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煉獄の恋

第6章 すれ違いの金曜日(1)

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ステンドグラスの嵌った黒塗りの木製扉をそっと押す。準備中の札がぶらりんと揺れた。開店前に店に来たときは、表から入っていいことになっており、聖はいつも通り、するりと扉を通った。
入口を抜け、段差を降りると店のフロアだ。いくつかのテーブルがならび椅子が逆さまに乗せられている。さらに奥にカウンターが見えた。
聖は首からマフラーを外しながら、驚いた目をフロアの中央に向けた。
「岸……」
金曜日は合コンに行くと言っていたはずの岸がテーブルの間で箒を使っていた。すでに制服にも着替えているところをみるとかなり前に入ったようだ。聖は慌ててそちらに駆け寄った。
「なんで?今日、入りじゃないよな?合コンだっただろ?」
「よう、聖。お前が行かないっていうから俺もやめた」
床を掃くのを中断して、岸が聖に右手を上げた。
「だからなんで」
「というのは冗談。店長に泣きつかれたんだよ。金曜日の夜なのに、田畑さんが休みとってるから」
田畑はこの店のベテランのバーテンダーだ。酒をサーブするチームの要だといってもいい。
岸の説明では、体調を崩したとかで、田畑は今夜は休みをとっているらしい。確かに金曜の夜のバーでカクテルを作れる人間が減るのは困った事態だろう。岸は田畑さんにいろいろ教わっていて、シェーカーを振れるバイトだからあてにされたんだと思う。
「まあ、店長には世話になってるし、困った時はお互い様だしさ」
悪びれずに岸が微笑う。
「だから、今日はお前も酒出し手伝えよ」
バイトの日の浅い聖は、皿洗いや食器を下げるなどの裏方仕事が多かったが、暇な時をみつくろっては、簡単な酒の作り方も教わっていた。まだ、氷を割ったりビールを注いだりするくらいなものだが、覚えると結構楽しい。
聖は岸の言葉に深く頷いた。
「ほら、お前も着替えてこいよ。ついでに奥からモップも持って来て。掃除手伝ってくれるだろう?」
それにも頷きを返して、聖は慌ててスタッフルームへと向かった。
白シャツと黒のズボン、腰にギャルソンエプロン。それがこの店の制服だ。バーテンダーになれば、エプロンの代わりに、ベストと蝶ネクタイをつける。
聖は自分の格好を姿見で確認し、掃除ロッカーからモップとモップ用バケツを取り出すとフロアに戻った。
「カウンターからこの辺りまでは、掃いたから、そっちのモップ掛けよろしくな」
指で指された先を確認し、聖はモップを濡らして絞ると床掃除を始めた。

