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煉獄の恋

第4章 日曜日(1)

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携帯の着信音で目が覚めた。ダイニングテーブルに突っ伏して眠ってしまっていたらしい聖は携帯に手を伸ばす。
『悪い。今日中は無理だ。あと5分で着く』
開けたメールには短い一文があった。
時計を見上げるとすでに夜中の12時を過ぎていた。確かに「今日中」には間に合っていない。
聖は笑ってしまった。確かに約束はしたが、子供ではないのだから、明日起きるまでに帰ってくれば、約束を破ったことにはならないのに。そんなことで、俺が怒ると思ったのだろうか。
テーブルの上には、勉強の資料が派手に散乱していた。聖はそれらを纏めて片づける。
一通り片付け終わるころに、がちゃがちゃと玄関で音がし、神栖が帰ってきた。
「ただいま。聖。遅くなった」
神栖はリビングに入ってくるなり、聖の前に立って腕を伸ばすとぎゅっと抱き締めた。
「おかえりなさい。外、寒かったんだね」
抱き締め返すと外気で冷えたコートに、聖はふるりと身震いした。
「ああ、結構冷え込んでいる。聖、食事は?」
軽く身体を離して、神栖が聖を見下ろす。瞳が合ってどきりとした。
「食べたよ。適当に」
「なら、少し飲むか。付き合え」
聖が頷くと神栖は聖を再度抱き締めた。
「いいな。帰ってきてお前がいるのは」
神栖の嬉しそうな声を聖はくすぐったく感じる。返す言葉もなくて、聖も抱き締め返し神栖の胸に頬を寄せた。温かい気持ちがひたひたと湧いてきて、聖は小さく微笑んだ。
飲むと言った割に、ハムやチーズ、オリーブ、さらにフランスパンを薄切りにしたものをテーブルに並べている神栖に、聖は驚いた声を上げた。
「神栖さん、食事してないの?」
「軽くは食べた。でも、コンビニのサンドイッチとかだったからな。座れよ、食おうぜ」
神栖に促されて席に着いた聖にワインをついで、神栖が手渡してくれる。そのグラスを受けとりながら、まじまじと聖は神栖を見つめる。
「神栖さんでもコンビニのサンドイッチなんて食べるの?」
「あのな。別に普通に食べるだろう。あんまり好きじゃないけどな」
オリーブを口に放り込み、神栖はワイングラスを傾けた。苦く笑う神栖に聖もそれもそうかと思い、くすくすと笑う。
「お前は?」
「俺も似たようなもの。そこのスーパーでお弁当を買った」
聖は受け取ったグラスに口をつけ、ちょっと目を見張った。
「おいしい」
その様子に神栖が微笑う。
「よかった。甘いんだがわりとさっぱり目だからな。お前でも飲めるだろうと思ったが、気に入ったのならよかった」
前に、おいしい酒を教えてやると神栖が言っていたのを聖は思い出した。
それを覚えていて、俺でも飲めるものを探してくれたんだろうか。
「口当たりはいいが、アルコール度数は14度だからな。ゆっくり飲んだ方がいいぞ」
頷いて、できるだけゆっくり杯を傾けた。さっぱりした甘味が舌を潤し、喉を通る。ついで、ホカホカと身体が温まった。
「仕事は終わった?」
「まだだ。腹ごしらえしたら、少しやってから休む。お前先に寝てていいぞ」
「わかった」
聖は答えて、またワインを喉に流し込んだ。なぜか、ワインがさっきより苦く感じる。
寂しい。
結局、あの部屋で一人で眠るのか。
「それと、明日の朝10時に武流が来る。資料を取りにと打ち合わせにな」
聖は顔を上げて、神栖を見た。瞳が揺れないように下腹に力を込めた。
「じゃあ、9時ごろ帰るよ」
「帰ることはないだろう。ここにいればいい」
吉井さんは仕事しにここに来るのだから、俺がいたら変だろうと聖は思った。大体、ここにいてどうしろっていうんだろう。
「まだ、期末試験の勉強と課題終わってないんだろう?」
