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「天空国の守護者」
地上編

闖入者(2)

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街からかなり離れたなだらかな丘の上にレイラースはその身を現した。殺気に、ぱっと身体を横に傾ける。耳の横を小型のナイフが風切り音を残して過ぎていった。
「早いな。さすがですね、黄軍隊長」
肩より少し下まで伸ばした髪を風に散らしながら、不敵に笑ったのは、カルアだ。猫のような瞳をさらに細めて、微笑むさまは狂気すら孕んでいた。
「やっぱり、結界を張ってました?まあ、そんな気配も見えましたけどね」
くつくつと笑って、カルアは右手に短刀を出現させる。
「だけど、あんたに用はないんですよ。うちの隊長どこです?」
「元だ」
腰の剣をすらりと抜きながら、どうでもいいことをレイラースは付け足した。相手の神経を逆なでしたかっただけだ。
カルアは案の定、嫌な顔を見せる。
「ここは通さないし、おまえを許す気もない。僕はタミルみたいに甘くないよ。命まで取らないなんて温いことは言わない」
レイラースの言葉にふっとカルアは笑う。
「隊長はどこです」
カルアは同じ質問を繰り返した。独り言のようにも聞こえた。
「それに答える義務もない」
カチリと音をたてて、剣を正眼に構えるとレイラースは背に白い翼を出現させて飛ぶ。
次の瞬間にはカルアの脇へ移動し、剣をなぐ。カルアが身を沈めて、レイラースの剣は空を切った。
その瞬間、下から力の塊がレイラースに向かって飛んでくるのを後ろに跳び退ってレイラースは避けた。
「本気なんですね。めんどくさがりの黄軍隊長が」
揶揄の含む声に、レイラースは口の端をあげた。カルアの言葉は間違っていない。自分は面倒事は嫌いだとレイラースは思う。
「守りたいものがあるからな」
そう、それはかつては自分の安寧な日常と母国だったのに、今は違う。
「はっ!」
莫迦にしたようにカルアは、息を吐き捨て、顔の前で両手をクロスした、手の平の周辺に光が集まり、それをカルアは前方へと放った。
レイラースはばっさりと剣でそれを上からたたき切る。光が霧散し、空気が震え、視界が陰る。
「だったら、あなただけがそれを守っていればいい。うちの隊長を巻き込む必要はない」
空を横に移動しながら、カルアは手から光のつぶてを立て続けにレイラースに叩き込む。
それをすべて、剣で跳ね返して、レイラースはふっと笑った。
タミルがセインがキリスエールをあきらめればいい、そう思っている自分に気付いたからだ。
「何がおかしい」
「おまえは僕には勝てないよ」
だが、レイラースは心で思ったこととは違うことを口にする。キリスエールと自分たちのことを説明してやる義理はない。
思った通り、レイラースの言葉はカルアを苛立たせた。
「わかってるだろう。副隊長といえど、僕との実力は天と地ほども違う」
それは歴然とした事実だ。カルアは精神系の技を得意とする。こういった正面を切った戦いには向いていない。レイラースもまた他人の意志を読む技術に長けるが、武器を使わせてもその名を知らぬものはいない。
「くっ……」
悔しそうに唇を噛んで、カルアは身体から陽炎のような気を発した。
「それも効かない」
動きをとめようとしたのだろう力の波動を感じて、レイラースは左腕をうるさそうに払った。レイラースを覆うとしていた力は煙のように分断されて流れていく。
ぎりぎりと奥歯をかみしめて、カルアはレイラースを睨み付けた。
レイラースは静かにその瞳を捉えた。二人は空中に浮いたまま睨み合う。
先に動いたのはカルアだった。手に長い光の剣を出現させるやレイラースにまっすぐに突っ込んでいく。
剣と剣のあたる音が響き渡った。見えないほどの剣の軌跡が時折、光にきらめき、剣戟の音が空を震わせる。
レイラースは繰り出される剣の軌跡をことごとく止めていた。カルアの動きは素早いが、剣の当たる重さが軽い。何度か受けてそう判断したレイラースはカルアの剣をはじき返し、剣先を変えて、叩き込む。
