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「山神の花嫁_昔話」
昔話_出会い編

契約

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さらり。
誰かが髪を指で梳いている。自分の体温ではない少し高めの体温に包まれている。独りでないことに安心するような、夢を見ているような心地で泉はゆっくりと目を開いた。何度か瞬く。褐色の肌が見えた。しっかりとした骨格と厚い胸板が頬に触れていた。力強い鼓動が聞こえる。
ひどく幸せな気がして、泉はその肌に頬を擦り寄せた。
「目が覚めたか?」
上から笑いを含んだ声が降ってきて、泉は驚いて顔を上げる。泉を抱き締めた翡翠の琥珀色の瞳が見えた。
「身体は、辛くないか?」
瞳をみつめたまま泉は首を横に振った。
「私は生きているのですか?」
気怠い疲れが四肢を重くし、体内には異物感が残っているが、とても満たされた気分で現実味がない。
「生きながら喰うと言ったろう?」
面白そうに見つめ、片眼をちょっと瞑って翡翠は言った。
「お前は何もかもが美味かった」
泉はどう答えていいかわからず、何度か瞳を瞬いた。まっすぐに自分を見つめる翡翠の瞳がすこしだけ陰を帯びた。大きく息を吐いて、翡翠は瞬きを一つする。
「俺と来ないか、泉?」
腰を抱く腕に力が入るのを泉は感じた。力強い腕だ。全てを攫ってしまうほどに。
「どこへ?」
ぼんやりと問うと、翡翠は苦く笑う。
「俺の世界へ」
泉はじっと翡翠を見つめた。翡翠の世界とは神の国だろう。
「村を捨てて?」
「お前が俺とともにいると約束するなら、お前が俺を拒まないと誓うなら、新たな契約をお前と結ぼう」
ふさりと睫毛の影が落ち、また泉は翡翠の琥珀色の瞳を覗き込む。
「村を救って下さるのですか?」
「それをお前が望むなら」
泉は柔らかく微笑んだ。それは綺麗に。
眩しげに目を細め、翡翠は泉の髪を撫でる。
「でも、贄は?」
「お前だ。お前が永遠(とわ)に俺と伴にあること」
翡翠の瞳から逃げるように泉は瞳を伏せた。
「それは……先ほどの……」
どう言っていいかわからずに泉は呟くように言った。泉の反応に翡翠は豪快に笑う。
「そう。お前が気に入った。お前が俺に精を捧げ続ければ、もう贄はいらない。人を食らう必要もない」
男であるのに、同じ牡の伴侶となる?
泉にはよくわからない。しかし、相手は神だ。なんとでもなるのかもしれない。
この翡翠とずっと一緒に。
この温かい力強い腕に、高い体温の胸に抱きしめられて安心したことを思いだす。それは魅力的でもあり、同時に怖いことのような気もした。あんな意識ごと持って行かれそうになる感覚を続けられたら、本当におかしくなってしまうかもしれない。
「痛くも怖くもなかっただろう?」
心を見透かされたように優しく告げられ、それでも翡翠が約束を守ったことだけは確かだと思う。
それでもと、泉は首を横に振った。
「怖かった」
泉が囁くように告げると翡翠は困った顔をし、優しく泉を抱き締め、泉の頭に唇を落とす。
それがあまりにも壊れ物を扱うようで、泉は少し可笑しくなった。それで、翡翠が何か言う前に泉は言葉を足す。
「自分が自分でなくなるようで……おかしくなってしまいそうで……」
驚いたように顔を上げ、胸に抱きこんだ泉を翡翠は見つめる。
「契約を、翡翠様。村を元通りに。皆が飢えない、病気にならない。健やかに働けて、子供の笑い声の絶えない村に」
翡翠はくつくつ笑いだした。
「お前はやっぱり、欲張りだ」
抱き締めた腕を離さず、翡翠は笑う。それは楽しそうに。つと笑いをとめ、真剣な顔で翡翠は泉を見た。
「泉、村を元通りは無理だ。時間を戻すことは俺でもできない。しかし、山の息吹で村に巣くう疫病を払しょくしよう。あとは村人次第だ。復興すれば、山の力で村を守ろう」
その通りだと泉は思う。時間は戻らない。失ったものも。
『環境は整えてやる。あとはお前達人間次第だ』と翡翠は言っているのだ。神様だって万能ではないと、元に戻すのは人間の力だと努力をしろと翡翠は告げている。そして、その努力は幸せを掴むためには当たり前のことだと泉は思う。
「それでいいです。契約を」
泉は微笑んだ。憂いも切なさもない表情(かお)で。
翡翠は泉を離す。
「座って」
泉は黙って、起き上がると言われた通りに足をそろえて座った。翡翠もまた泉の前に向かい合わせに座る。そして、翡翠は自分の胸に長い爪を当てると浅く皮膚を裂く。血の珠が裂け目から浮かぶ。
「泉。これを舐めろ」
泉は身を乗り出すと翡翠の肩に手を掛け、その血を同じくらい赤い舌で舐め取った。
「ずっと側にいると。俺を拒まないと誓え」
身動き一つせずに、泉のすることを見ていた翡翠が告げる。
「ずっとお側にいます。あなたを拒まず、ずっとお側に」
その言葉を聞くと翡翠は泉の胸の皮膚も同じように浅く裂き、血を舐め取った。
「お前の望むとおりに」
誓った翡翠に泉は目を丸くする。
「それでは範囲が広すぎます。私の望みは村の再興だけ」
「いいんだ。お前なら、この山の力を乱用することもない。俺はお前の望むままにしてやりたい」
「翡翠様」
泉は翡翠を見つめた。翡翠も優しい瞳で泉を見返す。ふっと翡翠が口端を上げて笑った。
「誓いを破るなよ、泉。血の誓いは絶対だ。お前が俺のもとを去るときはお前の命を置いて行け」
翡翠の強い言葉に、泉は深く頷いた。
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