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「天空国の守護者」
トレジャ編

銀の天使

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部屋に入ってくるなり、ソファに音もなく腰を下ろしたレイラースにセインは嫌な顔をした。
「レイラース、僕は執務中なんだけど」
「いいよ。気にしないで。勝手にやるから」
足を組んで、金の髪をかきあげてレイラースは口元に笑みを浮かべた。
珍しく機嫌のよいレイラースにセインは訝しげな視線を向ける。
「ここではお前は僕の部下で、友人じゃないんだぞ」
ちょっと声を荒らげてもレイラースは一向に堪えた様子はない。もう、長い付き合いだ。お互い子供の時から良く知っていることもあって、セインが本気で怒っていないことはレイラースにばれているだろう。
「なんか、いつも以上に機嫌が良くないか」
ひどく嬉しげにさえ見えるレイラースが不可解で、その理由が気になった。
セインは好奇心が勝ってしまい、握っていた羽ペンをペン立てに戻してレイラースをじっと見る。
「まあね。あっ、そういえば上官侮辱罪で、一人、虚空送りにしちゃったから」
あっさり告げられた言葉にセインは驚きに瞳を見開いた。
簡単に言ってくれる。虚空送りとは穏やかじゃない。いったい何をやらかしたんだ。
軽い頭痛を覚えてセインは片手で顔を覆った。
「だれを?」
「知らない。どこぞの下っ端兵士。行方不明になっている奴がいる隊にも罰を課すけどいいよね」
「侮辱ってどのくらい」
「人間と間違えられた上に色つきって言われた」
淡々と語られる言葉に、セインはその綺麗なラインの眉をひそめた。
「いまどきそんな言葉を使う奴がいるとはな」
色つき。
嫌な言葉だとセインは思う。隊を率いる隊長クラスはそれぞれ特徴のある色を身体のどこかに持っていることが多い。レイラースならその鮮やかな金髪。そして、左右色の違う瞳。自分は銀の髪とスミレ色の瞳といった具合に。
それを下級兵士が時折、差別的に呼ぶ。色つきと。
「下の連中は面向かって言わないだけで、そう思っているのが多いんじゃない?貴族だからとか馬鹿な事言っている奴もいたしね」
「貴族って何だ。そういう人間のような階級はここには存在しないだろう」
声の調子が強くなって、セインは自分がイラついていることに気付く。
「そうだけど、特権振りかざしてと思っているんだろうね。弱いくせにとかさ」
対するレイラースはどうでもいいようだ。ゆったりとソファに腰掛け、セインを見ている。
色を持っているから、特権を地位を得ているのではない。
力の強さが、地位と見かけを決めている。どうしてそれがわからないのだろう。
こういうところでもすでにこの国の存在意義そのものが崩壊している。人間を守るという契約の意義を忘れたものが多いように。
「許可する。一隊全部に罰を課せ」
いらいらと長い前髪をざらりとかきあげて、セインは告げた。
規律は正さなければならない。それが壊れた時、この国は本当に終わってしまう。
レイラースは口端をあげて微笑んだ。憂いは全て取り払ったように。
「レイラース?」
「何?」
セインを見て、答えるレイラースの左右色違いの瞳が瞬いていた。その目に怒りやいらついた様子はうかがえない。それどころか、やけに楽しそうだ。
「お前を人間と間違えるなんてどうかしていないか。それになんでお前、怒っていない?」
「怒ってたよ。ひどい侮辱だし。だから消しちゃった」
瞳を面白げに瞬かせ、訝しげなセインにレイラースはくすくすと笑った。震わせた肩で、金の巻き毛が揺れた。
不可解な顔で黙って見つめるとレイラースは笑いながらセインを見返した。
「それが、トレジャから移動してきたらしいんだよね。人間を追ってさ」
レイラースの話はいつもよくわからない。報告させると的確なのに、どうして友人モードのときには適当なのだろう。
「トレジャ?人間が紛れ込んでた?レイラース、話が見えない」
「そうだろうね。僕だって、びっくりした。その下級兵士はトレジャで見かけた人間をいたぶろうと思って追いかけた。人間は逃げるよね。その子は馬を持っていてそれで逃げたようだよ。僕は天空の遺跡にいた。そこで下級兵士はその子に追いついて、まあ強姦しようとしたんだな」
天空の遺跡。トレジャから来た人間。
ありえない話にさすがのセインも言葉がない。
