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煉獄の恋

第6章 すれ違いの金曜日(4)

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「くそっ」
ソファに浅く座ったまま、切られた電話を操作し、再度同じ番号にかける。コール1回でつながるが、聞こえてくるのは機械のアナウンスだけだ。
「電源切りやがった」
携帯を座っていたソファに放りだし、神栖はローテーブルの上の煙草を取った。
口に咥え、いらいらと火をつけ、煙を大きく吐き出す。紫煙が広がり、闇に溶ける。
このまま聖の部屋に押し掛けて行って攫ってこようか。
思う端から、バカな考えを押し殺す。
かたくなな態度の聖を友達がいる前で、攫ってくるわけにもいかない。そんなことをすれば事態をさらに悪化させるだろうことは、頭に血が上っている神栖でさえも容易に予想できた。
聖は神栖と付き合いがあることすら、隠しておきたいようだった。自分のことをとやかく言われるのを嫌う性格だから、それも仕方がないのかもしれない。
それでも一緒にいるのがあのバイト先でみた男だと思うだけで、腸をねじ切られるような思いがする。
あのバカ、周りが自分をどう見ているかなんて全く気にしてないに違いない。自分がその手の人間にとってどれだけ魅力的かということがまるで分かっていない。
誰もが俺のようだと思うなと聖は言ったが、あいつは駄目だ。
イライラと煙草を一度、灰皿で揉み消す。だが、苛立ちはおさまらずに、また新しいのに手を伸ばし、咥えると火をつけた。
深く吸えば、すっと頭が冷える気がするが、実際は苛立ちが増す一方だった。
脳裏に聖の指をくわえた男の姿がよぎって、神栖は奥歯を噛みしめ唸った。
聖の指を口に含んで、神栖を見つめたあの男の瞳の勝ち誇った様に、腹の底から怒りがこみ上げる。
何という最悪の偶然だろう。商談がうまくいったお祝いにと接待していた取引相手にもう一軒と誘われ、仕方がないこれも仕事だと割り切った。最近、雑誌で取り上げられているお店があるからそこにしましょうと言われて行った店が聖のバイト先だったとは。
あんなに驚いたことは、過去に一度もないかもしれない。聖を見つめながら、しばらく思考が停止したほどだ。
聖も驚愕に目を見開いていたが、思考が動き始めた途端、瞳がまるでガラス細工のように冷やかに変わり、何もかも拒絶されていた。
あの場では、当然、話もできなかった。聖も自分も仕事中であることを考えれば当然のふるまいだが、知り合いであることすら隠そうとした聖の態度に苛立ちが募り、あの男が聖を自分のもののように扱うことは不愉快の極みだった。
まだ、あの男も気づいていないが、あの瞳の中に聖に対する特別な思いが揺れていた。
再度、煙草をくわえ、ソファの背もたれに背を預けて天井を仰ぐ。目の前をゆらゆらと煙草の先から煙が上っていくのをぼんやりと眺めた。
あんな奴と二人でいさせたくはないが、聖の部屋に押しかけて行くのは何の解決にもならない。
『会いたくない』
耳の底に聖の温度の低い声がよみがえって、神栖は背筋を震わせた。電話越しに寄越された拒絶は思いのほか、神栖を傷つけていた。
「誤解したんだよな」
呟きは白々しく響いた。
吉井と3人だったなら、聖がここまで頑なな態度をとることはなかったかもしれない。店に入った時点でも、驚いた顔をしながらも知らない他人のような顔をすることはなかった。しかし、吉井は別件で仕事が入り、神栖に接待を任せてそちらに行ってしまったのだ。
確かに、聖が誤解しても仕方のない状態だった。正装した男女が、二人で洒落たバーで酒を飲むのが仕事だとはまだ学生である聖には想像できなかっただろう。
接待が決まった時点で仕事だとメールしておいたが、嘘をつかれたと思っただろうことは、彼の態度からも明らかだ。
