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煉獄の恋

第6章 すれ違いの金曜日(3)

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「ほれ指貸してみな」
聖の部屋、ダイニングテーブルの椅子に座った聖に手を差し伸べると、聖は怪我をした左のひとさし指を差し出した。岸は聖の包帯を解いて傷を確認する。真っ白な指に一本線が走っている。縫うほどではなさそうだが、けっこうざっくり切れていて、見ているだけで痛そうだった。
「血は止まったようだな」
目の高さに手を持ち上げて、岸は怪我をした指を全ての角度から確認する。
きつく縛った包帯が功を奏したんだろう。止血はうまくいっているようで指全体が白く、血は滲んでもこなかったが、少ししびれがあるのか、指先がかすかに震えていた。
「痛いか?」
眉を寄せている聖に問うと、小さくうなずく。刃物の切り傷は、あとまで痛みが残る。
「傷が深めだから、濡らすと痛むと思う。できるだけ水は避けて。今度は、さっきよりは緩めに包帯を巻くからまた血が出てくるようなら言えよ」
消毒して、ガーゼを換えて、綺麗に包帯を巻きなおす。
「ほんとに手際がいいな」
「人にはいろいろ特技があるのさ」
にっと笑いながら、包帯をきちっと巻いて、岸は手を離す。しげしげと巻かれた包帯を見ている聖がなんだか可愛いと思った。
普段より無防備な聖に、少しの戸惑いと大きな嬉しさを感じていた。
「着替えてこいよ。その指で脱げないなら手伝ってもいいけど」
それでも、微妙にいつもと異なる空気をどうにかしたくて、わざと軽口をたたく。
「そんな訳ないだろう」
少し怒ったような顔をして、聖は、それでも立ち上がって、隣の部屋に消えた。
一人残された岸は、聖が座っていた部屋の隅に置かれたダイニングテーブルの椅子に座り直し、テーブルで頬杖つきながら、部屋を見渡す。
リビングダイニングと隣の寝室兼勉強部屋の2部屋が聖の全てのようだ。
黒と白に統一されたインテリアに、きちんと片づけられた部屋。聖の性格を如実に表しているようで、岸は少し笑った。
携帯電話が震える音がした。ちらりとそちらに目をやると、テーブル脇に置かれた聖の鞄の中のようだ。一度途切れても、また、バイブ音がする。
出てやろうかと一瞬思う。
しかし、そんなことすれば聖との関係が崩れるのがよくわかっているから、岸は思うだけにとどめた。
「やっと友人の椅子を手に入れたんだ……」
苦笑とともに呟きが漏れた。
そう、やっとここまで来た。入学式であいつを見た時から……。
聖は、入学式で新入生挨拶をやったこともあって、最優秀の学生として入学当初から注目を集めていた。同じ学科で知らない人間はいないと言ってもいい。しかし、知っているからといっても友達になれるとは限らない。大学に入って以来、岸は、ずっと聖と話す機会をうかがっていた。同期の中でも有名人なのに誰ともつるまず、かといって誰にでも愛想のいい聖。岸はそんな聖にやたらと興味があった。だが、話しかけてくる誰とも無難に会話を交わしているのに、特別な友人は一人としていない聖に、ただ、近づいてもダメだと感じた。それでは、その他大勢の一人で終わってしまう。
2年間思い続けてもやってこなかったチャンスは、やっと今年になって巡ってきた。同じ国家試験対策のセミナーに通っているという共通点を得たのだ。そのチャンスをものにして友達になった。
付き合ってみれば聖は頭が良く、気さくでいい奴なのに、自分の周りに壁を作って誰も中にいれさせない。自尊心が高くて、自分に甘えを許さない聖の懐に入るのは容易ではなかった。それでも、他のやつらよりは聖に信頼されていたと岸は自負していた。大学でも、セミナーでも、常に隣にいるのは自分だったし、聖の表情がほかの奴といるときと違うと思ったことも一度や二度ではなかったからだ。
だが、秋の始まりを過ぎたころから聖は少し変わった。クールで見栄えのいいだけの青年だった聖が時折ドキリとするくらい艶っぽく見えるようになったのだ。
表情も豊かになり、前より良く笑うようになった。あれだけわかりにくかった感情も、顔に表すようになってきた。そのせいか、聖の周りに集まる人の数も増えていた。
それはそれで聖にとってはよいことであったので、岸はいい傾向だと思っていた。ただ、何が原因だったんだろうと不思議に感じていた矢先、セミナーに車で送られてきた聖を見たのだ。
その運転席には岸も知っている男が乗っていた。夏に大学に講演に来た実業家の神栖だ。
聖に兄弟が姉しかいないのはすでに知っていたし、二人の仲はただの知り合いという感じには見えなかった。
そして、今夜の二人の様子。岸にはすっかりわかってしまった。
聖が指を怪我したときに神栖は一瞬立ち上がりかけ、聖の指を岸が口に含んだ瞬間、すごい顔で睨まれた。
あれはなかなかだったな。
神栖の表情を思いだして、岸はにやりと笑った。
スタッフルームに引っ込むまで、神栖の強い視線は、聖を追っていた。岸が肩越しに後ろを振り返ったら、いまいましげに睨まれた。怒りを含んだ視線だった。
だから、あのとき、笑ったのだ。聖の視界からあいつを隠して、少しは意趣返しになっただろうと思う。
先に側にいたのは俺の方だったんだ。
岸には横取りされたという感じが消えない。聖とどうこうとまで考えていたわけではないが、ずっと側にいて一番の味方であるのは自分だと思っていた。それを後から来たやつに攫われた。なんとか手元に取り戻したいと思っても不思議はない。
これがどんな思いかは岸にもよくはわからないが、それでも、別の奴が聖の一番であるのは気に入らないのだから、何とかしたい。隣に並ぶのは自分でありたい。
聖を泣かせる奴に絶対、聖は渡さない。
岸は我知らず昏い笑みを浮かべた。

