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「天空国の守護者」
地上編

崩壊の序曲

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白皙の顔がさらに青白く見える。
キリスエールは、指でそっと頬にかかる金色の髪を脇へと流した。呼吸は安定していて、苦しそうではないが、白い瞼は閉じたままで、色違いの瞳をのぞかせることがない。
レイラースがキリスエールをかばって怪我をしてから、すでに5日。だが、レイラースは目覚めることなく眠りについている。
セインもタミルも体力回復している最中だから心配はないと言うが、湿らせた布から水分を取るだけで、本当に大丈夫なのか、キリスエールは不安で仕方がなかった。
「レイラース様」
あの日、レイラースを追って馬で出かけたタミルを追いかけた。街の北門から出て、平原が広がる草の海へアルタイルを乗り入れると、空から光の帯が降ってくるのが見えた。
青い空と宙に浮かぶ金と黒の天使。そして、怖い気配を纏ったもう一人の守護者。
それらを覆い被して隠すかのように光の槍が落ちてきて、それよりも早く空を切った白い翼が、キリスエールの視界を遮ったと思ったら、レイラースに抱きしめられていた。
足手まといであるのは百も承知だったのに、レイラースが飛び出していって気が気でなくて、出向いてしまったのは軽率だったと思う。
だが、自分だけ守られているのは嫌だったのだ。
でも、結果は、このざまだ。レイラースはしなくていい怪我をし、タミルは元部下をその手にかけて、ここのところ部屋から出てこない。喪に服しているのか、それともひどく気がふさいでいるのかもしれない。
「レイラース様」
傍らの椅子に座って、手を伸ばして、そっとレイラースの頬に触れる。
温もりがレイラースの息吹きを伝えて、キリスエールは少しだけ安心した。
肩の傷は跡形もなくセインが消してしまったが、それだけではダメらしい。
「目を開けてください。なんでもしますから。レイラース様……ごめんなさい」
何度も同じことを語りかける。謝罪の言葉は何度でも口をついた。
「ごめんなさい」
キリスエールの声を窓からの風が散らす。日が陰ってきて、少し肌寒さを感じて、キリスエールは立ち上がって、窓辺によると細く開いておいた窓を閉める。まだ、日は地平線の上だが、すでに宵闇の気配が漂っている。冬が近いせいか、日の出る時間も徐々に短くなっている。
「うっ……」
呻くような声がして、窓の外を見ていたキリスエールは慌てて踵を返すとベッド脇にもどった。レイラースの瞼がひくりと動く。
「レイラース様」
目覚めるのだろうかとキリスエールは声をかける。その声にこたえるかのように、再度瞼が、動いた。
「レイラース様」
先ほどより大きめの声で名を呼ぶと、ゆっくりと双眸があいた。赤と緑の瞳がまるで宝玉のように光り、焦点が合う。
「……キリスエール……?」
まだ、ぼんやりとした声で、レイラースがキリスエールの名を呼ぶ。
「レイラース様。俺が見えますか?気分は?痛いところはありませんか?」
レイラースを上から見下ろして、キリスエールは立て続けに質問を投げた。こんないっぺんにいろいろ訊いてはいけないと思っても、不安で、口にせずにはいられない。
「キリスエール?」
怪訝そうに再度名を呼び、レイラースがキリスエールの瞳を覗き込んだ。
「ああ。よかった」
瞳に浮かぶ光がいつも通り強くて、しっかりしていることを見て取って、キリスエールは震える声で言う。
「怪我は?」
「肩に……」
「違う。キリスエール。おまえに怪我はなかったか?」
状態を説明しようとしたキリスエールを遮って、レイラースはキリスエールを見、身体を起こそうと、少し肩を上げる。
「俺は平気です。レイラース様が助けてくださいましたから」
そう、自分さえいなければレイラースが怪我をすることもなかったとキリスエールは、ずっと繰り返した後悔を思い出す。
「そう。よかった」
そうつぶやいて、レイラースは、枕に沈む。肩が痛むのだろうか。
「痛いですか?」
「いや、痛みはない。まだ、少し怠いが。あれからどれだけ経った?」
仰向けに寝ながら、レイラースが尋ねる。
「5日です。ずっと眠ってらっしゃいました」
そうかともそんなにともとれるような呟きを落として、レイラースはキリスエールへと視線を戻した。
「レイラース様……」
