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 ←第7章 それぞれの恋(3) →好きだって伝えたくて(2)
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「おまけ番外編ショート」
告白の向こうへ―クリスマスSS

好きだって伝えたくて(1)

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ざわざわと周りの人たちの話し声がまるで寄せては返す波のように聞こえる。その隙間を縫うように場内アナウンスが流れるが、それすらも耳を素通りしていく。
頭上や左右の壁に見える道案内の標識も会社の宣伝の看板も見事なまでに横文字で統一されて、ああ、異国に来たのだと思う。
霧森実生(きりもりみお)は、ぐるぐるとたくさんの荷物が回るベルトコンベアの脇に立って、自分の荷物が出てくるのを待っていた。
やわらかいネコっ毛をかきあげると年齢より幼い顔があらわになる。身長の割に小さな顔、まっすぐ通った鼻筋、少し肉厚な唇が愛嬌を醸し出す。長い睫毛に縁取られた双眼はきれいなアーモンド形だ。その瞳が何度か瞬いて、多くの荷物と一緒に回り始めた自分のブルーのスーツケースを認めた。早足で側により、それを持ち上げると、実生は出口にむかって歩き出した。
自然と足が速くなり、それに合わせて鼓動が高まる。
来てくれているだろうか。
自動扉を潜って、実生はきょろきょろと辺りを見回した。名前を書いた紙を掲げた人や、ツアーの旗を振る人が左右に並んでいる。人の壁をざっと見渡して、待ち人はそこにはいないようだと実生はその間を抜けた。
わくわくと胸が躍る。年末の連休と有給休暇も使って、実生は長い年末の休みを取得した。今年はカレンダーの配置もよく、16連休ほどの休みを確保できた。
早く顔が見たい。
人の列を抜けて、実生は周りを見渡す。空港なんてどこでも同じだと思っていたが、やはり外国の空港は雰囲気が違う。人が多く、なかなか目当ての人物が見つからずに焦った。
「実生」
呼びかけられて、はっと声の方に顔を向けて、実生は瞳を見開いた。
すらりとした均整のとれた肢体。面長の顔を縁取る長めの髪は襟足を覆っていて、目にかかる前髪も記憶より長い。整った容貌の中、切れ長の瞳が今は喜色にあふれていた。
人目を引く男の容貌に、実生は声もなく見惚れた。
3か月半、会いたいと強く願っていた相手。顔をあわせたら、「久しぶり、元気だった?」と訊いて、それから、これからのことを話してと、何度シミュレートしたのに、その姿を目に映しただけで頭が真っ白になってしまった。
「実生」
つかつかと目の前まで歩み寄ってきた男は、心なしか眉間に皺を寄せ、何度も実生の名を呼ぶ。
「実生」
目の前で手を振られて、実生ははっと我に返った。
「律人……」
「大丈夫か?時差ボケ?長いフライトだったから疲れた?」
心配そうに顔を覗き込み、律人は実生の鼻に自分の鼻をこつんと当てた。
あまりの距離の近さと見惚れていたことが気まずくて、実生は後ろにのけぞった。
あ、やばい。
急に動いたせいか、驚き過ぎたためか、実生はバランスを崩した。足が前に滑る。
「おっと、危ない」
ふらついた実生の腰を律人は腕を伸ばして支え、ついでとばかりに抱き寄せる。
「実生。会いたかった」
ぎゅっと抱きしめられて、律人の胸に頬をあてて、実生は大きく息を吸った。柑橘系のコロンの香りが鼻をくすぐる。
律人の香りだ。夢じゃない。本物の律人だ。
頬に触れる温かさに、実生はずっと離れ離れで会いたくて仕方のなかった律人に出会えたことを実感する。
「律人」
名を呟き、体温を感じながら、うっとりと再会の余韻に浸っていた。律人がそっと背を撫でてくれるのにもほっと安堵を感じた。やっとやっと腕にとらえた愛しい温もり。
「実生」
耳元で囁かれて、息がくすぐったくて、実生は身じろいだ。その途端、周囲のざわめきが耳の中に戻ってくる。
はっと我に返ると、実生は、自分がいるのが空港のロビーで、衆人観衆のなか、律人と抱き合っていることに気づき、頬に血が上った。
俺、何やって……。
慌てて律人の胸を手のひらで押して、実生は律人から離れようともがいた。