見つめて問われ、聖は頷いた。
「わからないところを教えてやるよ。一応、俺たち二人ともお前の先輩だからな。役に立つこともあるだろう」
軽く片目を瞑って神栖は微笑った。いつもの気障な仕草だが、こういうことをしても様になるからすごい。
「そういう問題?」
「武流なら知っている、俺たちのこと」
神栖は当たり前のように答えた。
「話したの?」
友達ならそういうことも話したりするのだろうかと聖は不思議に思った。
「あいつは俺の性癖も好みも知っているからな。察しているだろう」
聖は大きくため息をついた。察しているのと知らせるのでは違うのではないかと思ったからだ。
「あいつは気にしないし、お前に会ったら嬉しいと思う。かなりお前のことかってたからな」
「それは、ただの後輩だとアルバイトだと思ってたからだろう」
「あまりそういうことにこだわる奴じゃないからな。お前はお前だし。気にするな。仕事はそんなにかからないし、たまには3人で食事ってのも悪くない」
気にするなと言われても、どういう顔で、吉井さんに会えばいいかわからないと聖は思った。知っている人だけになんだか気恥ずかしい。
「約束したろう。月曜の朝まで、ここにいると」
真顔で見つめられて、聖は息を飲んだ。瞳で帰るなとここにいろと語られ、それに見惚れてしまった聖はその言葉に従わざるを得ない。
「わかった。約束は約束だ」
聖の返答に神栖はにっこり微笑んだ。

次の日。
神栖の言葉通り、聖が神栖の部屋にいるにもかかわらず、吉井武流は驚いたそぶりもなく、聖ににこやかにあいさつをくれて、果ては会えて嬉しいと言われた。
緊張していたのが馬鹿みたいだと聖は思った。気にしているのが自分だけというのもなんだか変な話だが、この二人は付き合いが長いと聞いている。
きっと、なんでもわかっているんだろう。
うらやましく思う。聖はあまり他人と深く付き合うことを避けてきたせいで、神栖と吉井のような長年の親友と呼べる人がいない。そういう人がいないことを不自由に感じたことは今まで一度もないが、二人を見ているとちょっといいなと思う。
特に、神栖をわかっているというのがすごいと尊敬の念すら感じた。
二人はソファの前のローテーブルに書類を広げて、難しい顔で何やら相談している。昨日、神栖が作った資料だろうか。
仕事の邪魔にならないよう聖はダイニングテーブルで静かに勉強をしていた。時折、こっそり二人を見ていたが。
仕事をしている神栖は、いつも聖に見せる甘さはかけらもなく、きつい眼差しにクールな光を浮かべている。端正な顔が際立って、格好がいい。
対する吉井も目を細めて神栖が指し示す書類の個所に見入っている。細面のせいか、かなり冷たい印象を与えるが、その実、面倒見のいい優しい人だということを聖は知っていた。
どうも長いこと見惚れていたらしい、すっかり手の止まったシャープペンがノートの上で彷徨った跡をつけているのに気付いて聖は、我に返った。二人が気付いた様子はなかったが、見惚れてしまったことが気まずくて、立ち上がるとキッチンへと入る。どうしていいかわからなくて、とりあえず珈琲を入れることにした。珈琲好きの神栖のこだわりで珈琲メーカーはドリップのいいやつで、すでにセットされている豆も最高級品だ。スイッチを入れると、いい香りが部屋に広がり、気持ちが落ち着いてくる。
なんだかんだ、こうやって普通に一緒にいられるということが心穏やかで、心地良いとすら思って、聖は知らずに微笑んだ。
共に生活したら、こういう日々になるのだろうか。
『一緒に暮らさないか』
唐突に返事を保留にしたままにしている神栖の提案を思い出した。しかし、昨夜のように日付が変わるころに帰り、結局、一人で眠ることになることがほとんどだということも思い出す。
帰ってこないことも多いだろう。
この部屋でずっとあの人を待つ生活……。
目の前の流しの縁をぎゅっと掴んだ。