謝りたかった。ずっと、口にしていた謝罪を繰り返そうと口を開く。
「セインは?」
しかし、レイラースにそれを遮られる。
「いらっしゃると思いますけど」
「ちょっと呼んできて」
ためらうキリスエールに微笑んで、レイラースは「お願いだ」と告げる。
ため息を一つついて、キリスエールは立ち上がった。レイラースが目覚めたことはセインにもタミルにも言わなければいけないのだから、このお願いは突飛ではない。
だが、その前に謝りたかったのにと思いながら、キリスエールはベッドサイドを離れた。

「目が覚めたのか」
部屋に入るなり、セインはベッドに歩み寄りながら、尋ねる。
「ああ」
怠そうに身体を起こして、レイラースはセインに視線を向ける。キリスエールは、枕をレイラースが寄り掛かれるように整えた。
「かなり血が流れたからね」
ベッドの脇に立って、レイラースを見下ろすように立って告げるセインを下から見つめて、レイラースが手を差し出す。
「なんだ?」
「ちょっとエネルギー足りない」
セインの片眉がひくんと跳ねた。
「タミルにもらえ。あいつなら、有り余っているだろうし」
「嫌だよ。ここまで負の感情が流れてくる。うっとうしくて敵わない」
レイラースの言葉にキリスエールが肩を揺らした。タミルは部下を無くしたのだ。それもその手で。
「ご、ごめんなさい」
二人の話に割り込む気なんてなかった。だが、こんな事態を引き起こしたのは自分で、キリスエールはとっさに口から言葉が飛び出していた。
「俺のを……」
俺の生気を持って行ってくれと続けて口にしようと口を開くが、重いため息にかき消される。
「キリスエール。やめておけ。こんな状態のレイラースに生気を持っていかれたら、おまえの命がない」
「そうだ。それに、反省したいなら、その後させてあげるよ」
剣呑な瞳で睨まれて、キリスエールは不安げにレイラースを見上げた。
「そこにいて。逃げちゃだめだよ」
口端を少し上げて微笑んだ姿に、キリスエールは背筋を震わせる。怯えたキリスエールに目元を緩めて、レイラースはセインに視線を移す。
「セイン」
「仕方がない。加減しろよ」
セインがレイラースの手をとった。ぐっとレイラースがセインの手を引くと、セインの身体が、ベッドに倒れこみ、レイラースは腕を伸ばすとセインを受け止め抱きしめた。
セインの銀の髪がふわりと宙を舞う。重なった二人の身体が、白く光り、金と銀が混ざり合った。
眩しくて目を開けていられなくて、キリスエールは目を閉じる。耳に翼が空を切るばさりという音が届いた。
光が強さを増す。目を閉じていても瞼を差すような光に目を開けられなかった。爆発的に明度を増した光は、最大限に大きくなり、それからしぼむように小さく縮み、消えた。
キリスエールが恐る恐る瞳を上げると、セインがベッドに腰を下ろして首を左右に振っていた。
「レイラース。加減しろって言った」
少しふらつくのか、手をベッドにつく。キリスエールは、慌てて手を伸ばし、セインを支える。
「セイン様」
大丈夫だと髪をかきあげたセインはキリスエールに微笑みかける。
「したよ。まだ、怠さが抜けないし。思っていたよりヤバかったみたいだ。まあ、避ける間もなく急所をはずすだけで精いっぱいだったんだけど」
枕に身体を沈めて、レイラースは額に腕を置き、息を大きく吐いた。
「レイラース様……」
ずきんと胸に何かが刺さるようで、自分の無謀さが招いた事態だということを再認識させられて、キリスエールは瞳を伏せた。
「レイラース」
咎めるセインにレイラースはかすかに肩をすくめた。
「ま、というわけだから、しばらくはよろしく」
ひらりと手を振ったレイラースにひどく嫌そうな顔をして、セインはキリスエールの手を外させると立ちあがり、レイラースを見下ろす。
「さっさと回復してくれないと困る。何もかも安全でなくなってくる。そろそろ、何か仕掛けてくるころあいだ」
「わかっている」
二人はしばらく、言葉なく見交わしあい、それを断ち切るようにセインは踵をかえす。
「キリスエール」
部屋を出る際に、セインがキリスエールを呼んだ。
「おいで。レイラースは気が立っているようだ。しばらく一人にしておいたほうがいい」
キリスエールは、ベッド脇に立って、セインを見、それから、レイラースに視線を移す。
レイラースがかすかに首を振り、小さく肩をすくめた。
「ここにいます」
