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「天空国の守護者」
地上編

闖入者(3)

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腕にカルアを抱いたまま、タミルは地面に降り立った。そっとカルアの身を地面に下ろす。
キリスエールの気配のする方へ足を向けるとレイラースがその腕で身体でキリスエールを抱え込んでいた。
「キリスエール」
レイラースの背越しに見えたキリスエールの名を呼べば、キリスエールの栗色の髪がかすかに揺れ、顔を上げるとまっすぐにタミルを見つめてきた。
「大丈夫か」
微かに頷くキリスエールに安堵を覚えて、タミルはキリスエールの傍らの地面に片膝をついた。
「でも、レイラース様が……何度も呼んでいるんですが、返事がないんです」
不安そうにキリスエールが瞳を揺らす。レイラースが返事をしないため、動くに動けないようだ。軽く腕を添えて、レイラースを支えている。
「レイラース様。大丈夫ですか?」
自分を抱きしめるレイラースをキリスエールが呼ぶ。
「レイラース」
タミルも声をかけて、肩に手をかける。
ぐらりと身体がかしいで、レイラースは地面に滑り落ちた。
「レイラース……様」
伸ばした腕でレイラースを捕まえたキリスエールが呆然と名を呼ぶが、レイラースから応答はない。
「い、いやだ。レイラース様。目を開けて。なんで、どうして」
ぐったりと意識のないレイラースを掴みながら、キリスエールが悲鳴のような声を上げる。
「どうして。いやだ。レイラースさまっ!」
「だめだ、キリスエール」
肩に手を置いてレイラースに取りすがって、身体を揺らすキリスエールをタミルは止めた。
「で、でも。レイラース様が、レイラース様」
「落ち着け、キリスエール。揺らしてはだめだ」
「レイラース様」
耳元で叫び続けるキリスエールの腕を掴んで、タミルは大丈夫だと繰り返す。
カルアの放った光の槍はまっすぐにキリスエールに向かっていた。レイラースはキリスエールが傷つく前に、その背でかばったのだろう。レイラースの肩が触れている地面に赤い流れが見えた。
キリスエールが、傷を手で押さえた。
「怪我をしている。早く手当を。レイラース様が……」
血がこれ以上流れ出ないようにだろうか、傷口を押さえつけながら、キリスエールが縋るようにタミルを見た。
「タミル様。布かなにかお持ちではないですか。出血がすごい。早く止めないと……」
涙を瞳にためて、キリスエールが言い募る。タミルは手を伸ばした。
治癒はあまり得意ではないが、出血は止めたほうがいいだろう。
痕が残るとレイラースに文句を言われるかもしれないが。
「何の騒ぎだ」
キリスエールの背後から聞こえた言葉に、タミルは顔をあげた。
「セイン」
屋敷を飛び出してくるときにセインは留守だった。伝言を残したがそれを聞いてきたのだろう。タミルはほっと息を吐く。
「セイン、いいところに来た。詳しいことはあとだ。レイラースが怪我をした。診てやってくれ」
「キリスエールは?」
眉間に皺を寄せて問うたセインにレイラースに縋りついているキリスエールが首を横に振る。
「俺は平気です。それより、レイラース様が。血がすごくて……はやく……」
レイラースの傷口を押さえながら、涙声でキリスエールが訴える。
「よかった」
ほっと愁眉を開いてセインはキリスエールに笑いかけた。足を踏み出してレイラースの側により、「どいて」と有無を言わさずにキリスエールを押しのける。
傷口を地面から浮かせるようにして、セインはレイラースの傷を診た。
「骨は避けたみたいだな。貫通している。出血は派手だが……まあ、大丈夫だろう」
手を傷口の上にあて、セインは力を流しこんだ。
服を濡らしていた血が止まった。
「セイン様……」
地面にへたり込んだままそれを見つめていたキリスエールが、セインを不安げに見つめた。
「傷はふさいだ。あとは養生すれば、すぐに元気になる」
セインの言葉にキリスエールは肩で一度息をして、ぎこちなく笑みを浮かべた。キリスエールの頭をくしゃりと撫でて、セインは立ち上がる。
「それは?」
初めて気が付いたようにセインはタミルの足元にいるカルアを目で指した。
「ああ」
カルアを見下ろして、タミルは痛みをこらえるように顔を歪めた。喉の奥が詰まって何も言葉がでない。セインは小さくため息をついた。
「わかった。そっちはタミルに一任する。報告は後ででいい。レイラースはこちらで引きうけるから、おまえは自分の仕事をしろ」
セインはタミルの肩をポンとたたき、キリスエールを見る。
「キリスエール、手伝って。レイラースと屋敷に帰るから」
頬を涙で濡らして、キリスエールが頷く。
「アルタイルに乗せてください」
キリスエールの提案にセインは首を横に振った。
「それは目立ちすぎる。このまま屋敷に飛ぶから、キリスエールはアルタイルと先に屋敷に戻って、レイラースの部屋を整えておいて」
セインの言葉にキリスエールは大きくうなずき、立ち上がるとアルタイルの手綱を取った。
ふわりと馬上に身を躍らせ、一度だけレイラースのほうへ心配そうな視線を投げた。唇をかみしめ、手綱を取るとキリスエールはそのまま馬首を返して、走り去る。
遠ざかっていく、蹄がたてる土煙を目を細めて見つめていたセインは、腰をかがめるとレイラースを担ぎ上げた。
「わかっているな」
タミルのほうを見ないで、セインは静かに言った。
「ああ」
そう、キリスエールを選んだ時点でわかっていた。全てを捨てたことは。
そして、彼らが自分に執着する以上、こういうこともあるだろうと。
「あとはおまえの問題だ」
それだけ言って、タミルをまっすぐにセインは見つめた。その視線をタミルは受け止める。
何があっても譲れないもの、それは、キリスエールだけだ。
口にしない思いをセインは正確に読むだろう。タミルは視線をそらさず、強い瞳でセインを見つめた。
「わかっているならいい」
小さく呟いて、セインは踵を返し、レイラースを抱えたまま、姿を消した。
冬の気配を含んだ風が土埃を巻きあげた。

