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「天空国の守護者」
地上編

嵐雲(4)

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守護者の陣深くまで、タミルは単身切り込んでいた。一緒に飛び込んだセインとも離れてしまった上に、守護者の数が多すぎて、戦況がどうなっているのかさっぱりわからない。
ただ、目の前で剣を揮う相手をなぎ倒していくだけの動きにいささかうんざりする。
ましてや相手はこちらを捕えるために、動いているから、切りつける剣先に殺気がない。自国の兵でその上、殺気もないとなっては、こちらも本気で切り付けるわけにもいかず、タミルはイライラと下ろされる剣先をそらしては、できるだけ敵を落すだけにとどめる。
「くそ。きりがねえ」
かかってくる兵士の剣先を流して、峰で首の根元を打ち付けて、タミルは目の高さに剣を構える。
「いいかげんにしろよ。おまえらじゃ、俺は捕まえられない」
ぐるりとタミルを囲んだ守護者の剣先がひくんと揺れた。
「タミル隊長。命令違反は重罪です。おとなしく投降してください」
誰もがわかっているのだろう。天空国一の剣の使い手を剣で倒して捕えるなんてことが不可能だということを。
「死にたい奴からかかってこい」
かちりと剣を正眼に構えて、タミルは壮絶な笑みを浮かべた。苛立たしさがタミルの気配を剣呑にする。身体から闘気と殺気があがり、包囲網が一歩後退した。
逃げるか。
埒が明かないと判断したタミルが、街の方向へ跳ぼうと力を込めた途端、右手方向から守護者のざわめきと鬨の声があがった。
「クアールだっ!」
「来襲」
タミルはそちらに視線を向けて呆然とする。黒い鎧の一群が守護者の軍勢を横から襲って、その陣形を乱していた。
「なんでクアールが」
予想外の出来事に驚いたのはタミルも同様だが、一番、混乱をきたしたのは目の前の守護者軍だった。白い徽章をつけた白軍の連中が一気に浮き足立つ。
目の前の捕縛を優先すべきかクアールに向かうべきか判断がつかないのだろう。
タミルの逡巡はわずかだった。
「おい。中隊長」
大声で呼ばわるとタミルを囲んだ一群のうしろから、2つほど返事が返る。
なるほど、白軍二千というところか。
二中隊がやってきていることを瞬時に理解し、この場に現れた守護者がざっと計算して多くても5千だと見積もる。
「一隊は、隊をまとめてヴァイスと合流。もう一隊は俺についてこい。クアールを屠る」
「はっ」
彼らの判断も早かった。長年のクアールとの確執と守護者の存在意義が、命令違反者の捕縛という任務よりクアールに向かうことを優先させた。
ヴァイスは自分の隊のものにタミル捕縛は命じても、国の裏切り者とは説明していなかったようだ。これが白軍副隊長だったら、タミルの言葉を鼻で笑っただろうと思いながら、タミルは「出陣」と叫ぶや、クアールが飛び込んできた西側を目指して空を駆ける。後を空を切る翼の音が追いかける。
国は捨てたはずだったのにな。
一中隊を率いながら、空駆けるタミルは皮肉に笑う。
キリスエールを国主から奪ったからには、もはや国には戻れない。キリスエールがレイラースを選んだ今となっても、側でキリスエールの幸せを見守るしかない。
兄のように。
ぎりりと胸が痛んで、タミルはぐっと奥歯をかみしめた。できることならとっくにそうしている。兄として、剣を捧げたものとしてのみ、キリスエールの傍らにいられるなら、こんなにも苦しくはないだろう。
レイラースにキリスエールを傷つけたと、危険にさらしたとレイラースの腕の中で啼くキリスエールを見せつけられてから、目も合わせられなくなった。