キリスエールはきっぱりと告げる。まだ、レイラースにちゃんと謝っていない。確かに、今のレイラースは怖いけれど、怒らせたのは自分だ、
キリスエールの返事にセインは一瞬、眉をあげ、それから「そう」と呟いてそのまま部屋を出ていった。
ぱたんと扉が閉まり、セインの姿を隠す。
「キリスエール」
気だるげな声にはじかれたようにキリスエールは振り返った。金の髪を手でかきあげて、レイラースがこちらを見ていた。
「セインの言うことをきいておけばよかったのに。気が立っているのは本当だ。僕が怒っていないとでも思った?」
キリスエールは首を左右に振る。
「いいえ」
「おいで」
手を差し出され、その手に手を重ねるとあっという間に身体の下に引き込まれた。
顔の横に手をついて、上からレイラースが見下ろしている。
「どうしようか」
射抜くようにまっすぐに見つめられて、キリスエールは瞳を揺らした。
「……ごめんなさい」
「言葉だけでは許せないよ。僕はここにいてと言ったのに。どうして危険に飛び込むようなことを。キリスエールは人間なんだ。血が命が流れたら……」
どこか痛いようにレイラースは眉を寄せた。目を細め、こらえられないものを押し殺すように、唇を強く引き結ぶ。
手を伸ばすと、レイラースはキリスエールのシャツを掴み、左右に引いた。ボタンがはじけ飛んで、キリスエールの肌があわらになる。
キリスエールは息をのんだ。
「あのとき、こうやって抱きしめた。僕の傷はここ」
つぶやきながら、レイラースはキリスエールの右の肩から腹にかけて舌を這わせた。身体を震わせて、キリスエールはじっとしていた。レイラースは、本当に怒っているのだ。
自分が傷ついたことではなく、危ない目に飛び込んだキリスエールが許せないのだと。
舌で丹念に肌を舐めあげて、じっとキリスエールの身体を見る。
「キリスエール」
掠れた怠そうな声でささやいて、レイラースはキリスエールのズボンと下ばきも一緒くたに剥いでしまう。
「レイラース様っ」
逃げるように身体を捩ったが、腰を捉えられて動けなかった。あっという間に全裸にされて、レイラースの手が滑るように身体全体を撫でていく。
「きれいだ」
囁いては、肩から胸、脇腹へと唇を落とす。
「やっ……だ、だめっ」
熱を持った舌で舐められて、キリスエールは悶えるように身体をゆすった。
「んっ……はぁっ……」
胸の突起をねっとりと舌で絡め取られて、キリスエールは背をしならせた。いつもより熱く感じるレイラースの舌に、腰のあたりがざわめいた。
「可愛い」
レイラースの肩に手をかけて、キリスエールは引きはがそうと押し上げた。
「どうした?」
「だ、だめです。レイラース様、熱い……」
「そう。気持ちがいい?」
「違っ……」
指で胸の飾りを弄られて、円を描くように撫でては爪の先で押し込まれて、キリスエールは息をのむ。
手の平の触れているレイラースの肌はシャツ越しだというのに熱い。まだ、本調子ではないレイラースは熱があるのだと思う。
「欲しいな」
キリスエールが。と囁かれて、熱い吐息が肌に当たって、キリスエールは身体を震わせた。
「だめです」
キリスエールはレイラースの下からはい出るために暴れだす。こんな身体で無理をしたら、また倒れてしまう。やっと意識が戻って、セインに少し生気を分けてもらってもこんな状態なのだ。休ませたいとキリスエールは思う。
「なぜ?気持ちよくない?」
暴れるキリスエールを何なく身体で抑え込んで、レイラースは指を置いた胸の突起をぐりっと弄る。
「やっ……レイラース様、やめてっ……」
「いいよ、いくら暴れても」
具合が悪いだろうにレイラースは引く気がないらしい。体温の高い手のひらでキリスエールの肌を撫でては、官能を引き出そうとする。
目を見開いた先のレイラースの瞳が剣呑な光を帯びていた。情欲と怒りのないまぜになった感情が揺れている。
「今はやめて。やぁっ……」
伸ばされた手に内腿をするりと撫でられて、キリスエール自身の付け根を手のひらが掠めていく。
キリスエールは首を横に振って、なおも暴れる。
「そんなに僕が嫌?」
「違う。レイラース様が……」
心配なんだと告げようとした言葉は乱暴に開かれた扉の音でかき消された。
「キリスエールっ」
その低く良く通る声に、ぎくりとキリスエールは身をすくめた。暴れていたのが嘘のように身体を強ばらせたまま動けない。
「無粋だな」
キリスエールの腕をつかんだまま、レイラースが身体をおこすと扉を振り返る。