それには、きっと耐えられない。忙しさで気を紛らわせても、この部屋ではあの人を思い出さないことは不可能だから。
頭を軽く左右に振って、聖は暗くなりそうな思考を頭から追い出した。
こぽこぽと珈琲が落ちる最後の音がして、聖は用意しておいたカップに珈琲を注いだ。ふんわり湯気と香りが立ち上る。
せっかく神栖といるんだから、悲観するのはやめようと思いながら、両手にカップをもって、二人のところへ運んだ。
どうしよう。
ローテブルの脇に立って、聖は動きを止めた。ローテーブルの上は書類が一杯で、カップを置くところが見当たらなかった。
困って立っていると、吉井がその聖の気配に気づいたのか、顔を振り向けた。
「どうしたの?」
「あ、珈琲をもってきたんですけど…」
視線をテーブルに走らせると吉井が意図を察し、テーブルの隅の書類を重ねてどけた。
「ありがとう。ここに置いてくれる」
聖を見上げてにっこり笑う。聖も頷いて微笑み返した。
「悪いね。せっかくの休日に押し掛けて。もう、終わるから」
聖はあわてて首を横に振った。仕事の方が重要だ。昨夜も神栖は明け方近くまで、資料作成に追われていた。だから、自分のことは気にしないでほしかった。
「ああ。駄目だ」
前髪を乱暴にかき上げて、唐突に神栖が書類から顔を上げた。声に驚いてそちらを見た聖は瞳がかっちりと合ってしまった。
「どうした?」
怪訝そうに首を傾げて、神栖が問う。聖が近くに立っていたのが不可解だったのだろう。
「おいおい、輝。聞いてなかったのか。高郡くんが、珈琲を持ってきてくれたのに」
横で呆れたように吉井が首を振る。
「そうか」
まっすぐに聖を見つめて、手を伸ばす神栖にどぎまぎしながら、聖はカップを手渡した。
「ありがとう」
珈琲を受けとながら、神栖が微笑んだ。さっきのクールな感じから一転、甘く微笑まれて、聖は気恥ずかしくて視線を横へ流した。もしかしたら頬が赤いかもしれない。
「ちょうどいい。休憩にするぞ、武流。なんか煮詰ってきたから、続けても無駄だ」
手に持っていた書類をばさりとテーブルに放って、偉そうに神栖は宣言した。
「おいおい、輝。やらないと午前中で終わらないからな」
苦笑いで答える武流を軽く睨んで、神栖は珈琲に口をつけた。
「いいな。うまい」
神栖が喜んでくれたのが嬉しくて、つい神栖を見ると、瞳があう。視線が離せなくなって、聖は神栖と一瞬見つめ合い、また、微笑まれてしまった。頬が熱い。
「よし、食事の支度をしよう。昼食、ここで食べて行くだろう、武流」
神栖が顔だけ吉井の方に向ける。吉井はテーブルの上の書類を束ねていた。次に見せるものを準備していたのだが、神栖の言葉にぎょっとする。
「あのな、人の話を聞けよ。午前中で終わらせようって提案したつもりなんだがな、俺は」
吉井は大きく息をついた。見つめ合う二人から、さっさと終わらせたいと思ったのだが、神栖は吉井が気を利かせてもなんだかさっくり無視をする。
「いいじゃないか、たまには。聖も気にしないし。食事がすんだら、ここの部分をちゃっちゃっと終わらせるから」
神栖はちっとも悪びれない。吉井としては、休日に恋人と過ごしているところを邪魔していてかなり悪いと思っているというのに。
結局、この青年は輝とつきあうことになったんだなと、吉井は半年前に会社にバイトに来ていたころを懐かしく思い出す。あの時は、輝ですら手を出しあぐねている感じだったが。
しかし、これでもうバイトにも社員としても来てもらえないと少し寂しくも思う。社長の想い人では、いろいろ障害が大きすぎて雇えない。これだけ優秀な人材を確保できないのはかなり残念だ。
「終わらせるなら、今、終わらせろ」
もう一度、大きくため息をついて、言っても無駄だと思いつつ口にせずにいられない吉井だった。
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