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「山神の花嫁_昔話」
ひと夏の恋

ひと夏の恋(2)

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「黄金(こがね)」
縁側に出て、泉は名を呼んだ。いつまでも狐と呼ぶのはおかしいので、泉が毛の色から名付けた。
「黄金」
何度か呼ぶと、尖った鼻が、茂みの間から顔を出した。泉はほっとした顔をする。
黄金は宮の庭ともいえる森でほとんどの時間を過ごしていた。お腹がすくとやってきて、食事をもらうこともあるが、二、三日寄り付かないこともある。
手の上に魚を乗せて差し出すと、茂みから出た黄金は、とことことやってきて、ひょいっと縁側に上り、魚をもらう。
「また大きくなったね。元気にしてた?」
はぐはぐと魚を食べる黄金をしゃがんで見下ろしながら、泉は訊いた。黄金がここにいついて二か月がたつ。すでに季節は暑い盛りだ。
両手に乗りそうだった黄金もかなり大きくなって、いまでは、小型犬くらいの大きさがある。
宮の中に住んでいない黄金だが、連れてきた当初は、宮に部屋をもらって住んでおり、泉にべったりだったのだ。
それこそ、母親とでも思っているのか、ずっと後ろをついて歩いていた。
泉が座れば、横に座って泉を見上げるし、どこへ行くのもお供のようについてくる。
懐かれれば、情も移り、可愛いと思う。泉も黄金を大事にしていた。
翡翠もお供のように黄金が振る舞っている分には笑ってみていた。子分ができてよかったなとまで言っていたのだ。
それが変わってしまったのは、黄金が宮に来て二週間ぐらい過ぎたころだ。
「おい、泉」
泉が縁側から庭を見ていると翡翠が現れた。泉はそっと人差し指を口の前に持ってくる。泉の膝の上には丸くなって黄金が眠っていた。あまりにぐっすり寝ているので、起こしたくなかったのだ。
翡翠は片眉を上げると、泉の傍らまで大股でやってきて、膝の黄金をひょいっと持ち上げて、縁側に退けた。かわりに、自分がごろりと横になると、泉の膝を枕にする。
「翡翠さま。なんでそんなに黄金にイジワルするんです」
「してない」
泉の膝に頭を乗せた翡翠は、下から泉を見上げて、それから目を閉じる。
黄金は寝ていたところをたたき起こされ、泉の横にちょこんと座って、顔を手でこすっていた。
「ごめんね。眠いよね」
黄金は夜行性だから、昼間はよく眠っている。おとなしくて、悪戯もしない黄金が寝ているだけなのに、膝からどかされて、黄金はとても眠そうだ。
「翡翠さま」
「泉の膝枕は俺のものだ」
咎める声を出すとあっさりそう返されて、泉は絶句するしかない。狐にまで独占欲を発揮しなくてもいいと思う。
「でも、夜には黄金を部屋にいれてあげないのですから、昼間の眠い時間くらいいいじゃないですか」
夜こそ、活動の時である狐だから、翡翠は泉との寝室に黄金を絶対にいれない。入れられて、翡翠との夜の営みを狐とはいえ見られても困るから泉もそれを否定するつもりはないが、だったら、昼間くらい黄金を構ってあげたい。
「だめだ」
それだけ告げて、翡翠は寝息を立て始める。
泉の足に丸めた身体を摺り寄せて、黄金も眠ってしまう。翡翠と黄金に囲まれて、泉は深いため息をついた。
だが、翡翠のイジワルはそれだけにとどまらなかった。
愛情を示すためか、後ろ脚で立ち上がると前足を泉の胸について、黄金が泉の手や顔を舐めれば、横にいた翡翠が手を伸ばし、泉から黄金をばりっと引きはがし、ぽいっと縁側にほうる。
手ずから餌をやっていると、それも邪魔された。
泉の取り合いは、それこそ連日続き、甘えたい黄金が泉にすり寄って、それを泉が抱き上げるだけでも、それを翡翠が目にすれば、黄金は泉から引きはがされる。
「翡翠さまっ!」
声を上げる泉をさっくり無視して、翡翠は黄金を部屋の外にぽいっと放る。
「まだ、子供で甘えたいんですよ。お母さんとも離れてしまって、かわいそうです。大人気ないと思いませんか?」
さすがの翡翠の態度に、泉が声を荒らげたのは、黄金が宮に来てから、一か月くらい経ったところだ。部屋の外では、黄金が閉じてしまった襖を手でとんと叩く音がする。
