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「天空国の守護者」
地上編

嵐雲(1)

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3日後にあわせて、キリスエールは仕事に復帰することに決めた。レイラースもにわかに忙しくなって、一日中、キリスエールが張り付いている必要がなくなったためだ。
本調子でもないのに人使いが荒いといいながらも、レイラースはリビングのソファに座って、タミルの作った地図を睨みながら力を編んでいた。
仕事に戻りたいと告げるとレイラースはキリスエールをやんわりと抱き込んで、その代り、夜にはレイラースの部屋に来ることを約束させられた。
初日だけは早く家を出たいからというとそれでもかまわないからと口づけられた。
セインとタミルは、街の外を見まわるといっては出かけていく。キリスエールが復帰を決めた途端、タミルは店にはいかないことにしたらしい。
やはり避けられていることは否めない。ちゃんと話をしたかったが、それはすでに逆効果にしかならないのかもしれないと寂しさを押し隠して、キリスエールは出かけるタミルの背を見送った。
そして、3日後。東の空が白んでくるとキリスエールはそっと身を起こした。横で寝息をたてているレイラースを起こさないように、そっとベッドから滑り出る。
「……キリスエール?」
名を呼ばれて、キリスエールは振り返った。肘をついて身体を起こし、逆の手で髪をかきあげたレイラースの瞳がまっすぐキリスエールを見つめていた。
「起こしてしまいました?」
「いや。ちょうど目が覚めた」
微笑み、身を起こすレイラースにキリスエールの心がつきんと痛んだ。
「もう、出かけるのか?」
「ええ。早めに行って準備したくて」
腕を伸ばされて、キリスエールはベッドに寄った。抱き寄せられて、唇の端に小さくキスを落とされる。
「早く帰っておいで」
その言葉に頷きを返して、キリスエールはそっとレイラースを抱きかえした。レイラースの心遣いが嬉しかった。その優しさに胸が震えた。
見送りに行くと告げてみようかとキリスエールはふと思ったが、余計な心配をかけるだけ
だ。
「いってきます。レイラース様」
微笑んだキリスエールにレイラースが柔らかな笑みで答えるのに頭を下げて、キリスエールはルイスを見送りに向かった。
「キリスエール」
朝の開門でごった返す大通りで、きょろきょろと待ち合わせの相手を探していたキリスエールはルイスの声に顔を上げそちらに駆け寄った。ルイスもキリエも大きな荷物を背中に担ぎ、すっかり旅支度は整っているようだ。
「ルイス」
「来てくれたんだね、ありがとう」
「約束したからね。でも、人が多いから会えなかったらどうしようかと思ったよ」
まだ、日が出たばかりなのに、大きな荷車やら馬車が次々と大門を潜って街の外へと出ていく。道に立っていると次から次へと出立する旅人や商人が迷惑そうに避けるのを見て、キリスエールは苦笑した。
「街の外まで送るよ」
ここで見送るつもりだったが、おちおち話もできない状況に、キリスエールがそう提案するとルイスが嬉しそうに微笑んだ。
「うん」
キリスエールとルイスが並んで歩き、すぐ後からキリエがついてくるかっこうで、3人は歩き出した。
「ルイスはどっちへ?」
「東の方だよ。パラドースの西の外れに故郷があるから」
そうだったとキリスエールは、旅の途中で見せてもらった地図を思い出す。この国、スランタはパラドースから見て北西にあたり、位置的にはかなり遠い。
「着くまでにすごくかかりそうだね」
「そうだね」
答えながらもルイスはにこにこと桜色の唇をほころばせ、そっとキリスエールの耳に顔を寄せた。
「ずっと旅でもいいんだ。キリエ様には言えないけど」
