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「天空国の守護者」
地上編

クリルの街(1)

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赤い屋根瓦が強い日差しを受けてキラキラと光る。これを見るたび、鱗をひらめかす赤い魚が空を泳いでいるように見えるとキリスエールは、立ち並ぶ家々の屋根を眺めながら道を行く。
目指すは、西の市場だ。
スランタ国第三の都市、クリル。
西と東を結ぶ交易の要所で、様々な物資と人種が流れ込む雑多な街。文化も混ざり合って、対立して、混沌とした雰囲気が渦巻いている。
白い漆喰(しっくい)の壁に赤い瓦屋根が特徴の街並みは、見渡す限り続いている。
クリルの街は、中央が小高い丘になっていて、頂上に石造りの神殿がある。道はすべてその神殿に向かって走っていた。神殿が街の中心であり、人々の憩いの場所でもあった。
街の西には、大きな湖であるレス湖があり、物資の多くは船でここから、湖畔の町へと運ばれる。湖をとりまく陸路も平坦な道が続き、大きな山もないせいか、キャラバンが組みやすく、多くの商人が荷を持ってこの街を訪れては、盛んに商売に精を出す。
おかげで、クリルはひどく活気のある雑多な街だ。
キリスエールたち一行が、この大きな交易の街について、すでに2月が経っていた。
セインの計画通り、路銀を稼ぎ、荷を用意して、さらに西へと向かうためだ。
この街で夏を越したら、また、旅を再開する計画になっている。これから向かう西には砂ばかりの土地があり、そこは夏には灼熱と呼ぶほどの気温になるため、夏は避けた方がいいということになったからだ。
それだけ長居するなら宿屋に逗留するのも大変だと、町はずれに彼らは家を借りた。屋敷とも呼べるような大きな家で、1階がキッチンとリビング、2階に4つのベッドルームを保持し、屋敷の前面は道に面しているものの、裏庭はかなりの広さだった。
キリスエールからすれば、贅沢すぎると思うほどの家だったが、3人にいいからと押し切られた。
だが、結果的には、よかったのだろう。キリスエールの旅の疲れはすっかり取れ、セインたちに心配された体調も万全だ。
路地を抜けて、西の市場へと入ると広い道の両端には小売店が軒をつらね、道の真ん中には、野菜などを売るテントがひしめいていた。朝の食事を振る舞う屋台もあるらしく、焼き肉の香ばしい匂いや、この地方名産の麦のお粥の甘い香りが漂ってくる。その間を様々な髪や肌の色を持つ人々が泳ぐようにわたっていた。
活気のある通りを人ごみにまぎれながら、キリスエールは歩いていく。店を見るともなしに眺めながら、西の市場の中ほどにある植物の葉と羽の絵柄の看板を掲げる店の前で立ち止まり、躊躇なく扉を開いた。
店は小さく、入口入ったところがすぐにカウンターになっており、背後の壁は何段にもなる棚が備え付けてあった。そこには白い磁器製の容器が多数並んでいる。
「おはようございます」
元気にあいさつをすると店の中にいた人物がふわりと笑って、「おはよう」とかえす。
腰まで届く長いこげ茶色の髪を白い幅広のリボンで結び、白いエプロンをした20代半ばほどの男性だ。かなり中性的な容貌で、色白の面長の顔に、切れ長の瞳、華奢にすら見える痩せ形の肢体を持っていた。
キリスエールもカウンターの後ろへ回ると白いエプロンを取り上げて、腰に巻く。
それを横目で見ながら、こげ茶色の髪の青年はショーウィンドーの向こうへ視線を投げる。キリスエールは身支度に忙しくて、気付かなかった。
ここは、薬師トリアノンの店だ。種類豊富な薬草が手に入る薬屋。
この街に居を構えて、半月ほどしてから、キリスエールが見つけた仕事は薬草屋の助手だった。
