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煉獄の恋

第8章 約束(2)

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神栖が現れてから、すっかり動揺してしまったらしい聖は散々だった。
集中しろと自分にいいきかせているようだったが、それすらも功を奏さず、何をやっても上の空だった。
今もこうしてマンションまでの道を一緒に歩いているが、聖は心ここにあらずだ。
本人は絶対にわかっていないし、認めないだろうが、いまの聖の顔は見ている方が辛い。
ちらりと横を歩く聖を見て、岸は小さくため息をついた。
あの男と顔をあわしただけで、これだ。
岸は自分を睨み付けてきた神栖の顔を思い出す。聖がこんなに不安そうなのも全部あいつのせいだ。岸は拳を握りしめて、少し前のことを思い出した。
ほんの1時間ほど前、交代でとっている休憩から戻って、カウンターに視線をやって、岸は舌打ちをした。聖の前に神栖が座っていたのだ。
こんなほんの僅かな間側を離れていただけなのに。
自分の迂闊さに吐き気がした。
聖を休憩に追いやって、あいつから引き離さなければと足を踏み出したとたん、神栖が席から立ち上がった。
岸はとっさにフロアを横切って、入り口のキャッシャーに立つ。
神栖から伝票を受け取って、会計を告げた。
札を差し出し、岸の顔を見た神栖が驚いた顔をし、さらに頬を苦く歪めた。
「こちらお釣りになります」
岸はお釣りを神栖の手に渡すとその手をぐっと力を込めて握りしめた。
「もう、ここには来ないでいただけます」
「客に言う言葉じゃないな」
神栖の声にも怒りが混ざる。下から睨むように神栖を見上げた。
「聖は忘れたがってます。あいつを混乱させないで欲しい」
「おまえには関係ないだろう」
いつもなら余裕でこんな挑発をかわすだろう神栖が、ひどく苛立たしげな声音で乗ってくる。
「関係ない?」
岸は勝ち誇ったように笑った。
「聖はもう俺のものです。あんたには渡さない」
射殺しそうな瞳で神栖は岸を睨む。それに岸はわざと笑みを深め、だが、目は笑まずに、睨み返した。
「わかっているんでしょう。俺たちが付き合っているって。見てましたものね。毎晩」
岸の言葉に神栖は動きを止めた。驚いたような表情のあと、悔しそうに顔を歪める。
「離せ」
怒りを押し殺した低い声で告げられ、岸は手を離した。手をすっと引くと神栖はそのまま踵を返し、店を出て行った。
あの時の悔しそうな顔を思い出して、岸は口元に笑みを浮かべた。神栖もまた聖に強い執着を示しているのだ。
だめだ。あいつのもとへもどしてはいけない。
岸は黙々と隣を歩く聖を横目で伺う。この暗さでもわかるほどの顔色の青白さや生気のない顔。神栖とこれ以上関われば、いつか聖は壊れてしまう。
ここから聖を救ってやりたい。あいつを忘れるにはどうしたらいいのだろう。
新しい恋をすれば、古い恋は忘れるっていうけどな。
ふと浮かんだ考えに岸は苦笑する。まだ、友人という立場を捨てるかどうか決めていない自分が、どうしようというんだろうか。
「聖」
名を呼ぶとのろのろと聖が振り返る。何度か瞬きをして、今いるところがマンションのエントランスだとようやく気付いたらしい。
「あ、ありがとう、じゃあ」
事務的に告げられた感謝の言葉に岸は苦く笑い、何も言わずに聖を見つめた。
別れの挨拶を口にしない岸をいぶかしんだのか、聖が何度か瞬く。
「岸?」
「なんかさ、喉渇いちゃたんだけど、お茶一杯もらっていいか」
ふっと笑って、岸は思い切って部屋にあげろと言ってみた。このまま別れたくなかった。まだ、どうするか決心はつかない。だが、何らかの予感があった。
「な、何いってんの?また終電逃すよ」
「まだ、大丈夫だし、お茶入れてくれたらすぐ帰るからさ」
引き下がらない岸に、聖は自嘲の笑みを浮かべた。自分の様子がおかしくて岸がひどく心配しているとでも思ったのかもしれない。
「すぐ帰れよ」
聖の逡巡は短かった。長居はするなと念を押して、了解を告げた聖の後ろから岸はマンションに入った。
部屋に上がるなり、岸はまた、暖房の吹き出し口の下に陣取った。
「おまえ、本当に寒がりだよな」
キッチンから戻ってきた聖がお茶を差し出しながら小さく笑う。
「しょうがないだろう。脂肪があんまりないんだから」
適当な理由を述べると聖は吹き出した。声を上げて笑った聖に驚き、そして痛ましく思う。
ここ数日、、必死に張り巡らしていた壁が綻びている。
先刻、神栖と会ったからだろう。あんなに押し殺していた感情が聖に戻ってきていることに岸は複雑な思いを抱いた。しかし、その感情は苛々した怒りと悲しみが混ざったもののように思えて、感情を殺しているのとどちらが聖にとっては辛くないのかとも思う。
岸の横に立って、お茶をすすっている聖を見つめ、岸は聖の腕に手を掛けた。
「おい。岸、危ないって」
咎める聖のお茶を取り上げて、テーブルに置く。
それを何をするんだという目で見た聖の顔に岸は自分の顔を近づけ、唇に自分の唇を重ねた。
触れるだけのキスをして、すぐさま離れて聖の顔を伺うと聖は目を見開いて固まっていた。瞬きも忘れて、岸を凝視する。
「聖」
優しく呼びかけると、聖は大きく瞬きをして、ぎっと岸を睨み付けた。
「どういうつもりだ」
声に怒りがこもっている。
「気持ち悪かった?」
岸が心配そうに問うと、聖は怒りの矛先をそがれたらしく困惑気味に視線を彷徨わせた
「俺さ、なんか聖が好きかも。そういう意味で」
笑みを浮かべて、ゆっくりと告げると、二の句が継げない聖は、また岸を凝視する。
「でも、男同士だし、よくわからないんだ。キスとかして気持ち悪いならきっと友情が強くなっただけだと思うんだよね」
友情にしておきたいのか、聖を手に入れたいのか、岸自身もよくわかっていないから、言い訳は自然と口からこぼれた。聖の目線が次を問うている。
「もう一回していい?気持ち悪かったら止めるから」
「おまえさ……俺を慰めようとかしている……とか?」
聖は視線を岸から外すと首を横に振る。まるで、見つめるなと言っているようにすら思える。岸は苦笑を浮かべた。
「違うよ。そんなつもりはない」
「気づいているんだな。だから、ここのところ、俺の側を離れないんだ」
何にとは聖は言わなかった。岸もそれに触れるつもりはない。
「違う。側にいたいから離れないだけだ。もっとお前が知りたいし、ずっと一緒にいたい」
そんなことはどうでもいいのだと、聖の側にいたいのだと思いをのせて岸は告げた。
「おまえの様子が変なのはわかってる。それは俺じゃなくてもわかるよ。俺はおまえには笑っていて欲しい」
聖が何も言わないので、岸は言葉を続ける。愛しさが湧いてきて、それだけが自分の中の真実だと思う。聖に笑っていてほしい。自分の隣で幸せに笑ってほしい。
「もう一回、キスしていい?俺のなかのこの感情が何か知りたいんだ」
「それって普通、男に言うセリフじゃない」
わかっていると囁いて、岸は聖を引き寄せた。そのまま聖の唇に唇を寄せて重ねた。軽く舌で聖の唇を辿り、口を開いてと舌先を上唇と下唇の間で行き来させる。ゆっくりと何度も優しく聖を唆す。
「岸、ちょっ…」
抵抗しようとして、聖の口が薄く開いたところで、舌を滑り込ませ、深く口づける。
腰を引き寄せ、きつく抱きしめて、聖の口腔内に舌を這わせ、逃げる舌を追った。
「っん……」
舌を絡め取ると甘い吐息が聖から漏れ、舌ごとそれを吸い上げる。
聖の口の中は温度が低くて、柔らかくて気持ちがいい。
聖が腕の中で暴れ始め、岸ははたと我に返り、抱き締めていた腕を解いた。
「あのな」
あまりの仕打ちに怒る聖の息が上がっていて、目元が甘く染まっているのを見て、岸は嬉しさが募ってしまう。
「気持ち悪かった?」
「それはないけど、やっぱり変だろう、こういうの」
聖は岸の問いは否定して、それでも真っ赤な顔で抗議する。
それを見た瞬間、心臓が高鳴り、岸は深く後悔した。まだ、決めていなかったのに、友人のスタンスを崩すのか、深入りするかどうかも。しかし、自分でまいた種とはいえ、しっかり自覚してしまった。
「そうかな」
あいまいに答えて、聖の瞳を視線でとらえる。
「俺、もっと聖に信用してもらいたい。なんでも話してくれると嬉しいと思っているよ」
「岸」
聖の答えを待たずに岸は鞄をとると玄関に向かってすたすた歩き出す。
「おい、岸」
それを後ろから聖が追う。
「俺、帰るわ」
玄関に座って、紐のやたらと多いブーツを履く。履きながら聖の名を呼んだ。
聖がきこえなかったのか前かがみになったところを手を伸ばし側頭部に手を差し込んで、引き寄せると、
「俺にしとけよ」
聞こえるか聞こえないかの声で囁いて、岸は立ち上がった。
「え……?」
「じゃあな、また。お茶、ごちそうさん」
「岸……」
何もなかったかのように岸は笑って、扉を閉めた。