そうしたらいつまでもキリエといられるとルイスは笑う。
「それにね。すごく珍しいものをたくさん見たんだ。市場とかも、置いてある品物が違うんだね。パラドースにはない赤くて小さな甘酸っぱい実とか、おいしかったよ」
故郷とトレジャしか知らないルイスは、旅の間にたくさんの知らないものに出会ったようで、懸命にそれをキリスエールに教えてくれた。
二人は、街の守護である大門を抜けて、東に続く道へと足を進める。大勢の人々も目的地に合わせて四方へ散っていく上に、この時期は、西の湖へと向かう隊商が多いらしく、東の道の混雑はさほどでもない。
なだらかに続く丘の間を東へ伸びる道は、緩やかな上り坂で、少し行ったところで、下りになるようだった。
あの丘の上まで見送って、それから街に戻っても、店にはかなり早く着ける。
「それでね。お祭りもみたんだ。すごくたくさんの出店が立っててね。そこで。キリエ様が、これを贈ってくれたんだ」
ルイスはそういいながら、首の後ろで結んだ髪を指差した。
トレジャでは肩で切りそろえていた髪は、今では背に届くほどで、木の実をつないだ飾りがついた紐で一つにまとめられている。
ルイスの目尻が甘く下がって、本当に大事にしているものであることを知り、キリスエールも微笑む。
ルイスは自分がキリエを好きなことを全く隠さず、全身でそれを表現している。キリエとともにいられることが嬉しくて、キリエが優しくしてくれることが幸せなのだ。
羨ましいなとキリスエールは思った。
キリエを語るルイスはかわいくて、見ている自分も幸せな気分になる。きっとキリエもこういうところが好きなんだろうと妙に納得してしまった。
「髪は伸ばすの?」
「うん。キリエ様も長いでしょう?なんかさ、守護者は戦いのときに首を守るために伸ばしているんだって。それにね、キリエ様がきれいな髪だって褒めてくれたし……」
ちらりと後ろを歩くキリエに視線を投げて、微笑み返されるとほんのりルイスが頬を染めた。
ほんとうに、かわいい。
「よかったね」
心からそう思って、キリスエールはルイスに笑いかけた。
「キリスエールは?優しくしてもらってる?」
囁き声で、ルイスは聞いてもいいのだろうかという表情で、尋ねる。
「う、うん」
「ほんと?」
ちょっと間があいたせいか、心配そうにルイスがキリスエールを見つめる。
「優しいよ。なんで?」
「キリスエールがトレジャからいなくなったときに、黒の守護者様に会ったんだよね。居場所を知りたかったらしいんだけど、僕は、黒の守護者様が連れて行ったと思っていたから、びっくりしちゃって」
レイラースとともに天空国に行った時のことだと思いいたり、トレジャからいなくなったキリスエールを、タミルが探していたと知って驚く。
「ちょっと、怖かったんだ」
酷く気まずそうにルイスが小声で付け加えた。
タミルが怒っていたのなら、確かに怖かっただろう。最近の睨むようなタミルの視線を思い出して、キリスエールはそっとため息をつく。タミルの本質は優しいのだと知らなければ、キリスエールも怯えていたかもしれない。
「そうかも。でも、ぶっきらぼうに見えて、優しいんだよ。いつも守ってもらっているし、なにかあると励まそうとしてくれる」
ルイスに説明しながら、タミルはいつでもキリスエールの意見をできるだけ尊重しようとしてくれると思う。レイラースは懐に囲い込んで何物からもキリスエールを遠ざけて、傷一つつけさせまいとするが、タミルはちょっと離れたところから、見守ってくれていたことに思い至る。でも、もうそれも終わりだ。
胸の深いところがちくんと痛んで、キリスエールは小さくため息をつく。タミルを傷つけてしまったことが哀しい。きっとタミルとセインはキリスエールがレイラースを選んだと思っているだろう。
事実、毎夜、その腕に抱かれて、キリスエールだって本当はちゃんと選んでいるんじゃないと思うことすらある。