しばらく、消えたセインのいた場所をただ見つめていたタミルだったが、足を一歩引くとそっとタミルはカルアの側によると傍らにしゃがみこむ。
仰向けに横たわったカルアには大きな傷が走っている。力を使って傷口をふさぐ。
こんなことをしても失われた気も命も戻らない。だが、そうせずにはいられなかった。
頬を撫でる。
「カルア。すまない」
カルアの手を取って握りしめるとタミルは頭を下げた。幾多も一緒に戦場を駆け、ともに戦い、哀しみ、笑いあった。
カルアがキリスエールに向かって刃を投げなければ、自分に向かってくるだけだったら、埒もあかない「だったら」を繰り返す。
手加減もなにもできなかった。キリスエールを守ることしか頭になかった。
後悔はない。だが、別の道もあったんじゃないかと思う。
じゃりりと砂を踏む音にタミルはぴくんと身体を震わせた。
「タミル」
名を呼ぶ声に、カルアの手をそっと地面におろし、タミルは立ち上がり振り返った。
「カミール」
碧軍隊長カミールが風に緑の髪をそよがせて立っていた。
「久しぶりですね」
何を言っていいかわからず、タミルは困惑した瞳をカミールに向けた。
「まだ、続けますか」
静かな双眸で見つめ返され、タミルは視線を後ろのカルアに流した。
「まさか、こいつを焚きつけたのは……」
「そんなことしません。貴方たち相手に、その者では太刀打ちできないのは明白でした。だた、続けるのなら、犠牲はまだ終わらない。国主は本気です。貴方たちが国に帰ればそれでよし、そうでなければ、いくらでも犠牲を払うつもりだ」
カミールの言葉にタミルは目を瞠る。掟を破っているのは百も承知だが、だが、部下を散らしてまで、すべきことだろうか。
「疑問はもっともですが、規律というのは正さなければ国は正常に動きません。例外はなしです。守護者は人間界に降りてはいけない。これは曲げられない掟です。もう、こんなことは止めて帰ってきたらどうです、タミル」
静かだが、力のこもった言葉にタミルは、カミールの緑の瞳を睨み付けた。
そして、首を横に振る。
「それはできない」
「答えはいまだ出すべきではない。戻って、セインに伝えて下さい。無益な争いは国力を下げますと」
言いながらカミールはタミルに向かって歩き出す。
殺気の感じさせない相手に剣はむけられない。タミルは油断なくカミールをにらみながらその場に立ちつくしていた。
タミルの横を通り過ぎ、カミールはカルアを見下ろした。
「このものはこちらで預かります。丁重に国に返します」
その言葉には何も返せなかった。カルアも人間の世界に埋葬などされたくないだろう。
「必ず、セインに伝えてください。猶予はそうはありません。国主は3軍を投入しても、この街を破壊してもあなたたちの捕縛を命じましたから」
カルアを抱えて、カミールは静かにそう告げるとふっと姿を消した。
何も遮るもののない草原を一陣の風が渡っていった。
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