時刻は日付が変わっていて、あとは寝るだけだからと、聖は、ジャージのパジャマに着替えた。リビングに戻ると、テーブルで頬杖ついていた岸が顔を上げた。特に視線を合わせずに、聖はキッチンに足を向けた。
「岸、なんか飲む?お茶でいい?」
やかんを持ち上げ、水を入れ始めると、岸がキッチンへとやってきて、やかんをとりあげられた。
「ちょっ……」
睨み付けても、岸はどこ吹く風で、やかんに水を入れる。
「俺がやるよ。これで、さらに火傷なんてされたら困るからな」
「そこまで俺、間抜けでないと思う」
いくら指を怪我しているからといって、お茶くらい入れられると上目で睨んでみても岸は面白そうに笑うだけで、やかんは返してくれず、さっさとコンロに置くと火にかけた。蒼い焔がやかんの底を青く照らす。
二人で言葉もなくそれを見つめていた。やかんの中の水が、しゅわしゅわと音をたてはじめたころ、岸が思い出したように、こちらに顔を向けた。
「そういえば、携帯が鳴ってたぞ」
なんでもない言葉なのに、雷鳴のように心に響いて、ビクリと聖は背を震わせ、拳を握りしめた。神栖だろうと思って、胸の痛みがぶり返し、聖はうつむいて唇を噛んだ。
電話なんて、何を話したらいいのかもわからない。ただただ、詰ってしまいそうだ。
どうしてと。彼女がいるなら、そういってくれればよかったのにと。
「聖、お茶の葉は?それとも珈琲にするか」
「え、ああ」
岸の声に我に返って顔を上げると岸が棚を見上げながら、茶葉を探していた。聖は背伸びすると上の棚から茶葉を出して岸に渡す。
「寒かったからな。熱いお茶がいいよな」
岸が急須に茶葉を入れてくれたので、聖は茶碗を出して並べた。
そこに再度、携帯のバイブ音がかすかに響いた。聖はひくんと肩を震わせ、テーブル脇におきざりの鞄を振りかえる。岸は気にならなかったのか、気付かなかったのか、そちらを見もせずに、お茶の用意を続けていた。
聖は鳴り続ける携帯に耐えきれなくなり、鞄に駆け寄ると電話を出し、着信を見て泣き出したくなった。神栖だ。
何度も聖の指は受信ボタンの上を行き来し、どうしようと何度も逡巡して、それでも通話ボタンを押した。
『聖』
ほっとしたような、噛みつくような神栖の声音が耳に響いて、聖は黙ったまま、携帯を握る手に力を込めた。
『おい、聖。今どこにいるんだ』
黙ったままの聖にしびれを切らしたのか、神栖の声が苛立たしげに荒ららいだ。
「……自分の部屋」
電話なんだから、答えを返さないとと、絞れるだけの気力を振り絞り、かすかな声で聖は答えた。
『やっぱり帰っていたのか。指は大丈夫か』
怪我をしたのを見られていたのかと聖は思い、溜息をつきたくなった。訊きたいことはたくさんある。しかし、何を訊いていいかわからない。怒っていいのかも泣いていいのかも。ただ胸が痛い。
『いまからそっちに……』
神栖が言った瞬間、
「聖、お茶入ったけど」
キッチンから岸が間延びした声で聖を呼んだ。聖は岸を振りかえる。
『誰だ?だれかそこにいるのか』
電話からの神栖の声が怪訝そうな声になる。岸の声が聞こえたらしい。
「友達。バイトで一緒の」
電話口で舌打ちする音が聞こえた。
『なんでそいつと一緒にいるんだ。二人きりなのか』
「友達だ。大学の。誰も彼もあんたみたいじゃないんだ」
岸といることを咎められて、聖は哀しみが怒りに変わっていくのを感じていた。文句を言われる筋合いはない。岸は友達で、べつにやましいことなど何もない。
だいたい、やましいといえば、神栖の方だろう。仕事だと偽って、綺麗な女性と一緒にデートしていた。信じていたのに。
心の中がとげとげして、暗くもやもやした。
『聖……。とにかく会って話をしよう。迎えに行くから……』
「来なくていい。会いたくない」
自分でもびっくりするような冷たい声音だった。そして本音でもあった。
会いたくない。
これ以上、感情をかきまわされるのはごめんだ。この胸の痛みも口に広がる苦い想いも前のように心を鎧って全て排除してしまいたい。
何か言いかけた神栖の答えを訊かずに聖は電話を切った。そのまま電源を強く握ってスイッチも切る。
しばらく携帯を指が白くなるほど握りしめていた。
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