スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←報告 →銀の天使
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ

もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png はじめに
もくじ  3kaku_s_L.png リンク集
もくじ  3kaku_s_L.png Novel lists
もくじ  3kaku_s_L.png 奇跡の刻
もくじ  3kaku_s_L.png 平行線の恋
もくじ  3kaku_s_L.png 煉獄の恋
総もくじ  3kaku_s_L.png 天空国の守護者
総もくじ  3kaku_s_L.png 巡る季節と恋の順番
もくじ  3kaku_s_L.png 雑記
総もくじ  3kaku_s_L.png 山神の花嫁_昔話
もくじ  3kaku_s_L.png 告白の向こうへ
もくじ  3kaku_s_L.png 空の月を恋う
総もくじ  3kaku_s_L.png おまけ番外編ショート
もくじ  3kaku_s_L.png 遠回りの片恋
もくじ  3kaku_s_L.png 腕の中の迷い猫
総もくじ  3kaku_s_L.png 蒼い闇の化身
  • 【報告】へ
  • 【銀の天使】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit

「天空国の守護者」
トレジャ編

金の天使

 ←報告 →銀の天使
ここへ来て半月が経った。トレジャの生活と言っても、取り立てて変わったことはない。
朝が来れば日が上り、日が沈めば夜になった。生活のリズムはそれぞれの自主性に任され、好きに過ごすことができた。
キリスエールは規則正しい生活を送る。朝日が部屋を満たす3刻頃に起き、暗くなってランタンの油が半分になる10刻ごろにベッドに入る。
食事は1階、玄関広間の横の食堂でとった。
一人で摂る食事は味気ない。部屋を与えられた建物に暮らす同じくらいの年の少年達も同じ思いなのか、テーブルを共にすることも多く、そのせいか幾人の少年とも仲良くなった。
建物に隣接した小屋を改造し、厩も作って貰い、アルタイルとも毎日会える。家族に会えない以外は、故郷にいるのと変わりない生活を送っている。
「おはよう。キリスエール」
「ああ。おはよう。ルイス」
食堂で6人がけのテーブルで一人、食事をとっていると小柄で華奢な少年に声を掛けられた。白い面長な顔を取り囲む茶色のくるくるした髪が肩先で踊り、切れ長な茶色の瞳が、嬉しそうに笑っていた。両手には盆を持っている。
ルイスはキリスエールを構う一人だ。
食事の時には必ず声をかけてくれた。彼は1年半前にトレジャに来たと言っていた。村で選ばれた贄として。
「隣、いい?」
訊かれて頷くとルイスは隣の椅子を引き、腰を下ろす。
テーブルに置かれた盆には甘い果実のジャムが乗ったパンとイチゴが乗っていた。
「今日もいい天気だ」
外を仰いでルイスが言う。キリスエールもつられて窓を見た。
青い空が窓越しに見えた。日の光が空の青さに輝きをもたらし、遠くに見える木々の葉を明るく照らす。気持ちのいい初夏の日。
「そうだね。いい天気」
「キリスエール、今日も厩に行くの?」
手に持ったミルクの味のするパンをちぎって口に放り込んだキリスエールはルイスの顔を見てから頷いた。
「いいな。アルタイルだっけ、僕にも紹介してくれない?」
にっこり微笑まれて、キリスエールは急いでパンを飲みこむと「いいよ」と返す。
それにも嬉しそうに笑われて、キリスエールも笑い返した。アルタイルのことを覚えていてくれたのが嬉しかった。
「綺麗な馬だよね」
「ありがとう。アルタイルに言ったら喜ぶと思う」
キリスエールに笑いかけてから、ルイスは手に持ったパンを口元に持ち上げる。
パンをかじろうと口を開けたところに耳にかけた髪がはらりと落ちる。
邪魔そうな顔をして、ルイスは落ちてきた髪をほっそりとした指でかきあげた。
「あ……」
髪がどいた途端にルイスの首筋に紅い痣があるのに気付く。とっさにキリスエールは目を背けた。
「何?」
パンをかじったまま、上目使いに問われて、キリスエールは慌てて首を横に振る。
食事をしているとき、おしゃべりをしているとき、友人となった少年たちの首や開いた胸元に紅い痣を見るたび、キリスエールの心が沈む。
守護者がどうやって相手を見つけているのかはキリスエールは知らない。呼び出されるのか。それとも守護者が降りてくるのをどこかで待っているのかもしれない。ここにきて、キリスエールは幸か不幸か一度も守護者には出くわしていない。だから、守護者がどうやって相手を選んだり、見つくろったりしているかまったくわからなかった。
ルイスはキリスエールの不審な態度を気にしなかったようだ。美味しそうにパンにかぶりついている。