「普通ないよね。いくらトレジャが人間界ではないにしたって。人間はこっちに来れない」
レイラースの言う通りだ。人間は天空には来られない。
「その子がさ、すごく変わった色の魂をしてた。見かけは子犬みたいなのに」
天井を振り仰いで、うっとりとした声で呟き、レイラースはまたくすりと笑った。
何かを思い出したらしい。
その言葉をセインは聞き咎める。
「子犬?」
「そう、榛色の大きな瞳に茶色の柔らかそうな髪なんだ」
その言葉にひっかかりを感じた。最近も同じような話を誰かとしなかっただろうか。
「名前を訊いた?」
それがいつ誰としたのだか思い出せなくて、セインは眉を寄せた。
「キリスエール」
柔らかい口調で告げられた名前に、セインは大きな溜息をついた。
思い出した。あの子じゃないか。タミルを助けた少年。
最近、聞いたのはタミルからだ。彼は言っていたじゃないか。子猫みたいだと。
トレジャに送られたのか。何かあったら名前を呼べと言っておいたのに。
私を怖がっていた……そのせいか。
人間が嫌いなセインとしては精いっぱい優しくしたつもりだった。それでも、怯えていた。私の気配に。
思い出して、溜息が洩れた。
「珍しいね。セインが人間の話に乗ってくるなんて」
面白そうに見つめられて、セインは顔をしかめた。
「人間が天空に現れたってきけば、興味も持つだろう。天空の防衛を考え直さないといけなくなる。先日もタミルの負傷が人間とクアールが手を組んだせいだと聞かされたばかりだし」
セインの言葉にレイラースは眉をよせた。嫌そうな顔をする。
「身の程知らずだね」
「そう。そちらの落とし前もつけないと。出撃は近々だからな。あんまり変なことをしでかさないでくれ」
それにくすりと笑い、了解とレイラースは片腕をあげた。


トレジャ。
人間界と天界の狭間。
が――人間が天界に紛れ込むなんてことはあり得ない。
トレジャの上空に突如姿を現したセインは、風に銀の髪を遊ばせながら、下界を見下ろした。
意識を凝らすと前に視たことのあるものを感知した。赤い屋根の建物の2階。一気に飛んで、バルコニーに降りる。
タミルを助けた少年が窓際の寝椅子に腰掛けてぼんやり窓の外を見ていた。その瞳は暗く、ひどく憂鬱そうだ。窓の外に降り立ったセインには気付いていないところを見ると、心はここにあらずなのだろう。
セインはゆっくりバルコニーへの扉に手を伸ばすとそれを開けた。
少年は扉の音で身体を起こし、その姿勢のまま固まった。驚かなさいようにと思ったが、無駄だったようだ。
「キリスエールだったね」
セインは名前を呼んだ。キリスエールの息を飲む音が闇を震わせる。
キリスエールはしばらくそのまま動かない。セインは動かずに、キリスエールの驚きが去るのを待った。
長い沈黙が二人の間を流れる。
「え、えっと。あ、あの……」
身体が動くようになったのか、何度も大きな榛色の瞳を瞬いて、大きく息を吸いながら、セインを見つめる。
「私を覚えてる?」
声をかけるとキリスエールは肩を揺らめかせ、身を硬くする。怖がらせるつもりはなかったが、埒が明かないと、セインはキリスエールに歩み寄った。
驚きで身動きの取れないキリスエールの右の頬に手を添えて、髪を掬いあげる。
「やっぱり、印付きか」
びくりと震えた身体にセインは苦笑をこぼした、。目の前のキリスエースの白い首筋には花びらのような印が浮いている。
「セ…セイン様……」
微かに囁かれた名前に薄く微笑んでやる。
「これがわかった時にどうして私を呼ばなかった。言ったはずだ。何かあったら名を呼べと。部下の不始末は私がつけるからと」
キリスエールは目を大きく見開いた。
「こうなることが分かっていらっしゃったんですか」
声が震えていた。それでも、言葉はしっかりとしている。
「タミルに何かされたのだろう」
その言葉にはキリスエールは、一度動作をとめ、それからゆっくり首を横に振った。
「タミル様は意識なく眠っておられた。本当に看病差し上げただけ。なのに、誰もがタミル様が俺に何かしたように言う」
セインは大きく首を横に振った。あの時感じたこの少年の違和感。
そして先日かわしたタミルとの会話を思い出す。
『夢に小さい時のお前が出てきてさ……抱き返したりしたな……』
タミルはそう言ってはいなかったか。
「あの時……タミルはお前を抱き締めなかったか?」
セインの言葉にキリスエールは首を傾げた。大きく一度瞬きをする。
「ああ、一度だけ。寝ぼけていらしたようで、横にして差し上げようとした時に。誰かと間違えたようでしたけど」
