スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←クリルの街(1) →クリルの街(3)
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ

もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png はじめに
もくじ  3kaku_s_L.png リンク集
もくじ  3kaku_s_L.png Novel lists
もくじ  3kaku_s_L.png 奇跡の刻
もくじ  3kaku_s_L.png 平行線の恋
もくじ  3kaku_s_L.png 煉獄の恋
総もくじ  3kaku_s_L.png 天空国の守護者
総もくじ  3kaku_s_L.png 巡る季節と恋の順番
もくじ  3kaku_s_L.png 雑記
総もくじ  3kaku_s_L.png 山神の花嫁_昔話
もくじ  3kaku_s_L.png 告白の向こうへ
もくじ  3kaku_s_L.png 空の月を恋う
総もくじ  3kaku_s_L.png おまけ番外編ショート
もくじ  3kaku_s_L.png 遠回りの片恋
もくじ  3kaku_s_L.png 腕の中の迷い猫
総もくじ  3kaku_s_L.png 蒼い闇の化身
  • 【クリルの街(1)】へ
  • 【クリルの街(3)】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit

「天空国の守護者」
地上編

クリルの街(2)

 ←クリルの街(1) →クリルの街(3)
一方、三人の守護者も遊んでいたわけではない。
タミルは街の構造把握と見回りを担当していた。キリスエールの送り迎えをしていたのは事実だが、それもパトロールを兼ねていたから、まったくがキリスエールだけのためと言うわけでもなかった。
いつでも何であっても対応できるように、この街の地図を作るのがタミルの最大の仕事だ。
それも、2か月も過ぎれば、あらかた完成し始めている。だが、まだ、細かい路地などが埋まらず、これが実はひどく厄介だった。実際に一つずつ歩きながら、タミルは地形と地図をまとめ上げていた。
特に街の外れは路地が増える。これはどこの街にもいえることだが、結局、都市計画と無関係に人が流入してきて勝手に住み着いてしまうためだ。
すべてを把握する必要はないが、それでも、街の四方の門に通じる道だけはきちんと知っておいた方がいい。タミルは門から街中への道を重点的に歩く。
今日も、西の街はずれを門に向って歩いていた。小さな家がひしめくように建っていて、ほとんどが住居なのだろう、こちらには店も少ない。
小さな脇道を覗き込めば、どこも迷路のようで、火の手があがればひとたまりもないとタミルは心にとめた。
逃げ道はできるだけ、人目を避けられて、それでいて安全な方がいい。
そんな路地のうち比較的道幅の広い一つに足を踏み入れ、まだ、高度の低い太陽の光が差しこんでいる道を歩きながら、タミルはため息をつく。
『タミル様。この家から店までの道のりに治安の悪いところはありませんよね』
働き始めてすぐのころにキリスエールが告げた言葉が脳裏をよぎった。それにタミルは正直に軽くうなずき、キリスエールは嬉しそうな笑みを向けた。
『それなら、一人で行けます。もう、毎朝、送っていただかなくて大丈夫ですから』
返された言葉は、ひどく深くタミルの心に刺さった。抜けない棘のように、こうやって反芻しては、痛みを訴える。
何度も何度も繰り返す記憶。つらい記憶だからこそ繰り返しているのはわかっているのに、それでも思い出さずにはいられない。
この時に嘘でも危険だと言えばよかったのだろうか。そう思っても、時は遅く、すでに事実は変わらない。
この街に着いてから、出かけるキリスエールの護衛役をすることはタミルにとって密かな喜びだった。
口実があれば側にいられる。仕事を得て、嬉しそうなキリスエールの笑顔を見ることも、朝と夕方、二人で街を歩くこともできた。
だが、それすらキリスエールに拒絶され、タミルは深い哀しみを覚えている。
『キリスエールを自由にしてあげられないなら、国主と同じだ』
と言ったセインの言葉がよみがえる。言葉の意味はわかる。店で生き生きとしているキリスエールをみれば、それが真実であるのも分かっている。だが、それでも少しの危険にも晒したくないと思う自分の心もまた真実だ。
大事すぎて、愛しすぎて、タミルは自分の想いにめまいさえ感じる。
誰の目にも触れさせず、自分の腕に囲い込んで、自分だけを見てくれたらどんなにいいかと思っている浅ましい自分にタミルは時々、吐き気すら覚えた。それが利己的で叶わない夢だということを誰よりも知っているくせに、願いは止まらないのだ。
この腕にキリスエールを抱くことすら望めないなら、せめてキリスエールを守るだけの立ち位置が欲しいとタミルは切実に思う。
だが、それすらキリスエールには不必要だと言われても、それでも思いきれなくて、街の様子を知る役目があるからと、気配を消して毎朝、離れたところから彼を送っていく。店から見えないだろう場所に佇んで、くるくるとよく働くキリスエールを見つめるのをやめられない。
タミルは歩みを止めて、大きなため息をついた。
『どこかの街で自由にしてあげるのが一番だ』
セインの言葉が重く、タミルの心を圧していた。
それは、事実だったから。
この街に来て、働き始めてからのキリスエールは本当に生き生きとしていると思う。不安げで、ひどく青白い顔をしていたキリスエールはもういない。キリスエールの故郷で助けてもらったとき、タミルが初めて見たキリスエールと同じ生気ある彼に戻っている。
「キリスエールを守るべきは、俺たちからなのかもしれない」
タミルは足を止め、空を見上げると、身体の両脇にたらした拳をぐっと握った。

