スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←第8章 約束(2) →第9章 心の在り処(2)
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ

もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png はじめに
もくじ  3kaku_s_L.png リンク集
もくじ  3kaku_s_L.png Novel lists
もくじ  3kaku_s_L.png 奇跡の刻
もくじ  3kaku_s_L.png 平行線の恋
もくじ  3kaku_s_L.png 煉獄の恋
総もくじ  3kaku_s_L.png 天空国の守護者
総もくじ  3kaku_s_L.png 巡る季節と恋の順番
もくじ  3kaku_s_L.png 雑記
総もくじ  3kaku_s_L.png 山神の花嫁_昔話
もくじ  3kaku_s_L.png 告白の向こうへ
もくじ  3kaku_s_L.png 空の月を恋う
総もくじ  3kaku_s_L.png おまけ番外編ショート
もくじ  3kaku_s_L.png 遠回りの片恋
もくじ  3kaku_s_L.png 腕の中の迷い猫
総もくじ  3kaku_s_L.png 蒼い闇の化身
  • 【第8章 約束(2)】へ
  • 【第9章 心の在り処(2)】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit

煉獄の恋

第9章 心の在り処(1)

 ←第8章 約束(2) →第9章 心の在り処(2)
次の日も3時限目の授業が終わり、岸とバイトへと向かう。
時間はまだ早いが、バイト先の近くでともに時間をつぶそうと大学を出た。
「高郡くん」
正門をくぐったところで、名前を呼ばれた。
「吉井さん」
声を掛けられた方を見て、あまりに予想外の人がいて聖は軽く目を瞠る。そこには、ダークグレーのスーツをきちんと着こなしたの吉井が立っていた。平日のまだ午後も早い時間で、吉井は仕事中ではないんだろうかと聖はいぶかしんだ。
「元気だった?いま、ちょうど電話しようと思っていたんだ」
笑んではいるが、表情の硬い吉井の手には携帯電話が握られていた。
「ちょっと時間貰えないかな」
横の岸にかるく会釈して、聖に向き直ると、前置きもなく吉井はそう切り出した。いつもきちんとした吉井にしては珍しい。
「これからバイトなんですけど」
「何時?」
「18時からです」
吉井は腕時計にちらりと目を走らせた。
「まだ、時間はある。そんなにかからないからちょっと付き合ってくれるかい」
「誰?」
吉井と聖の会話に側にいた岸が口をはさんだ。
「前にバイトでお世話になった会社の人。創生テクノロジーって会社でバイトしてたんだ、夏に」
聖は簡単に吉井のことを岸に説明する。相槌をうちながら聞いていた岸の眉間の皺がだんだん深くなる。きつい眼で吉井を岸が睨み付けた。
「バイトの前に食事もしないといけないし、勝手に聖を連れて行くの止めてくれませんか」
岸にしてはぶっきらぼうに吉井に告げるのを聖は驚いたように見た。初対面の人にこんな風に岸が接するのを見るのは初めてだ。
「お、おい、岸……」
慌てて、聖は岸の腕をつかんだ。岸は振り返りもせず、吉井から目を離さない。
「それは悪いと思うけど、こっちもいろいろ緊急なんでね。時間に間に合うようにバイト先に送り届けるし、食事もきちんとさせよう」
岸の無礼さに気分を害したそぶりもなく、吉井はそう提案した。聖に向かって、行こうと告げる。岸がむっと黙り込んだ。
3人の周りを何事かと学生たちが興味津々の視線を向けて通り過ぎる。こんなところで、立話は目立ってしょうがない。
聖は岸と吉井を交互に見て、それから大きくため息をついた。視線を上げると道の向こうに見慣れた車が停まっていた。神栖の会社の社用車だ。
どくんと鼓動が跳ねた。
まさか、あの中で神栖が待っているとか。それなら行きたくないと警戒心を深めて聖は吉井を見た。
「吉井さん、一人ですか」
問うてから、変な質問だったかと思ったが、吉井は特に気にすることはなかったようで、それに簡単に頷いた。
吉井がやってきた理由は、十中八九、神栖の件だろう。だが、違うかもしれないし、世話になっている吉井を無碍にもできない。
「岸、ごめん。先に行っていてくれ。店で会おう」
「聖、行くなよ」
珍しく岸は食い下がった。何か彼なりに妙な予感があったのかもしれない。
「お世話になった人なんだ。無視はできない」
そう答えると岸が唇を引き結んで黙った。
「バイトにはちゃんと行くから。心配するな」
岸の目を覗き込んで告げると聖は、背をむけて車に向かった吉井について歩き出した。促されるまま吉井の車の助手席に乗り込む。
「聖」
岸の声が聞こえたが、窓から大丈夫だと手を振って、車は岸を残して走り出した。

