だと、自分たちが繋がったんだということを認識する。
最後まで自身を埋めて、ぎゅっと実生を抱きしめた律人に実生はたとえようのないような幸福感を覚えた。
この瞬間、律人は確かに自分のものだと官能で白くかすむ思考の果てで実生は思う。
「……りつと……」
名を呼ぶと抱きしめる腕が強くなり、骨がきしむ音を聞いた気がした。「律人」
吐息で囁いて、実生は微笑んだ。
「……実生。おまえ、それヤバすぎ」
するりと腕を解かれて、中の律人が動き出す。
「はぁっ……ああっ……ん」
いきなりの抽挿に実生は目の前で動く身体にしがみついた。足が宙をけり、背がシーツを滑る。揺れる身体と視界を律人の髪がよぎる。
「律人」
切れ切れに名を呼ぶとさらに実生をゆする律人の動きが増した。
喘ぎは止まらず、荒い息と実生の甘い啼き声だけが部屋にこだまする。混濁した脳のなかを火花が何度も散って、汗でぬめる背がシーツから浮いた。
律人と自分の身体に挟まれた実生自身は張りつめて、律人が身体を動かすたびにこちらも擦られて、さらに実生は追いつめられた。
過ぎる快感がぎりぎりへと実生を追い立て、神経が焼き切れそうだ。「りつと……もう……」
たぶん、達くときに悲鳴を上げたと思う。だが、それすらも自分の声なのかどうかも認識できないまま実生は意識を手放した。

意識はゆるゆると浮上した。目をゆっくり開いてもあまりの倦怠感のせいで、夢の中にいるような心許なさを感じる。
耳にかかる吐息に気付き、実生は視線をさまよわせた。長いまつげ、うっすらと開いた唇。すっと通った鼻筋。
「小野原……?」
呟いた自分の声で、目の前で眠っているのが律人だと認識した。かすかに身じろぐと実生は自分が律人に抱きしめられていることに気付く。なんでと思った瞬間に、律人に抱かれたんだと、身体を貫かれて、ゆすられて、中を擦られて、信じられないほどの快楽の海に叩き込まれて、翻弄されたことを思い出し、実生は青くなって、それからかっと全身の熱を上げる。
好きだと何度も囁かれて、名を呼ばれて、それに応えるようになんども律人の名を叫んだ気がする。
恥ずかしくて身を固くし、律人の腕から逃れようと身体を後ろに引いた。
「んっ……」
ひくんと律人のまつげが揺れて、実生が動きを止める目の前で、律人の瞳がゆっくりと瞼の後ろから現れる。
双眸を開くと律人は微笑んだ。嬉しそうに幸せそうに笑まれて、実生は驚きに瞳を見開いた。
「実生?」
腰に回された腕に力を籠められて、少し離した身体を抱き込み、こめかみに唇を落とした。
「……なんで……?」
のしかかるようにされて、瞳を閉じようとする律人の胸を実生は両手で押した。
「なんで……?」
もう一度同じ質問をすると、律人は何度か瞬きをして、名を呟くと実生を見た。
「なんで小野原、まだ俺と……」
最後まで言えなかった。律人の気がすんだのなら、抱きしめて眠る必要などないのに。
実生の言葉に、不思議そうに律人は瞬きを繰り返した。
「小野原……」
「実生」
続けようと思った言葉は、律人に遮られた。
「俺のこと好きだろう?」
柔らかく微笑まれて、そう訊かれて、つい実生は頷いてしまった。律人が顔を近づけて、実生の唇を啄んだ。
「俺も。で、これって両想いって言わない?」
「したかっただけじゃなく?」
「したかったよ。好きなら当然だろう?実生は熱くてエロくて、かわいかった」
律人の言葉に実生の顔が真っ赤になる。
「やっと手に入れた」
声に重みがあって、それが安堵の意味に聞こえて、実生はまじまじと律人を見つめた。それからじわじわと言葉が心に沁みてきて、実生はふるりと身体を震わせた。
いままで律人が言ってくれたことがすべて真実だったということが理屈じゃなくて心で理解る。
「……りつと」
嬉しくて幸せで、瞳が潤んだ。瞬くとほろりと涙がこめかみを伝う。「実生」
驚いたように律人が身体を起こす。
「大丈夫か?痛い?つらい?俺、我慢できなくて、がっついちゃったから……」
おろおろと実生の肩や頭を撫でる律人に実生は首を横に振った。
「嬉しくて」
言って涙で濡れた瞳で律人を見上げた。本当は身体は怠くて、ありえないところが痛くて、腕をあげるのすら億劫だったけれど、律人を失ってしまわなくてよかったと実生は心の底から思う。
「あー」
唸るように声をあげて、律人は動きをとめ、腕を上げると頭の後ろに手をあげると自分の髪をかき乱す。
「おまえって」
投げるように言って、律人は実生の二の腕を掴むとぐっと持ち上げた。身体が浮く感じがして、痛みに顔をしかめるとそのまま律人の胸に抱き寄せられた。
「誘っているとしか思えない」
胸に深く抱き込まれて、落とされたセリフに実生は首をかしげる。
「でも違うんだよな。わかっているけど、この無自覚さは……あー。どうにかしてくれ」
天井を仰いだ律人を不思議そうに実生は見上げる。
「そういうところもひっくるめて好きだから仕方ないか。だけど、覚えとけよ実生」
律人は言いながら実生の耳に唇を当てた。
「おまえが煽ったら、俺、我慢なんてしないからな」
低く甘い言葉を耳の中に注ぎ込まれて、実生は首まで真っ赤になった。その上、律人は実生の耳を甘噛みすると腰の後ろで手のひらをうごめかした。
「え……?小野原……?」
さわさわと肌を律人の大きな手が這って、実生は身体をよじる。
「名前で呼べよ。昨夜は可愛く呼んでくれただろう?」
「ちょっ……」
首筋を舐められて、体中を律人の手が悪戯に這い出して、実生はその腕から逃れようとする。
それを腕で押さえつけられて、律人は実生の腿に手をかけるとさっさと身体を両足の間に入れてしまう。
そして、唇をふさがれた。熱い舌が忍び込んでくると、めまいのような酩酊感が襲ってきて、実生の体温が上がる。それがまるで足りないと律人に訴えているようで、実生は身体を震わせた。
ゆっくりと唇を離されて、潤んだ瞳で律人を見上げると目があった。「りつと」
甘い気分で名を呼んだら、それが煽っているって意味だと言われて、貪るような口づけをされた。
食われるような感覚に、心の深いところがじんとして、実生は律人の首に腕をからますとねだるように引き寄せた。
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