きいいいいん。
高い金属音がして、剣先がカルアの剣の上を滑った。
よく止めたと内心感心するが、相手の感応力もかなりのものだったと思い出す。動く前に気と思考を読んだのだろう。
カルアは後ろに跳び退った。間合いを取って、剣を構えなおすのを見ながら、レイラースは身体の前で片手で剣を振った。風の刃がうまれてカルアを襲う。
カルアの前でそれらは向きを変え、彼の後ろへと過ぎ去っていく。
「シールドを張ったか」
ふっと笑って、レイラースは剣を構えなおす。やはり槍を持ってくるべきだったと思いながらも、カルアの光の剣先を見つめた。
ふと、レイラースの耳が馬の蹄が地面を叩くかすかな音を拾った。慣れた気配が近づいてくる。
「タミルか」
レイラースの呟きを聞きとがめたのかカルアが動いた。口元に狂気じみた笑みを浮かべている。
カルアは空を蹴るとまっすぐにタミルに向かって突っ込んだ。
高い金属音が響き渡る。馬にまたがったタミルがカルアの光の剣を頭上で受け止めた。空中からの渾身の一撃を受けるタミルの腕が小さく震える。天空国でも名のある名剣でなければ真っ二つだったかもしれない。それほどの一撃だった。
ぎりぎりと剣を押し付けながら、カルアはタミルを睨み付ける。狂おしいほどの光を浮かべた瞳で、タミルを凝視し、身体ごと剣を押し付ける。
「カルア。剣を引け」
「嫌です。俺はあんたを絶対に許さない」
さらに力を入れて、カルアは剣を押した。
それを力ではじき返して、タミルは背に黒い翼を広げた。間合いを取るべく後ろに跳ぶ。
「もうやめろ。俺のことは捨ておけと言ったはずだ」
「ふざけるな。俺がここにいるのは黒軍の総意だ。あんたのせいで、黒軍は国から動けない。解散させられているのに等しい。すべて、隊長、あんたのせいです」
カルアの叫びにタミルは顔を歪めた。
国においてきたすべてがタミルの脳裏を通り過ぎる。後悔しないと決めた。実際に後悔はない。それでもおいてきたものの叫びを無視できるほどタミルは心強くなかった。
「隊長。戻って下さい。まだ、間に合う。国は守護者が人間界に降りたことだけを問題にしている」
カルアは矛盾したことを言っていると気付いているだろうか。許さないと言いながら、戻れと言う。
「戻ればすべてを許せるのか?」
小さく呟いてから唇をかみしめて、タミルはきつい瞳でカルアを見つめた。
カルアもタミルを見つめ返す。
「あなたが人間を捨て、国に帰れば、許せます。いいえ、そんなことすらどうでもいい。戻ってきてください。隊長のいない黒軍など存在しない」
「カルア、おまえ……」
「お願いです」
絞り出すような声を最後に沈黙が落ちる。二人は空中で間合いをとったまま睨み合う。
冷たさを織り交ぜた風が二人の間を吹き抜けた。タミルの長い黒髪が風に散る。つらそうにカルアが眉を寄せる。
いつも口を開けば、きついことを言い、タミルを諌め、時に揶揄していた。タミルにとってカルアはちょっと苦手な信頼できる副官だった。カルアが自分を嫌っているわけではないとは知っていたが、それは困った上司にたいする態度だと思っていた。
だが、カルアの表情にタミルは気付いてしまった。まるで、今の自分の想いを見るようだ。
届かない想い。手に入らない愛しいもの。
タミルがキリスエールを思うように、カルアもそういう目で自分をみていたのだ。
何を言っていいかもわからず、剣を構えたままタミルはカルアを見ていた。
「俺は……」
タミルがやっとの思いで口を開くと同時に、ふぁさりと翼がはためく音がして気配が動いた。
「タミル、無駄だ」
肩を叩かれ、タミルは視線をカルアから外す。後ろを守るようにレイラースが立っていた。
「こいつはおまえが手に入らない戻らない限り、同じことを言い続ける。おまえを狙い続ける。こいつの要求は国に戻るか死か、二つに一つだ」
その言葉にタミルは強く首を横に振った。それは受け入れられない。心は決まっている。たとえ、仲間を裏切っても、捨て去って心が痛みを訴えても、取るべきものは一つだ。そして、キリスエールある限り、カルアを受け入れることはできない。