見つめてしまったら、腕に囲ってしまったら、きっとそのまま攫ってしまうだろう。レイラースもセインも手の届かないどこか遠くへと連れ去ってしまう。
だから、この気持ちが落ち着くまで、肉親のようにそばにいられるようになるまで、時間が欲しい。レイラースとのことを笑って祝福できるように、キリスエールの幸せだけを願えるようになるまで。
「キリスエール」
名を囁いて、ぐっと剣を握り直すと、タミルはクアールが守護者軍と混戦する戦場へと中隊を引き連れて飛び込んだ。
横合いから襲撃されて、クアールが陣形を乱す。
タミルは鬼気迫る勢いのまま、手当たり次第、黒い鎧を薙ぎ払った。立ちふさがるものは容赦なしだ。
黒軍隊長の名は伊達ではない。引き連れてきた白軍一中隊はタミルの命令通り、まるで生き物のように動く。横合いからクアールを分断し、さらに隊を切り崩すべく、取って返す。
襲撃された翠軍も隊をまとめて、陣形を立て直しつつある。
それを助けるように、タミルは相手の陣を突っ切ってはかき回した。
ちょっかいをかけてきたクアール軍はそう多くはないらしい。こちらと同数かへたしたら少ないくらいだ。
だが、相手も訓練された軍隊で、くずしてもなお陣形が立ち直る。もう一度と西側から細長い陣形でクアール軍に差し入れると
『タミル。そこをどけ』
セインの声が届いて、タミルは剣を揮い隊を東側に先導する。
最後尾がクアール軍を抜けた途端、白い光がクアール軍を引き裂いた。
白い光の出所を見れば、守護者軍の奥でセインが采配を揮っていた。こちらも元とはいえ将軍だということだ。
ヴァイスとカミールも軍をまとめつつある。さて、次はと思った瞬間、首筋の後ろの産毛がちりちりと逆立った。
脳裏にキリスエールの苦悶する表情が浮かんで、タミルは首を振る。
「中隊長」
「はっ」
タミルのすぐ後ろに控えていた白軍中隊長フォルランは、すぐさま返答する。
「翠軍と連携し、包囲陣形のままクアールを西側に押し返せ」
「はっ」
「誰かヴァイスに伝令。あと1中隊連れてここからクアールを追い返せ。指揮権はヴァイスに返す」
伝令隊から数人が後方へ跳ぶのを確認し、タミルは街の外壁の下へ視線を飛ばす。
「タミル隊長?」
怪訝そうなフォルランの声に、タミルは首を振り、「行けっ」と叫んだ。
あわただしく、軍が動いていくのを確認し、タミルは一気に街壁の一角へと移動する。
「キリスエールっ」
飛び出した先では、旅装束のマントを纏った男がにやにやと笑っていた。目にかかる黒髪からのぞく瞳は酷薄そうな青、薄い唇は嗤いを湛えている。
「よう、久しぶりだな」
格好は人間だが、気配が違う。クアールだ。それもこの酷薄な瞳には、見覚えがあった。
「腕はどうした?」
戦いで仕留めそこない逃したクアールに、あの時の屈辱を思いだし、タミルは鼻の頭に皺を寄せる。
「覚えてたか」
嬉しそうにロトは口端を上げ、両腕を広げて見せる。
きっちり完治している腕に、さらにタミルは歯噛みした。消えないキリスエールの危機を知らせる信号に、国主が『災い』と呼んだクアール。
その符号が示すところは明白で、タミルはロトを射殺しそうな双眸で睨み付けた。
「キリスエールはどこだ」
「招待状は届いたみたいだな。大事なお姫さまから目を離すからそういうことになるんだぜ。あんなに守っていたくせにさ」
ロトは言いながらもちらりと自分の後ろに視線を流す。そんなロトをぎりぎりと睨み付けて、タミルは男の背後をうかがった。
人気のない外壁にぐったりとした青年が凭れているのが見えた。
「キリスエール!」
つぶやいて、タミルは剣を構えた。キリスエールは両腕を開いた格好で、壁に黒い紐のようなものでとめられていた。目を閉じて頭を後ろの壁につけているところをみると意識がないようだ。その晒された首にも黒い紐が巻き付いている。その黒い紐が時折、ふるると蠢いた。