キリスエールも手に持っていたパンをちぎって、また口に入れる。
「キリスエールは馬にも乗れるんだよね」
「う、うん」
なんとなくバツが悪くて、ついどもってしまう。
「いいなあ。練習したら、僕でもできるかな?」
甘いパンの最後の欠片を口に放って、ルイスはキリスエールに問う。
「できると思うよ。やってみる?」
ルイスは山のように積んだイチゴを美味しそうにほおばって頷いた。
「じゃあさ、先に行ってていいかな?アルタイルにも朝ごはんやらないといけないし。俺、準備しとくよ」
ルイスが気に留めなくても、なんだかいたたまれない思いがして、キリスエールは食器を纏めると、席を立った。
「うん。じゃあ、後で行くよ」
「待ってるね」
キリスエールの言葉にルイスはにっこり笑った。


ここに来た時に通った建物の様子から、少年たちが守護者にあそこに連れ込まれ蹂躙されているだろうことは想像に難くない。
だから、キリスエールはできるだけそちらには近寄らないようにしていた。生活をしている紅い屋根の建物とその奥に広がる森に行くくらいがキリスエールの行動範囲だった。
アルタイルの手綱をとりながら、森に向かって歩いていく。
われ知らずに溜息が洩れた。朝食のあと結局、ルイスはやってこなかった。
アルタイルに飼葉をやり、水で身体を拭いてやって、ブラシをかけてもルイスは来ずに、代わりにタユと呼ばれている少年がやってきて、ルイスが行けなくてごめんと言っていたと伝えに来た。
理由は聞かなくてもわかった。守護者に召されたんだ。
タユにありがとうと伝えて、キリスエールは森に散歩に出ることにした。気分を変えるために。
どうにもやりきれない気分だった。
できるだけ、少年たちが蹂躙されている建物から離れたくて、ルイスのことも思い出したくなくて、建物から遠ざかるように森に入っていく。
傍らに寄り添うように歩く、アルタイルが時折、顔を向けてきた。
その鼻を大丈夫だというように撫でてやる。
顔をあげると木々の間から空が見える。雲ひとつないいい天気が広がっていた。
空気は澄んで水の匂いが微かにする。その中をゆっくりとキリスエールは歩いて行った。
こうしているととてもトレジャにいるとは思えない。
そよ風が時折、キリスエールの栗色の髪を揺らした。
鳥が頭上の木でさえずる。羽音が聞こえ、顔を振り仰ぐと、緑の長い尾の小鳥が羽ばたいているのが見えた。どこまでも広がる森は優しい緑に覆われ、木漏れ日がきらきらと降り注ぐ。
「気持ちがいいね、アルタイル」
森の中を歩いていると、塞いでいた気分が晴れる気がする。だんだん、ここがトレジャであることも、ルイスたちのことも遠いことのように思えてきた。
傍らの馬はぶるると甘えたように鼻を鳴らした。しきりと鼻をキリスエールに擦りつける。アルタイルも機嫌がいいようだ。
「くすぐったいよ、アルタイル」
首を撫でてやりながら、キリスエールはくすくすと笑った。じゃれながら、森の奥に続く道を行く。
アルタイルが不意に顔をあげ、歩みを止めた。すっと首を伸ばし、前方を伺う。
「どうした?アルタイル?」
動かないアルタイルの首の辺りが緊張でこわばった。
キリスエールは辺りを見回す。しかし、特に変わったことはない。
アルタイルの忙しなく動いていた耳がぴくりと後ろに向いた。
「散歩か?」
後ろからかかった声に、キリスエールはとっさに振り返った。
「見ない顔だな。新顔か。ついてるな」
男が木にもたれて立っていた。まったく気配は感じなかった。先ほど見た時も誰もいなかった。
それなのに、ずっと前からそこにいたかのように男は立っている。まるで何もないところから突然、現れたように。キリスエールは息を飲んだ。喉が鳴る。
短く刈り込んだ茶の髪の男は革の胴衣に革のブーツをはいていた。キリスエールに向けられた細い目に含むものを感じる。
「守護者っ!」
一瞬、人間と間違えそうになったが、纏う気配が人間ではない。細められた目が蛇のように思えて、キリスエールは背筋を震わせた。
「こっちに来い」
命令しなれた口調で、男はキリスエールを呼んだ。
嫌だ。
言葉にする前に頭の中で警鐘が鳴っている。
「アルタイル」
馬に声を掛けるとキリスエールは、ひらりと馬にまたがる。そのまま馬に走り出すよう促した。
「逃げるのか。いいぜ、好きなだけ逃げろよ」
後ろから声が追いかけてきて、速度をあげる。しかし、森の中でのこと馬が出せるスピードもたかが知れている。そして相手は守護者だ。天空で暮らす彼らは、どの一人をとっても異能の持ち主で、例外なく空が飛べる。
「アルタイル、お願い。できるだけ早く」
捕まったらどうなるかは火を見るより明らかだ。脇を嫌な汗が流れた。
キリスエールは馬体に伏せるようにして、馬を駆る。アルタイルは木々の間を通る小道を出来る限りの速度で走る。だが、すぐ後ろから楽しそうな笑い声が追いかけてきて身がすくんだ。
逃げきれないっ!
