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煉獄の恋

第8章 約束(1)

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薄暗い店内にジャズの快いリズムが波のように響いている。会話を邪魔しない程度の音量が耳に心地いい。
閉店まであと1時間くらいだから、店内もさほど混んではいない。平日の夜はこんなものだ。
カウンターで聖はグラスを磨いていた。グラス磨きは基本だと田畑が常々言っており、新人は田畑が合格点をだすまで、グラスを磨くのがしきたりだ。
特に客の少ないすきま時間は、練習の格好の時だった。聖は磨くと透明度を増すグラスを一心に磨いては、光にかざしている。グラスが光をはじいてきらりと光るのを見るのが聖は好きだった。
熱中しすぎていて、誰もいなかった目の前のカウンターに人が座ったのに気づくのが一瞬遅れる。慌てて頭を下げ、「いらっしゃいませ」と声をかけ頭を上げた。
そのまま瞳を見開き、凍りつく。
なんの気負いもなく、穏やかな瞳で自分を見返し、軽く前髪をかき上げたのは、神栖その人だった。息をのんだまま聖は神栖を凝視する。耳に入っていたすべての音が遠ざかり、瞳に映るのは神栖だけになる。
一瞬、この世にいるのは神栖と自分だけという錯覚に落ちいる。神栖もまっすぐに聖をその瞳にとらえ、無言で2人は見つめ合った。
後ろで流れるサックスの甲高い音に肩が震え、我に返る。視線を神栖から引きはがし、聖はうつむくと無言でお絞りを差し出し、コースターを置いた。
混んでいないときはこちらから注文は問わない決まりだ。こんな時間にくる人はゆっくり飲みたい人がほとんどだという店長の意向で、客が好きな時に声を掛けることになっている。
「モルトをダブルで」
告げられた神栖の低く、甘い声に聖は背筋が震えるのが止められない。
「かしこまりました」
軽く頭をさげ、酒の用意を始める。声が震えているのに気付かれなかっただろうか。
聖はお酒を手順通り作りながら、これは知らないお客だと何度も何度も自分に言い聞かせる。
「どうぞ」
琥珀の液体が揺れるグラスを神栖の前にそっと置いた。
神栖が聖の瞳に視線を向けた。聖も神栖の視線を真っ向から受け止めて視線を逸らさなかった。感情は込めず、ただ見返すだけだ。
神栖が口端を片側を上げて微笑った。自嘲のようにも見えた。
ゆっくりと聖から目を離さないまま神栖はグラスを傾ける。
聖は全神経を総動員して、心と感情を沈みこませた。聖の目に神栖は映っていたが、それはテレビの中の実像のないものと同じだ。
出会ったらどうなるかと危惧していたのに、案外平気に振る舞える聖は少しほっとする。ここが他の人もいる公共の場だというのも救いだった。
こんなところで喚いたり、泣いたりすることはプライドの高い聖にとってはあってはならないことだ。だから、すべてを押し殺し、何も感じないし、何も見ない。あれは実体のない映像なんだと自分に言い聞かせる。
少し痩せたなと聖は思った。
会わなくなる前から、仕事が忙しくて確かにやつれた感はあったが、さらに頬が削げた気がする。
だが、そんなことどうでもいいと自分を納得させて、聖は神栖から視線を剥すとまたグラスを拭きはじめる。これに没頭していれば、何も考えずにすむ。
「全部、お前の誤解だ」
低く囁く声が聞こえた。聖は声の方を見ない。
「約束、覚えているか?」
聖が答えなくても神栖は続ける。聞こえるか聞こえないかの小さい声で。
それでも、神栖の声はまっすぐ聖に届く。ジャズの音にさえかき消されずに。
「日曜日、待っている」
神栖はそう言うと立ち上がった。聖が顔を上げた時にはすでに背を向けている。声はかけられなかった。
ひきとめて何になる。神栖さんとはもう終わったのだ。
手元に目を落とし、すでに空になっているグラスを取り上げる。脇に置かれていたコースターを取り上げ、聖はそこに何か書きつけてあるのに気付いた。
「11時、カフェ……ドルチェ」
もう一度顔を上げて、神栖の方を見たが、その背はもう聖の視界にはなかった。
約束。最後に会った日にした約束を聖は思いだした。
『買い物にでも行かないか。たまには外で会うのもいいだろう』
『楽しみにしている』
最後に会ったときに交わした約束だ。気恥ずかしいのに甘くて優しい会話だったと思い、聖は首を左右に振った。
すでに別れたのだからそんな約束は無効だろう。
約束なんて知るか。行かない。もう会わない。
聖はコースターを手で握りつぶした。心が粉々に砕けてしまいそうだ。
お願いだからもう俺の前に現れないでくれ、忘れたいのだから。
それなのに何度も頭の中を強い瞳がよぎって、聖は強く頭を振った。
聖は苛々した気分を持て余す。約束なんて思い出したくもなかった。
だけど……会いたい。
心に去来した想いに愕然とする。自分がどうしたくて、どうするつもりなのかもわからない。押し殺した感情が一気に噴き出して、おかしくなりそうだ。
だから、会いたくなかった。放っておいて欲しかったのに。どうしていつもいつも俺を振り回すんだろう。構われなければ、こんな思いをすることもなかったはずだ。
カウンターに置いた拳を握りしめる。
聖は、強く目を瞑り、外れてしまいそうな心の壁を押し返した。
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