くそっ。心中悪態をつきながら、タミルは剣を構えたまま、ロトを睨みつける。
「そいつをどうするつもりだ」
「前に見たろう?人間の神殿でさ」
タミルの脳裏に全裸の少年が黒い触手で繋がれてゆらゆらと揺れていた姿が浮かんだ。
「やめろ」
生気を吸ったうえ、殺すと言われて黙っているわけにはいかない。
「助けたかったら、俺と戦え」
肩からロトがマントを落す。タミルが姿勢を低くして、剣を構えた。
「こんどこそ、決着をつけてやる」
ロトもすっと腰の剣を抜いた。
タミルは地面を蹴って空中へ跳びあがった。
がきんっ。
鋭い金属音が響き渡って、火花が散る。
ぎりぎりと刃を押し合って、タミルは後ろに身を引いた。左手首を水でも救う形にまげて、ため込んだ力を前にいるロトに叩き込む。
火の球が尾を引きながら空を走り、まっすぐにロトの鳩尾へと飛ぶが、ロトはそれに薄い青の球をぶつけた。
しゅうしゅうと音を立てて湯気が上がり、力は相殺される。
「なるほど、腕は落ちていないらしい」
嬉しそうにロトはにやにやと笑いながら、無造作に剣を掴んだ格好で、タミルの方へ突っ込んでくる。
「速い」
滑るように空中を移動し、懐へ飛び込んでくるロトをタミルは身を躱しざま、剣で流す。
きんと剣先が擦りあわされる音が甲高く響いた。
「いいねえ。ぞくぞくする」
後ろに流されたロトは、すぐさまこちらに身体を向けると片腕を空に向かってあげ、生じた光の球をタミルに投げる。球は細長い剣へと姿を変え、まっすぐにタミルの喉元を狙った。
タミルはその光の剣にまともに剣を当てるとはじき返す。方向を変えた光の剣は地面に突き刺さって、爆発した。
ぶわりと爆風が地面を薙ぎ、熱い空気が上昇する。
首の後ろのちりちりした感触が消えないことに、タミルはロトを睨み付けながらイラついた。
これは剣の主が命に危険にさらされている警告信号。
ロトはあの黒い紐状のもので、キリスエールの喉をやんわりと締めているか、生気を少しずつ吸い上げているのだろう。
時間をかけていれば、たとえ、ロトを始末してもキリスエールがもたない。
どうする。
考えても、埒があかない。悔しいことに剣技でも力においてもロトとタミルは拮抗しているようだ。先だっても捨て身の攻撃で、それでも打ち損じたのだ。
結局、正攻法しかないのかとタミルは左手に光の剣を出現させて、右手の剣とともに構える。
左手で薙ぐように剣を揮うと同時に、ロトへと突進する。
光の剣の軌跡が弧を描いて、ロトへと向かうのと同じ速度で、タミルはロトに襲い掛かった。
ロトは驚いた顔を見せたものの、光の剣の太刀筋に自分の剣を突き立て、そのまま後ろに身体を倒す。
光の剣が縫いとめられると同時に、タミルは上段から剣を振り下ろした。すっと身体をほんの少しひねらせて、剣を支点にロトは後ろへと倒れて、1回転すると地面に足をついた。そのまま両手を手のひらを上にして、空へと突き出す。黄色い力の帯が手の平から出現し、タミルに向かって伸びる。
タミルはもろにその光を剣で受け止めた。視界が真っ白にそまり、ぎりぎりと押される剣を思いっきり振りぬく。
ざんっと草が切り裂かれる音が響いて、地面に立つロトの頬がざくりと切れ、赤い血が滲む。
「ふははは」
指でそれを拭って目で確認するとロトはいきなり笑い出した。
「いいねえ、ほんとに。楽しくって仕方がない。だけど、これもその子の気ですぐに元に戻る」
頬を手のひらで撫でただけで、傷がすっと消えた。
「あとどのくらいもつかな。あんまり体力なさそうだけど、お姫様はさ」
ロトの前に降り立って、キリスエールを背でかばいながら、タミルはロトを凝視する。
「あいつは関係ない。決着をつけたいなら、そんな力を分散する必要はないだろう」