「俺は帰らない。主はここにいる」
苦しそうに吐き捨てたタミルの言葉にカルアは身体の動きを止めた。
「な、何を言っているんです……?」
呆然とカルアが呟いた。
「まさか……まさか……」
唇をわななかせて、カルアが声を上げる。真っ青な顔で、タミルを見つめた。その瞳だけが異様な光を放っていた。
「人間に剣を……」
声が掠れ、身体が小刻みに震えている。
「よりにもよってトレジャの贄に……」
ぶわっと力の波動がカルアを中心に全方位に向けて放たれた。
「うおぁぁぁああ……」
吠え声をあげながら、カルアは力を放出した。タミルとレイラースの前で力がぶつかる光軌がはじけた。
レイラースが張ったシールドにカルアの力が跳ね返される。
正気を失ったような力の奔流にタミルとレイラースは空中であるにも関わらず、押されて身体が後退する。
「ちっ……」
シールドを補強して、レイラースが舌を打つ。
「どうするんだ。我を忘れている。こういうのはやっかいなんだ」
「しばらく耐えろ。そんなには続かない」
剣を構えなおして、タミルはまっすぐにカルアを強く見つめた。
力の持続時間は体力に比例する。感応力に重きを置いているカルアは線の細さも手伝って、そう長く体力が続く方ではない。
「力が切れたら、打って出る」
その隙を逃さないために、タミルはカルアの気配を力の量を図る。
「仕方ないな……」
呟くために開いたレイラースの唇が驚きで、そのままの形で凍りついた。タミルも背中で気配を感じる。
地面を蹴る蹄の音。力に押された空気の奔流が鳴る。
風に混ざって名を呼ぶ声は……。
「やめろっ」
カルアの力の波動が途切れた。タミルは剣を構えたまま前に突進する。
「だめだっ」
レイラースはくるりと後ろを向いて地面に向けて疾走した。
「そこか」
力の奔流を一方向に集約し、勝ち誇ったように口端を笑みの形にあげたカルアは腕を振った。
光の槍がまっすぐに地面に向かって放たれる。
「キリスエール!!」
レイラースの悲鳴のような声が、響き渡った。
タミルは自分の横を通り過ぎて行った光とすれ違い、剣を振り下ろす。力の加減などできなかった。袈裟懸けにした剣の軌跡が日の光をはじいてきらめいた。
カルアが朱に染まった。
「隊長……」
口元に満足そうな笑みを湛えて呟く。吹き出した血が腕からも足からもつたい、地面に落ちる。カルアはふらりと身体をふらつかせた。
「あんたやっぱりバカだ」
さらに笑みを深めて崩れ落ちるカルアをタミルはとっさに抱きとめた。
傷は深い。身体の前面の傷口から命と力が流れ出る。息も荒く、痛みのために眉間に皺を寄せていた。
「人間に……剣を捧げる……なんて」
本気で自分を叩き切ったタミルに言葉の真実をくみ取ったのだろうカルアが「バカだと」再度呟く。げほげほとせき込んで、口からあふれた血を腕で拭った。
「カルア」
「だけど、それも終わり……。あんたの主もつれて……行く」
苦しそうに紡ぎだす言葉に、タミルは首を横に振った。キリスエールの気配は消えていない。怪我をしたかもしれないが、命に係わる気配はない。
「最悪だ」
取り乱しもせずに、自分の言葉を否定されたカルアは、自分の最後の力も及ばなかったことを知る。つらそうにそれでも瞳を開いて、タミルを探すカルアの視線にタミルは視線を合わせた。
カルアがかすかに口の端をあげた。
「まあ、だけど……これで、人間なんかに……入れ込むあんたを……二度と……見ないで……すみます……」
カルアは笑ったのだろうか泣いたのだろうか。
最後にゆっくりと唇を動かす。声にならない言葉は、だが、タミルの耳にはっきりと聞こえた。
「……さようなら、隊長」
カルアの身体から力がすべて抜けた。
「カルアっ!」
叫ぶが、ぐったりと腕にのしかかるカルアの重みは、すでにカルアの息がないことを証明している。カルアの身体を両腕で抱え直し、タミルは瞳を閉じた。
涙は出なかった。
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