この街に辿りついてしばらくは、キリスエールに外出の自由はなかった。路銀を稼ぐなら、キリスエールも働きたかったのに、外出もままならなかったのだ。とにかく、街の安全を走査するまではと、家から出してもらえず、どうしてもの時にはタミルを護衛につけてほしいと懇願されて、仕方なしにキリスエールは従っていたが、この街が比較的治安がよく、安全だとわかってから、ある程度、一人で外へ出られるようになった。
この街に来て、2週間以上が過ぎたころ、キリスエールは自分も働きたいとセインに望みを伝えた。
実は、仕事先の目星はすでにつけていた。まだ、領主の息子だったころから薬草についての知識は多く身に着けさせられたし、セインの屋敷で暮らす間にも自分で薬草を育てたりもした。そのため、薬草屋なら、働けるんじゃないかと思ったのだ。
キリスエールは旅の間に集めた乾燥薬草といくつかの木の実を持って、外出時に見かけて、よさそうだと思ったトリアノンの店に出向いた。
『働きたいんです』
そういったときのトリアノンの驚いた顔を思い出す。
『君が?薬草の知識はあるの?』
うろんげな眼差しで、キリスエールを見るとトリアノンは冷たく言った。
『はい』
キリスエールは持っていた袋からさらに小袋を出すと中身をカウンターに開ける。さらに、別の紙に包んでおいた乾燥した薬草も広げた。
トリアノンはそれを眺め、いくつか手に取って、それからキリスエールへ視線を戻す。
『どこで手に入れた?』
厳しい顔のトリアノンに真剣なまなざしをむけて、キリスエールが口を開く。
『その薬草は自分で育てて、乾燥させたものです。そちらの木の実は旅の途中で自生しているものを採取しましたし、丸薬も根をすりつぶして、自分で練りました』
キリスエールのよどみない説明にトリアノンは、瞳の光を和らげた。盗品でないことがわかってほっとしたのかもしれない。
『驚いたな。このチッコリアの実は心臓の病に効くし、こっちのスーマの葉は胃痛に効果がある。このあたりでもなかなか手に入らない珍しいもので、ひどく高価だ。それを自生で見つけたって?』
赤い実を手にしながら、トリアノンはキリスエールの言葉に、目を丸くしている。
『かなりの長旅でしたから。ここから南東ではそんなに珍しいものではないんです。ただ、薬だって認識があまりないらしく、収穫されないまま放置されていました』
キリスエールは困ったように微笑む。トリアノンはため息をついた。そんなもったいないことがあるのかと思ったのかもしれない。
『薬草屋で働いたことはあるの?』
トリアノンの問いかけにキリスエールは首を横に振る。それにも、トリアノンはため息をついたが、まっすぐにキリスエールの目をみると、わかったと言った。
『見習いとして雇おう。だけど、見習いだからそうはお給金は出せないよ。それでもいいかい?』
提示された額は多くはなかったが少なくもなかった。妥当だと判断したキリスエールは、今度は明るく微笑んで、『はい』と返事をした。
家に走って帰り、仕事先が決まったと報告すると、セインはよかったねと笑ったのに、レイラースとタミルは渋い顔をした。店主が若い男で、それも癖がありそうだというのだ。それでも、キリスエールは、二人にも店を見てもらい、店主も店も十分まともであることを確認させた。二人は心配げな顔はしたものの、最後には許可をくれた。
店に来ることになった経緯を反芻しながら、身支度をしていたキリスエールは、カウンターを端から端までながめて、首をかしげる。いつもはカウンターの隅に置かれているリストが見当たらないのだ。
「トリアノン。棚に補充する薬草のリストは?」
キリスエールが問うと窓の外に目をやっていたトリアノンは、はっとキリスエールに視線を戻した。
「ああ。ここにある。それと裏の薬草園からこっちのリストの葉をとって、乾燥しておいて」
「はい」
キリスエールの仕事は薬草の乾燥と粉砕だ。薬草は天日干しのほうがいい場合と、薪で温度を上げた部屋の中で乾燥させたほうがいいものとある。