「どうかな。あんまり治癒は得意じゃなくてさ。エミールも連れてこなかったし。その子が俺に生気をくれれば、ちょっとくらい怪我しても、どうってことない」
にたりと笑ったロトにタミルはぎりぎりと強い視線を向けた。
一気に決着をつけなければ、本当にキリスエールがもたない。
「ほら、背後にその子をかばってちゃ、本気で戦えないだろう。こっちへ来いよ」
すっと空中に浮き、ロトは人差し指を立てて、くいくいと手前に動かし、にたりと笑みを浮かべる。
タミルは地面を蹴り、さらに高みに飛び上がる。背後にキリスエールをかくまっていても攻撃を受けたら、かばいきれないからだ。
こいつだけは絶対に許さない。
追って間合いを詰めるロトへ、タミルは一気に急降下し、剣を構える。落下のスピードを利用し、ロトに剣を叩き込む。はじき返されるが、すぐさま刃を戻して逆から切り込んだ。
「くっ。速い」
ロトが唸るのが聞こえた。ことごとくをロトは受けるが、打ち込むたびに上がるタミルのスピードに受けるだけで精いっぱいのようだ。
右へ左へと身体を逃がしては、剣先を流すが、タミルの攻撃は止まらない。金属を叩きつける高い音が響き、ロトに小さな傷が増えていく。
キリスエールを害するものはすべて取り除く。命に代えてもこの男は仕留めてやる。
タミルはさらに剣を揮う速さを上げた。
相手に力を揮う暇も、キリスエールを盾にとる隙も与えないで決着をつけたかった。
タミルは大きく剣を振りかぶると力の限り、剣でロトの剣を叩きつける。
がっ……きんっと一際大きな音がし、ロトの剣が刀身の真ん中から折れてとんだ。勢いでロトが、体勢を崩し仰向けに倒れこむ。
「これで終わりだ」
両手で剣を握るとタミルはそのままロトの喉元をめがけて、突き下ろした。
「うわああ」
ロトの叫び声が聞こえ、ざしゅっと手ごたえを感じる。
やったかと思った瞬間、離れたところから、力の波動を察知した。考える間もなく身体が動く。剣から手を離し、身体の前に両腕を突出し、手のひらを向けた。
熱と光がはじけ飛んだ。
どがん。
視界が真っ白に染まり、白い焔が渦を巻く。
焔の巻き上げるごおっと言う音と、タミルの張った防護壁と擦れて上がる白煙が辺りを埋め尽くした。
熱せられた空気が巻き上がり、タミルの黒髪が宙に広がる。押されないように翼を広げて、ぐっと踏ん張る。
「タミル」
「ロト」
視界が利かない中、名を呼ばれた。
徐々に水蒸気と光が収まり、タミルは力が放たれた方向へ視線を投げる。
ロトはタミルから離れた位置で立っていた。左手で押さえている右肩からは血がながれだし、呼吸が荒いが命に別状はなさそうだ。
「しぶといな」
忌々しげなロトの言葉に、それはこっちのセリフだとタミルは思う。まさか、陽動だったとは。刺されるふりをして、後方へ空間を跳び、力を放出。一連の流れは早くて敵ながら、すごい腕だ。
「ロト!」
「タミル」
名を再度呼ばれ、タミルは声の方にちらりと意識を向ける。セインとレイラースが上空でこちらをうかがっている。そして、ロトの背後からも一人、緑の髪のクアールがロトにかけよる。
「ロト。大丈夫か」
「ちっ。邪魔するな、エミール」
手を伸ばしたエミールを首を振ることで拒絶し、ロトは、タミルを睨み付ける。タミルが傷つけた右腕は力が入らないようで、だらりと身体の横に垂らしたままだ。
「先の戦いで取り逃がしたクアールだ」
説明を求める視線にタミルはロトから目を離さずに答える。二人が戦闘態勢に入るのを確認し、タミルは剣を拾い上げる。
だが、数的不利とみなしたのか、ロトはふんと鼻を鳴らすと肩を押さえていた腕を振り上げた。黒い影が視界を横切る。あれは、キリスエールを拘束していたものではなかったか。