店が開店し、食事時を過ぎ出すと一気に客が増え、忙しさが増した。
席は満席で、聖も皿を下げてテーブルを拭いたり、洗い場に立ったりと仕事に追われ、目が回るような忙しさだ。21時ごろ、一回休憩に入れと店長に言われて、スタッフルームで椅子に座ったら足が棒のようだった。
軽くマッサージして、何度か屈伸運動をする。血が通い始めると少し楽になった。軽くストレッチをしてこわばった身体をほぐしてから、聖はロッカーの自分の鞄から携帯を取り出す。このところ、すっかり携帯を確認するのが癖になっている。以前はあまり見もせずに、ほったらかしだったのに。
携帯を開くとメールの着信が点滅していた。差出人は神栖だ。高鳴る鼓動に、メールを開き、文面を見るなり、聖は我知らず肩を落とした。
『ごめん。仕事が入った。また、連絡する』
短い一文だった。
今夜は会えると言っていたのにと、聖は落胆に、再度大きく息をつく。
雪の夜が明けた朝、朝食をとりながら、神栖は聖の予定を訊いた。
「金曜もバイトだ。時間も同じ。18時から23時くらい」
手にしていたパンを聖はちぎる。
「じゃあ、また迎えに行く。そのままうちに泊まれよ」
嬉しそうに微笑む神栖を眩しげに聖は見つめた。
「仕事は?」
「金曜の夜だろう?大丈夫だ。残念ながら、次の日は出張で朝出なんだが、一晩は一緒にいられる。なんなら、土曜の朝は駅まで一緒に行こう。いいだろう?」
目玉焼きにフォークを刺しながら、お伺いをたてる神栖に聖は笑う。気恥ずかしいのになんだか嬉しかった。
『バイトが終わったら、またこの間のところで待ってろ。迎えに行くから』
別れ際にした約束が耳の底で甦る。
聖はぎゅっと携帯電話を握りしめた。
忙しそうだったから仕方がない。男にとって仕事は重要で、どうしたって優先順位は仕事が上だ。聖だってそうだし、理解はしている。だいたい、過去、勉強と私とどっちが大事と、つきあってた彼女に言われて、ばかばかしいと思ったこともある。
あれだけの地位のある人だから、突然の仕事が入ることだってあるだろう。この間だって、急遽、休み返上だったんだし。
頭の中でぐるぐると、聖は自分で自分を諭す。それがなんだか無理に言い聞かせているようで、聖は苦く嗤った。
ロッカーに手の中の携帯電話を戻す。ガンと硬い音がして、嘘つきとこぼしそうになる唇をかみしめた。
会えないなら最初から切り捨てておいてほしい。
ばんとロッカーの扉を閉めて、聖は額をロッカーにつけた。
期待すると駄目だったときが辛い。だからできるだけ考えない。ずっとそうしてきた。
期待は残酷だ。えぐられるような痛みが胸に広がる。
しっかりしろと自分を鼓舞した。まだ仕事中で、今夜はとても忙しい。
昨日の朝にも顔を合わせた。大丈夫、2か月会えなかったときも耐えられただろう。
何度も胸の中で言葉を繰り返す。大丈夫、まだ耐えられると。
「あれ、聖。休憩?」
背からかけられた声にびくっと体を震わせて、聖は振り返った。岸が部屋に入ってきて、スタッフルームにおかれたパイプ椅子にどさりと座った。
「今日は忙しいな。田畑さんいないと辛いわ」
首を回して、肩を手でもんでいる。
「どうした。顔色悪いぞ」
聖の顔を見上げながら、岸が心配げな顔した。
「そんなことない。今夜は忙しいから、そのせいだろう。俺もここでストレッチしてたし」
ぐっと天井に腕を伸ばしてそう答えると、岸も聖に倣って座ったまま背を反るまで伸ばす。
「立ちっぱなしだからな」
椅子に座りながら、岸は背筋を伸ばし、そのまま体を横に倒す。聖も頭の上で両手を組み合わせると上にぐっと伸びた。身体がきしむような気がして、それが心の痛みと連動しているようで、聖は天井を仰いだ。
「そういや、合コンはどうなったかな」
しばらく静かにストレッチをしていた岸がのんびりと言う。
「断っといて心配しているのか」
その言葉に脱力して、聖はロッカーに背を預けて岸を呆れた目で見た。視線が合うと、岸は意地悪そうに、にやっと笑った。
「おまえ、王子系なんだってさ」
「は?」
唐突な言葉に間抜けな応答をしてしまう。
「高嶺の花で誰にもなびかないとことか、クールなとことかがいいんだとか」
どこがだ。
少し前までは冷静でどこか冷めた人間だと自分のことを思っていた。なのに、今、この胸の内ある昏い感情はなんだろう。神栖のことを想うだけで身が焼けるように熱くなり、彼のすべてを自分のものにしていしまいたいと願うこの強い独占欲はなんだというのだろう。
岸の言葉と現実とのあまりの隔たりに聖はおかしくなった。自嘲気味に微笑んだ聖を見て、さらにあきれられたと思ったのか、岸はぐうっと上に伸びた。
「なんだかんだいって、聖はもてるからなぁ」
「あのな。お前がいつも一番人気で、おいしいとこもってくって言われてんだぞ」
「ばれてた?」
両腕を身体の左右に落として、悪びれず笑った岸がいつも通りで、物思いに囚われそうになった感情が霧散する。岸のこの明るさに救われていると聖は思う。
「さあて」
再度、ぐっと身体を伸ばし、反動をつけると岸が立ち上がる。
「ピークもそろそろ終わりだし、もう少し頑張りますか」
あっちこっちを伸ばしながら岸が明るく答えた。
それに聖も笑い返す。
大丈夫だ、笑っていられる。
心の中で岸に感謝しながら、聖は表面上はおどけて肩を竦めて見せた。
「ま、仕事だしな」
「そういうこと」
二人は顔を見合わせて笑った。
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