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煉獄の恋

第5章 迎え(1)

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ざわざわと人の声が反響する大学の講義室の席で、聖は机に乗せた鞄にノートとテキストをしまった。つい5分ほど前に講義が終わったところだ。学生たちは三々五々、次の講義に向かったり帰ったりしていたが、今日の講義はこれが最後の聖は、席についたまま携帯を鞄から引っ張り出す。着信していたメールを眺めて、ため息をつき、それから返事を返した。
「よう」
送信ボタンを押した途端に、前に立った人影に、聖は顔を上げた。
「岸」
声をかけてきたのは、同じ学科の友人、岸 宗介(きし そうすけ)だ。長めの髪を後ろで縛り、二重の目を眼鏡で隠した岸は、理知的でクールな容貌だ。とっつきにくさからいったら、自分を超すかもしれない。
「今日、バイトだろう。何時から?」
にっこり微笑んで、岸が問う。
「え……、ああ、6時からだけど」
「じゃあ、一緒にメシ食おうぜ」
聖はちらりと腕時計に目を走らせた。現在は午後3時だ。食事にはちょっと早いので、一度家に帰ろうかと思っていたところだった。
「俺も6時入りなんだ。今から店まで行って、そこで食事もとろう」
今のバイトは岸が紹介してくれたものだ。国家試験のせいでバイトが減り、収入減に悩んでいた聖を自分がしているバイト先で働かないかと誘ってくれた。
国家試験前は勉強時間が取られるので、夜のバイトは入れたくなかったが、試験が終わった今、そうも言っていられずに引き受けた。それに、早めに行けば夕食も振る舞ってくれる店で、苦学生としては正直かなりありがたい。
「ああ、いいよ」
岸の食事の誘いに返事をしながら、聖は小さくため息をついて、携帯電話をズボンのポケットに入れた。
メールは、神栖からで、今夜の予定をきく内容だった。それに、たった今、『ごめん。今日はバイト、18時―23時』と返したところだった。
神栖は、また忙しいようで、彼の家に泊ってから10日経つが、その間、顔も見れなかった。水曜日の夜などに神栖の体が空くわけないと思ってバイトを入れたのに、タイミングが悪いとしかいいようがない。
立ちあがって、コートを羽織り、鞄を持って岸と歩き出すと携帯に着信が入る。さすがに教室なので、マナーモードにしてあったから音はならないが、結構バイブ音が響くのでびっくりする。
教室の外で携帯を取り出し、確認する。
「電話?」
「いや、メール」
メールはまた神栖からで、『すぐ折り返し電話しろ』とあった。
すぐに聖はコートのポケットに携帯をしまう。
メールでのやりとりは今の大学生なら日常的なので誰も気にしない。それもすぐにしまってしまったから、岸もきっとただの屑メールか連絡事項くらいにしか思っていないだろう。
「岸、先に門のところで待ってて。トイレ寄ってくから」
「了解」
岸の返事を聞いて、聖は洗面所に向かって歩き出した。

「あ、俺だけど」
岸が歩き去るのを確認し、まわりに人がいないことを見てとると、聖は神栖に電話した。
ワンコールで出たので少し驚く。
『聖か?いまどこだ』
低いのに良く響く声。久しぶりに聴く声にどきっとする。
「大学。いま、授業が終わったところ」
『今日、バイトなのか。なんであんな遅くまで』
少しいらついているような神栖の声に、聖は戸惑う。
「だから先月バイトできなかった分、今取り返しているって、この間会った時説明した……」
『何のバイト?』
そんなこと聞いてどうするんだと聖は思った。
「飲食店の店員」
予想と違ったのか、なにか別のものを想像したのか、向こうで一瞬間があった。
『居酒屋?』
「違う。ちょっと高めのオシャレなバーって感じの店で、まだ見習いだから皿洗いってとこか」
『そうか。聖が接客業というのは想像してなかった。大丈夫なのか。終わる時間も遅いし』