キリスエールとて、すべての薬草に通じているわけではないから、調合の仕方一つ、乾燥の仕方ひとつにおいても、持っている知識と技術が増えていくのが楽しい。
店主のトリアノンは、付き合い始めてみれば、きさくな男だったし、わからないことはきちんと筋道をつけて教えてくれた。
兄弟のいないキリスエールは、兄がいればこんな感じなのかと想像した。
棚に補充する薬草のリストを受け取り目を通すと、キリスエールは、裏へと続く扉に手をかけたが、ふと、トリアノンに視線を向けた。
トリアノンは、また、店の外を見ている。
「トリアノン、どうかしました?」
気になるようなものでもあるように、外を見ているトリアノンにキリスエールは声をかけた。
「え。ああ」
トリアノンは窓からキリスエールへと視線を移動させた。
「また、来ているなと思って」
「え?」
「キリスエールが最初にこの店に来たときに連れていた黒髪の人……」
キリスエールも窓の外に視線を向ける。だが、もうそこにはタミルの姿は見えなかった。
「毎朝、一緒に来るなら、店にも寄っていけばいいのに」
トリアノンのセリフにキリスエールはかすかに眉を寄せる。
この店で働くことを決めたとき、タミルが護衛だと言って、しばらくは店までキリスエールを送ってきていた。さすがに、それが2週間も続くとキリスエールは、この街の治安は思っている以上によく、一人で平気だからと、タミルについてこないように頼んだのだ。それ以来、一人で店に来ていたキリスエールは、トリアノンの言葉に驚きを隠せない。
「毎朝って」
「このあたりで働いているんじゃないの?必ず、あそこにしばらく佇んでいくよ、彼」
トリアノンが指さした辺りへキリスエールは視線を投げる。そこは、店からぎりぎり見えるかどうかの位置で、店の準備に忙しいキリスエールは気付きもしなかった。だが、タミルならキリスエールに気付かれずに尾行するなんていとも簡単だろうとキリスエールは思った。
「兄弟?……じゃないか」
トリアノンは自分で質問しておいて、自分で答えている。だが、キリスエールにもそれに対する答えは持っていなかった。
「兄みたいな人です」
それでもそれらしく思える答えを口にする。だが、心の中でキリスエールは、主ですと答えていた。3人の主人と従者の自分。せめて、そうは思いたかった。対等にはなれなくとも仕えるものくらいには思ってもらいたい。
だが、彼らから見ればほんの子供で、頼りなく思えるらしいキリスエールは、いまだにそれがかなえられず、苛立ちすら覚えていた。出会った頃より背も伸びて、ずいぶん体つきも少年から男性へと変化を遂げ始めているというのに、彼らにとってのキリスエールは小さな守るべきものに見えるらしい。
「そうか」
トリアノンは特になにも思わなかったらしい。それだけを口にすると、さあ、仕事、仕事と薬草の棚をチェックしだした。
キリスエールはリストを持ったまま、裏の庭へ薬草を摘みに行く。
裏庭といっても、街中の家の庭は中庭と呼んだ方がふさわしいかもしれない。通りに面した建物は回廊構造になっており、建物の中央に庭がある。トリアノンの店は、通り沿いに店、中庭に薬草の畑があり、店と反対側の建物には、乾燥室と温室がそれぞれあった。2階、3階が居住空間だ。2階に居間、3階が寝室とシャワールームになっている。この街の庶民の家は個人スペースは上階に置かれるのが普通だった。
中庭もそう広くはない。簡単なものだけ、ここで栽培し、商人から手に入れる薬草もあれば、温室で育てているものもあった。だが、どこも採光には気をつかってあり、畑にはさんさんと朝の光が差し込んでいた。
リストを見ながら、必要な量の薬草を摘みとる。多すぎれば、植物そのものを損なうし、少ないと商売にならない。
心の底に渦巻く、いらいらから目を背けたくて、キリスエールは自分がなさなければならない仕事に没頭した。
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