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煉獄の恋

第5章 迎え(2)

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1月末の夜中はさすがにかなり冷え込んで吐く息が白い。
岸と別れると、いつもの乗り換え電車に乗らずに、聖は地上に出て、携帯を取り出した。
ダイヤルするとワンコールで神栖が出る。
『聖か?』
「そう。いま、表参道駅の交差点に出た。どこに行けばいい?」
周りを見渡し聖は問う。この交差点が一番わかりやすいと思ったのだが、神栖の姿はない。
『そこだと車が停められない。原宿方面に少し歩いてくれ。車道が右手になる歩道の方を歩いてくれたら、そのあたりで拾うから』
「了解」
電話を切って、聖は原宿方面に歩き出す。
夜中ということもあって、そんなに交通量はないが、さすがに都心だけあってタクシーが頻繁に横を過ぎて行く。ライトが聖の背中を照らしては、通り過ぎていく。時折、吹く風が冷たくて、聖は小さく首をすくめた。
坂を下って歩いていると後ろからハザードランプのカチカチとした音が聞こえて、軽くクラクションを鳴らされた。
振りかえると見慣れたシルバーのコルベットが歩道に寄ってゆっくりと停車する。
「よう。お帰り」
窓が開き、神栖が左手を上げた。
右側の助手席に回り、聖は車に乗り込む。
「ただいま」
神栖を見て微笑むと、神栖が身を聖の方に乗り出し、軽く唇が聖の唇に触れた。そしてすぐに離れる。
かっと頬が熱を持って、聖は神栖を睨み付けた。こんな街の真ん中でキスするなんて、誰かに見られたらどうするんだと聖は瞳に咎めの意を込める。車内は暗いが時折、ヘッドランプの光が横切っていく。夜中だが、無人じゃないんだから、どうしたって誰かに気づかれそうだ。
「なんでこういうことするんだ」
「したいから」
前を向いてハンドルを握った神栖に身も蓋もないセリフを返されて、聖は鼻白んで、ぐっと唇を閉じた。車が走り出す。夜のしじまを車高の低い車はすべるように走っていく。
「明日は?」
運転しながら、何事もなかったように話を始める神栖に聖は視線を向けずに、かたくなに前を向いていた。
「朝一から授業」
あまりな神栖の子供っぽい態度に、聖はかなり気分を害していて、自然と声がとがってしまう。
「何時?」
それを全く意に介さないようにさらりと受け流されて、聖は軽い頭痛を感じた。こういうことに関しては、神栖はしたいようにする。それを悪いとは露も思わないらしい。
「8時半から」
「じゃあ、俺のところを8時に出れば間に合うな」
神栖はアクセルを踏み込んだ。ぐっと荷重がかかり、車のスピードが上がった。
「まだ泊るって言ってない」
あまりに勝手な言い分にさらに冷たく言葉を返した。まだ、どうするかなんて決めてなかった。だけど、怒っていることを無視されて、聖も素直になれない。
神栖はその態度にイラついたのか、ちらりと横目で聖を見遣った。視線に険が含まれているから、怒ったのかもしれない。
「こんな時間にやっと会えたのに帰るのか」
怒りを内包した声にも、聖は前を向いて唇を引き結んだ。なにもかも自分の都合で強引に決めるのは止めて欲しい。
横からあからさまな溜息が聞こえて、聖がを小さく膝に置いた拳を震わせると神栖が口をつぐんだ。そのまま無言で車を走らせる。
呆れたんだろうか。
だが、聖も折れる気はない。どうも神栖には聖が何が気に入らないのかわからないらしい。勝手だと何度も言っているのに。
車内の沈黙が重くて、聖は頬杖つきながら、窓の外へと視線を送った。
「あっ」
脇のウインドウにもフロントガラスにも水滴が付き始めたのが見えてとっさに声が出た。雨粒にしては、形がある。
「雪?」
そう言った途端に視界一面に白いものが増え、あたりに舞い降りる。見る見る間に白い破片が空から降り注ぐ。
「珍しいな。確かに寒かったが」
神栖の声にこたえるかのように、かなりの勢いで雪は降り始めた。舞い降りた白い雪がアスファルトに触れると一瞬にして溶けて、黒く濡れる。
「積もるかな」
「積もって欲しいのか?」
「逆、積もるといろいろ面倒だろう」
白から黒へと反転していく道路と雪を舞い散らさせている空を交互に見て、聖は困った顔をした。
「まあ、都心は雪に弱いからな」
神栖は少しアクセルを強めに踏む。積もってきたら車の移動が難しくなるからだろう。まだ道路に積もる気配はないが、道路脇の背の低い街路樹はうっすらと白い帽子をかぶり始めている。
「白銀の東京もなかなか綺麗だけどな」
普段と様相を変えるだろう景色を想像したのか、神栖が薄く微笑う。
「見てるだけならね。でも、明日は平日だし」
雪のせいで霧散した沈黙に代わって、軽口を叩きながらも、どこかにぎくしゃくとした空気が残っている気がする。無理をして来たのに、喧嘩していたら意味がないだろうと、聖は内心、ため息をついた。神栖の前だとなかなか素直になれない。離れていた時にはあんなに会いたかったのに。
「確かにな。車での移動は難しくなるか」
神栖がハンドルを切り、大通りを右折してすぐに、車はマンションの地下駐車場に滑り込み、所定の位置に停車した。
ドアを開けて外に出るなり、聖は寒さにぶるりと震える。コートを着ていても凍みるような寒さだ。吐く息が白く闇に溶ける。
「寒いな。はやく戻ろう」
神栖に促され、聖は足早にエレベーターに乗り込んだ。