心配そうな声に聖はいらいらした。終わる時間を遅くしているのは神栖のせいだ。会えないとわかっている日に一人で家にいたら、神栖のことばかり考えて辛いから。それもこの間、久しぶりに会って、どれだけ自分が神栖を必要としていて、一緒にいたいと願っているかわかってしまったから、会えない夜はできるだけ一人でいたくなかった。
「神栖さんは俺の保護者じゃないだろう。自分のことは自分で決める。夜の方がバイト料いいし、国家試験は終わったから、勉強の妨げにはならないし。とやかく言われることはないと思う」
声に険が含まれてしまう。守ってもらいたいわけじゃないと心の中でつけたす。
『心配する権利はあると思うが。まあ、仕方がないな』
神栖も聖がいろいろ干渉されたくないのはよくわかっているらしい。聖は、神栖との違いを思い知るのが嫌で、自分のことはあまり神栖に話さないし、大学でのことや友人の話などはしたことがない。
『今夜予定があいたから、食事でもと思ったんだ……』
メールを貰った時からそうじゃないかとは聖も思っていた。
「いくらなんでも、急すぎる。俺にだって生活があるんだから」
『確かに。じゃあ、終わったころ迎えに行く。場所はどこだ』
あまりにも意外な言葉に聖は、電話を持ちながら固まった。返答できずに黙ってしまう。
『何か問題でも?』
怪訝そうな声に我に返った。
「そんなことないけど。夜11時過ぎに迎えって、子供じゃないんだし……」
神栖さんはいるだけで人の注目を引くのだから、迎えなんかに来て貰ったら、目立ってしょうがない。
『恋人を迎えに行くのがおかしい?』
聖は言葉に窮した。
恋人?神栖さんと俺が……。
考えたこともなかった。
でも、確かに言われてみればそうなんだろう。好きだとも言われたし、そういうこともしている。
『聖』
甘く低い声で呼びかけられて、頬に朱が上る。
「いや、そうじゃないけど……あの……」
見えないはずなのに、聖の表情が想像できたのか、神栖がくすくす笑いだした。
「神栖さん!」
『悪い。あまりに聖が可愛いから』
さらに笑われ、あまりの言葉に恥ずかしい。
「そういうこと言うなって。とにかく迎えはいらない」
『なんで、都合悪いことがあるのか?』
「ないけど。友達もいるし。あとで、いろいろ訊かれたりするのも面倒だ。神栖さんは目立つんだからさ」
少しムッとして聖は言い返した。
『わかった。友達とはどこの駅で別れるんだ。そこまで行く』
珍しく引き下がらない神栖に聖はイライラする。
「なんでこだわるんだ。それなら終わったら俺がそっちに行くよ。それでいいだろう」
明日も朝から授業だし、夜中から会うのもなんだと思ったので、本当は今日はそっちに行く気はなかったのに、つい神栖のところに行くと言ってしまった。
『俺が迎えに行きたい。早く聖の顔見たいし。あんまり無碍なこと言っているとバイト先を調べて押し掛けるぞ』
電話だと言うのに聖は溜息をついた。
また子供のようなことを言っている。それでも神栖なら、あっという間に調べ上げて来てしまいそうだから怖い。
「わかった。表参道駅に23時30分。着いたら電話する」
『了解。楽しみにしている。後でな』
それで電話は切れた。
たかだか電話1本だというのに、聖はどっと疲れた。結局、自分が折れてしまった。いつも結局、神栖の言い分が通るのはどうかと思う。
どうして、いつも俺は神栖さんの要求を跳ねのけられないのだろう。
時計をちらりと見てヤバいと思う。思ったより時間を食ってしまった。
岸を待たせているんだった。
聖は門に向って走り出した。

「ごめん。本を返すのを忘れていたのを思い出して」
息せき切って駆けてきた聖は、息を整えながら岸に会うなり謝った。
門のそばの花壇の縁に座っていた岸は、読んでいた本から顔をあげた。
「走ってきたのか。メール読んだよ」
トイレに寄っているだけにしては時間がかかってしまって待たせたので、『図書館によって本だけ返してくる。ごめん』とメールを入れておいたのだ。
「ほんと寒いのにこんなところで待たして悪かった」
「気にするな。本読んでたから、長くは感じなかったよ」
岸は優しい顔で笑った。
「それでも、ごめん。行こうか」