レイラースは、クリルの街に入るとすぐに、街をぐるりと囲むように、守護者の接近を察知するための結界を張った。
セインの言うとおり、人間の数が増すと。守護者の襲撃は激減し、さすがにここまで大きな街に入った後は、ぱたりとそれすらも止んでいた。
カミールがやはり、面倒事を嫌ったんだろうとレイラースは推察したが、守護者の一人もまったく街の中に入らないかと言えば、その保証はないだろうし、前のように、単騎で突っ走る輩がいても厄介だ。
それに、様子を探りに偵察などに来られても面倒だとレイラースは思った。
そこで、大規模に街を囲むように結界を張った。これは、守護者探知機のようなもので、3人以外の守護者が街へと近づけば、反応が返るようになっている。
それを綻びの出ないようにまとめつつ、彼らの住む家そのものを守るのもレイラースの役目だった。
だが、力の一部を振っているとはいえ、はたからみれば、家の中で優雅に過ごしているようにしか見えないだろう。
他の3人はそれぞれ出かけてしまって、家に一人残されて、レイラースは長椅子で楽な姿勢を取って、本を読んでいた。
字を追っているが、内容は頭の中を素通りしている。
この街について2か月。レイラースもまた悩んでいた。楽しそうに仕事に出かけていくキリスエールを見るたびに、胸が締め付けられる気がする。
この街の治安はそう悪くはない。タミルが送り迎えしている限り、なにか起きるとは思えない。それについては、レイラースはまるで心配していなかった。危惧していたキリスエールの雇い主についてもキリスエールに特別な興味をもってはいなかった。
キリスエールが働き始めるときに、店を訪れ、そこはしっかりと確認をした。あの店主は、キリスエールについて、働き者の助手が来てくれてよかったとしか思っていなかった。だが、人の心は移ろいがちだ。心配で何度か様子をうかがいに行ったが、店主はキリスエールを弟子としか見ておらず、どちらかというと、護衛しているタミルのことが気になるらしいと知ってレイラースは安心した。
キリスエールの安全に対する危惧が解消し、生活が軌道に乗ってきて、この街に着いたばかりのころのようなせわしなさがなくなってくると、心を占めるのはキリスエールへの想いだけになる。
いまのところキリスエールの心に誰かの気配は見えない。仕事が楽しいらしくて、そればかりだ。だが、自分たちの関係が危ういタイトロープの上で成り立っており、それがここのところ緊張をはらんでいることをレイラースは感じていた。
ほうっと大きく息を吐き、レイラースは持っていた本をばさりと膝に置き、長椅子に身体を伸ばして、寝転がった。
金色の髪が緑色の寝椅子に広がって、きらきらと光る。家にいるから擬態も解いて、もとの姿を取ったままのレイラースは無防備に身体を伸ばしていても、絵になるほどだ。左右色の違う瞳は、閉じられて見ることはかなわないが、前髪を気だるげにかき揚げる仕草一つでも見るものがいればため息を誘われるだろう。
「もう、限界かな」
呟いた言葉に、自嘲し、レイラースは右腕を目の上に置いた。
屋敷に住み始めたころは、キリスエールの体力の回復が第一だったから、3人が3人ともキリスエールを構うことはあまりなかった。だが、すっかり元気に明るくなったキリスエールを挟んで、3人の間に張られた緊迫した糸はさらにその緊張度を増している。
あとは、だれが最初に動くかだけだった。
キリスエールの部屋をほかの3人から離して奥の部屋にしたのも、一人部屋にしたのも意図あってのことだ。キリスエールにはお前の身体のためと説明したが、実際はキリスエールが誰も選べない以上、だれかと一緒の部屋にできなかったし、当然、セインもレイラースも自分が忍んでいくことを考えていたからだ。
セインはどうするだろうとレイラースは重くなる気持ちのまま思う。レイラースは『身体だけなら』とキリスエールに言われたことが思いのほか堪えて、逆に手を出しあぐねていたが、セインは同じことを言われたらどうするつもりだろうかとレイラースは思った。
それに、自分ももはやキリスエールが自分をそういう目で見てくれるまで悠長に待てるとは思えなくなっていた。
しかし、仕掛けてもキリスエールが本気で嫌がれば、今度はタミルに口実を与えることになる。タミルはキリスエールが許可しない限りは、彼に指一本触れないだろう。だが、レイラースがキリスエールを害すれば、剣の主としてのキリスエールを命を賭しても守るに違いない。
「誰にもあげたくないし、僕だけを見ていてくれればいいのに」
悩ましいため息とともにレイラースは呟いた。これだけ人間がいる街にいてもキリスエールの魂の光は感知できる。それだけ、彼の魂の色がきれいなのだ。ほかの誰とも違う。
「キリスエール。僕が君を傷つけることがないように」
そう心で語りかけ、レイラースはつらそうに再度、息を吐きだした。