「どうした。もっと早く走っていいんだぜ」
距離の定まらないところから声がする。耳から聞こえているのか頭の中に直接響いているのかもわからない。全然、距離が開かないことに焦りと怖れが湧きあがり、身体が震えた。
「いやだ」
恐怖を振り払うように左右に頭を振る。
ざんっ。
木々がいきなり途切れ広い場所に躍り出た。長い草が生い茂る中に白い柱の土台や折れた列柱が見え隠れしている。
アルタイルは足を止めずに後ろから追われて走り続けた。
「アルタイルっ」
足を滑らせたのかバランスを崩したアルタイルが横倒しに倒れる。キリスエールは地面に投げ出された。
「っ痛」
草に埋もれて石畳がひかれているのが転がった拍子にわかる。アルタイルは敷石の間に蹄をひっかけてひっくり返ったのだろう。
地面に落ちた衝撃をやり過ごすため、キリスエールはその場にうずくまる。
「鬼ごっこは終わりか」
草を踏み分けて、ことさらゆっくり男が近づいてくる。
逃げないとと思うが身体はそのまま前に這うだけだ。
「どうした。観念したのか」
舌舐めずりしそうな声で、男は寄ってきた。
這って逃げるキリスエールの肩に手を掛ける。そのまま仰向けに地面に縫いつけるように押しつけた。
「いやだっ、離せ」
暴れるが押さえつけられた腕は、びくとも動かない。
「そろそろ遊びは終わりにしようぜ。暴れると傷がつくだけだ」
男はそう言うとキリスエールの首筋に唇を寄せた。唇が押しあてられ、キリスエールはビクリと身体を震わせる。
一瞬、止まった動きに気を良くしたのか、押さえていた肩を離して、服の上からキリスエールの身体に掌を這わす。
気持ちが悪い。
熱を持った掌が身体を這う感触が気持ち悪い。キリスエールは自由になった腕をめちゃくちゃに振り回した。
「めんどくせえな」
キリスエールの腕が男の肩にあたり、男は目尻を吊り上げた。
その瞬間、身体の自由が一切奪われた。まるで標本のように両腕は広げた形で地面に縫い付けられ、足もまたピクリとも動かせない。
「おとなしくしてな。かわいがってやるから」
襟元に手を掛けると一気に服を引き裂く。キリスエールの白い肌が陽の光にさらされた。
じかに男の掌が肌を這う。
「すげえな。吸いつくような肌触りだ」
唯一自由になる頭をキリスエールは左右に振った。
「やだっ」
叫ぶキリスエールの顔を男はじっと見た。
「よく見ると綺麗な顔だな。久々の上玉ってところか。もしかして、初めてか」
首筋に舌を這わされて、キリスエールは硬く目を閉じた。
「じっくり可愛がってやる。すぐに自分から欲しいっていうようになるさ」
肌を這う掌が胸で止まり、指が胸の突起を掠る。舌は耳の中に入り、出し入れを繰り返された。
「やめて。いやだ」
気持ちが悪い。それなのに、身体の表面がざわざわする。
しつこく胸の突起をつまんだ指はそれを扱き、転がす。ぞくりと身体の奥から得体のしれない感覚が押し寄せる。
キリスエールは叫んだ。言葉にならない悲鳴のような声も男は聞いていないようだ。
「はなせ。いやだ。気持ちが悪いっ」
舌が首筋から鎖骨を辿り、指で弄んでいた胸の突起まで降りてきてぺろりと舐められた。
身体が突っ張り、目を見開く。悔しくて、怖くて目尻から涙が零れる。
逃げたいのに、腕も足もびくとも動かない。
「気持ち悪くはないだろう」
男はひょいっと手を伸ばし、ズボンの上からキリスエール自身を掴んだ。恐怖しか感じないキリスエール自身は小さく縮こまっていた。
「感じてないのか。俺が怖い?」
無理やり蹂躙されて怖くないものなどいないだろう。何の力かわからないが手足を地面に縫い止められ、好きに触られているというのに。
素直に頷くと男は嫌な笑いを浮かべた。この仕草が嗜虐心を煽ってしまったようだ。
「良くしてやるよ」
男はキリスエールのズボンに手を掛けた。キリスエールの口から悲鳴が上がる。
「うるさいな」
ズボンの腰に手を掛けた動作で止まって男は周りを見回した。