「思わないな。泉。おまえは俺の花嫁だ。おまえが構うのは俺だけでいい」
ぐっと腰を抱き寄せられて、首筋に噛みつかれた。
「翡翠さまっ」
身を捩っても翡翠の腕の力は強まるだけで、泉はその腕から逃れられない。
「甘いな。泉を喰いたい」
低い声で囁かれて、泉はかっと体温を上げた。いままでなら、嬉しくて、泉も翡翠の背に腕を回している。だが、襖を叩くこがねの足の音が聞こえ、ただ、所有権を主張して、泉を好きにするようで、泉は翡翠の身体を腕でぐっと押した。
「嫌です」
「泉、拒むな」
「何か変です」
「変じゃない……もう、黙れ」
翡翠の唇で唇をふさがれてしまい、泉は言葉を失った。口の中を舌で愛撫されて、深く深く口づけられても泉の頭の芯はいつものように蕩けてこない。
なんとなく一方的な愛撫に感じられて、翡翠の熱に溺れられない。
だが、それでも覚えこまされた快楽に泉の意識は徐々に溶けて、声の限りに喘ぐまで、その日、翡翠は泉を手放さなかった。
「あぁっ……もう、やっ……」
ぐっと背をしならせて、泉は何度目かの精を吐き出した。さらにずっと泉の中に沈んでいた翡翠自身を奥深いところまでねじ込まれ、泉が悲鳴を上げる。奥の奥でじんわりとした熱を感じ、翡翠も達したのだと悟った。
「翡翠……さま……」
掠れた声が名を呼ぶと翡翠が一度、泉をぐっと抱き寄せた。
「泉、お前の主人は?」
外耳に寄せられた唇から吐かれた熱い息が耳を肌をくすぐる。何を言うのだろうと泉は思うが、答えは一つしかなく、するりと言葉が口をつく。
「翡翠さまです」
「そうだ、それを忘れるな」
安堵のようなため息を一つつくと翡翠は泉をゆるりと抱きしめた。
それ以来、黄金は宮には居着かなくなった。

ここ二か月ほどのことを思い出して、目の前ではぐはぐと魚を食んでいる黄金を見つめながら、泉は大きくため息をついた。
黄金は翡翠の気配が近くにあると、宮に上がってこない。庭でじっと泉を待つか、座って泉を見上げるだけだ。
翡翠が昼寝をしていたり、出かけているとこうして縁に上がってくる。
黄金は魚を食べてしまうと、ありがとうと言うように泉の手をぺろぺろと舐めた。
泉はあいている手で、黄金の頭をそっと撫でる。黄金が耳を伏せて気持ちよさそうに目を細めた。
「もっと食べる?まだ、魚もあるし」
撫でながら泉が微笑むと黄金は身を乗り出して、泉の膝に足を乗せた。
「おなかすいているんだね」
笑って立とうとするとさらに黄金は後ろ脚で立ち上がり、泉の胸に手をつくと泉の顎を舐めはじめる。
「くすぐったい、黄金」
目を細めて笑う泉に黄金がしっぽを振り、さらに尻まで振った。その勢いに押されて、後ろに倒れそうになり、泉は慌てて立ち上がった。黄金の足が地面に落ちる。
「魚持ってくるよ」
子狐が少し見ない間に、また大きくなっていたことを泉は実感する。力も強くなり、野山を駆けているからだろう体つきもしっかりした。まだ、細身だが、それでも着実に子供ではなくなっていることを感じて、泉は少し寂しく、ついで嬉しく思う。
獣は人より、身体の成長が早い。そのうち、黄金もお嫁さんを連れてくるかもしれない。そしたら、また子狐が見れるかなと口元に笑みを浮かべながら、泉は土間へ向かった。

今年の夏は残暑も厳しい。
泉は空を見上げて、ため息をついた。青空が広がり、ぎらぎらと太陽は地面を森を照りつける。
宮は山の奥に位置している上に神域だから、人界よりは幾分涼しいとはいえ、それでも縁側に座っているだけでも汗が流れてくる。
黄金が来るかと、泉はこうしてよく縁に座っている。だが、暑いせいか、ここ最近、黄金は現れない。
「どうしちゃったのかな」
暑くて、もっと標高の高いところに移動してしまったんだろうか。あの毛皮ではこの暑さはきついちがいない。
「今日はもう来ないかな」
茂みをぼんやり眺めながら、泉は手にした扇でぱたぱたと煽ぐ。
黄金は大体、朝の涼しい時間帯か夕方に顔を出す。日はすでに天空高くにあって、朝はとっくに過ぎた。
「それにしても暑いな」
扇を細かく動かすと少し涼しく感じたが、汗でべとつく肌が気持ち悪くて、川へ水浴びにでも行こうかと思い、泉は腰を浮かした。と、視界の隅で黄色の毛が見えた気がした。
「あ、黄金」