「悪いね。ここなら、バイト先にも近いし、食事も済ませてしまえるよ」
話があるといった割に車の中では、とくにこれといった話もなく、バイトは何をやっているんだとか、お客はたくさんくるのかとの世間話で終わった。吉井は、聖のバイト先にほど近い和食の店に聖を連れて行った。話をきかれたくないためか、単に落ち着くからか、個室のように仕切られた席に案内された。店内をそれとなく見回して、神栖とは趣味が違うんだとどうでもいいことを聖は思っていた。
「話ってなんですか」
食事が運ばれてきて、周りに人がいなくなったことを確認し、聖は切りだした。時間もなかったからだが、それよりもこの落ち着かない状況を早く終わらせてしまいたかった。
「先週、なにがあったんだ」
吉井も時間を無駄にすることは好まなかったようで、単刀直入に訊かれ、聖は言葉に詰まる。
「僕には関係ないって顔だね」
聖はそれには答えない。あまりに直球で訊かれたので驚いたのと、まさに吉井さんには関係ないと思ったから。
「輝と君がどうなのかは確かに僕には関係ない。でも、事が仕事に及んでくると黙っていられないんだよ」
「どういう意味です」
「輝はこの間の土曜日からなんだかおかしかったんだが、今週はほとんど仕事に来ていない」
目を瞠って、聖は吉井を見た。その驚いた表情から、聖が何も知らないんだと吉井は悟ったらしい。
「会社には来ているようなんだが、社長室の奥の部屋、知っているよね。そこからほとんど出てこないかと思うと、ふらりとどこかへ出かけてしまう。急ぎの決裁はやってあるんだが、それだけだ。おかげで、ほとんどの仕事が止まって、業務に支障が出ている」
神栖に仕事を忘れさせることができることがあるのかと聖は驚きを隠せない。しかし、聖は一転してこれ以上ないくらい醒めた冷たい表情をした。
「それと俺となんの関係があるんです?」
聖の言葉に今度は吉井が唖然とした。
「関係あるだろう。今、一番あいつの近くにいるのは君なんだから」
その言葉に聖は首を左右に振った。
そうだったらどんなによかったか。でも、神栖さんとは終わってしまった。
「違いますよ。ちゃんと彼女がいるんです」
聖の答えに吉井の顔に困惑した表情が浮かぶ。
「彼女?こういったら失礼だが、君がそうなんだろう。少なくとも神栖の自宅に泊ったのは君が最初で最後だよ」
聖は顔を上げて吉井を見た。そんなはずはない。神栖は女性を連れていて、それもひどく仲がよさそうだった。
「女性でしたよ。ちゃんと。俺じゃない」
「それ本当なのかい。大体、昨夜、部屋に行ったけど、女性なんていなかったし……」
そこで吉井は言葉を切って少し身を震わせた。
「どうしたんです?」
「どうもこうもない」
大きなため息をついて、吉井は昨夜、神栖の部屋にいったことを話し始めた。
業務は滞っているし、こんなことは会社を興して以来、一度もなかった。電話しようがメールしようが返事がない。もう、ここしかないと会社に来ない神栖を探して、吉井はマンションまでやってきた
インターフォンを何度も鳴らすが応答がなく、部屋まで上がってドアをたたいたが、やはりうんともすんとも返事がない。
ここでもないのかと、ため息をつきながら、開いているはずもないと思いながらもドアノブを回すとドアが開いた。
不用心だなと思いつつ、「入るぞ」と声を掛けつつ中へと入る。
しかし、鍵は開いているものの、廊下もリビング電気もついておらず真っ暗で、街明かりで部屋がぼうっと見渡せるだけだ。
「輝?」
声をかけるが応答はない。モノトーンに沈んだ部屋は、アルコールと煙草のにおいがした。吉井が、足を踏み出すと、つま先に何かあたり、フローリングを転がる硬質な音がした。
「輝、いないのか」
電気のスイッチを探して、灯りをつけ、吉井は愕然と立ち尽くした。
リビングの床には、そこらじゅうに酒瓶が転がっていた。いくつかは叩きつけたのだろうか粉々に砕けて、破片が床を覆っている。
「輝」
声を掛けると身じろぎする気配がし、そちらに視線を送ると神栖がソファに座っていた。
「なんだ、いるなら返事をしろよ」
ほっとして、神栖に近寄ろうとする。
「なんの用だ」
酷く昏い、感情のない声で告げられ、付き合いの長い吉井でもぞっとした。
「仕事に顔出さないから心配してきてみたんだが。どうしたんだ、これは」
「眠れないんだ」
グラスを手で弄びながら、神栖は呟いた。
「いくら飲んでも酔わないし、眠れない」
その表情をみて、吉井は肝を冷やした。やつれた頬、青白い顔、こころなしか痩せた気もする。神栖とは幼いころからの付き合いだが、なにがあってもこんな様子はついぞ見たことがない。会社が危機に陥った時も、いつもの自信過剰な笑顔で乗り切ってしまう男だ。
一体何があったのだろう。
「輝……」
吉井には掛ける言葉が見つからなかった。
「そんなはずはない」
