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「天空国の守護者」
地上編

クリルの街(3)

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扉がきっと音を立てて開き、カウンターにいたキリスエールは朗らかに「いらっしゃいませ」と告げた。
入ってきた人を見て首をかしげる。
「タミルさ……」
様と続けようとして、タミルが険しい顔をしたのに慌てて口ごもる。
「ああ。いらっしゃい」
奥に引っ込んでいたトリアノンがキリスエールの声を聞きつけたのだろう姿を見せる。
「お客として?それともキリスエールを迎えに?」
面白そうな表情でトリアノンが尋ねた。
「迎えにだ」
あっさりとタミルが答える。
トリアノンが薄く笑みを浮かべた。整った容貌のトリアノンの柔らかな微笑みにキリスエールはちょっと見惚れた。なんだか、ひどく優しそうで温かい気持ちになったのだ。
「たしかにそろそろ店じまいの時間だ。キリスエール。片付けようか」
トリアノンの言葉にキリスエールは頷いた。
「まだ、片付けるのに時間がかかるから」
タミルの前に立つとキリスエールはタミルを見上げた。
「いい。待っている」
「でも……」
キリスエールは困った顔をした。子供じゃないんだから、迎えなんていらないと思ったのだ。家までは、歩いて1刻もかからないし、一人でも何ら問題はない。どうしてわかってくれないのだろうと内心不満に思うキリスエールをタミルは見下ろした。
「近くまで来たから、寄った。だから待っている」
言外にわざわざ来たんじゃないと告げるタミルをキリスエールは見上げた。タミルが街を歩いて、地形の把握をしていることをキリスエールも知っていた。
一日、歩いてその帰りなのかもしれない。
「待たせるくらいなら手伝ってもらえば?」
すでに、在庫の確認をし、帳面と照らし合わせていたトリアノンが顔をあげて告げる。
そのちゃっかりとした発言にキリスエールは一瞬、あっけにとられ、それからくすくすと笑いだす。
「人使い荒いですよね。トリアノンは」
おかしくてキリスエールはまだ笑いがとまらない。目に涙を浮かべて、笑っている。
「じゃあ、えっと……」
笑っているキリスエールに視線を向けていたトリアノンは、タミルを見た。
「タミルだ」
「タミルさん、床にある甕を奥へ運んでくれますか」
「ああ」
カウンターの内側にある大ぶりの甕をタミルは軽々と持ち上げた。
「奥って?」
「ああ。こっちです」
トリアノンの先導で、2人は奥の部屋へと向かった。キリスエールは笑いながらそれを見送った。
売上票とお金を確認しながら、分けてしまっていく。キリスエールは手だけ動かしながらも、奥へと消えた2人を気にしていた。
街に来て、すっかり平穏な日常が続いている。タミルを守護者だと疑う人は誰もいない。守護者の襲撃もなりを潜め、セインもレイラースもそれぞれ人界に溶け込んでいる。セインが始めた占いも人気があるらしく、前に通りかかった時には、行列ができていた。迷惑になるからと予約制にしたんだと話していたセインを思い出す。
キリスエールが憧れていた人間界での日常を送っているにも関わらず、胸の底にはまだ不安が渦を巻いていた。
形をなさない漠然とした不安だ。
「……重かったですよね。すみません」
扉の向こうからトリアノンの声がして、キリスエールははっと我に返った。すっかり手元の作業が止まっていることに気付く。
扉が開いて2人が戻ってきた。トリアノンはやけに嬉しそうに微笑んでいた。
力仕事を任せられる人がいてそんなに嬉しかったんだろうか。
「キリスエール、そっちは終わった?」
訊かれて、キリスエールは慌てて、分けていたお金を集める。
「ええ。あと少しです」
「じゃあ、それは任せるね」
キリスエールは頷いた。
「これも奥に運ぶのか?」
先ほどの甕の隣にあった小ぶりの箱を指してタミルが訊く。
「ええ。そんなに重くないので、自分でしますよ」
トリアノンが手を出そうとすると、それを制して、タミルはさっさと箱を持ち上げると部屋を出ていく。
「いい人だね」
タミルの背を見送りながら、トリアノンが呟く。
「そうですね」
相槌をうちながら、タミルを褒められたことが嬉しいのか、どうなのかキリスエールにもよくわからなかった。タミルが優しいことは、キリスエールもよく知っている。だから、箱を運んだこともタミルにとってはどうってことないこともよくわかっていた。
分けたお金を袋にそれぞれしまって、キリスエールはそれをトリアノンに差し出した。
「今日の分です」
「ああ。ありがとう」
トリアノンは売上票ごとそれを受け取り、キリスエールにも微笑んだ。女性のようにも見えるほど、中性的な容貌に少し見惚れる。セインもレイラースも精巧にできた人形のようにきれいだが、彼らには女性的な要素はまるでない。だが、トリアノンは人間であるのに彼らとまた違った魅力を持っていた。
こういう人をタミルはどう思うんだろう。
そういえば、彼ら守護者が自分たち以外の守護者や人間をどう思っているかなんて気にしたことがなかったとキリスエールは思った。
いつもキリスエールと守護者3人の関係で、それ以外が介在していないことにキリスエールは初めて気づいた。
だが、この街で長く暮らすことになれば、それぞれが自分の世界を作っていくんだろう。
「どうかした?僕の顔に何かついてる?」
キリスエールは見つめすぎたことに気付いて視線を外すと顔を横に振った。
「これで店じまいだ。彼が戻ってきたら帰っていいよ」
柔らかく微笑んだトリアノンにキリスエールは一つ頷きを返した。
自分と彼らではなく、それぞれの道が袂を分かつ。それが楽しみのようなさみしいような気分を持て余しながら、キリスエールは戻ってくるタミルを待った。

