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「山神の花嫁_昔話」
薄紅色の花弁

薄紅色の花弁(4)

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「泉」
名を呼ばれて、見上げていた月から泉は視線を声の方へ投げた。しだれ桜の幹に寄りかかって立つ泉に、白い月光がふりかかっている。
「翡翠さま」
桜へとまっすぐに歩み寄ってくる翡翠に泉は寂しげに微笑んだ。
「彼らは?」
目の前に立って、泉を見下ろした翡翠にそう尋ねる。
「捜索していた人間が連れて帰った」
「そうですか」
泉は安堵のため息とともに呟く。翡翠のことだから、彼らを探していた人たちの側におろしたんだろうと泉は想像する。
翡翠がふと手を伸ばして、泉の頬を指の背で撫でた。
「ここにいたのか」
翡翠の声に泉は頷いた。
「探した。ずっと待っていた。もう帰って来ない気か?」
怒りではなく切なさの見える声で囁かれ、泉は顔を上げた。翡翠の琥珀色の瞳に泉が映っている。哀しげに顰められた眉に泉は抱きつきたいのをぐっと堪える。
「帰る場所が……ありません」
翡翠が瞳を驚愕に見開くのを泉は見ていた。目を反らしたくなかった。もはや自分をいらないというなら、そう瞳をみてまっすぐに告げて欲しかった。
「私の願いを叶えるのが契約です。私が翡翠さまのお側にいたいと願えば、あなたはずっと私から離れられない。閉じ込めなくても、言ってくださったらよかったのに。契約はもう継続できないって」
ふっと微笑んだら、なぜか翡翠が泣きそうな顔をした。
「泉。お前も俺から離れるのか?もう側にはいたくないのか?」
「違う。それは翡翠さまでしょう。あの屋敷に私を閉じ込めて、見せたくないものがあったんだ。私に飽いたなら、そう言ってくださればそれでよかったのに」
泉の頬を右の手のひらで包んで、翡翠は泉の瞳を覗き込んで、ゆっくり首を振った。どちらの言葉に首を振ったんだろう、どちらも否定したと思いたい。
「飽きるって?俺がお前に?」
そんなことはあるはずがないと翡翠は告げた。そうだったなら、おまえを閉じ込めたりしなかったと。
「では、何故……?」
声が掠れた。見せたくないものは存在するんだと泉は心で叫んだ。翡翠は泉の腕を掴んだ。
抱き寄せようとする翡翠に泉は抗う。腕に抱かれたら、何も聞けなくなってしまう。そしてまた不安に溺れる。
抵抗を見せた泉に翡翠はまた首を振った。言いたくないと琥珀色の瞳が語る。だが、泉は今回は折れる気がなかった。今、ちゃんと向き合っておかないといつかこの不安が自分の身を喰うだろうとこの7日で泉は嫌と言うほど思い知ったのだ。
「理由を。翡翠さま。私になにを見せたくなかったのです?」
「お前を花嫁にと攫って、70年」
大きく息を吐いてから、翡翠は観念したように言葉をぽつんと押し出した。
「俺にはたいした年月じゃない。あっという間だったような気さえする。だが、人はそうは思わない」
泉には翡翠が何を言いたいのか全く分からなかった。見せたくないものが何かと問うたのに。
「お前は俺と契約を交わしたから、俺と同じ時を生きる。だが、人は自分を知るものがこの世から消えていくと耐えられなくなるらしい。その孤独に、あるいは人でなくなったことを自覚することに。そうやってみんな俺の元から去って行った」
「もしかして……時……ですか?翡翠さまが私に見せたくなかったのは……」
「そうだ。お前が自覚するのが怖かった。自分の知り合いがこの世からいなくなって、本当に人間から切り離されて孤独を感じることが怖かった。そして、俺を置いて消えてしまいたくなったらと……。だから、人の世界に触れさせたくなかった」
宮にいたら、どうしたって山裾の人間界の話を聞くだろうと翡翠は呟く。
泉は手を伸ばした。翡翠の左の頬にそっと手のひらをあてる。涙を流さず泣いている翡翠に泉は微笑んだ。
「翡翠さまは忘れてらっしゃる。私には何もない。最初からです。過去の方々がどうだったかは私にはわからない。だけど、私にとっては、失うものなど何もないんです。親も大切な人も。自分が孤独だったことすら知らなかった。それを教えて埋めてくださったのは翡翠さま、あなたです。だから、あなたを失ったら私は私でいられない」
泉の手の上に翡翠は自分の手を重ねた。
「泉」
「ここにいる間、思い出すことといえば、翡翠さまとのことばかり。百年どころか千年経ってもだれにもやらないと言って下さったのは嘘だったんですか?」
ぐっと腰をさらわれ、胸にきつく抱きこまれた。泉は今度は抗わなかった。
自分たちは同じことに悩んでいたんだとわかったから。
自分以外の誰かを選んでほしくないと声に出さずに悩んでいた。
熱い身体に泉はさらに身を寄せる。こんなにも愛しくて大切なのに、惑ってばかりだ。
「自分の住んでいた小屋を見ました。もう、跡形もなかった。さっきの青年に人間に見えないと言われた。そういうことも私にとって、少しは哀しい気もします。でも、翡翠さま、あなたを失うと思ったら消えてなくなってしまいたかった」
腕を伸ばして、抱きかえし、泉が告げるとさらに苦しいくらいに抱き締められた。
「どこにもいかないと。側にいると言ってくれ」
「それは私の言葉です。翡翠さま。私の願いは翡翠さま、ずっとあなたのお側に仕えることなんですから」
「泉」
翡翠は泉の膝を掬って抱きあげた。帰ろうと告げられる。
「どこへ?」
とたずねれば、お前の望むままにと言われ泉は微笑んだ。