昨夜の様子を話す吉井を聖は、信じられないという顔で眺めた。
「信じられないのは当然だと思う。俺だって自分の目を疑った。だが、事実だ」
まっすぐに聖を見た吉井の目は嘘を騙っているようには見えない。
「何があったか知っているんだろう」
責める口調に聖は肩を揺らした。神栖が自分のせいで落ち込んでいるなんて信じられない。吉井の話にも聖とのことが原因とは一言も出なかった。だから自分のせいじゃない。
「俺には関係ない」
「関係なくない。仕事ではさほど大きな問題はないんだから、あるとすればプライベートだけだ。君しかいないだろう」
「……ったんです」
独り言のようなつぶやきが漏れた。
「は?何て言ったんだ」
「終わったんです。なにもかも。だから俺に訊かれても答えられない」
震える両手を膝の上で握りしめて、聖は俯きながら言葉を紡ぐ。
「あいつが終わりにしたのか、それとも君が」
「どうでしょう。それもわかりません。そもそも始まってたのかも」
手のひらに爪が食い込むほど聖は拳を握りしめた。それでも声が震える。
「どういう意味だ?別れたというならどちらかがそれを突き付けたはずだろう。大体、10日前までは、とても幸せそうだったじゃないか。始まっていないってどういうこと」
言い募られても聖には何も答えられない。
「ちゃんと話をしたのか、輝と」
聖は逡巡したあと小さく首を横に振った。
吉井に大きなため息をつかれ、聖は視線を伏せた。
「高郡くん」
名を呼ばれ、ピクリと身が震える。
「よりを戻せなど言う気はないよ。お終いにするにせよ、そうでないにせよ、ちゃんと相手も自分も納得した方がいいと思わないか。逃げて終わりにするのは、相手にも自分にも卑怯だ。辛いのはわかるが、きちんと決着をつけるべきだ」
「そんなことはわかっています。それでも、顔を見たら結局、あの人に丸めこまれて終わるんだ。このまま飼殺されるのも、最後通告突き付けられるのも耐えられない」
瞳を伏せたまま激昂した聖に吉井はため息をつきつつ小さく笑った。
「それも僕に話すんじゃなく、輝に話すべきことだ。そうだろう。そういうことも含めて、向き合って話しあった方がいい。それで、傷ついても今よりは、こんな想像だけで自分を苦しめているよりよっぽど納得できないか」
優しい口調で問われ、聖は吉井の顔を見上げた。困ったような、呆れたような表情で見返されて、聖はわけもなく泣きたくなった。
「君にしか、輝は救えない。考えてみてくれないか。あいつときちんと向き合うことを」
聖は、膝に置いた拳を握りこんだ。
神栖さんを救う?
神栖が荒れた原因は聖にあると吉井は言う。ちゃんと向かい合えと背を押された。相手は自分じゃないのに……。
聖は答えを返せない。黙ってうつむいたまま唇を噛んだ。だが、前に座る吉井からふっと笑った気配がし、あとは君しだいだと言われた気がした。
「おっと、そろそろ時間だ。悪かったね、呼び出したりして」
その声に聖はゆっくり頭を下げた。
吉井に続いて、ふらりと立ち上がる。吉井の言葉がうまく消化できない。それでも、なにか自分が見落としていることがあるような気がしながら、聖は吉井に頭をさげると店を後にした。
関連記事


にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ

もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png はじめに
もくじ  3kaku_s_L.png リンク集
もくじ  3kaku_s_L.png Novel lists
もくじ  3kaku_s_L.png 奇跡の刻
もくじ  3kaku_s_L.png 平行線の恋
もくじ  3kaku_s_L.png 煉獄の恋
総もくじ  3kaku_s_L.png 天空国の守護者
総もくじ  3kaku_s_L.png 巡る季節と恋の順番
もくじ  3kaku_s_L.png 雑記
総もくじ  3kaku_s_L.png 山神の花嫁_昔話
もくじ  3kaku_s_L.png 告白の向こうへ
もくじ  3kaku_s_L.png 空の月を恋う
総もくじ  3kaku_s_L.png おまけ番外編ショート
もくじ  3kaku_s_L.png 遠回りの片恋
もくじ  3kaku_s_L.png 腕の中の迷い猫
総もくじ  3kaku_s_L.png 蒼い闇の化身
  • 【第8章 約束(2)】へ
  • 【第9章 心の在り処(2)】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【第8章 約束(2)】へ
  • 【第9章 心の在り処(2)】へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。