聖の言葉に岸は立ちあがった。岸の目線は聖より少しだけ上だ。痩せていてひょろりとした感じなので大きく見えるが、聖と身長はあまり差がない。
「そういえばさ、今度、合コンに誘われてるんだけど、聖も行かないか」
歩き始めるとそんなことを訊かれた。
「いつ?」
「今度の金曜日」
「明後日か。俺、バイトだ」
あまり気乗りもしなかったので、断る口実があってよかったと思う。
「そうか……。お前を連れて来いって厳命されたんだけどな」
「なんで?」
「お前が来ると女子の出席率が違うんだと。ついでにレベルが上がるとかどうとか言ってた」
その言葉に聖は溜息をついた。
「結局、ダシな訳ね」
はははと笑われる。
「あのさ、今後もたぶん合コンは行かないと思うから、誘ってくれなくていいよ」
聖の言葉に岸は片眉を上げた。
「どういう意味?」
「知らない子と飲むのは気を使うし、べつに誰かと付き合いたいわけでもないし」
ふと考える様子をした岸は過去の合コンで聖が楽しそうにしていたことはないとでも思っているのだろう。
「じゃあ、学科とかゼミの飲み会ならいいのか」
『合コンは』と区別したことに気付いたのか、岸は疑わしそうに聖を見る。
「そうだな。それは誘ってもらえると嬉しい」
「嬉しかったのか!?」
岸は驚きの声を上げ、まじまじと聖に視線を向けた。その反応に、さすがに聖は苦笑を返す。確かに、飲み会では席の端のほうにいてほとんど話さず、他の奴らが馬鹿な話をしているのを聞いているのが常だ。
「飲み会、楽しんでたとは驚きだ。付き合いって割り切っていると思ってた」
「そうか、自分なりに楽しんでいるけど」
他人の話をきくのは別に嫌ではない。自分のことに干渉されなければ、他人といてもあまり苦ではないし、せっかく同じゼミや学科に属しているのだから、交流がたまにはあっても良いと思っている。
「そうだったのか。わかった。できるだけ、お前には合コンの話は振らないようにする」
「悪いな」
窓口になっている岸に余計な世話をかけることに聖は謝った。
そのまま、電車を乗り継いで、バイト先まで岸と連れ立っていく。
岸は雰囲気を察するのがうまく、聖に気兼ねさせないので、かなり一緒にいるのが気楽な相手だ。一番仲の良い友人かもしれない。
ふと、神栖と吉井が思い出されて、岸ともずっとあんな風な友達になれたらいいと聖は思った。
卒業しても分かり合える一番の友人に。
「あ、あのさ……」
将来の自分たちに思いを馳せていた聖を岸の遠慮がちな声が遮った。はっきりとものを言う岸にしては珍しいと聖は、ちらりと岸の顔を見上げた。
「あのさ。聖。お前、付き合っている人がいるのか」
「は?」
想像していなかった問いかけに、聖は瞬間的に横に顔を向けた。
「いや、合コンに誘うなって、さっき言っていたから。もう必要がないからって意味かと思ったんだが……」
付き合っている人と言われて神栖のことが頭に浮かび、心臓が跳ね上がった聖は、付け加えられた言葉にほっとする。
「さっきも言ったけどあまり気乗りしないだけ。彼女はいないよ」
この話題にはあまり触れて欲しくない。合コンを断ったのも別に神栖のことを考えたからではなく、正直、いままでも乗り気でなかったからだ。
しかし、確かに神栖がいるのだから、合コンに行く意味はないだろうし、行ったことがわかったら神栖が怒るのは目に見えている。
そういうところはすぐ子供になるからなあの人は。
溜息をつきたくなって、はたとそれを飲み込んだ。
「岸は?」
自分のことから話を外したくて聖はとっさに訊いていた。深い意味はなかったのに、岸は聖を見つめた。
「俺?いないよ。付き合っている人はいない」
言葉に微妙なニュアンスがある気がしたが、これ以上、この話題は危険だと判断し、聖は岸から視線を外す。
「そう、だったら次の合コン、良い子がいるといいな」
「そうだな」
なんだかあまり気のなさそうに岸は答えた。
沈黙が落ちる。
それが気づまりになりかけたころ、二人はバイト先に到着し、聖はほっと溜息をついた。
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