呼んでから、泉は口を開けたまま固まった。茂みから現れたのは、黄金ではなく、まだ若い男。
泉は驚いて息をのんだまま、言葉も出ない。
目の前に姿を現した男は、青い浴衣に紺色の帯を締め、背まで覆う長い髪は日の光を浴びてきらきらと金色に輝いていた。少し吊り上った切れ長の目に、涼やかな鼻筋と意志の強そうな唇をもった青年は、すこしやんちゃな雰囲気をも併せ持つが、凛々しいという言葉が似合う容姿をしていた。
「ど、どなたですか?」
声が上ずってしまったのは、この宮に入れるのは神様かそれに準じた神格化したものだけだからだ。
「主に御用ですか?」
訊くも相手は答えずに、縁に向かって歩みを進める。
「あの……?」
困ってしまった泉は、縁に座ったまま固まった。青年は切なげに茶色い瞳を眇めて、泉の近くまで寄ると、小さく唇を開いた。
「……泉」
胸を絞られるような切ない声音だった。
知り合いだろうかと首をひねるが、いままで会った神様でもなければ、ほかの神様の館でも面識がない。やっぱり初対面だろうと思い、泉はもう一度、「どなたですか」と問うた。
相手はやっぱり答えずに腕を泉に伸ばした。とっさに身を引くものの肩を押されて、泉は縁側に仰向けに倒れた。
「何をなさいます」
「泉」
ぐっと抱きしめられて、身を切るような泣きそうな声で名を呼び、さらに強く抱きしめられる。
耳をべろりと舐められて、泉は身を竦め、慌てて相手の身体を押し返す。どう考えてもこのままではこの男に喰われてしまうと泉は渾身の力で押し返すが、体重を乗せて力をかけてくる相手に歯が立たない。
「おやめください」
叫ぶとのしかかった青年はぴくんと身体を揺らし、泉から身体を離し、縁にすわった。
泉も身体を起こし、乱れた襟を正すと尻を擦って後ろへ身体を逃がした。だが、相手がそれを見逃すわけもなく、二の腕を強く掴まれて、痛みに泉は顔を歪めた。
青年は、屋敷の奥へと睨むように顔を上げ、まるで匂いを嗅ぐように鼻をうごめかすと、急に立ち上がる。
「な、何を」
逃げようと身体をひるがえす暇もなく、泉も引きずられるように、立たされ、腕を引かれて、縁を降りる。
「離して下さい。どこへ行くんです」
声を荒らげて、足を踏ん張り、泉は抵抗した。青年が振り返り、困ったように泉を見て、それから、視線を屋敷へと流した。
「泉、どうした?」
部屋の奥から、翡翠の声がし、のっそりと縁へと現れたのと、泉が男の肩に担ぎ上げられたのが同時だった。
「翡翠さまっ」
叫びもむなしく、男は泉を担ぎ上げたまま、軽々と茂みに身体を躍らせた。
「泉。待てっ」
翡翠の怒鳴り声が聞こえたが、すぐに耳の横で唸る風の音にまぎれてしまう。飛ぶように男は走っていく。もしかしたら文字通り飛んでいたのかもしれない。翡翠が空を飛んでいくのと同じ感覚がする。
「おろ……して」
叫ぼうにも担がれた身体が揺れて、舌を噛みそうだ。木々の間を抜け、山の奥へと男は走る。
揺さぶられて、気分が悪くなりかけたころ、男の歩みが止まった。
宮からどれだけ離れたのだろう。濃い緑とむせ返るような木々の香りの奥で水音がする。
泉は人界の山はあちこち歩き回っているから、いろいろなところをよく知っていたが、宮は人界ではない。翡翠が一緒でないときには、泉は、宮の周りのごく近いところしか散策したことがなかった。必要もなかったし、翡翠に何があるかわからないと言われていたからだ。
「うぅ……」
小さく呻くと、男は慌てたように泉をそっと地面に座る格好で下した。腰がふかふかの枯葉に沈み、泉は小さく頭を振った。
「大丈夫か?」
心配そうな声で訊かれて、泉は上目づかいに見上げて男を睨み付ける。
「俺は……」
泉に睨まれて小さく肩を竦めた男は、心なしか、しょげているようにも見えた。
「あなたはどなたなのです」
先ほど答えてももらえなかった問いを泉は繰り返した。男は困ったように、もどかしそうに泉を見て、そっと手を差し出した。
頬を手のひらで覆われて、切なげに見下ろす男と目が合う。泉は、その茶色い瞳に見覚えがあるような気がした。
「泉、俺がわからない?黄金だ。どうしてわからない?」
掠れた声で一生懸命に紡がれた言葉に泉は目を瞠る。
黄金は狐で、人間ではない。どうしてこの青年は黄金を語っているんだろうか。