やたらとプライドの高い聖のことだから、約束をたがえて、ほかの人間と遊んでいたんだと、自分をないがしろにしたんだと怒っているのだろう。
一晩たてば、聖の頭も冷えると思うが、明日の朝から、関西に出張に出なければならない。
本当なら今頃、この腕に聖を抱いているはずだったのに。
苦い思いに煙草のフィルターをかみしめる。
迎えに行って、一晩、一緒にいようと約束したのはわずか、昨日の朝のことだ。
吸われないまま灰になった煙草の先がほろりと崩れて、神栖は身を起こすと煙草を乱暴にもみ消し、そのままがっくりとうなだれた。
聖を失うかも知れない恐れと、あんな男と一緒にいる聖への堪えられない怒りと、聖の心を傷つけただろう哀しみがないまぜになって、さしもの自信過剰な神栖もどうしていいかわからない。
どうしたら自分にとってただ一人が聖なのだと、他には変えられないのだと聖にわからせることができるのか。
胸を開いてこの想いを言葉にできないこの熱い感情を見せることができたなら信じてもらえるのなら、今すぐにでもこの胸をかっさばいてもいいと神栖は思う。
そして、自分もお前にとってのただひとりでありたいと願う。
この年まで出会ったことのない狂おしい恋に囚われている自分を自嘲しながら、神栖はそのきつい瞳を閉じた。


湯気が鼻先を掠め、聖は我に返った。
いつのまにか、ダイニングテーブルの椅子に腰を下ろしていて、目の前に湯呑を置かれてたらしいが、聖は電話を切ってからのことを何も覚えていなかった。
強張った右手をゆっくりと上げると携帯を握ったままになっていて、聖は反対の手で指をはがすように右手を開く。ずいぶん力を込めていたようで、指は硬く痛みすら感じ、聖は眉間に皺を寄せる
「お茶、冷めるよ」
前の席で自分の分の湯呑を口に運んでいる岸がぽつんと呟いた。
「あ、ありがとう」
携帯をテーブルに放るように置き、湯呑を持ち上げる。
「熱いから気をつけろよ」
口をつける前に岸に注意された。ゆっくり啜る。喉をかなり熱い液体が通って行き、体が温まる気がする。
「やっぱ相当気温が低いんだな。お茶がうまい」
ふうふう、冷ましながらお茶を口に含み岸は言う。
「そうだな。暖房入れるの忘れてた」
壁につけたラックに入っているエアコンのコントローラーに近寄ると聖は暖房のスイッチを入れた。
「俺、寒いの苦手」
岸ができるだけエアコンの吹き出し口の側に移動する。
確かに岸はいつも暖房がじかに当たる席にいることを聖は思い出す。なんだか、とてもいつもの大学の風景のようで、おかしくて少し笑った。
笑えているなら大丈夫。俺は動揺もしていない。
言い聞かせている時点でおかしいのだが、それすら今の聖にはわからない。
彼女だよな……。
ふと、神栖の横で笑っていた女性を思い出し、聖は心の中で誰ともなく呟く。落ちるように自分の中の思考へと沈んでいく。
彼女がいたんだ。そうだよ、俺は同性だし、彼女ではない。あの人が神栖さんの本命の人。綺麗で仕事もできそうだった。あの人に会えることになったから、俺との約束はなくなったんだ。
やっぱり物珍しい愛人の一人だったのだろう。だから、いつもたまにしか会えない。神栖の「好きだ」という言葉を信じていた自分が滑稽で、聖は口元を歪めた。
「聖、俺、泊っていい?」
物思いを岸の言葉が遮った。はっと顔を上げると岸は困ったように口端を歪めていた。
「なんで?」
「終電逃した」
岸のセリフに時計を見ると確かに午前1時を過ぎており、今から駅に向かったのでは終電に間に合わない。
「悪い。つきあわせたから」
深く沈み込みそうになった思考から現実に立ち返り、聖が謝罪を口にすると、岸は何でもないように表情を和らげた。
「いいよ。それより、どこで寝ていい?寒くなきゃなんでもいいけど」
「ベッド使えよ」
聖が向こうの部屋を指さす。岸はつかつかと扉に向かって歩いていき、それを開く。
「セミダブルか。これじゃ、ちょっと狭いな」
「狭くはないだろう、別にお前太ってないし」
