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煉獄の恋

第7章 それぞれの恋(3)

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ダイニングテーブルについて、聖は目の前の珈琲カップを眺めていた。白い湯気がゆらゆらと立ち上って消えていくのをぼんやり追っている。
かつん。外廊下から聞こえた足音に、はっと、聖は部屋の扉に視線を流した。
一人でいると、ちょっとした物音にも身体が震える。
部屋の奥ではテレビの中で、訳知り顔のコメンテーターが政治が悪いと批判している。静かでもないのに、風が扉を駆け抜ける音がするだけで、視線がそちらに向いてしまう。
店で神栖を見てから5日。週が明けてから3日が経った。
全部を拒絶したのだから、もう神栖とは連絡をとることも会うこともない。
それなのに、聖は神栖が自分の前に現れるかもしれないと、今にも部屋の扉を開くのではないかと怯えていた。
「会いたくない。会えない」
椅子の上で膝を引き寄せ、顔を伏せた。
もしも、顔をあわせて、あの強い瞳で見つめられたら、自分がどうなるかがわからない。
必死の自制で感情を閉じ込めたけれども、神栖にとってみれば、どうということのない壁だろう。いとも簡単に聖が十数年閉じこもってきた心の殻を破壊してしまった人だから。
忘れよう、忘れようと思えば思うほど、神栖のことを想う。瞳をまっすぐに捉える強い視線、自分に触れた長い指、重ね合った身体の熱さがよみがえって、苦しい。
もう、二度と顔をあわせることもないだろう相手を思い出しては胸を痛めている自分は滑稽だ。全ての連絡手段を引きちぎるようにして絶ったのは聖だ。神栖にだって聖の別れるという意思は当然伝わっている。神栖にとってはただの暇つぶしだった聖が離れただけなのだから、二度と聖と会おうとすら思わないだろう。それなのに、神栖が来ると信じている自分がおかしい。
神栖さんはもう俺には会わない。ここには来ない。
それを願ったはずなのに、心が冷えるのは何故だろう。
必死に心の底におしこめた感情は、日常生活には支障をきたさないし、何かをしているときには浮上してこない。
しかし、一人になるとふとした瞬間に鮮やかにそれが浮き上がって、聖を傷つけた。
だからできるだけ一人でいたくない。それがわかってしまったのだろう。岸は、最近やたらと側にいたがる。まったく方向の違うここまで送ってくる始末だ。
それでも、聖はそれを嫌がるどころか岸の親切心にしっかり縋っている。
俺はこんなに弱かっただろうか。
聖は何度も自問した問いを再度考える。
神栖に会う前、全てが自己完結していたときには、自分が誰かを頼ったり、誰かの存在に心揺れたりすることなぞなかった。一人は気楽だったし、自分に踏み込んでくるものは鬱陶しかった。それなのに、今は、神栖の来訪に怯え、来ないとわかるとそれを哀しみ、岸に頼りっきりという始末。
大きくため息をついて、聖は首を左右に振った。
考えてはいけない。自分の心と向き合ったらいけないと、呪文のように繰り返す。
何もかも心の奥に押し込めて忘れてしまうんだ。
こうやって生活していけば、きっとこれに心が慣れて、神栖と会っても平静でいられる時が来るだろう。
忘れよう。全部。
忘れたくない。
会いたくない。
会いたい。
頭と心に巡るものがばらばらでおかしくなってしまいそうだ。
聖は、テーブルに放りだしてあった薬のシートから錠剤を2錠取り出し、キッチンへ向かうとグラスについだ水で服用する。
眠れないと医者に行ったら処方された睡眠導入剤だ。
眠れないのは嘘だ。身体はどこも悪くないのだから時間はかかってもちゃんと眠れる。こんなに酷い精神状態でもちゃんと眠れてお腹がすくのだから人間というのはたくましいと思ったくらいだ。
だが、眠ると必ず夢を見る。
神栖が笑って自分を抱きよせ、強く抱き締める。俺にはお前だけだと囁きながら、聖を優しく抱く夢。強く激しく、全ての理性を消し去るほどに。
願望だ。嫌な現実を忘れるために、心が願う光景を夢に映し出しているのだ。
一番見たくない幸せな神栖と自分の時間。ずっと夢に囚われていたいと願う自分が嫌いだ。起きた時に認識する現実に毎朝、心が引き裂かれていた。
だから夢も見ずに眠りたい。そうして全てを忘れてしまうのだ。
聖は薬が効き始めて眠くなる瞬間を待つ。今夜も何も考えずに起きたら朝になればいい。
椅子に戻ると再度膝を抱え、聖は膝に額をつけて目を閉じた。
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