草に隠れて見えなかった奥の白い柱の残骸で誰かがむくりと身体を起こす。
最初に見えたのは、黄金の髪だった。それを無造作にかきあげ、身体を起こした人物は目を眩しげに眇めた。
「ここは僕が先約なんだから、どっか別でやってくれない。」
ひどく冷たい声音で突然現れた青年は言った。白い肌を縁取る金の巻き毛が肩を覆い、左右の瞳の色が違っているのがわかった。
「人間の悲鳴だけでもうるさいのに、中途半端な力の波動が鬱陶しい」
唯一自由になる首を巡らせ、キリスエールは現れた人を見た。
金の天使だ。
タミルを助けた時に現れた金と銀の天使の一人。あまりに綺麗でこの世のものとも思えない。
「だれだ。お前。見ない顔だ。こんな綺麗な奴がいたか」
キリスエールにのしかかっていた男は訝しげに顔を傾げ、不穏当な言葉を発した。
「僕を知らないのか。それも人間と間違えているのか、僕を?」
言葉もその表情もいかにも楽しげに見えたが、再度、髪をかきあげるとキリスエールの上にいた男は宙に舞った。
誰も手も触れないのに、男はかなり向こうまで弾き飛ばされる。そのまま、襟首を見えない手が掴み宙吊りにされた。
「ふうん、もっと下まで規律をつけないと駄目だね。お前の処分は隊でとらせよう」
青年の言葉に男は顔色を変えた。隊を持ちだした以上、この青年は人間ではない。だいたいここまで美しい人間もいないだろう。
「色つきか」
その言葉に青年の纏う空気の温度が一気に下がった。宙吊りにされた男は、いきなり消失した。
キリスエールには何が起きたかわからない。しかし、身体の自由は取り戻せていた。
「ありがとうございます」
身体を起こし、地面に座る。
金の天使はキリスエールなど目に入らないかのように、気だるげに立ちあがった。
手を差し伸べるとアルタイルがその手に鼻を寄せていた。金の天使は愛しげにアルタイルを撫でる。
「この馬はお前の?」
そこではじめて、金の天使はキリスエールに声を掛けた。
「はい。アルタイルといいます」
言いながらキリスエールは立ちあがった。服の前をかき合せる。
「ふうん。良い子だね。毛並みもとても美しい。天馬ではないようだけど」
馬の頭をかき抱きながら、金の天使はまっすぐにキリスエールを見た。赤と緑の瞳がキリスエールの榛色の瞳を捕らえた。キリスエールは視線を反らすことができない。
「変わった色だ」
興味をひかれたのか、金の天使はキリスエールのもとに歩み寄る。キリスエールは驚きのあまり一歩後ろへ下がる。
あっという間に距離を詰められ、白く長い指で顎を掬われた。金の天使は背が高く、キリスエールの顎が上をむくと瞳が合った。
「本当に変わった色」
瞳を覗きこまれて、金の天使は珍しい蝶でも愛でるように言う。
榛色の瞳がそんなに珍しいのだろうか。
キリスエールには何が起きているのかわからない。
「ところで、ここへはどうやってきたの?あの男に連れ込まれたのか?馬ごと?」
「追われて逃げてきただけ。森の奥に、アルタイルに乗って逃げてきました」
あまりに整った顔が目の前にあり、それこそ珍しい左右色の違う瞳に見つめられ、キリスエールは自分がどう答えているかも自覚できないくらい震えていた。金の天使が首をかしげる。
「どこから来たって?」
「どこって、ここはトレジャですよね」
キリスエールの答えに金の天使は目を瞠った。驚いたらしい。
「トレジャの住人。じゃあ、僕が君をもらっても問題はないわけだ」
何を言っているのだろう。この綺麗な天使は。これは一難去ってまた一難なのか。
こんな綺麗な天使が自分に興味を持つわけないと思っていたので何も考えていなかったが。
「面白いね。僕のモノになりなよ。そうすればもう他に襲われないよ。高位のモノには誰も手を出せないからね」
言われている意味がわからない。
「お前の魂は変わった色をしている。綺麗だ。ここで狩ってもいいけど、どうせ人間の一生は短い。僕らからすればね、あっという間だ。そのくらいは待ってあげるよ」