タミルが立っていた。開け放たれた扉で立ち尽くしたまま、ベッドでレイラースの下に組み敷かれているキリスエールをまっすぐに見ていた。
「な、何をしている」
タミルの声は硬くかすれている。
レイラースは口の端を意地悪気にあげると左手で髪をかきあげる。
「見ればわかるよね。キリスエールを可愛がっている」
苛立ちを含んだレイラースの声に、タミルはレイラースを睨み付けた。
「やめてやれ。キリスエールは嫌がっている」
きつくにらみながら、タミルが拳を握りしめた。
「嫌がっているって?そうなの、キリスエール?」
キリスールの腕と腰を持って、レイラースはくるりと身体を入れ替え、ベッドサイドに置かれた枕を背に足を投げ出して座り、その上にキリスエールを座らせる。横向きにレイラースに座ったキリスエールの肩を抱き寄せた。
「レイラース様……」
キリスエールはレイラースを見て頭を振る。何が起きているかわからなかった。全裸でレイラースの上に乗せられ、その姿をタミルに晒している。
その上、寄り添うレイラースからは苛立ちと怒りが揺らめいていた。こんなに怒ったレイラースを見たことはないかもしれない。
「キリスエール?」
それでも声だけは優しくて、伸ばされた手で胸の突起をきゅっとつまみあげられて、キリスエールは啼くしかできない。
「あっ……やっ……」
背を反らすと肩をぐっと押さえられて、後ろに倒れないように支えられた。じんと身体がしびれる。抓られた胸は痛いほどで、それなのに腰がみだらに揺れた。
「可愛いだろう?」
涙の滲んだ瞳でレイラースを見れば、レイラースは怒りのこもった目でタミルをにらんでいる。
「ああっ……」
痛みを訴える胸を突起の先端をつつくように撫でられて、ひくんと身体が跳ねた。
「ほら、キリスエール、あっちを向いて。両方とも可愛がってあげるから」
嫌だと首を振っても、レイラースの力には勝てずに、キリスエールはレイラースに背を預けるように座らされた。
両胸でつんと屹立した小さな突起を一遍にくるりと撫でられる。
「……んっ……ぁっ」
鼻に抜けるような甘えた嬌声を上げて、レイラースの肩に後頭部を擦りつけた。
なぜ、レイラースはこんなに怒っているのに、キリスエールを抱こうとするんだろうと頭の片隅で思うが、キリスエールの弱いところを知り尽くしている指に、思考が溶かされていく。
「タミル。そこで見ていていいよ。キリスエールがどんな声で啼くか知りたいだろう?このきれいな肌がほの紅く染まって、うっとりするくらいになる」
「レイラース」
唸るような声にタミルを見れば、唇をかみしめて、タミルがレイラースを射殺さんばかりに睨んでいた。
「キリスエールは嫌がっていない。タミルの助けも呼んでない。気持ちよくなっているだけだからね」
爪の裏でかりっと胸の突起をひっかかれて、キリスエールはさらに声を上げた。
「ぁっ……レイラース……さま、やめっ……んっ」
こんな誰か見ている前で、それもその相手がタミルだなんて、羞恥でどうにかなりそうだ。なのに、辱めを受けてもレイラースの腕から抜けられない。
「見てよ。どこにも傷一つない。健やかな躰だ。快楽も享受できる健康なね。なんで、馬なんかで行ったんだ。あいつがキリスエールを狙っていることは、しっていただろう」
声を荒らげるレイラースがタミルを睨み返す。
その手で、キリスエールを翻弄しているくせに、レイラースの怒りの矛先はタミルへと向かい、ボルテージを上げていく。
「あと少しでも間に合わなかったら……」
レイラースは言葉を切り、唇を震わせた。脳裏には光の槍に串刺しにされたキリスエールがあるのだろうか。
「守ったのは僕だ。キリスエールは僕のものだ。彼を危険にさらしたおまえに何も言われたくないし、キリスエールに触れる権利もない」
腕を伸ばして、キリスエールの内腿に手のひらを当ててすっと上に撫で上げる。すでにゆるりと形をなしているキリスエール自身をゆっくりと擦るように撫であげられると、キリスエールは、身体に電気が走ったように足を突っ張った。
「はぁっ……やっ」
「そこで指くわえてみているんだな。キリスエールが僕に感じて乱れるのを」
キリスエールは首を横に振った。もうやめてほしい。レイラースの怒りは十分に理解した。
全てはキリスエールの無謀さが引き起こしたことだ。レイラースは危険に飛び込んだ自分をそれをとめられなかったタミルに怒りを覚えているのだ。
だけど、こんなことはおかしい。
タミルの前でレイラースに抱かれる?
