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煉獄の恋

第1章 せつない気持ち

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「来月の予定は?」
ダイニングテーブルで姿勢よく本に向かっている後ろ姿に問いかけると、高郡聖(たかごおり せい)は読んでいた本から顔を上げた。切れ長の瞳がこちらを向いて、小さく首を傾げる。
「月末、試験だけど」
「そうか」
小さくため息をついて、珈琲を聖の前に置き、神栖輝(くるす じん)はダイニングテーブルを回りこんだ。
聖のまえの席に腰を下ろし、珈琲カップに口をつけ、本に視線を戻してしまった聖をじっと見つめた。つややかな黒髪が透けるような白い肌に落ち、形のよい唇は真剣に結ばれている。大きな黒い瞳は今は長い睫毛に隠れてよく見えない。端正な顔だと見るたびに神栖は思う。
会いたくて、平日の午後、早い時間に帰宅したというのに、聖は相変わらずだ。
休みの予定をきいてもあまりにそっけない返事に、神栖は落胆を隠しきれなかった。
神栖はIT系の会社の代表取締役で、そのスケジュールは多忙を極めている。
昨年の夏に、付き合い始め、大学生の聖をやっと恋人にしたのはいいが、予定を繰り越しても2週に一度食事をするくらいが関の山。その上、年末は決算に追われ、年が明ければ、あいさつ回りや何やらで忙しいどころの騒ぎではなく、電話する時間もないほどだった。
年始年末の休みにはと思って聖の試験が終わった次の週に電話してみれば、すでに実家に帰省した後で、会えないまま時は過ぎ、すでに2か月近くが経っている。
恋人である聖は昼間、神栖のいない間に大学にも近く、資料がそろっているからとこの部屋に来て勉強しているが、夕方には自分のマンションへと帰ってしまう。一緒に暮らそうという神栖の提案はいまだ保留のままだ。
嫌われてはいないと思う。今日とて、帰宅して部屋で着替えていると、聖が後を追ってきた。会いたかったと抱きしめてキスしても嫌がらず、それどころか恍惚とした表情をしていた。
会いたくても会えないから、普段から、神栖はメールもかかさない。電話ができれば電話をして声を聞いた。こちらから問いかければ聖は答えるが、聖からの連絡はない。会いたいとも会おうとも会えないかとも言ってはこないのだ。
子供ではないから、相手から連絡がないなら付き合い自体をやめようとは思わないが、少し寂しく思うのは仕方がないとも思う。
「聖、来月の第2週のあたり平日も含めてどうだ?」
それでもこちらから働きかけなければ、この愛想のかけらもない青年は会ってもくれないのだから、自分が会いたいのならなんとかしないといけない。
本から顔を上げて、聖は困った顔をした。そんな顔すら可愛いと思うのだから、神栖は自分がどれだけこの青年に参っているか自覚しないわけにはいかなかった。
「神栖さん、話が見えないんだけど」
休みの予定を訊いたのだから、意図は明確だろうに、そんなことすら考えの及ばないらしい聖は、わからないと顔にかいて、首を傾げる。
「ここらで休みをとることは可能か?一緒にちょっと遠出しないか」
「え?あ、ああ。でも、何故?」
全く予想もしていなかったようで聖は戸惑ったらしく口ごもる。
「理由がいるのか。お前と旅行するのに」
そんなに意外なことを言ったつもりはなかった神栖は、聖の瞳を見つめた。神栖の言い分はもっともだ聖は思ったらしい。
「どこへ?」
「海外と思っていたんだが、試験だとあまり長くは休めないだろう。そうすると国内だが、どこか行きたいところはないのか」
まっすぐに聖を見つめていると、聖は少し驚き、そのあと困った表情をした。恋人と旅行に行こうという話を喜びこそすれ、困ることなど何もないと思うのに悩み始めてしまった聖をみて、神栖はらしくなくまた溜息をついた。
聖と一緒にいると溜息の回数が増えて仕方がない気がするとすら神栖は思い、
「どうした。俺と旅行は嫌か」
と問いかけると、聖は慌てて首を横に振った。
「違う。嫌じゃない。だけど、旅行なんてあまり考えたこともないし……人ごみも長時間の移動も苦手で……」
「友達と行ったりしないのか」
「修学旅行だけ」
聖の答えに神栖は軽いめまいを感じた。たかが旅行の行き先を決めるだけだったにも関わらず、あまりにも聖のことを知らない自分に気づいたからだ。
「わかった。要望がないなら俺が適当に決める。いいな」
それに聖は頷いた。別に否はないようだ。
と、不意に携帯電話の着信音が鳴り響いた。聖は手を伸ばして、目の前に置いていた電話を手に取ると相手を確認する。
「電話か」
「いいや、メール」
聖は言うと何やら簡単に返信し、机の上を片つけ始める。
「俺、行かないと」
本を揃えて書斎へ返し、ノートやら筆箱やらを鞄につめ始めた聖に、神栖は呆れと怒りとなにやらわからない胸の痛みを覚える。
「帰るなよ」
神栖には聖が何を考えているかさっぱりわからない。
会いたいと告げたはずなのに、俺がここにいるのにいつもの通り帰るのかと、神栖は不機嫌なのを隠さない声で、聖を引き留めた。
「バイトなんだ」
「今日は、金曜日だ。バイトは別の日だったんじゃないのか。それもこんな時間から」
時計を見れば、すでに午後5時を回っている。聖のバイトは昼間の午後の塾の講師や家庭教師が主だったはずだ。こんな夜にかけてのバイトをしているとは聞いていない。イラつく気分を持て余して、神栖は腹に力を込めた。
「先月、試験のせいであまりバイトができなかったから、増やしたんだ。生活に困るし……」
聖の言い分はもっともだ。彼はまだ学生で、それなのにできるだけ親に頼らず、自活しようと努めている。それに神栖は敬意も払っていたし、応援もしているが、2か月以上顔を見れなかった恋人にやっと会えたのに、話らしい話もなしに帰るとは、納得できない。
「帰るなよ」
大人げないとは思いつつ、神栖は同じセリフを繰り返した。聖は神栖の目を見返しながら、つと側により、腕にそっと指を触れた。
微かに震える指先に、座っているためにいつもより上にある聖の顔を見上げた。
少しは一緒にいたいと聖も思ってくれているんだろうかと思い、それとも自分の怒りを感知して怯えているのかもとも思う。揺れる気持ちにさらに苛立ちが募った。
「終わったら、ここに戻ってくる。21時過ぎになるけど、いい?」
控えめに告げられた言葉に、輝は目を瞠り、とっさに立ち上がると神栖は目の前の聖を思い切り抱き締めた。このまま行かせたくないと言いたいが、それは単なる我儘だとぐっと言葉をのみこむ。
「待ってる」
それだけを押し殺したような声で告げ、神栖は聖の身体を離した。
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