並んで歩きながら、特に会話もなく足を進めた。
街中は暗くなったというのに、人通りが多く、明かりが絶えない。沿道の店はほとんどが閉まっていたが、道の真ん中に並ぶ屋台は煌々と明かりがともり、人々の夕食を供するために白湯気を上げていた。
肉の焼ける香ばしい匂いや音が聞こえる。大なべに野菜を大量に放り込んで、鍋を振っているシェフもいる。
この街の名物、縮れた細麺に魚介類と野菜を炒めたとろみのあるスープをかけた料理の店は大勢の人が並んでいた。キリスエールもこの街に来たばかりのころに並んで食べた。トリアノンが連れて行ってくれたのだ。
「あれ、食べたことあります?」
湯気を上げる器をカウンターに置く風景を見ながら、キリスエールが訊いた。
「いや」
「すごくおいしいんです。この街の名物で、だからいつも人が並んでいるらしいですよ。で、並んでいる人が多い方がおいしい店なんだそうです」
「詳しいな」
驚いた顔でキリスエールを見たタミルに微笑み返す。
「トリアノンが教えてくれて」
「……ああ、さっきの店主か」
何かを思い出したのかタミルが笑む。
「おもしろいやつだったな」
キリスエールは驚きの眼差しをタミルに向けた。タミルが人間を褒めるのを初めて聞いたかもしれない。
「おもしろいというか、きれいで物知りな人ですよ」
「好奇心は旺盛そうだった」
さっき二人で奥へ行ったときに何を話したんだろう。キリスエールはさらに驚き、そして目を伏せた。嬉しいと思うと同時に面白くないと思う自分にもキリスエールは驚く。
3人が人間界になじんでくれれば、4人でこのまま平安に暮らしていくことだって可能なのだから、歓迎すべきだろう。しかし閉じていた世界が開くのはなんとなく恐い感じがした。
「仕事はどうだ?」
前を向いて歩きながら、問うタミルをキリスエールは見た。タミルの問いかけはぐるぐるする思考から自分を引きはがした。
「慣れてきましたけど、まだまだ知らないことがいろいろあって。すごく楽しいです」
薬草の仕事を思いだし、キリスエールは微笑みを浮かべた。これは自分の仕事だ。自分だけの。それはキリスエールに自信と自分の足で立つことを教えてくれた。
「そうか」
タミルはキリスエールの笑みをまぶしそうに見返し、自分もまた微笑んだ。
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