「信じてよ。俺は黄金だ」
切々と真剣なまなざしで泉に黄金と名乗る青年が訴えた。
「黄金は狐です。あなたは人でしょう?それとも名が同じなだけで、お会いしたことを私が忘れているのでしょうか?」
相手が真剣なのは伝わってくるので、泉は特に憤りは感じなかった。逆に、昔に会っていて、それを忘れてしまった上に拾った狐にその名を与えてしまったのは、まずかったかと思った。
黄金は首をふるふると横に振った。
「その狐が俺だよ」
泉は大きく目を瞠る。目の前のこの髪の長い青年が黄金とはとても信じられない。だが、確かに毛の色は黄色だし、瞳は茶色だ。
「泉と話がしたかった。泉と同じになりたかったんだ。そう願っていたら、ある日、人の形をとれるようになった」
つたない言葉で、黄金が泉に訴える。
「泉」
伸ばした腕でギュッと抱きしめられた。
「もう狐の形には戻れない?」
「ううん。泉がそっちがいいなら姿は変えられる」
泉の肩口に頭を乗せて、右手で頭を左腕で腰を支えて、黄金は泉をさらに抱き寄せた。
「でも、そうすると泉を抱えられない」
「ほんとに、黄金?」
それでも信じられなくて、泉が小さく呟くと黄金は身を離して、立ち上がり、一歩後ろへ下がった。
瞬きをするより短い時間で、そこには立派な毛皮の雄々しい狐の姿がある。
「こがね……」
たしかにそれは黄金で、泉は何度もその目を瞬いた。黄金はゆっくり泉に近寄ると後ろ脚で立ち上がり、泉の肩に手をかけるとその頬を舐めた。
泉は腕を伸ばして、そっと黄金を抱きしめた。
小さくてかわいい子狐はすっかり大人になって、その上、人の姿をとれるという。
「おまえ、ただの狐じゃなかったんだ」
りっぱな毛並みを撫でながら、泉は寂しさとどこか騙されていたような気分を味わった。
しばらく、顔を舐めていた黄金は、身体を振って泉の腕から逃れ、地面に降り立つとくるりと一回転した。
そこにはまた、金の髪をした青年の姿がある。
「信じてくれた?」
黄金の言葉に頷くと、嬉しそうに笑う。
「よかった。じゃあ、行こう」
手を差し出されて、泉は戸惑う。
「宮に?」
その言葉に黄金はうっすらと微笑んだ。
「水音がするだろう?あのあたりは涼しいんだ。水浴びしたいって思っていたでしょう?」
確かに水のせせらぎが聞こえる。澄んだ水音が木々に反射して、音だけでもかなり涼しげだ。
「まだ、日も高い。宮に帰りたくなったら送ってあげる。だから、俺と遊ぼう」
先ほどの笑みが嘘のように、嬉しそうに誘われて、泉は困ってしまった。黄金が遊んでほしいなら付き合ってあげたいが、翡翠に何も言わずに攫われるように宮を出てしまったから、きっととても心配しているだろう。
「でも、翡翠さまが……」
泉の言葉に、黄金はもう一方の手を差し出した。黄金の手の平には、錦の袋が乗っていた。
「あっ」
外出するときは身に着けるようにと、翡翠がくれたものだ。今日は出かける用事がないからしまっておいたが、どうして黄金が持っているのだろう。
「これ、出かけるときには、泉は大事にしていたからさ、泉に会いに行く前に持ってきた。ちゃんと遊ぼうって誘うつもりだったのに、主様に邪魔されそうで言えなかったんだ」
困ったような顔で説明する黄金に、泉は、怪訝そうに顰めていた柳眉を開いた。
「ありがとう」
渡された袋を受け取って、泉は黄金に微笑む。
翡翠があまりに黄金を邪険にするから、黄金は攫うように泉を連れてきてしまったのだ。非は翡翠にもある。それに、この石があれば、翡翠は自分の居所がわかるだろうし、翡翠が気にしていれば、追ってきてくれるだろう。
翡翠が来たら、また、一悶着ありそうだが、それでも翡翠にも悪いところがあるのだから改めてもらいたいと泉は思う。ぎゅっと錦の袋を抱きしめて、泉は顔を上げた。
「わかった。日暮れには宮に帰して」
泉の言葉に黄金は口の端を大きく引いて微笑んだ。こんな表情は狐の姿を思い出させる。きっと、耳を垂れて、しっぽを大きく振っているに違いない。
黄金の手をとって泉は立ち上がる。ひどくうれしそうに黄金が泉の手を握り返し、そのまま歩き出した。
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