キリスエールの返答にセインは大きく溜息をついた。
「やっぱり。生体エネルギーを吸われたんだ」
「???」
何を言われたかわからずきょとんとしたキリスエールを見て、セインは苦笑した。確かにネコか犬のようだ。大きな榛色の瞳が瞬いた。
「怪我のせいでタミルは意識が朦朧としていた。治癒にはエネルギーが必要だった。そして、無意識にお前の生体エネルギーを摂取した」
汚れがない人間からでないとできない、そして、心許した相手でないとできないはずの行為。なんの運命のいたずらか、タミルはキリスエールからエネルギーを奪った。
「それって、どういう……?」
「言葉通りだ。怪我を治そうとお前の生きる力を取り込んだ」
「それとこの印と何の関係が」
「エネルギーの交換は守護者同士ならどうということもないが、人間が相手だとそれはもう守護者のモノになったと同義だ。だから印が付いた。守護者の所有物の証として」
そう。印があるため天界へと迷い込むことができた。もうすでに、厳密には人間でなくなっている。
最後に思ったことはセインは口にしなかった。
「……そんな……」
キリスエールが唇を噛みしめてうなだれる。
「だが、タミルは無意識に誰かと間違えただけだろう。お前をどうこうするつもりはなかったはずだ。あいつは私の友人で部下でもある。だから、この責任は私にある」
セインはキリスエールの髪を掬いあげ、首筋に唇を寄せた。印に口づける。
印が発熱した。
「んっ……」
びくりとキリスエールの身体が揺らいだ。
そのまま寝椅子にセインはキリスエールを押し倒す。
タミルは昔の僕の夢を見たと言っていた。僕と間違えたのか。この少年と僕の魂の波長が近い?
好奇心に駆られて波長を合わせる。意識が溶け合わさる感覚がセインの全身を包んだ。
「ああぁっ……」
なにか感じるのか、キリスエールはのけ反って身体を震わせた。
不思議な波長だ。ゆるやかで、淡い色彩がきらきらと踊る。
心地よくて安心する。
人間なんて汚れていて、傲慢で身の程知らずで大嫌いだが、ときどきこうやって奇跡のような者が生まれてくる。短命で卑俗な生物なのに。
面白い。
セインは抱き締める腕を強めた。

何……これ?
瞳を大きく見開き、キリスエールは身体を反らせる。
「んっ……っあんっ……ああっ」
口からは甘い声があがり、何が起きているかわからない。銀の天使が首筋に唇を寄せただけなのに、ただ抱き締められているだけなのに、身体の奥から痺れのような感覚が這いあがり、背筋を駆け抜けて行く。意識が白く染まり、身体が熱い。
「……やっ……ああっ……」
吐息だけのキリスエールの悲鳴に、セインは身体を離した。キリスエールは喘ぐように呼吸する。身体が熱くて、変な感覚が身体を駆け廻って、痺れのような痛みの様なざわざわとした感じが腰の奥から背へと流れる。
「意識を重ね合わせたのは、まずかったみたいだね。人間には刺激が強かったようだ」
仰向けに寝たまま荒い息を繰り返しているキリスエールを見下ろして、天使はその見事な銀の髪をしなやかな指先を使って背に流した。たったそれだけの動作が綺麗で目が離せない。はあはあと呼吸を継いで、キリスエールはセインを見つめ返す。
「身体を繋いだのと同じ感覚だった?」
どう答えていいかわからなくて、身体に力が入らなくて、キリスエールは困ってしまった。
懸命に息を整え、言葉を継ぐ。
「そんなことを……したことがないから……わからない」
セインは驚いた顔をした。
「トレジャに来て、一月?半月?」
「半月」
「それで誰の手もついていないの?驚いたね。これだけ目立つのに。印が役に立ったかな」
面白そうに見下ろされて、キリスエールは顔を背けた。それだけの動作がひどく億劫だ。
「身体には害はないから安心して。また、来るよ。キリスエール」
囁いて、キスをされた。軽く触れ合うだけのキス。
唇を離すとくすくすと笑って、銀の天使はいきなりその姿を消した。
キリスエールは大きく息を吐いた。抱き締められただけなのに、何故、こんなに鼓動が激しくて、身体が熱いのだろう。
抱き締められた腕は思いのほか力強くて、熱かった。
この熱を逃がしたくてキリスエールは再度大きく息を吐き出した。
自分は一体何に巻き込まれてしまったんだろう。どうしてこんなことに……。
キリスエールはただ自らを翻弄する運命に呆然とした。
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