レイラースのことは好きだし、大切だ。大事にされて、誰よりも好きだと言われて嬉しい。なのに、レイラースがキリスエールに向けてくれるようなあんな熱情は返せない。
全てをかけて愛していると告げるレイラースが、キリスエールには少し怖い。そして、結局、誰も選べてなくて、レイラースすら傷つけている。
「キリスエール?」
ルイスが怪訝そうな顔で、こちらを見ていた。タミルが優しいという話をしていたはずなのに、また、思考が堂々巡りをしていたらしい。
「大丈夫?」
「大丈夫だよ。なんで?」
顔を覗き込むルイスに笑んで軽く返すとルイスが困ったような目をする。
「だって……キリスエール、泣きそうな顔しているよ」
「え?」
片手で顔を覆って、キリスエールは自分が泣いていないことを確かめ、それから小首をかしげる。
「そんなことない。ただ……」
自分の存在が疎ましいだけ。
そう続けようとして、心の中で自嘲する。
これが偽ざる本心だと気付いたから。自分がいることで誰もが傷ついている気がして仕方がない。キリスエールがいなければ、あの三人は国を捨てることもなかったし、いがみ合うことにもならなかった。
「昨日、ちょっと喧嘩しちゃってさ」
だが、会えるのも最後になるかもしれないルイスを心配させる必要もないとキリスエールは、顔の筋肉に力を入れて、微笑んだ。
キリスエールは幸せなんだとルイスに思ってもらって、笑顔で別れたい。
「喧嘩かあ」
ルイスがほっとしたような困ったような複雑な表情を見せる。
「うん」
「はやく、仲直りできるといいね」
励まそうとしているのか、ルイスはキリスエールの手をぎゅっと握った。
安心させたくて、キリスエールもその手を握り返す。
ひゅうと冷たい風が丘を渡った。黄色に色づいた草が風にたなびく。冬はもうすぐそこだ。
丘を下る道が見えて、ルイスもキリスエールも自然に足を止めた。
「キリスエール、ありがとう」
「ルイス」
一度離した手を差し出して、ルイスがにっこりと笑う。
「キリスエールにあえて本当によかった。パラドースに戻ってきたら、僕のことも思い出して」
国に戻ることはきっとないと思いながらもキリスエールは大きく頷く。
「ああ。ルイスも元気で。キリエ様と幸せに」
はにかんで笑うルイスとルイスの頭をぽんと撫でるキリエにキリスエールも微笑んだ。守護者と人間と、違うものであっても幸せになれるのだとルイスを見ていると強く思う。
「じゃあね。キリスエール。キリスエールも元気で。頑張って仲直りしてね」
最後の言葉に苦笑を返して、もう一度固く握手を交わして、ルイスはキリエとともに、街道を歩き出した。
緩やかな下り坂を二人の背中が何度も振り返って遠ざかっていくのをキリスエールは大きく手を振りながら、見送った。
二人の姿が小さくなり、次の丘の陰に隠れるまで、丘の上で佇んだままキリスエールは手を振り続けた。
寂しさと会えた嬉しさとを抱えて、キリスエールは街に戻るべく、踵を返した。
数歩歩くと背後で小さな羽音が聞こえた気がして、キリスエールは振りかえり、ぎくりと足を止めた。
「こんにちは、やっとお目にかかれました」
キリスエールの背後にゆっくりと降り立った白い髪の男性がにこやかにあいさつをするのをキリスエールは呆然と見つめた。何がおきたかわからないが、明らかにこの人は守護者だ。
「セインとタミル、そしてレイラースをご存知ですね?」
彼らの名がきれいな赤い口から紡がれて、キリスエールは瞠目し、直感的に危機を感じる。街へと戻らなければ。逃げなければ。
頭の中で警鐘が鳴り響き、キリスエールは白い髪の守護者を見つめながらも素早く左右に視線を走らせる。
右足で地面を蹴って、キリスエールは走り出した。
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