神栖の家のリビングは暖房がきいていて温かかった。タイマーで温めておいてくれたらしい。ほっとして、聖はコートとマフラーを外す。室内が明るいためか、それとも空気が温かいからか、素直になれずに落ち込んでいた気持ちが少し軽くなった気がする。
「来週末の日曜日は空いているか?」
手渡されたコートとマフラーを受け取り、ハンガーにかけながら、ざっとスケジュールを頭の中で確認し、聖は何もなかったと思う。
「空いているけど」
「買い物にでも行かないか。たまには外で会うのもいいだろう」
確かに、神栖と夜の食事以外でどこかに出かけたことはなかった。二人で外で会うというのもなんだか不思議な感じがしたが、聖は頷いた。
「いいよ。楽しみにしている」
それに神栖は嬉しそうに微笑って、聖に近づくとふわりと抱き締めた。
「俺もだ」
温かい気持ちになって、聖は神栖の身に身体を寄せる。
「今日、泊っていくだろう」
聖は神栖を見上げた。確認するような言い方に、さっきのことを気にしているのだと思うとちょっと悪い気がする。先ほどは一方的な言い方にかちんときて言っただけなのだが、それが、ひどく子供じみたことのような気がした。
聖は神栖の瞳を捉えると首を縦に振る。
「聖」
その聖を強く神栖は抱き締めた。聖も神栖の背を抱きしめ返した。
窓の外を白い雪が音もなく舞っている。何もないところから突如現れては、次から次へと白い破片が落ちてくる。
ベッドで神栖の重みを感じながら、聖はガラスの向こうを舞い落ちる雪片をぼんやりと見つめる。
今夜はやけに静かだ。
雪の夜は雪が音を吸いこむと聞いたことがあるが、それは本当らしい。それとも交通量が少ないだけか、それでも今夜は街の音も響かない。
ただ、部屋の薄闇のなかで互いの熱い息遣いだけが唯一の音楽のようだ。触れられて熱が上がり、触れて相手も同じだと安堵する。
二人は熱を求めあい、互いを確認する。
少しでも離れたくないと身を寄せ、さらに熱を感じる。埋められているのは身体の中なのに、心まで充足するから不思議だ。
遠くで聖の携帯音がかすかに鳴った。
一瞬、聖はその音に気を取られ、神栖に強く抱き締められる。
「聖、ほっとけ」
その言葉に頷いて、ぐっと入れられた腰に、聖は身をしならせた。
「あぁ……」
音のない静かな夜に吐息が夜気を震わせ、降り積る雪のように二人の想いが部屋中に満ちては溶けた。
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