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「天空国の守護者」
地上編

崩壊の序曲(2)

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自分の名を呼ぶ声がする。キリスエールは慌てて、レイラースの部屋に入る。
「どうしました」
階段を全力で駆けあがったせいか、息が切れていた。
ベッドで、枕を背にもたれているレイラースはひどくほっとした顔をした。
「どこ行っていた?」
「食事の時間になったんで、下から運ぼうと思って」
ベッドの側によると手を差し出され、キリスエールはそれを握った。目が覚めたら、キリスエールの姿がなくて心配したんだとレイラースは笑う。
怪我のせいもあるかもしれないが、ここのところレイラースは少しおかしい。片時もキリスエールを側から離さず、見当たらないと何度も名を呼ぶのだ。
寝たきりの生活を続けて、すでに、2週間。怪我はかなりよくなっていて、体力も戻りつつある。だが、レイラースはベッドから出ない。
レイラースの世話を焼くのは決して嫌ではない。それどころか自分にやることがあって、必要とされていることが何より嬉しい。だが、光り輝くレイラースを知っているキリスエールにしてみれば、この頼りなくさえ見えるレイラースは不安だった。
「声をかけてから行って」
大きくため息をついて、レイラースは微笑んだ。窓からの光に金の髪がキラキラと輝く。
「はい」
キリスエールもそれに笑顔で答える。セインは、何か気にかかることがあるようだとレイラースの様子を評するが、キリスエールにはなんだか全くわからない。不安定にすら見えるレイラースに不安を覚えた。
天空国から離れていることが、レイラースになにか悪い影響を与えているんじゃないかと思う。故郷を捨てさせてしまった罪悪感がキリスエールの胸の底で渦を巻いた。
ぐっと握った手を引かれて、ベッドに倒れこむとレイラースが抱きとめる。強く抱きしめられて、キリスエールは瞳を閉じた。
「キリスエール。好きだよ」
何度もそうつぶやいて、レイラースはこめかみに口づけを落とす。
「そろそろキリスエールが足りなくて、限界かもしれない」
甘い囁きに、キリスエールはひくんと身体を震わせた。
毎晩、一緒に眠っているが、レイラースはキリスエールを好きにすることもなく、ただ、抱きしめて寝る。まだ、本調子でないから、抱くと加減がきかないかもしれないとレイラースはそういうたびに苦く笑った。
「キリスエールは?欲しくならない?」
どう答えていいかわからずに、キリスエールは身体を固くした。触られれば、過敏に反応する身体も、何もしなければ特に不自由はない。
レイラースの身体が心配で、それどころではないんだと思っている。
「そう。残念だな」
抱きしめる腕を一回強くして、レイラースはキリスエールを離した。
「いつになったらキリスエールからねだってくれるかって思っているんだけどね」
甘く囁かれて、キリスエールは身の置き所がない。いつまで経ってもこういう会話には慣れないし、男同士ということにキリスエールはまだこだわっている。自分がもし女性だったら、こんなに悩まなかっただろう。
沈黙が落ちて、キリスエールは困る。うまい切り返しも思いつかないし、拒絶の言葉も口にできない。
ふっとレイラースが口元だけで笑って、
「セインとタミルは?」
と訊いた。
「えっ。ああ。セイン様はどこかにお出かけです。行先は言っていかれませんでした。タ、タミル様は、お部屋かな?お見かけしていません」
レイラースの仕打ち以来、タミルはキリスエールと目も合わせない。キリスエールを見かけるとすっとその場からいなくなる。ちゃんと話をしたいと思ったのに、それは実現しないまま時がたった。
「ちょっと薬が効きすぎたみたいだ」
レイラースが面白そうにくすりと笑った。「暴走する可能性もあるから、あまり側によらないほうがいいかもね」と付け加えて、レイラースはキリスエールを見つめた。久しぶりに楽しそうなレイラースにキリスエールも嬉しくなる。
やっぱり、怪我のせいで気が弱くなっているだけなのかも。
「食事どうされますか?ご気分がいいなら、下で食べます?」
少し動いた方がいいかもと思い、キリスエールが提案すると、それもいいねとレイラースが答える。嬉しくてキリスエールは口元をほころばせた。
