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煉獄の恋

第7章 それぞれの恋(2)

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夕方の大学正門前には、出入りする学生がひきもきらない。正門正面から少し離れたところに停車したシボレーの車体に軽く身を預け、神栖は門を行き来する学生たちを眺めていた。
わずか、5年前には自分もこの中の一人だったはずだが、ひどく遠いことのような感じがする。学校というものは、卒業してしまうと急に敷居が高くなるのだと他人事のように思い、神栖は苦笑した。
手持ち無沙汰で、煙草を出そうとしてポケットに手を入れた途端、指先に触れた金属の感触にビクリと手が震え、逃げるようにポケットから手を出す。
神栖は小さく舌打ちした。
指に触れたのは、神栖の部屋の鍵だ。キーホルダーにつけて聖に贈ったものだった。
聖がもっているはずのこの鍵は、昨夜、郵便受けに入っていた。メモも手紙も同封されていない事務用の封筒におさめられていた鍵をてのひらに落とした時の冷たさを思い出す。
聖は本気だ。完全に俺から離れるつもりだ。
地面が揺れて世界が崩れるような思いがした。足もとに奈落が開き、失墜感で目が回る。我知らず、テーブルに手をついて身体を支えた。
この腕からあの温もりが消えてなくなるかと思っただけで、心が悲鳴を上げた。
哀しみと怒りが同時に湧いてきてどうにかなりそうだ。
あいつが、聖がいないとだめだ。
逃がさない、絶対に。
絶対にだ。
神栖は鍵を掌に食い込む程、握りしめた。
鍵に触れてしまったせいで、昨夜のことがフラッシュバックして神栖は奥歯を強く噛みしめた。痛みをこらえるかのように眉間に皺を寄せる。
胸に巣くう涙も出ない空虚な想いを持て余しながら、神栖は学生の波を眺める。
「聖……」
人波に聖の姿を認め、神栖は、ふらりと身を起こした。しかし、その動きがぴたりと止まる。聖の隣にバーで見た友人とやらが張り付いているのが見えたからだ。
聖は、その友人が話をするのに耳を傾けていて、儚くて消えそうな微笑みを浮かべて頷いている。それは、神栖の知らない聖だった。自分の前では決して見せないような表情で、聖が友人と歩いている。神栖は声を掛けられなかった。
俺はお前のことを何も知らないのかもしれない……。
いままで考えたこともなかったが、その事実が神栖の足をさらに縫い止めた。
聖も友人も門から離れたところに立つ神栖には気づかなかったようだ。そのまま、駅の方へと歩き去っていく。
呆然と神栖は聖が歩き去っていく背を見送るしかなかった。
口から紫煙を吐き出して、3日ほど前のことを思い出しながら、神栖は口元に苦笑を刻んだ。
緩やかに煙が天井へと立ち上っていく。
すっかり闇に沈んだ住宅街に停められた車の運転席で、神栖は上る煙を見つめる。
俺は何をやっているのだろうな。まるで、張り込みかストーカーのようだ。
もう、3日も聖が帰ってくるころを見計らってはマンション前に車を停めて、聖を待っていた。大学で声を掛けるのは難しそうだと家の前で待っているのだが、聖は連日、深夜まで帰宅せず、帰って来たと思えば、あの友人がまたもや一緒にいた。
聖にべったりの男は、マンションの入り口まで聖を送るとそのまま帰途につく。部屋に上がったりもしなければ、聖に何かをするわけでもない。
聖はその友人を友人として受け入れて、そいつの前では何故かいつものきつい眼は影をひそめて、ひっそりと儚げに見えた。
幾ら自分が相当、理性が飛んでいるとはいえ、こんな集合住宅の前で、あの男の前から聖を攫うことはできない。神栖はこんなところで、聖と揉める気もなかったし、このまま部屋まで押し掛けて、近隣中の騒ぎになるのもごめんだった。
それに、そんなことをすれば、ますます聖に逃げる口実を与えてしまう。
結局、神栖は聖と顔を合わせることもないまま、3日が過ぎた。
今日もすでに時計は23時を回っている。
煙草の煙を再度吐き出し、神栖は、遠くから歩いてくる人影に気づいた。
人影は、背の高い男性2人のものだ。
今日も、あいつと一緒なのか。
ぎりりと煙草を噛みしめた。
このまま車を発進させ、横付けして攫ってしまいたい欲求を必死に押さえる。手を伸ばせば届くところにいるのに、掴むことのできないもどかさが神栖を灼いた。
今夜も聖は一人で部屋に上がって行く。それを友人は最後まで見送っている。聖の部屋に明かりがつくまで、そこに佇み、部屋を見上げていた。
明かりがつくとほっとした顔で、その男は、ゆっくり駅に引き返していった。
なすすべもなく、こんなところでただ見ているだけとは、俺らしくもないと、自嘲の笑みを口端に上らせ、神栖は聖の部屋を見上げる。明かりが聖の在宅を示しているが、神栖は動けなかった。
今なら、聖は一人で部屋にいる。だが、扉を叩いても一切を拒絶した聖は開けてもくれないことがわかるからだ。
しばらく、ただ、聖の部屋の明かりを見つめていた。
「らしくないな……」
呟いて、神栖は車を発進させ、明かりに背をむけてその場を離れた。
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