いくら、外国だからって人前で抱き合っていたらおかしいに決まっている。
律人の腕からするりと抜けだす。頬が熱い。
「実生。なんだよ。いきなり。せっかくの感動の再会なのに」
暴れて腕から逃れた実生が不満なのか、律人に上から睨まれた。
「ここは公共の場所」
めげずに睨み返すと律人が小さくため息をついた。
「挨拶だろう。だれも気にしないって」
あいかわらずだなあと律人の顔に書いてある。律人は日本でもあまり周りに頓着しなかったが、実生は恋人と外でいちゃいちゃすることに全く慣れていない。というか、恋人がいた経験がない。ましてや、自分たちは同性だ。怪しいことこの上ない。
「まあ、いいや。荷物はこれだけ?」
腕を広げながらも苦笑を浮かべて訊かれたことに、実生は小さく頷いた。律人は、腕を伸ばして、実生の手から、さっとスーツケースを奪うと、それをがらがらと引きながら、「こっちだ」と歩き出す。自分で持つと言うまえに、距離のあいてしまった背中を実生は慌てて追いかけた。

「お邪魔します」
玄関をくぐると実生は小さく頭を下げた。他人のうちに初めて入るときはやっぱり緊張する。それも玄関に段差がなくて、靴を脱ぐところがないというのにも違和感があった。
「なんだよそれ」
先に部屋に入った律人が声を出して笑う。
「いいだろ。普通だし」
律人について玄関から続く廊下を行く。両側にいくつか扉が見えて、一人にしては部屋数が多いなと思う。
「わあ」
奥の扉をくぐって、実生は声を上げた。広々としたリビングは片面が窓になっていて、街の様子が一望できた。青空に何本もビルがにょきにょきそびえたち、ところどころに公園が見える。
窓に寄って下を見れば、ミニカーサイズの車が連なっていた。
「気に入った?」
実生の横に来て肩を抱く律人を横目で見上げて、実生はうんうんと頷く。
「すごい。やっぱりアメリカの高層ビルはすごいよ」
にこにこと微笑むと律人も笑った。
「まあね。でも借りてくれているのは会社だし」
さらに肩を引き寄せられて、頭が律人の肩に触れ、実生は頬を染めた。なんだかとてつもなく恥ずかしい。
会いたくて、声が聞きたくて、飛行機の中でもどきどきして眠れなかったほどなのに、いざ、本人を目の前にすると、どうしていいかわからなくなる。
「え、えっと。ほかの部屋もみたいな」
身体を離そうとして横目で律人を見上げると、視線が絡んで、律人がにやりと笑った。
「誘ってる?」
「え?」
聞きかえすと、いきなり腕をとられた。律人は実生の腕をつかんだまま、リビングを出て廊下を歩いていく。
「律人?」
廊下の玄関に近い方の扉を律人が開いて、実生は室内を見るなり瞠目した。
「ちょ、ちょっと、待っ……」
部屋はそう広くはないが、バカみたいに大きなベッドが部屋の真ん中に鎮座している以外何もない。遮光カーテンが引かれているのか、部屋は薄暗く、深く眠るための寝室としては、最上の部類に入るだろう。
足を止めた実生を怪訝そうに振り返った律人は、掴んだ腕を引いた。
胸に抱き込まれて、腰をぐっと抱きしめられ、背がしなった。首筋に唇をおとされて、びくんと身体が震えた。
「実生が誘ったんだろう?」
「誘ってない」
慌てて首を横に振るものの、首筋を舌で舐められて声が詰まる。いったいさっきの会話のどこをとると誘ったことになるんだろう。部屋の案内を頼んだだけなのに。
実生の言葉を寝室に行きたいと律人が捉えたとは知るべくもない実生は首を傾げる。
「実生」
鼻先を首にこすり付けられて、名を呼ばれると、肌がざわめいた。
「欲しい……実生が欲しい」
艶のある声で囁かれ、ぞくりと背が震え、身体の芯がかっと熱を持った。実生だって本音を言えば、律人と抱き合いたい。両想いになって、いくばくもしないうちに異国へと旅立ってしまった恋人だ。メールもしょっちゅうくれたし、電話でも声を聞いたけど、それでも顔も見えず、体温を感じられない距離は想像以上に辛かった。
自分を囲う腕も寄せられた身体も熱くて、律人がここにいることを教えてくれて、嬉しい。
だけど、着いたらすぐにっていうのはなんか違うんじゃないだろうか。
近況の報告もなにもなく、いきなりって……。
「……やっ……」
「嫌?」