「二人だと狭いって言ったんだよ」
そのセリフに聖は一瞬固まった。確かにここで大の男が二人で寝たら、かなりくっついていないといけなくなるだろう。
「俺がベッド借りたら、お前はどうすんの」
「床でもいいしと思ったんだけど」
「布団持ってる?」
それに首を横に振る。この部屋に誰か来ることは想定していなかったので、そんなものは置いていない。
岸はリビングに戻ってきて、床を見わたした。
「なんだ、ホットカーペットだ。掛け布団だけ、バスタオルでもいいや、貸してくれたらここで寝る」
岸はスイッチを入れるとさっさと絨毯の上に横になった。
「俺にはかまわなくていいから、お前も寝ろよ」
寝っ転がりながら、岸は聖に言う。
しかし、聖はこんなところに友人を転がして、自分だけのうのうとベッドで寝られるような性格はしていない。
大きくため息をつくとベッドルームに行き、いつも使っている掛け布団一式を持ってくる。
ばさりと岸にかけてやり、自分もその横に転がって、同じ掛布団にもぐりこむ。これでも狭いが、ベッドと違って落ちる心配だけはないだろう。
「なにやってんの?」
温かくなり始めたカーペットに頬をつけながら、自分の横に転がった聖に視線を向けて岸が訊く。
「俺もここで一緒に寝る。まったく、一応、客なんだからこんなところで一人で寝かせられないだろう」
「一応ね」
岸が、楽しそうにくすくす笑う。面白くなったらしい岸は横に寝転がった聖に腕を伸ばしてくる。あっと思う間に抱き寄せられた。
「おい、岸」
「あったかい」
胸に抱き込まれて、頭の上から岸のほっとした声が聞こえた。
「あのな」
寒がりもここまで来ると異常だと聖は思ったが、岸があまりにも嬉しそうに言うので、黙ってさせたままにしておく。
「まったく、猫か」
コケおろしながらも岸がいてよかったと、一人でなくてよかったと、聖は心の隅でちらりと思った。深く自分の中の昏いところへ落ちて行かなくてすむ。
だんだん温かくなり、絶対に寝られないと思っていたのに、聖は眠りに引き込まれていく。
忘れよう、寝て起きたら全部。もう心が痛まないように。二度と誰かに思いを寄せることのないように……。
祈るように心で呟いた言葉は引きずり込まれるような睡魔に語尾が儚く消えた。


岸は聖を胸にそっと抱きながら、溜息をついた。聖はよほど疲れていたらしく、ふんわり抱きしめていると身体が温まったのか、そのまま腕の中で眠ってしまった。
「お前、無防備すぎ」
眠ってしまった聖を見ながら、岸は苦く笑う。そういう風に見られていないのは百も承知だが、ここまで意識されないとそれもどうかと岸は思い、その考えに唖然とする。
俺はどのスタンスが欲しいんだろう。聖の友人、恋人……?
聖に関しては同性などということは障害にならない気はしている。時々、匂い立つような色香を放つ聖に、同性では持ち得ない感情が沸き起こるのを岸はすでに自覚していた。
しかし、恋人など、きっと醒めてしまえばそれっきりだ。それより、ずっと親友という位置にいた方が聖の傍らにずっといられるだろう。
いつか聖が彼女を作って、家庭をもってもそれを穏やかに受け入れるだろうと思っていた。そして、いつまでも一番の理解者として側にいたいと。
まさか、聖が男と付き合っているなど想像の範囲外だった。それは、岸のいままで押し隠してきた欲望に火を付けずにいられない。
あんな奴に横取りされるくらいならいっそ。
岸は腕に抱いた聖の額にそっと口づける。甘い陶酔が身体を満たす。
初恋の中学生みたいだと岸は苦く嗤った。
このまま自分のものにしてしまったらどうなるだろう。あいつから聖を切り離し、俺だけのものに。
不意に浮かんできた昏い欲望に苦く笑って、だが、それでは聖は救えないと再度胸の奥底に沈めて、岸は聖を温める目的でだけ、壊れ物を扱うようにそっと抱き締めた。
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