閉じた扉を聖は呆然と見た。
岸が俺を……?
思って、首を左右に振る。
それはない。あいつは友達だ。
「やっぱり、気づいたんだ」
つい独り言が漏れる。それで、慰めようと。
それとも俺があいつの好意に甘えているからか。
それにしたっておかしい。あいつは合コンでいつも一番人気の女子をお持ち帰りが常だったのに。
「しかも、うますぎだろ」
悪態をつくとそれもおかしくて、聖は苦く笑った。
この辛い想いを忘れるには、新しい恋でもと言いたかったのかもしれない。
新しい恋はできそうにない。もう、2度とこんなに人を想うことも。
聖は今ここにはいない岸に向かって心の中で呟いた。
岸とのキスは気持ち悪くはなかったが、ただ、それだけだった。神栖の全てを奪うようなそれだけで息が止まってしまうようなものとは違う。嵐のような神栖の口づけを思い出してしまい、聖は身体が震えた。
結局、なにがあっても心は神栖に戻ってしまう。
忘れられるのだろうか。
自分の腕で自分を抱き締め、聖は押し寄せる波のような激しい感情が行き過ぎるのに耐える。
自分のなかのどこにこんな激情が潜んでいたのか自分でも不思議だ。取り出して見えないところに捨ててしまえたらどんなに楽か。
聖はふらりとダイニングのテーブルに戻り、薬瓶に手を伸ばす。
このまま眠ってしまおう。考えたら駄目だ。思えば思うほど忘れられないという事実だけが募っていく。
また全てを覆い隠して心の奥底へ沈めて、二度と浮き上がらないように。
何度も何度も言い聞かせ、聖は深く息をはいた。
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