「……はぁっ……あっ…あぁ……」
身体をうつ伏せにし、後ろから貫かれて泉は喘ぎ声を上げた。翡翠は泉が声を上げるとさらに穿つ速度を上げる。
「ぁああ……やっ……」
熱い翡翠自身に追い詰められて、泉の口からは吐息と嬌声しかあがらない。身体が蕩けて崩れてしまいそうな、熱くて壊れてしまいそうなどうしようもない感覚に翻弄されて、泉は喘ぐ。
背に唇が這い、きつく吸いあげられる痛みすらも快楽に変わり、泉は甘い声を上げる。
「翡翠さま……もう……」
奥の奥までかき回されて、身体の奥から湧きあがってくる熱に逆らえずに、泉は音を上げた。
だがそれは翡翠の意には染まなかったらしい。耳たぶを甘噛されて、まだだと熱く囁かれ、泉の白い肌が薄紅色に染まる。
身体の中の翡翠は熱くて、泉は突き上げられる度、腰を揺らした。
「熱いな……中が絡みついて引きとめる」
わかるかと言われて、泉は首を横に振る。身体中が翡翠を感じて歓喜の声を上げているのに、そんなことを聞かないでほしいと泉は思う。声すら自分を犯しているようで、おかしくなってしまいそうだった。
一度引き抜かれて、肩を押され泉は仰向けに横たわる。膝を割って、翡翠が身体を入れ、再度、翡翠を受け入れた。
「んっ……あぁっ……はぁっ……」
久しぶりの翡翠の肌は熱くて、自分を抱く腕は力強くて眩暈がするほどだ。離れていられたのが嘘のように、隙間なく抱きあって、泉は腰を捩った。
中の翡翠の鼓動すら感じられる気がして、この体温に身体を埋める確かな質量に満たされる。
「泉」
名を呼ばれて、噛みつくような口づけを与えられ、舌が口内を乱暴に嬲るとそれすら気持ちが良くて、泉は腰を揺らめかした。
「ひすい……」
敬称は口づけに吸い取られ、翡翠が動きの速度をあげた。泉の喘ぎがさらに甘さを増す。
「やっ……もう……だめ……ああぁぁっ……」
敏感なところを突かれて、口づけが深くなるともう我慢がきかなかった。背が反って、泉の腹を白濁が汚した。びくりと体内の翡翠を締めつけると泉を抱き締める身体が微かに跳ねた。
「泉」
身体の奥に熱を感じ、泉はその幸せに声を上げた。
「翡翠さま……離さないで……」
繋がったまま、その幸福な熱に浮かされながら、泉は翡翠の背をぐっと抱き締めた。
7つの夜を埋めるように喰らいあった。幾度抱かれて、どれだけその精を吐き出したかもわからない。うわ言のように相手の名を呼び、瞳にはお互いの姿しか映さず、出口を求めて湧きだす熱の奔流に酔った。
この熱さからどうして離れていられたんだろうと霞む意識の片隅で泉は思った。
「溶けてしまう」
呟くとぐっと抱き締められた。
「溶けてしまえばいい。ずっと側に」
唸るような翡翠の声に泉は微笑んだ。ああ、同じことを想ってくださると。
「はぁっ……あぁっ……」
嬌声を上げながら、泉は腕を伸ばす。翡翠の髪に両手を差し入れ、ぐっと手前に引いた。翡翠が唇をよせる。熱い舌が泉の口腔内を蹂躙する。
それに満足げな溜息を泉はつく。
「泉」
名を呼ばれて、泉は翡翠を潤む瞳で見つめた。ひたと視線を捉えられる。
「側に。泉は翡翠さまのものですから」
掠れた声で告げると翡翠が笑った。長い犬歯が唇の端からのぞく。
「違うな。俺がお前のものなんだ」
酷く驚いて、泉は翡翠を凝視した。目の前の琥珀色の瞳は悪戯気に光っている。
「俺を捨てるな」
ひっしと泉は翡翠の背に回した腕に力をこめ、足を翡翠の腰に絡めた。
「……もっと」
足りないと告げれば、翡翠が驚愕に目を見開き、それから挑戦的な笑みを口元に浮かべた。泉の腰を攫って、ぐっと奥まで抉られ、泉は甘い叫びを上げて背を反らせた。
「……望みのままに」
翡翠の囁く低い声が泉の鼓膜を甘く揺らした。