「キリスエール!」
レイラースの声が鼓膜を打つ。
「この勝負はあずけた。お姫様を返してほしくば、奪いに来るんだな。黒の守護者一人で」
ぐったりとロトの腕に抱かれたキリスエールの頬をべろりと人舐めするとロトは、3人の守護者を眺めて嗤った。
「ほかの奴の影を見たら、このお姫様はその場で殺す」
「なんだと」
ロトとエミールを取り囲むようにじりじりと三人は間合いを詰める。だが、キリスエールを押さえられている以上、手が出せない。
「じゃあな。いくぞ、エミール」
傲然と言い放つと、ロトはキリスエールを腕に抱いたまま、跳んだ。
「まてっ」
「キリスエール」
ざざっと大きく風が吹いた。目の前には、焼け焦げた大地と青い空が見えるだけ。
「セイン、どっちへ行った」
「クアールの軍勢の裏。そのままさらに北へ移動」
目を閉じて、顔を空に向け、気配を追っているらしいセインに問えば、明確な答えが返ってくる。クアールの領土へと連れ去る気だ。
「追うぞ」
槍を担ぎ、レイラースが跳躍のために力を込める。
「だめだ」
タミルはレイラースの腕をつかむ。
「なんで止める。キリスエールを追うんだ。取り戻さなければ、早くっ」
振りほどこうとする腕を力で押さえて、タミルは首を横に振る。
追うためにはクアールの軍勢の真っただ中に飛ばなければならない。当然足止めを食ってその間に逃げられてしまう。
それに、
『お姫様を取り戻したかったら、一人で来い』
『おまえ以外の影を見たら、殺す』
ロトの言葉が耳の中でこだました。
「俺が追う。キリスエールは……俺が助け出す」
「タミル」
腕を振りほどいたレイラースに胸倉を掴まれて、ぎりっとひねりあげられる。
「ひとりで行ってどうなる。それより一刻も早くキリスエールをあのクアールから引きはがさなければ、どうなると思っている」
「あいつは俺一人で来いと言った。そうしなければキリスエールを殺すと」
「そんな言葉を鵜呑みにするのか。僕も行くからな。ふざけるな。お前だけでどうやってキリスエールを救う。過信するのもいい加減にしろ」
さらに喉を締められて、反論しようにも声が出なかった。
「はい。そこまで」
レイラースの腕を引きはがして間にセインが割り込んだ。
「仲間割れしている場合じゃない。タミルはクアールの位置を把握できない上に、逃げ込まれた先はどう考えてもクアールの領土だ。この場合は、レイラースの言い分が大半は正しい。タミル一人じゃ無理だ。だけど、このままクアール軍に突っ込んでいくのも無謀で愚策だ」
「だが……」
要求をのまなければ、キリスエールの身に危害が及ぶと言いかけたタミルをセインが笑みで遮る。
「最後のあいつの相手はタミルに任せるよ。恨みもあるんだろう。今度こそ、息の根をとめろ。要は、あいつの前に僕たちが現れなきゃいいわけだからね」
タミルはぐっと拳を握る。
意地を張っている場合ではなかった。ここで言い合いをしている時間すらおしい。
あのクアール、ロトとかいうやつは、怪我をしていた。早くキリスエールを取り戻さなければ、怪我の治療に使われてしまう。
「わかった」
承知すると視界の隅で、レイラースも頷いた。
「よし。まずは、ここから離脱する。クアールの奴の後を追ったのでは、あそこの混戦に巻き込まれるからね。東に抜けて、それから北を目指す、いいね」
セインの言葉にうなずきながら、タミルは守護者軍とクアール軍が戦っている戦場を見上げた。
あの向こうでキリスエールが助けを待っている。
まっていろ。キリスエール、絶対に助ける。
「いくよ」
セインの声に頷いて、タミルとレイラースは翼を広げた。
まずは東へそして北へ――
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