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煉獄の恋

第7章 それぞれの恋(1)

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「おはよう」
月曜日の1時限目が終わると岸は聖を見つけて声を掛けた。大学に来ていることにほっとする。もしかしたら、しばらく現れないんじゃないかと思っていた。
「ああ、岸か。おはよう」
いつものように聖は穏やかに答える。しかし、今の聖を見ていつも通りだと思うものはきっと誰もいないに違いない。
やっぱり、一人にするんじゃなかった。
岸は激しい後悔に襲われる。
目が腫れているわけでも寝不足気味な顔なわけでもない。多分いつも通りに暮らしたのだろうが、岸を見つめる瞳に光がなく、そこにいるのは聖の姿をした人形のようだ。
一昨日の帰り際に聖が見せた無理やりな笑みを思い出す。あれも酷くつらそうで、できることなら慰めてやりたいと思ったが、その時の方がまだ人間味があった。
いまの聖の瞳には何も映っていない。
「聖……」
「何?」
おかしいとすら思っていない聖に、岸は悔しくて端正な顔をゆがめた。「ちょっと、来い」と言いながら、聖の腕を取り、引きずるようにトイレへと連れて行く。
「岸、なんだよ、いきなり」
聖は抵抗もせずについてきた。それすらいつもの聖ではありえないことだ。
「お前、自分の顔、鏡で見てみろよ」
聖にこんな顔をさせるあいつが憎いと一度顔を見ただけの男に激しい嫉妬を覚え、怒りで声が震える。
腕を乱暴に放して鏡の前に聖をたたせると、聖は不思議そうに鏡を見た。
「なにかついているのか」
ごっそり表情の抜け落ちた顔で、聖は自分の顔を見ている。それでも、何を言われているのかわからないのか首を傾げている。
「気がつかないのか。いまにも死にそうな顔しているのに」
口惜しくて、岸は聖の肩に手を掛けた。怒りと悔しさで岸は唇を歪めた。感情が高ぶりすぎて聖の肩を掴んでしまう。聖は岸と鏡の中の自分を交互に見て、やっぱりわからないという顔をした。
「いつもの俺だけど」
岸は衝動的に聖の肩を引き寄せて、ぎゅっと抱き締めた。
想いごと感情を封印したのか。
意思の力でそんなことができるのかと岸は背筋が寒くなる。そして、そこまで聖に想われた男に強い憎しみが湧いた。
選択を誤ったんだろうか。一昨日、聖を一人残して帰らず、弱みにつけこんででも自分のものにしてしまえばよかったのかもしれない。
抱きしめる腕に力を込める。
「岸、離せよ。痛い」
腕の中で聖が身じろぎし、抑揚のない声で言った。聖の態度が哀しくて、甘えてもらえないのが切なくて、岸はいやいやながらも手を離した。
「あ、すまん」
「どこから見てもいつもの俺だし、お前の勘違いだ」
抑揚のない言葉を残して、腕からすり抜けると聖は踵を返し、岸の脇を通り、化粧室を出ていった。
全然違う。こんな人形のような、生気が見えないなんてことはなかった。感情を見せていたはずだ。笑って、怒って。
「くそっ」
悔しくて岸は大きな声を出し、身体の横でぎゅっと拳を握った。腹を渦巻く怒りは自分に対してのものかそれとも心を殺した聖にだろうか。
やっぱり独りにはしておけない。これ以上、内に籠らせてはいけないと岸は慌ててトイレから飛び出した。
廊下の先に聖の背中が見えて、慌てて後を追う。やっとおいついて、横に並んで歩きながら、どうしたら聖と一緒にいられるかを考える。
「聖、今日はバイト?」
声をかけると聖がちらりとこちらに視線を流した。誰かを確認したらしい。
「ああ、今週はずっと入っている。金曜日、店長に迷惑かけたから、土曜日に謝って、その分、今週は毎日出ることにした」
「そうか」
再度、岸は一緒にいなかったことを悔いた。自分も店長に謝りの電話を入れたが、店長は聖がシフトを変えたとは一言も言っていなかったからだ。
「じゃあさ、今週は俺と一緒に夕食してよ」
いいながら、店長に電話して自分もバイトを入れてもらおうと思う。
「なんで」
「いいじゃん、ずっとバイトなら、バイト先で食べるだろう。一人より二人の方がいいと思うからさ」
岸の言葉に聖は答えず、顔を横むけて岸を見た。その瞳はガラス細工のようで、何を考えているかうかがい知れない。
「いいよ」
どうでもいいという言い方に岸は傷ついた。隣に誰がいてもいなくても関係ないと言われたように思えたから。一瞬、痛みに顔をしかめて、次の瞬間にはそれを押し隠す。
「約束だからな」
口端を上げて笑ってそう良い、聖の胸に指を突き付ける。それに、苦く笑って、小さく首を振ると聖は歩き出した。無言の拒絶にも岸はめげない。
「どこいくんだ」
「図書館。2時限目は授業ないから」
問えば答える律儀さに、岸は苦笑をこぼしながらも、聖の横を歩き続ける。
「お前まで、ついてくることない」
「俺も授業ないし、ちょっと借りたい本もあるし、付き合うよ。ついでに、昼飯も一緒しような」
怪訝そうな顔をした聖に、にっこりと岸は微笑み返して、岸はできるだけ聖のそばから離れないようにしようと心に決める。こんな人形のような聖を一人にはしておけない。誰かが側にいて、何か話しかけていたら、感情ごと殺してしまうわけにはいかないだろうから。
感情を揺さぶって、殻に閉じこもれないようにしてやりたい。
俺がお前を救ってやる。
岸は、何も言わずに歩く速度を上げた聖の後を追った。
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