酷く寂しそうな声に、実生はどきっとする。いきなりな拒絶はまずかっただろうか。律人を傷つけたかもと実生は焦って口を開く。
「え、えっと。シャワー、そ、そう。先にシャワー浴びたい」
思いついたことを口に乗せると、それはいかにもしっくりときた。
「長いこと飛行機に乗ってたし、あ、汗もかいているし。とにかく、湯を浴びてさっぱりしたい」
その間にそういう気分は落ち着いて、きっと後でってことになるだろうと思いながら言い切ると、腰を抱いていた腕の力が弱まった。髪にキスを一つ落とされる。
「わかった。いいよ」
律人の胸に手をついて顔を見上げてみれば、声の調子から落ち込んでいそうに思えた律人は、唇を左右に引いて笑みを浮かべていた。ちょっとイジワルそうな笑みは律人に似合っていて、色の滴る瞳を覗き込んで、かっこいいなあと思う。濡れたように輝く瞳は黒くて吸い込まれそうだ。
「じゃあ、こっち」
今度は手首を掴まれて、実生は寝室の前の扉に引きずり込まれた。
そこは、バスルームで、入って右手に洗面台とトイレ、左奥には大柄なアメリカ人仕様のバスタブが置かれ、手前はガラス張りのシャワールームになっていた。
凄い設備だなと感心していると、鏡に映った律人はやけに嬉しそうな顔で笑っていた。横には、不安そうな顔の実生。
「バスタブじゃ、水浸しになるからな。シャワーでいいよな」
「え?」
怪訝に思う間もなく、シャワーブースへ引っ張り込まれ、シャツの裾を手を掛けられて、実生は律人の意図をようやく理解した。
「待て。待てってば」
身体を引いて、律人の手を逃れる。引っ張られてシャツの裾がズボンから出てしまった。
「なんだよ。一緒にシャワー浴びれば問題ないだろう?」
「問題あるだろう。シャワーだけで済ます気ないよな?」
いつの間にか外されてはだけてしまったシャツを握りしめて、実生は律人を睨んだ。
「シャワー浴びたいってそういう意味だろう?」
バツの悪そうな顔で律人が微妙に視線を外した。
「違うっ」
否定してから、実生はため息をついた。律人が欲情しているのは嫌ってほどわかった。だが、ここでっていうのは、勘弁してほしい。こんなところで抱かれたらあとで身体じゅう痛くなるに決まっている。前に律人のマンションで、風呂場で繋がった時は背中と膝が痛くて大変だったのだから。
「あーあ、もう。出てけよ。シャワー浴びたら行くから」
実生の言葉に律人はぱっと顔を輝かせた。しまった、同意してしまったと思ったときには遅かった。ずいっと身体を寄せられて、あっという間に実生は壁と律人に挟まれて身動きが取れなくなる。壁に肘をついて腕でも実生を囲い込むと律人は実生の顔に自分の顔を近づけた。
「……律人」
あまりの近距離に実生はじっと律人を見つめたまま動けなくなる。
「実生」
顔を傾けて、律人は実生の唇にそっと自分の唇を合わせる。啄むようにして離れる。律人の唇の温かさに実生の体温がまた跳ね上がった。
「バスローブ用意しとくから、下には何も着てくるなよ」
ぺろりと唇を舐められて、律人に囁かれ、実生は耳まで真っ赤になる。
「でも、あんまりは待てない」
もう一度唇を押し当てて、律人は実生から離れた。そのまま背をむけて、シャワーブースから出ていく。
実生は火照った頬に手を当てた。背をブースの壁に預ける。
「やばい。律人のことだけ責められない……」
頭も壁につけて、実生は吐息を漏らした。律人の唇が触れた時、口を開いてしまいそうになった。深い口づけをもらえなかったことに落胆している自分に気付く。
こんなにも律人に飢えていたのかと実生は、熱くなってしまった身体を自分の腕で抱いた。
好きなんだよな。
何度も思ったことを繰り返す。
実生は今回、律人に会いに来て決めていることがある。朝から晩まで、律人と共にいて、思い出をたくさん作って、律人で自分をいっぱいにして、あとまだ3か月は続くだろう遠恋に耐えること。そしてもう一つ、自分の口から自分の意思で想いを伝えること。
段取りはめちゃくちゃだけど、要は気持ちが伝わればいい。寝室で自分を待っているだろう律人に想いをはせて、実生は服を取り去るとシャワーのコックをひねった。勢いよく落ちてくるお湯に身を任せ、実生は軽く頬を両手で叩いた。
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