すごいことを言われている気がする。魂だって。天使が人を喰らうのは本当だったのか。
「人間にもお前のようなものがいるのか。汚らわしくて触りたいとも思わなかったが、お前なら楽しませてくれそうだ」
金の天使は、顔をキリスエールに寄せるとあっけにとられているキリスエールの唇に自身の唇を重ねた。
そのまま腰を攫われて、抱き締められる。拍子に開いた唇から舌が入ってきて、キリスエールの口腔内を辿った。息ができなくて苦しい。
「んっ……」
吐息すら吸いつくすような深いキスを贈られて、キリスエールの足から力が抜ける。それを難なく受け止めて、それでもなお唇を離さない。
舌が絡められ、吸われて、思考が溶けて行くようだ。力がすっかり入らなくなったころ、ゆっくりと唇が離れる。
キリスエールの榛色の瞳が熱に浮かされたように潤んでいた。天使の唇は熱いんだと自分でもわからない思考が浮かんでは消える。唇を離しても金の天使は吐息がかかる距離から顔を離さない。
「名前は」
「キリスエール」
気負いもなく自然に答えていた。金の天使の瞳が笑んだ。
「僕はレイラース」
もう一度軽く唇に唇で触れて、レイラースはキリスエールを離した。
「またおいで。お前ならここに辿りつくだろう」
そのまま地面にへたり込んでしまったキリスエールに鮮やかな微笑みを見せると金の天使は踵を返した。背を向けたまま手を振る。そして、また崩れた柱の中に消えた。
キリスエールはいつまでも金の天使レイラースが消えたところを見つめていた。アルタイルが心配そうに寄ってきて、その頬を舐めた。
「アルタイル」
鼻面を撫で、キリスエールは混乱する気持ちと頭を鎮めるため、大きく息をついた。
一体、自分には何が起きているのだろう。この胸を打つ早い鼓動は何故なのだろうか。
どうして金の天使が俺に口づけなんて……。
キリスエールは再度溜息を落とした。
関連記事


にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ

総もくじ 3kaku_s_L.png 天空国の守護者
総もくじ 3kaku_s_L.png 巡る季節と恋の順番
総もくじ 3kaku_s_L.png 山神の花嫁_昔話
総もくじ 3kaku_s_L.png おまけ番外編ショート
総もくじ 3kaku_s_L.png 蒼い闇の化身
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png はじめに
もくじ  3kaku_s_L.png リンク集
もくじ  3kaku_s_L.png Novel lists
もくじ  3kaku_s_L.png 奇跡の刻
もくじ  3kaku_s_L.png 平行線の恋
もくじ  3kaku_s_L.png 煉獄の恋
総もくじ  3kaku_s_L.png 天空国の守護者
総もくじ  3kaku_s_L.png 巡る季節と恋の順番
もくじ  3kaku_s_L.png 雑記
総もくじ  3kaku_s_L.png 山神の花嫁_昔話
もくじ  3kaku_s_L.png 告白の向こうへ
もくじ  3kaku_s_L.png 空の月を恋う
総もくじ  3kaku_s_L.png おまけ番外編ショート
もくじ  3kaku_s_L.png 遠回りの片恋
もくじ  3kaku_s_L.png 腕の中の迷い猫
総もくじ  3kaku_s_L.png 蒼い闇の化身
  • 【報告】へ
  • 【銀の天使】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【報告】へ
  • 【銀の天使】へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。