レイラースがまぶしいものを見るように目を細めるから、キリスエールは慌てて立ち上がった。窓の位置を確認し、光がレイラースに届かないようにカーテンを少し閉じる。
「一緒に食堂にいくよ。だけど、キリスエールが食べさせてね」
面白そうに言われて、キリスエールは首筋を赤くした。ここのところ、まるで親鳥が小鳥にするように、レイラースの口元にキリスエールは食事を運び続けている。レイラースはスプーンもフォークも持たずにただ口を開けるからだ。
使用人もいるのに、食堂でそれをするのかと思うと恥ずかしいし、人目も怖い。
「どうした?」
ベッドから足を下ろして、レイラースが首を傾げた。
「え、えっと……」
わかっているだろうに問いを発するレイラースに困ったと視線を向けるとレイラースがはじけるように笑った。
「恥ずかしいんだ」
「あ、当たり前です」
首まで赤く染めて、反論するとレイラースはまた口端を軽くあげて、
「僕は気にしないけど」
と笑う。
「気にしてください」
ため息とともにお願を口にしたら、レイラースにますます笑われた。
「わかったよ。さ、食事にしよう」
レイラースがキリスエールの腰に手を当てて、歩くように促してくる。それに逆らうこともなく、キリスエールは階下の食堂へと向かった。

さまざまな思惑の上に成り立った均衡はすでにぐらついて後は崩れ落ちるのを待つばかりになっている。誰もがそれを感じつつ見て見ぬふりをする。
「レイラース」
セインがレイラースの部屋の開け放たれた扉をノックした。
「セイン様」
扉の側にいて、先にセインに気付いたのはキリスエールだった。
「キリスエール。また、ここにいたのか」
呆れたような声をセインはあげ、キリスエールは、怒られたと思ったのか視線を床に投げた。
「レイラース様のお世話がありますから」
「もう、大丈夫だよ。まったく、レイラースのは半分以上、キリスエールを手元に置いておくための仮病なんだから、放っておいていい」
強い言葉で言ってはみたが、セインの中に怒りはなかった。呆れとレイラースの余裕のなさがおかしいと思うだけだ。
キリスエールを独り占めされていることに腹が立たないわけではない。だが、結局、キリスエールは選べない。これだけ一緒にいるレイラースですら、いまだ、キリスエールを落とせない。
「セイン。僕の部屋に来て、その暴言は許されないと思うけど」
ベッドの上で半身を起こしながら、レイラースがセインをにらんでいた。レイラースのなりふり構わないやり方に危惧は覚える。人間界に降りて、穢いものを見たのがかなり堪えているらしく、精神的にも不安定なのが、レイラースを取り巻く気からもわかるが、キリスエールを傷つけない限りは、許容範囲だ。タミルもそうであるから、怒りを覚えても手を出せないのだろう。
「レイラースは本当に平和だと怠惰で貴族的だ」
怪我はとうに治っていた。体力はまだ十分でないにせよ、日常生活を営むには支障がない。その証拠に、キリスエールからレイラースの香りがする。昨夜も啼かされたんだろうと思うと心の奥底でぎりりと痛みを覚えた。
キリスエールがレイラースを選んでいないと安堵する一方で、キリスエールに触れるレイラースを許せない自分にセインは呆れた。
羨ましいなら奪えばいい。セインが求めてもキリスエールは拒みはしないだろう。だが、それでは、駄目なのだ。レイラースと同じことをしていては、結局、キリスエールはただ流されるだけだ。
キリスエールこそ天使なのかもしれない。残酷で穢れない無垢な魂。
天性の娼婦のように、身体は与えても誰にも心を開かない。全ては自分の上を通り過ぎるだけだ。だが、そういう風にしてしまったのが、自分たちかもしれないと思えば、腹を立てるのも筋違いだ。これがただ一人だったのなら、焦がれるように想ってくれたかもしれない。
「うるさいな。まだ、本調子には程遠いんだ」
不機嫌そうなレイラースの声で、セインは我に返った。
レイラースがセインをぎりぎり睨み付けている。想いが聞こえたかとセインは自嘲する。だが、レイラースにもわかっているのだろう。わかっていてなお、手を出してあがくことしかできないのだろう。
「そうも言ってられないんだ」
セインはため息をついて、キリスエールを見た。
「ちょっとレイラースと話がある。席を外してくれないかな」
微笑んで告げるとキリスエールはぱっと顔を上げ、それからレイラースを見た。
レイラースが眉間に皺を寄せる。
「レイラース様。できたらその間、出かけたいんですけど……」