想像するだけで身体の芯が冷えて、ぞっとした。こういうことは誰に見せるものでも、こんな風にタミルにレイラースの怒りを思い知らしめるためのものでもない。
見ないでほしかった。キリスエールは首を横に振る。
「いや」
腰を捩るとレイラースに自身を掴まれて、ひくんと身体が跳ねた。
「いや。見ないで……やだ……ごめんなさい………」
頭をレイラースに預けながら、視線を天井に逃がして、キリスエールは嫌だと泣いた。
「や……おねがい……」
頬を涙が伝った。喉がぐっと鳴る。
レイラースの手が上がって、目を片手で覆われた。
「ごめんなさい」
キリスエールの呟きに、足音と扉の閉まる音が重なった。荒々しい靴音が遠ざかる。
背中からレイラースにぐっと抱きしめられた。肩口にレイラースが額を当てる。
熱い身体になされるがまま、キリスエールはじっとレイラースの腕の力を感じていた。
どれだけそうしていたんだろう。長いように感じたが、さほどの時間ではなかったかもしれない。レイラースは腕を解くと、キリスエールの名を呼んだ。
レイラースの膝から降りて、レイラースを見つめる。
「おいで」
伸ばされた腕に身体を倒すように身を投げた。レイラースがぎゅっと抱きしめ、キリスエールの髪に唇を落とす。
「謝らないよ」
苦さの滲んだ声で告げられ、キリスエールは小さくうなずく。
「怒っているんだからね。もう、無茶はしないで。ぼくの言うことをきいてよ」
レイラースの額が押し付けられた肩口が濡れる。
「僕はキリスエールを傷つけるものは、すべて許せない。それがたとえ本人だったとしてもだ」
キリスエールは頷かざるをえなかった。レイラースは自分がけがをしたことでも、守護者が命を落としたことでもなく、キリスエールの無謀な行動にこそ怒りを感じていたから。
「ごめんなさい。レイラースさま」
消え入りそうな声で謝罪を口にする。レイラースはじっとキリスエールを抱きしめていた。
「キリスエールが欲しいよ」
掠れた声で、レイラースが囁く。泣いているような声だった。
「だけど、今、抱いたらお前を殺してしまう」
腰を抱く腕に力を込めて、レイラースが絞り出すように告げた。それはレイラースの身体が、生気を欲しているからなのか、それとも欲望のままに抱いて壊してしまうという意味なのかはキリスエールにもわからなかった。
だが、レイラースの苦悩だけが合わせた肌から伝わってきて、キリスエールは奥歯をかみしめる。
「このまま一緒にいて」
キリスエールを抱きしめたまま身体を滑らせて、横になる。足まで絡ませて、レイラースはキリスエールを逃がさないように抱き寄せた。
「元気になるまで、ずっと側から離れないで」
髪に唇を落としながら、レイラースが囁くのに、キリスエールははっきりと頷く。
もとからそのつもりだった。レイラースに怪我をさせたのは、キリスエールなのだから、仕事も事情を話して休みにしてもらっていた。
「キリスエール」
息を吐きながら、名前を呼ばれて、キリスエールは小さく「はい」と返事を返した。沈黙が降り、キリスエールはレイラースの腕に包まれたまま、額を彼の胸に付けた。規則正しい鼓動が聞こえる。しばらくそれをじっと聞いていると、頭上から落ち着いた寝息が聞こえて、レイラースが眠りに落ちたことを知った。
まだ、熱がある身体で、起き掛けに無理をしたから疲れたのだろうとキリスエールはレイラースを起こさないように目を閉じた。まだ、身体の奥は欲がじりじりと身を焦がしていたが、ゆっくり上下する胸と、呼吸の音でだんだん心が落ち着いてくる。
タミルにも謝らないといけない。
自分の存在が、彼らの間を裂いていき、さらには彼らを傷つけるのに、痛みを覚えて、キリスエールは閉じた瞳に力を入れる。
みんなで仲良く暮らしていくのはやはり無理なのだと、キリスエールは思う。別の大陸で4人で一緒に暮らしていく。3人の主人に仕えて、彼らに従者として必要とされることは夢なのだと、もはや何もかもが限界だとキリスエールははっきりと自覚をする。
選べない自分がすべての元凶。いなくなったら、彼らは国に帰るだろうか。もつれて絡んで解けなくなってしまった関係と感情をどうにかしなければとキリスエールは思う。
レイラースの腕の温かさを感じながらもキリスエールはまとまらない思考を持て余し、眠りは一向に訪れなかった。
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