セインはといえば、路銀稼ぎという名目で、占いを始めていた。
銀の髪をうしろで束ねてゆるく編み、黒のトーガを着、だて眼鏡をかけて、一番人の往来の多い通りで、テントで作った店を開いた。中はいたって普通で、小さな丸テーブルに客と向かい合って座り、カードで占うというものだ。テントの布地は白の薄手のもので、外からの光が優しく差し込むようにしてあり、中では鎮静効果のある植物の油を焚いていた。
占いについてまわるような暗く怪しい雰囲気はまるでなく、まるでサロンのような様子だった。
最初の2週間くらいはそうお客もなく、物珍しげに入ってくる人が多かったが、ぴたりと当てるその腕に、うわさがうわさをよんで人気が出始め、今では予約なしには視てもらえない店にまで繁盛していた。
占いの代金はたいしたものではない。セインの狙いは別にあった。
噂が広まれば、当然、物見高い権力者の耳に入るだろう。この街をふくむ一帯はスランタの大貴族トラヴィヌスの領地であり、この街は一族のなかでも直系の子息が治めていた。街の中央に見える教会の隣に城があり、そこが政治の中心だった。
トラヴィヌス家はスランタの王家の血もひいていて、国の中の権力も大きいこともあって、この街には多くの貴族が屋敷を構えて暮らしている。
人間界の情報を手に入れ、天空国の動向が探れれば、逃避行もやりやすくなるし、この街に長居するのであれば、権力の側にいたほうがなにかと有利だとセインは判断した。
城に出入りできれば、あとは、他人の心の声を読むだけで、いくらでも情報が手に入る。実際占いも相手から聞こえる口に出さない言葉を読めば、なんでもピタリとあたるに決まっているのだ。あとは、演技と誘導が必要なだけだ。
「そうですね。貴方の想いの行方は残念ながら……」
言葉をとぎらせるとベールで顔を隠した婦人はため息をついた。自分の恋が実らないと落胆を隠せない様子だ。
「ああ。でも」
その言葉に婦人は顔をあげた。
「また、新しい恋が貴方を待っていますよ」
セインはそういって、手元のカードを持ち上げた。春のカードがセインの長い指の間に挟まれている。
「冬が終われば春が来ます。実りなきものも新しい芽をはぐくめばよろしい」
口の端をやわらかくあげてセインが微笑むとベールの向こうで婦人は息をのみ、頬を赤らめた。
占い料を払って満足げに帰っていく、若い婦人の後姿を見送りながら、そろそろだとセインは思う。最近、お忍びで来る貴族の婦人が増えてきた。サロンでも噂になっているらしい。夜の舞踏会の余興にでも招かれれば、あとはなんとでもなるだろう。
セインの力なら、城主に夢でも見せて、取り入ってしまうこともできたが、人間相手にそんなことをするのはセインの美意識に反するし、あとで、キリスエールに知れたら、また怯えられそうで、セインはあえて回り道な方を選んだ。
再会した時もいまも、キリスエールはセインを憧れを込めた目で見つめていて、セインとしてもそれを裏切る気にはならなかった。
どうしてこんなに可愛いのだろうとキリスエールを見るたびに思う。その視線が憧憬や尊敬の域を出ないのを寂しく思いながらも、キリスエールだからと許している自分がいる。
自分の恋もままならないのに、人間の恋占いをしているなんて滑稽だとセインは口端を皮肉にゆがめた。
もうどれだけキリスエールと2人の時を過ごしていないだろう。毎夜、この腕に抱いて眠ったのははるか昔のような気さえする。
だが、それでも、あきらめなくてよかったとキリスエールの笑みを見るたびに思う。シスルへの想いとキリスエールへの想いは表裏一体で、シスルへの恐れをキリスエールの微笑みが浄化し、キリスエールの優しさが、シスルへの寂しさを引き起こす。
「矛盾している」
セインは口元をゆがめた。すでに、自分も壊れているのかもしれない。紫の色の宿命なのか。
入口の布がふわりと開いて、街の娘がおどおどと顔をのぞかせた。
「いらっしゃい。どうぞ、座ってください」
憂鬱な笑みを一瞬で消して、セインは笑みの仮面をかぶる。
頬を染めた娘が席につくと、「今日は何を占いましょう」と微笑んだ。
関連記事


にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ

総もくじ 3kaku_s_L.png 天空国の守護者
総もくじ 3kaku_s_L.png 巡る季節と恋の順番
総もくじ 3kaku_s_L.png 山神の花嫁_昔話
総もくじ 3kaku_s_L.png おまけ番外編ショート
総もくじ 3kaku_s_L.png 蒼い闇の化身
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png はじめに
もくじ  3kaku_s_L.png リンク集
もくじ  3kaku_s_L.png Novel lists
もくじ  3kaku_s_L.png 奇跡の刻
もくじ  3kaku_s_L.png 平行線の恋
もくじ  3kaku_s_L.png 煉獄の恋
総もくじ  3kaku_s_L.png 天空国の守護者
総もくじ  3kaku_s_L.png 巡る季節と恋の順番
もくじ  3kaku_s_L.png 雑記
総もくじ  3kaku_s_L.png 山神の花嫁_昔話
もくじ  3kaku_s_L.png 告白の向こうへ
もくじ  3kaku_s_L.png 空の月を恋う
総もくじ  3kaku_s_L.png おまけ番外編ショート
もくじ  3kaku_s_L.png 遠回りの片恋
もくじ  3kaku_s_L.png 腕の中の迷い猫
総もくじ  3kaku_s_L.png 蒼い闇の化身
  • 【クリルの街(1)】へ
  • 【クリルの街(3)】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【クリルの街(1)】へ
  • 【クリルの街(3)】へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。