キリスエールの問いにレイラースはさらに機嫌を悪くする。
「そろそろ薬草のストックが切れてきて、トリアノンにも挨拶したいですし」
「おいで」
言葉の語尾が小さくなるキリスエールをレイラースは手招きした。キリスエールはそれに従いベッドに近づく。
すっと伸びてきた手にあっという間に抱き込まれ、キリスエールはレイラースにぎゅっと抱きしめられていた。
「まっすぐ行って、まっすぐ戻っておいで。僕が待っているって忘れないで」
髪にキスを落として、レイラースはキリスエールを抱く腕に力を込めた。キリスエールが小さくうなずく。
レイラースは腕の力を緩めた。滑るようにベッドから降りて、キリスエールは二人に明るい笑みを見せて、「いってきます」と頭を下げると部屋を出て行った。
扉がキリスエールの背を隠してしまうまで、セインもレイラースもその姿を追っていた。
窓からカーテンを揺らす風が机の上の本のページをぱらぱらと繰る音が響いた。光あふれる部屋には沈黙が落ちる。
「で、話って何?」
先にそれに耐えられなくなったのはレイラースだった。
「天空国が動いた」
セインの言葉は予期していたらしく、レイラースは動じずに先を促す。
「結界を張り直してほしい。おまえが傷ついてから、結界はあってなきがごとしだ。気配を消されたら感知できない」
「わかっている。これでもあちこち補強した。だが、まだ、完全に力が戻ってこないんだ。綻びがあるのは否めない」
苦い顔で告げるレイラースにセインは頷いた。
「軍勢が来るのか?藍と紅か?」
続けて訊かれた言葉にはセインは首を横に振る。さすがに、国を空にする気は国主にもないらしく、藍と紅軍はまだ国内待機だ。
「白と翠軍、黄と黒軍の混合軍が出撃したらしい」
彼らは押しなべて、銀の甲冑に軍の色を示す飾りをつけているから、目のいい人間ならそのくらいは見て取れる。街道の上空を軍勢が移動したとの情報をここの領主が耳にしたのが昨日だ。セインはその情報を得て、レイラースに会いに来た。
「それとトレジャが解放された」
なんでもないことのように言ったが、レイラースへ与えた衝撃は大きかった。
「なんだって」
「トレジャは解散。もう、贄はいらないとのお達しだ」
セインもこの話を聞いた時には信じられなかった。天空国のものが人間界でうさを晴らさないためにできた両国の取り決めだったはずなのに、それを天空国が手放した。意味するところは、もう人間界を守らないと宣言したか、もしくは見返りは勝手にもらうとしたかのどちらかだ。
どちらにしても守護者が人間界に降りることに制約がなくなるということだ。
「これが僕たちにとって有利に働くのかどうか。人間界も動揺している。僕たちと人間では力関係は明らかだ。蹂躙されるのではないかと領主たちは怯えていた」
セインは占ってくれと告げた領主の顔を思い出す。こんな遠方の土地に天空国が何かをするとはとても思えなくて、適当に安心させるようなことを言っておいたが、シスルが何を考えているかなんてセインにわかるわけがない。
「キリスエールはなんて言うかな?」
レイラースの言葉にセインはレイラースを見た。トレジャがなくなれば、キリスエールが仕える相手もいなくなる。解放されれば故郷に帰れるかもしれない。
「そうだな。もう、僕たちとのつながりは何もない」
キリスエールがセインたちを捨てるという選択肢が増えたことをセインもレイラースも理解し、心が冷たく凍っていくような気がした。
「それでも、キリスエールが決めることだ。何も変わらない」
沈んでいく心を無理に掬い上げて、セインはきっぱりと告げた。
「それより、結界だ。キリスエールを守れないなら、それからのことは何を心配しても無意味だからな」
レイラースが睨むように視線をセインの瞳に合わせ、頷く。
「わかった。できる限りやり直そう。力が及ばないところは、道具でカバーするよ。皮肉なことにその手の力を保持した貴石を人間がくれたから」
レイラースの答えにセインは頷いた。レイラースの気を引くために貴族連中が贈った贈り物だ。キリスエールが旅費にと管理しているはずだが、力の増幅に赤や青い石を配置すれば、確かに、レイラースの力及ばないところを補強するだろう。
事態が動く。
この決戦が終わったら、すべてのことに決着がつく予感がした。
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