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「天空国の守護者」
トレジャ編

黒い天使

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気になって仕方がない。
戦いと友人以外で長く思い煩う出来事などいままでなかったが。
非番の日、タミルは自室の開け放したバルコニーに通じる窓枠に身体を預け、外を見ながら溜息をついた。長い黒髪が、風に掬われ、肩を滑り顔にかかるのを鬱陶しげにかきあげる。
「やっぱり、ちゃんと礼を言ってないからな」
窓から見える鬱蒼と茂った森に視線を投げる。木々の緑があの時を思い出させた。
組んでいた腕をほどいて、窓枠に頭まで寄りかかって、タミルは目を閉じる。榛色の大きな瞳で柔らかく笑んだ顔が瞼の裏に閃いては消えた。
あれから1月も経ったのに、心配気な眼差しや優しい笑みを忘れられないのは何故だろう。
「らしくない……」
一つ呟くとタミルははずみをつけて背を窓枠から離した。空を見上げる。
「行くか」
タミルの呟きが風に散り、カーテンがふわりと舞う。
宙に浮いた白いカーテンがゆっくりと元に戻り、無人の窓枠を覆った。

タミルは森に立っていた。自分が怪我をして倒れていた森。
移動は一瞬だ。
周りを見渡す。あの時より、木々の緑が濃いことを除けば、何も変わらない。頭上の木の枝の隙間から、口を開いて餌をねだる雛に親鳥がくちばしを差し込んでいるのが見えた。
穏やかで平和な情景……。
人間界に守護者は降りられない。
そんなことはセインに言われるまでもなくわかっている。だが、タミルはそれを押してもあの少年に会いたかった。
それでも、守護者だとばれるのはまずいと思うくらいの分別はあった。非番で軍装は解いていたし、白いシャツに黒のズボンという出で立ちだから、人間の世界でも浮くことはないだろうと自分を見下ろして思う。
後はと、ズボンのポケットから革ひも取り出すと背に流した髪を括った。
これで、遠目には守護者だとわからないだろう。
記憶を頼りに担ぎこまれた建物まで歩いていく。かなり警戒して自身の気配は消し、人の気配を辿る。しかし、ここまでの道中、誰にも会わなかった。
足音をさせずに歩き、10分くらいで建物についた。
記憶にあるままの建物を見上げる。
しかし、建物の窓はブラインドが降りており、入り口の扉もきっちり閉まっていた。誰かがいる様子は見られず、誰かがここで暮らしている感じはない。
ここにはもういないのか。
辺りを見渡しても他には建物も人影もない。
しばし、建物を睨みつけて思案した。
ここにいないとなるとどこへ行ったんだろう。人間はあまり遠くへは移動しないときいていたのに。
あまり人間界で力を使いたくなかったが、タミルは瞳を閉じた。風が髪を掬うのを感じながら、その空間へと意識を広げる。自分と世界が溶け合って、空気の一つになったような感覚が広がっていく。その中で自分が求めているキリスエールの気配を探る。同心円状に意識を広げていくが、気配は全くひっかからない。
タミルはゆっくり目を開けた。切れ長の瞳を険しく吊り上げる。
「間違えたか。どこかへ移動した?でもどこへ?」
人間は住んでいる場所をあまり変えないという話だったが。
目の前の建物を見る。建物はただそこにあった。だが、いつまで見ていてもその窓も扉も開くことはない。
ちっと舌打ちをして、タミルは天を見上げた。
その姿が空に溶けた。

扉が軽くノックされる音がし、顔をあげると開いた扉から返事も待たずに誰かが部屋に滑り込んできた。
「よう」
入るなりデスクについて仕事中の自分に声を掛けた男にセインは肘をついて組んだ手に額をつけて、大きく溜息をついた。
「僕の友人たちはここが執務室だって忘れてんじゃないだろうね」
「いっつもここにいるんだから仕方ないだろう。部屋に行くだけ無駄だし」
すたすたとソファに近寄るとタミルは身を投げるようにどさりとそこに座った。足を組むとソファのひじ掛けに肘をかけ、頬杖をつく。
「どうした、機嫌悪いな」
先日のレイラースとは正反対だ。顔を起こして、セインはタミルへ視線を投げる。タミルは、頬杖ついたまま扉のほうを見つめていた。
沈黙が落ちる。セインは黙ってタミルを見る。タミルは扉を睨みつけている。
タミルの大きく息を吐く音が静寂を破った。
「やっと休みになったから、礼を言おうと思った」
口を切ったタミルの話が見えずに、セインはタミルを見つめた。タミルはセインの顔も見ずに言葉を継ぐ。
「あの助けてくれた少年にさ」
「タミルっ!お前、人間界に降りたのか」
咎める声にタミルは肩をすくめる。
「ちゃんと人間に見えるようにした。だいたい誰にも会わなかったし」
「そういう問題じゃない。違反行為だ」
そんなことどうでもいいとタミルは肩をすくめた。セインはぐっと拳を握り、タミルの横顔を睨みつける。それがどれだけ危険な行為かタミルにはわからないんだろうか。
「おまえ……」
「いなかったんだ」
セインの言葉は、ぽつりとつぶやいたタミルの言葉に阻まれた。、抑揚のない声だった。だが、明らかに落胆した響きが言葉に宿っていることに気付く。
大きな溜息をセインはついた。
「そんなに気にしていたのか」
頬杖から顔をあげて、タミルがゆっくりこちらを振り向く。
「ああ、そうみたいだ」
瞳が合うとタミルは頷き、俯く。
「ちゃんと礼を言ってなかったからな。良くなったことも伝えていないし。別れた時、ひどく心配そうな顔をしていた……」
「トレジャだ」
投げるようにセインは告げる。
まさか、タミルがあの少年を気にしているとは思っていなかった。そうならさっさと事実を伝えたのに。
どうせ黙っていても探しに出るにきまっている。人間界で人探しなんてされたら大事だ。
「は?」
「だから、トレジャにいる」
セインのいらついた声に、タミルは勢いよく顔をあげた。かなり驚いた顔をしている。
「守護者に接触したから、送られたらしい」
「俺たちのせい……」
呆然と呟く。
お前のせいだ。
セインはそう思ったが口には出さなかった。目を細めてタミルを見つめた。
「だが、トレジャなら降りても違反にならない」
「そういう問題じゃないだろう。あそこがどういうところかわかって言ってるのか」
怒気を含んだ声に、さらにセインは視線の温度を下げた。
なにを怒っているんだか。人間界にいたら会えないと言ってやったというのに。
「俺たちに捧げられた人間のいるところ。通っている兵士もいるみたいだな」
タミルの様子にイライラして、セインはできるだけそっけなく、事実を告げる。声音が冷たくなるのも仕方がない。
予定外に守護者が人間界へ降りたがために、引き起こされたことをタミルは自覚したほうがいい。
「そこの人間の身体も命さえも守護者のものだそうだ。人間達はそれを贄と呼んでいる」
「セインっ!」
大きな声をあげて、タミルはセインの言葉を遮った。
ソファについた手が握りこまれ、細かく震えている。
もともと守護者は性別の差への頓着がない。生きる時間が人間の何十倍も長いので生殖に躍起になる必要がないからかもしれない。
トレジャは戦いで血が湧いてどうにもならない者や快楽を求めるために守護者が人を狩る場だ。実際に殺されても人間は文句を言えない。
「くっ」
呻くような息を吐いて、タミルは立ち上がった。
「行くのか」
「うるせえ」
セインの声に振りかえりもせずタミルは執務室を後にした。
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