視界をいっぱいに埋める薄桃色の花弁の乱舞。
泉は縁側に座って、驚嘆の溜息しかでない光景に見入っていた。
「きれい」
ここの桜も見事だと翡翠が告げた通り、翡翠の屋敷の庭はそれこそ桜で埋め尽くされ、この世のものとは思えない美しさだ。
貪るようにお互いの存在を確かめ合ったあとで、翡翠が泉を花見に誘った。
腕一本上げるのも億劫で、泉は首を横に振ったのだが、軽々と身体を翡翠に抱えあげられ、否を唱える前に縁側に運ばれてしまった。
翡翠の膝の上で胸に抱きこまれながら、泉は夢のような光景に溜息を落す。
山のしだれ桜の古木も見事の一言に尽きたが、くるくるとその身を躍らせて散りゆく桜の儚さは筆舌に尽くしがたいものがあった。
「翡翠さま」
二人で言葉もなく、桜の散るさまを眺めていたが、泉はふと思いついて翡翠の名を呼んだ。
「千年桜は神域だったんですか」
背中で動く気配がして、翡翠の手に顎をすくわれた。下から翡翠の瞳を見上げると真意を問うようなもの言いたげな瞳が見えた。
「いえ、あの青年、静さんのいるところへまっすぐ飛んで来られたのでしょう?」
泉も翡翠が山で迷っている人間を探せないことはよく知っている。人間界でそれもあの広い山の中のことをいちいち神様が知るわけないのだから。
「ああ。あそこは人界だ。間違いなくな。だが」
翡翠はそこで言葉を切って、泉の顎を掬った手の指で泉の唇を辿った。
「お前は別だ。あの青年に触れたろう?泉に結界を張った憶えはないが、お前は神界に属するものだ。だから、お前があの青年に触れたとたんに居場所がわかった」
泉は翡翠を見つめながら何度か瞬いた。そして、口の端を上げて微笑む。
自分はやっぱり翡翠さまのものなんだと思ったから。
しばらく顔を上向けて翡翠の瞳を見つめた。桜もきれいだったが、この瞳は何にも代え難く美しいと泉は思う。その瞳が惜しげもなく自分を映す。
「宮へ帰ろう」
ぽつりと何でもないように呟いた翡翠の頭に泉は手を伸ばし、抱え込む。
声になにか深い決意のようなものを感じたから。
翡翠の唇がそっと降りてきて、泉の額に口づけた。

ひらりひらりと薄紅色の花弁が舞う。
泉の哀しみを不安を持って行くかのように、花弁は音も立てずに舞い散った。


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